ソードマンと呼ばれた者について   作:諸葛ナイト

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ある青年の考察

【1999年 3月10日 カリフォルニア州】

 

 米軍基地内にあるバー、そのカウンター席には少し珍しい2人がいた。

 

「––––で、こうすると良いと思うんですけど……」

 

「いや、そう動くなら突出するよりも引き込んで––––」

 

 ナフトとシルヴィだった。

 2月末に彼女は初戦を経験した。ハイヴにいるBETAに対して定期的に行われる間引きではあったが彼女にとっては実戦であったことに間違いはない。

 

 そしてそれからはシミュレータでは対BETA戦を主にするようになっていた。

 今しているのは今日のシミュレータの反省だ。彼女がどうしてもバーでしたいと言うことだったために珍しくここでしている。

 

「はぁ〜」

 

 話が落ち着きシルヴィはカクテルを飲むと息を吐き、カウンターに突っ伏した。

 

「今日はここまでにするか」

 

 ナフトも珍しくカクテルを飲んだ。ほのかな甘みが舌に訪れる。それを少し楽しみながらゆったりとする。

 

 彼はアルコールを飲めないわけではない。もともと強い方だ。ただ単にいつ何があるかわからないから飲まない。と言うだけだ。

 しかし今日は別だ。

 

 今日の午後から明日1日は非番だ。そしてそれは彼女も一緒だ。

 久々の休みであるためゆっくりと羽根を伸ばしたくてここに来たかったのだろうとナフトは結論付けている。

 

「……BETAって、なんなんですかね?」

 

「訓練校で勉強しなかったか?それとも忘れたのか?」

 

 少し茶化すナフトにシルヴィは頬を膨らませると「バカにしないでください」と彼の肩を軽く殴った。

 

「悪かったな。お詫びと言ってはなんだが、少し面白い話をしてやろうか?」

 

「面白い話?」

 

「ああ、私のBETAに対する考察。いや、妄想と言い換えてもいいな」

 

 何を言ってるんだ?と残っている頭の冷静な部分が思ったが酒の勢いもあって口に出たことだったがシルヴィは体を起こした。

 どうやら興味があるらしい。それを確認するとゆっくりと話を切り出した。

 

「BETAって少し不思議で同じ戦術は1週間で見破られるようになる。そこで思ったんだ。なぜ1週間なんだろうなって」

 

「んー、戦闘で残った個体が伝えた?」

 

「どうやって?発声器官もないのに、どうやって細かい戦術を伝える?それにだ。もしそうだとして、1週間と言う時間でどうやって全てのBETAに伝えるんだ?」

 

 その問いに対してシルヴィは答えることができず場を濁すようにカクテルを飲んだ。

 少し攻め過ぎたな。と自分を悔いて言葉を続ける。

 

「私が考えたのが『ハイヴに情報伝達する何かがある』ってことだ」

 

「ハイヴに情報を伝える何か?」

 

 もしそんなものがあるのだとすればそれならたった1体残っただけで全てのBETAに人類の戦術を教えられる。

 

 しかし、そうなってくると今度は1週間という期間は対策を考えるにしてもあまりにしては長過ぎ、伝えるにしては短過ぎる。

 そもそもBETAの数は無限に近い。ならば浮かんだ策を手当たり次第にぶつけていけば良い。だが、そうしてこない。

 

 と言うことは––––

 

「どこかに情報を集めているBETA、もしくはハイヴがある。ハイヴだとしたらそれはおそらくオリジナルハイヴ」

 

 そう考えれば不思議と納得ができる。

 

 戦闘で残ったBETAがハイヴに情報を持ち帰り、そのハイヴからオリジナルハイヴに情報を送り、そこで出た対策をそのハイヴへと送り返す。

 そしてその送られてきた情報を各BETAに伝達する。

 

 これに1週間かかるのだとしたら妥当と言えるのではないだろうか?

 

「あとは……そうだな。なぜBETAの中に飛べる種類がいないのか……ってことだな」

 

「……むしろ出てきたらマズイですよね」

 

「そうだな……だが、それが幸運によってなっていないのだとしたら?」

 

「どいうことですか?」

 

 まずは月面戦争。

 そこでは人類は慣れない月での戦闘ということもありあっという間に制圧された。

 

 そしてそこから地球、ウィグル自治区カシュガルへとハイヴが落ちてきた。

 それを受けた中国政府はそれを独占するために各国の部隊の受け入れを拒否。自国のみで対処した。

 

 結果は全世界の人が知っている通り月にはいなかった光線属種が出現、航空戦力を完全に封じられるとあっという間に通常部隊は壊滅。それから今に至る。

 

 人類がここまで押されている大きな原因が光線級だ。

 唯一数的優位を覆せる航空戦力を使えないことが人類が敗走を続けるしかない。

 

 と、そこで一つの疑問が生まれる。

 

「なんでBETAは航空戦力に対応するために飛ぶことを考えなかったんだろうな」

 

「……そりゃ、わざわざ追うより来たのを撃ち落とした方が楽だからじゃないですかね?」

 

「本当にそれだけか?空を飛べた方が行軍距離は今の倍だ。なのに奴らは飛ぶことを考えなかった。少し不思議じゃないか?」

 

 飛べれば山や海など関係なくなり、行動範囲も移動時間も今とは段違いになる。だというのに飛ばなかった。

 

 しかし光線級は産まれた。それはまさに航空戦力を問題視したという証拠だ。

 

「つまり、光線級は生まれることができて、飛ぶBETAが生まれることができなかった理由があるってことだ」

 

「……もしかして、BETAは進化してる?」

 

 シルヴィが恐る恐る言ったそれをナフトは頷いて肯定した。

 

 光線級は新たに産まれたのではなく、何か別のBETAが進化して生まれた。

 そう考えれば空を飛ぶBETAが生まれないのは納得できるのではないだろうか?

 

 そこで話を切るとナフトは残っていたカクテルを飲み干し、カウンターの奥にいるマスターに別のカクテルを注文した。

 

「ますますBETAってなんなんですかねぇ?中途半端な知能を持ってたり、急激な進化ができたり……」

 

「資源採掘用の道具」

 

「……え?」

 

 ボソリと言われた言葉に一瞬耳を疑い、反射的に聞き返す。

 差し出されたカクテルを一口飲むとナフトは少し笑いながら言う。

 

「いや、ただの直感だ。ほら、BETAが制圧した土地って文字通り何もなくなる。それはBETAたちが採掘したからじゃないか?と思っててな」

 

「……じゃぁ、BETAってボーリングマシンとかクレーン車とか、そんな感じのものって事ですか?」

 

「例えば……要撃級だな。あいつは、たぶん穴を掘ったりするやつ、戦車級は、たぶんその資源を持って帰るやつ。みたいな感じじゃないか?」

 

 ナフトは話はここまでだ、と言うように肩をすくめると再びカクテル飲む。

 シルヴィも同じように飲むとマスターにそのお代わりを頼み、質問を投げる。

 

「その話、上層部には?」

 

 ナフトは笑みを浮かべながら無理無理と手のひらで埃でも払うかのようにすると答えた。

 

「私が言ったものはただの考察。妄想と蹴られて当然のようなものだ。なにせ、証拠が何一つとしてない」

 

「むー、いいと思うんだけどなぁ」

 

「まぁ、こんな話を最後まで聞いてくれてありがとう。少尉」

 

「ああ、良いんですよ。聞いてて面白かったですし……」

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

 ちょうどそのタイミングで新たなカクテルが差し出された。

 これで5杯目だがまだ夜は長い。

 明日は久々の1日非番でゆっくりできる。もう少し飲んでいこうかと思いながらナフトはそれに口をつけた。




少し中途半端ですが明日も更新するのでお許しを……。
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