「術式介入、崩壊過程挿入、介入終了」
お父様が辺りに浮かび上がらせる火の玉を次々とかき消す。かき消すと言っても物理的ではなく、魔術的だ。辺りの魔力を引き込んで現象を固定化する術式に介入、その後、術式を成り立たせる因子を摘出、または成り立たなくさせる因子を挿入し崩壊させる。見識を広め、周りの魔力や妖力に干渉する技能がそれなりに高かった私が思いついた方法だ。
お父様は素晴らしいと賞賛し、お姉様も同じように誉めてくれる。
「アルジェ、お前の能力は物事に干渉するものだな」
所感を語るお父様は、すぐに次の火の玉を展開し、続けるように告げてお姉様の方へ向き直った。
「レミリア、お前は逆だ。内蔵魔力量が相当多い、力押しというのはあまり美しくなさそうだが、その実、最後にものを言うのは力だ・・・魔力量が潤沢なお前はとれる手が多い、技術のレパートリーを増やせ」
お姉様は頷いて全く別種の魔術を次々と展開させていく。
ふわりと開いた手の平に術式を展開し、氷の固まりを創造する。その固まりを、重ねて展開した術式で細かく砕く。
「そこまで魔術でするの?」
砕いた氷をコップの中に入れる私を見ながらお姉様は言った。
私は訓練の一環ですと言いながら、ガラスのコップを中身がこぼれない程度に揺らす。
「・・・貴方の周りはエーテルが薄いわね」
万物の元になる物質、即ちエーテルがあまり存在しないと言う指摘にコクリと頷く。
「私の魔術は全て外側にたゆたうエーテルを魔力に変換してますので、そのせいかと」
そう答えた後、いい感じに冷たくなったジュースを口に含む。
「魔力がほとんど貯蓄できないなんて、難儀なことね」
お姉様の言葉に私は首を横に振る。
「そんなことないですよ。流石に大規模な魔術はできませんけど、小規模程度ならそこまで負担はないです」
ならいいのだけど。とお姉様は紅茶を飲み干してから小さく呟いた。
いけませんね。お姉様に心配をかけてしまっては・・・
せめてもの見栄で負担はあまりないと言ったが、小規模の魔術でも相応の負荷がある。普段の魔術行使は、その大部分が大気中のエーテルを魔力へ変換してまかなわれている。
・・・このことに気づいているのはお父様とお母様、それに美鈴。お姉様やフランには、私の周りだけエーテルが薄くなっているということが見えるだけだ。
「私鋸とを気にかけていただくのはいいんですけど・・・過保護なのが玉に瑕なんですよね」
残ったジュースを飲み干し、私は席を立った。