ネーヴェお姉様と後ろから声がかかる。こんな風な呼び方は一人しかしない。
「どうしたんですか、フr」
後ろを振りかえろうとしながら返事をするが、その返事は途中で止まる。理由は簡単で、フランドールことフランが飛びついてきたからだ。
押し倒されそうになるが、どうにか踏ん張って、受け止める。
「・・・フラン、また重たくなりましたか?」
単純にそう感じて言ってみるが、フランは顔を赤くして、おねーさまはデリカシーが無い、という説教を残したまま私から離れる。
うーむ、さすがに我が妹も乙女な時期ですか。
「まぁ、いいわ許してあげる。ネーヴェお姉様は、そう言うのわからなそうだし。・・・それよりお外でお父様たちが呼んでるわ」
私はうんざりした顔を示すが、フランは私を引っ張る。
「遅いぞネーヴェ。今日こそ飛行できるようになれよ」
お父様は少し怒気を含んだ声で言う。
私は、レミリアお姉様やフランのように飛べていない。というかコウモリの羽型のレミリアお姉様なら飛べるのはわかるが、なぜ、翼が宝石型のフランまで飛べてるんですか、なに、どうやってんの?
おっと思考がずれた。ともかく私は今のところ飛べていない。
「がんばってください。不肖、この紅美鈴が力添えさせていただきます」
乳母から世話役、お目付役?になった赤毛の従者がそう言って励ます。
気を操る力を持つ彼女は魔力や妖力を使って飛ぶなら心強い応援になる。だが、能力で私の力の巡りを整えるとき、彼女は顔をしかめた。
どうした美鈴とお父様に訊ねられるが、美鈴は答えず、真剣さを増した表情に変わる。
「いえ、少し魔力回路が複雑ですので、少し本気を出します」
ドクンと全身が熱くなる感覚を覚え、顔をゆがめる。
「あっあの、美鈴?」
「翼に力を集中させてみてください。その熱さは魔力そのものみたいなのですから、それを翼に移動させてみてください」と美鈴は言う。
体の熱さに異物感を覚えながら、がんばって熱さを翼に移動させる。
熱さの感覚がある程度翼に移動しきった。その途端に体がふわりと浮きだす。しかし、ふわりと感じたのは一瞬で浮遊感を全身に感じる前に、風を感じる。
「分散ッ!熱さを分散させてください!」
美鈴の悲痛な叫びをかろうじて聞き取り、翼に移した熱さをある程度逃がす。すると、私を押し上げていた浮力が今度は少なくなって支えがなくなったように重力に引かれる。頭には空白の思考が生まれ、考える暇もなく地面が迫る。
「大丈夫か」
ドサリと腕の中に私は収まる。そして、抱き抱えてゆったりと地面に降りる相手、お父様が私に言葉をかける。私は、はいとだけ返した。
「一応、今日は休みなさい。飛行訓練は日をおいてだな」
私はぼうっとしたまま、はいと頷いて館に戻った。