ソードマンと呼ばれた者について   作:諸葛ナイト

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明星作戦(上)

【1999年 8月5日 太平洋海上】

 

 戦術機用の輸送艦の中にはアーリードッグ中隊所属の12機のF-15Eストライクイーグルが格納されていた。

 中隊長であるエヴァリスは全機に通信を送る。

 

『すでにA-6イントルーダー隊が橋頭堡を築いている。我々はそこに上陸し、橋頭堡を維持すると同時に前線を押し上げる。

 光線属種については重金属雲がすでに張られているため多少は防げるだろうが、念のため海面ギリギリのサーフェイシングで行く。

 近くには国連軍部隊があるため、上陸後は彼らとも連携していく。以上だ。何か質問は?』

 

 聞くが部隊員から声は返ってこない。

 しかしそれぞれの顔を見てエヴァリスは満足気に頷き、待機を命じた。

 

 オペレーション・ルシファー。別名、明星作戦。

 目的は日本の本州。より正確には横浜に建設されたハイヴ。

 

 それはすでに開始されており第1段階である艦砲射撃を終え、第2段階であるA-6イントルーダー部隊の上陸、橋頭堡確保も今終えようとし第3段階、戦術機部隊の上陸へと移ろうとしていた。

 

 参加する軍は日本帝国ならびに斯衛軍、大東亜連合軍、国連軍、そして米軍だ。

 各軍から大量の戦力が集められ艦砲射撃をしている光景はまさに砲弾の雨と言うにふさわしい光景だった。

 

(……規模としてはパレオロゴス作戦並みだな)

 

 そこ自体はいい。それほどまでに日本も本気だと言うことだからだ。

 しかし、妙な違和感を感じている。

 

(なぜ、アメリカが首を突っ込む……)

 

 1年前に確かにアメリカは日本を見捨てた。それ以降は特に干渉することもなく、BETAの間引きの際に部隊をいくつか送るだけでいた。

 

 だが今はどうだろうか。

 戦術機3個大隊、艦艇も輸送艦を含めれば10隻という数としては少なくない戦力を送り込んでいる。

 

(それに……)

 

 レーダーの東の光点を見つめる。

 そこには味方を示す青の光点が光っていた。

 なんでも「もしもの時の秘密兵器」という噂が整備兵たちの間で流れていたが嫌な何かを感じる。

 

『ナフト中尉、ナフト中尉』

 

 思考の海に半ば沈みかけていた意識を引っ張り上げたのはシルヴィの声だった。

 

「ん?どうした?」

 

『中尉、賭けをしましょう。今回の出撃でより多くをBETAを倒せた方がなんでも言うことを聞くってことで!』

 

「……別に構わんが。少尉は私に勝てたことがないだろ?負債はたまる一方だぞ?」

 

 この手の賭けはもう何度もしている。

 ふっかけてくるのは決まってシルヴィの方で負けるのも決まってシルヴィだった。

 しかし、ナフトは勝っても何も要求しないためその命令権は溜まっている。

 

『……今回こそ勝ちます!バトルダンサーなんて怖くない、です』

 

 言うがその声は少し震えているように聞こえた。

 懲りない後輩にナフトは肩をすくめたが別の衛士が通信を入れてきた。

 

『お!言うな〜。よっし!なら俺のキル数も少尉のキルってことで数えていいぞ』

 

「はぁ!!?」

 

 ナフトの驚愕の声をよそに「俺も!俺も!」と言った声が出る。エヴリスを除いた10人対ナフト1人と言ったところだろう。

 流石に勝ち目はない。そんな数的不利をひっくり返すのは無理だ。

 

 諦めたようにナフトはため息をつく。流石に今回勝つのは諦めた方が良さそうだ。

 

 彼女にお願い事は一度もしていないためそれを使って帳消しに……なんてことも考えたが今回は素直に従おうかなどと考えいたその時、CPから通信が入る。

 

『出撃まであと60秒です』

 

 その声は少し笑っている。

 しかしそこで話は止まった。

 

 今回はまごうことなきハイヴ制圧戦だ。まだ人類が一度も成功したことがないことだ。

 死ぬ可能性の方が圧倒的に高いのは知っている。

 

 またここに戻ってくる。それは全員が思っていることだった。

 

 30秒を切り、輸送艦の上へとF-15Eが持ち上げられる。

 空には光線級のレーザーと砲撃が爆発している光景があり、日本へと目を移せばうっすらとだがA-6イントルーダーが並び射撃を行っていた。

 

 10秒を切ると全ての機体の跳躍ユニットに火がつく。

 完全に付いたタイミングでカウントダウンは0へと変わった。

 

『出撃!』

 

 エヴァリスの声に応えるように全ての機体が輸送艦から出撃、海面すれすれを突き進みながら戦場へと向かう。

 

◇◇◇

 

【同年 同月同日 神奈川県】

 

 アーリードッグ中隊は全機無事に上陸に成功。大隊を組んでいる他の中隊の機体たちも全て無事に上陸できているようだった。

 

『よし!これより前進、一気に押し上げるぞ!』

 

「「「了解」」」

 

 中隊の先頭を行くのはドッグ3とドッグ12。ナフトとシルヴィだ。

 どちらの機体も両手に突撃砲、2つの兵装担架には長刀が装備されている。

 

「シルヴィ少尉!背中は任せる」

 

『了解!!ナフト中尉の背中には1匹も触れさせません!』

 

 2人はあの日から名前で呼び合うようになった。

 そのせいで中隊の面々からすぐに関係がバレてしまったが、そんなことはどうでもいい。

 

 シルヴィは実戦と訓練を繰り返すたびに実力を身につけていき、それと同じようにナフトも実力を伸ばしていき、今ではエレメントを組めるのはシルヴィだけとなった。

 

 2機の前に突撃(デストロイヤー)級の小さな群れが現れる。

 何も合図を出さずに2機はすぐさま二手に分かれた。

 

 それぞれの前にあるのは突撃級の無防備な横腹。そこへ36㎜を放ち、無数の穴を穿つとトドメと言わんばかりに滑腔砲を2発続けざまに放ち群れの大半を潰す。

 

 2機は突撃級の群れの後ろで合流、先頭からナフト機、シルヴィ機で縦に並んで進む。

 すぐ次に現れたのは5体の要撃(グラップラー)級、その足元には15体ほどの戦車(タンク)級がいる。

 

 ナフト機はすぐさまチェーンガンと滑腔砲で要撃級2体を撃ち抜くと軽くジャンプ、その瞬間、シルヴィ機が36㎜を戦車級の群れへと叩き込む。

 その戦車級がひき肉のようになったタイミングでナフト機が着地、それと同時に1体の要撃級に120㎜を放つ。

 シルヴィ機はナフト機の背後にいた残った2体を36㎜で落とした。

 

 ターゲットにしていた集団が沈んだのを確認すると2機はすぐに別の群れへと向かう。

 

 次々とBETAを物言わぬ肉片へと変えて行く2機を見て隊員たちは皆同じように息を飲む。

 

 圧倒的過ぎるほどの連携力で危なげなく倒して行く姿は見惚れもする。

 

「見ている暇があれば2人が作った道を広げろ!補給コンテナの投下もある。出し惜しみなしだ!撃ち尽くせ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

 中隊各機は小隊規模に散開、射撃によりBETAを倒しながら指定されているポイントまで進む。

 

 2人はあれでも速度を下げているのだが、それでも他の隊員たちよりも早い。

 そのせいで大半のBETAは先行するナフト機、シルヴィ機を狙う。

 

 しかしそのおかげで隊員たちは2機に向かうBETA群を叩くだけで安全に先へ進めている。

 

 ナフトの死角から向かうBETAをシルヴィが撃ち抜き、シルヴィの死角から向かうBETAはナフトが撃ち抜き、そんな2人へと集中し過ぎないように射撃で援護を行いながら前進を続けた。

 

 そんな調子だったためかアーリードッグ中隊は指定されたポイントに到着した。

 ハイヴへの突入は日本帝国、斯衛軍の役割であるため、彼らはここで間引きと同じ要領でBETAを引き付ければいい。

 

『ドッグ3、ドッグ12。ご苦労だった。一度下がって補給を受けろ』

 

「『了解!』」

 

 エヴァリスの指示に従い2人は隊員たちの援護を受けながら後方に下がり、補給コンテナから燃料と弾薬を補給を開始した。

 

 ナフトが息をつくとシルヴィから通信が送られてきた。ウインドウに映る彼女の顔は真剣だ。

 

「どうした?」

 

『……あなたの背中は絶対に守ります。ナフトの隣が私がいるべき場所ですから』

 

「ああ、頼むよ。私もシルヴィ以外とはエレメントが組めそうにもない。私も君を守ろう。死力を尽くして、な……」

 

『はい!』

 

 2人の短い会話が終わるのと同時に弾薬と燃料の補給が終わり、それを告げるウインドウが現れる。

 それを確認してナフトはシルヴィに告げた。

 

「行くぞ。少尉」

 

『了解しました。中尉』

 

 2機のF-15Eは中隊の隊列の中へと入り向かいくるBETAを撃ち抜いていく。

 

 

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