そこまで長くはならないと思いますのでお付き合いのほど、よろしくお願いします。
現在
【1998年 7月10日 山口県】
人類は戦争をしていた。
それは『人類に敵対的な地球外起源種』と呼ばれ英語で言えばさらに長ったらしくなる存在。
人々はそれを略しBETAと呼んでいる。
BETAとの戦争が始まり約30年。人類は敗走をただただ重ね続けていた。
そしてそれは極東の地である日本も同じだった。
BETAが九州から日本に上陸したのは昨日。だというのにすでに福岡から熊本県までBETAが占領し山口県、愛媛県へと上陸を始めている。
そんななかで在日米軍、日本帝国軍、国連軍は共に本州への本格上陸を防ぐために出撃、防衛を行なっていた。
「くそ!死ね!死ね死ね死ねぇ!!」
「120、残弾ゼロ!36はまだ余裕があるが……くそ!もうないのと変わらねぇよ!」
「後方は何やってんだ!支援砲撃の要請は!?」
「全部蹴られた。ッッ!次の集団が来るぞ!」
戦場で、管制ユニットと呼ばれる場所でそれぞれが叫びを上げる。
米国軍所属のF-15E、ストライク・イーグル12機で編成された中隊が群がり迫るBETA集団に対し、突撃砲による射撃を行っていた。
他の部隊もおそらくそうしているのだろうが中隊の形を維持できている部隊はどれほどあるか、と疑問に思えるほど彼ら、人類は押されに押されていた。
戦闘が始まってどれほどだろうか、と1人思う。
彼は戦場に立ちまだ半年。しかし思考に混乱はない。ただ冷静に引き金を引き続ける。
突撃砲から劣化ウラン弾が放たれ、それはBETAを肉片へと変えていく。
彼の網膜に投影されている装備ウィンドウに残弾が表示されている。36㎜チェーンガンの隣に表示されている数字がかなりの早で数を減らしていき、そしてゼロになった。
「こちら、ドッグ11。36、残弾0」
命綱とも言える突撃砲の残弾が0になった。だというのに彼の声はいったって冷静だ。
その理由は部隊の中で彼のF-15Eの兵装担架にのみあるものが理由。
弾切れになった突撃砲を雑に投げ捨てると背中の兵装担架を展開、そこにマウントされていた74式近接戦闘用長刀を装備。
その光景を見たアーリードッグ中隊隊長、エヴァリス・バードウィンは頷き、彼に通信を送る。
「了解した。小型種は私の方で対処しよう。貴様は大型を狩れ」
「ドッグ11了解」
声が帰って来るや否や声の主は跳躍ユニットを吹かし急前進、前腕が岩のようにゴツゴツしていることが特徴の
瞬間、肉が切り裂かれ鮮血が舞い、F-15Eを濡らした。
それを気にする様子もなく、膝の装甲ブロックから短刀を展開、逆手に持つと飛び上がってきた赤く大きな口を持つ
逆方向から迫る要撃級、それが振り下ろす一撃を機体を軽く反らすことでかわし短刀を突き刺し、間髪入れず長刀でも切った。
「へ、また始まったよ」
「ジャップマニアかよ」
まるで余裕を見出そうとするように数名が嘲笑うように言う。
事切れたそれを盾にしながら前進、別の個体に近づくと盾にしていたそれを短刀ごと捨て長刀での横薙ぎ。
鮮血が舞う。傷は浅く殺すことはできてはいないが確実に動けなくはなっている。
目的は動ける数を減らすことであるためトドメは刺さない。
さらに両側から二体の要撃級が迫る。確認するとすぐさま跳躍、最後方にいる光線級のレーザー照射を受ける前に急降下、接近していた要撃級の背後に着地すると同時に振り向きざまの横薙ぎ。
無防備なその背中を切ると高く長刀を構え直し一息に振り下ろす。
その二撃により要撃級は完全に沈黙した。
沈黙したそれを踏み台にして跳躍、先ほどと同じ要領でもう一体の要撃級の背後に着地と攻撃を行う。
さらに次の標的に狙いを定めようとした時だった。
「こちらドッグ1。各機、ようやく後退命令が出た。これより指定されたポイントに後退する」
「「「了解」」」
アーリードッグ中隊全機から声が上がる。
その声音に不満が大量に含まれているが全員がそれを吐き出せるほどの余裕はない。後退の命令が出たというのであれば早々に下がるに限る。
それが確実に長生きできる方法だ。
「私がしんがりを務める。ドッグ2、ドッグ11貴様らが先頭を行け」
「「了解」」
指示を受けて彼らはすぐさま行動を始め、後退した。
後退は国連軍の援護もあり思いのほかスムーズに行え、戦線を離脱することに成功した。
戦線離脱を確認すると背もたれに体重をかけ、肩の力を抜く。
(今回も、生き残れた……)
ジャップマニア。
近接戦闘を得意とし、日本人設計の74式近接戦闘用長刀を扱うがゆえについた異名。
半ば不名誉なその異名をつけられた青年、ナフト・アーリストは息を吐いた。
彼らはただ全力を尽くした。全力を尽くし、役割を果たした。しかし、それは数の暴力で迫るBETAに対しては意味のないことだ。
その日、日本帝国軍、国連軍そして在日米軍は戦線を下げることを決定。舞鶴、神戸を結ぶ京都方面に三軍共同での防衛線を構築することを決定させた。
それはその後、日本で語られることになる帝都防衛戦の序章であった。