ソードマンと呼ばれた者について   作:諸葛ナイト

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帝都侵攻

【1998年 7月12日 兵庫県】

 

 そこはすでに戦場と化していた。

 BETAの肉塊が並び、戦術機だった物が残骸として転がっている。

 まごう事なき戦場。そこにアーリードッグ中隊のF-15Eストライクイーグルが並び防衛戦を行なっていた。

 

「第6波来ます!」

 

 1人が報告を上げると同時にエヴァリスは声を荒げる。

 

「よし、補給は済ませたな?各機、ハンマーヘッド1!BETAを可能な限り押しとどめろ!トドメは後方の砲撃部隊が行う」

 

「「「了解」」」

 

 その中にも当然ながらナフトの姿がある。

 彼のF-15Eの両手には突撃砲が、背中の兵装担架には二本の長刀が装備されている。

 

 今は指示に従い突撃砲による射撃を行なっていた。

 足が止まったBETAへと戦車や自走砲から放たれた砲弾が向かい、肉片へと変える。

 しかしそれだけでBETAは抑えきれない。

 

 後方に光線級がいるためあまり派手に動けないのだ。当然ながら航空支援も望めないため別働隊が光線(レーザー)級を殲滅するまでここで耐えるしかない。

 

「ちっ!右翼から群れから外れた奴らが来る!」

 

「このままでは身動きが取れなくなるか……仕方ない。ドッグ4、6、8、10は右翼へ!頭を抑えろ!」

 

「「「了解!!」」」

 

 答えると同時に指示された者たちが駆るF-15E移動を始めた。それを確認してから新たに指示を出す。

 

「よし、ドッグ3、5、11は私に続け!正面を抑えるぞ!」

 

「「「了解!!」」」

 

 呼ばれた3機がエヴァリスの機体に続き少し前へ展開、射撃を始めた。

 

 ナフトのF-15Eへと要撃(グラップラー)級が重い一撃を振るう。それをかわし銃口を接触させるとそのままチェーンガンで36㎜弾を放ちトドメと言わんばかりに滑腔砲の120㎜も与えて肉片へと変える。

 

 その足元から迫ろうと戦車(タンク)級が迫る。それを吹き飛ばすように軽く跳躍。一瞬、レーザーの照射警報が出たがすぐに地面に着地してかわす。

 それと同時に突撃砲を放ち戦車級の群れを吹き飛ばす。

 

 次に現れたのは要撃級三体、その足元には戦車級が群がっている。

 ナフトはすぐさま判断し、要撃級の足を滑空砲で撃ち抜いた。自重を支えられなくなり倒れる要撃級、それに戦車級が数体巻き込まれた。

 

 それを一瞥して次の要撃級に向けて射撃。二丁の突撃砲から放たれた銃弾は要撃級を穴だらけにした。

 もう一体を滑空砲で手短に仕留めると足元に近づいてきていた戦車級たちをチェーンガンで潰す。

 

 次から次へと迫り寄るBETAへと弾種を変え、大型種は足を狙うなど可能な限り無駄なく攻撃を加えて行くが一向に数が減っている様子はない。

 

 リロード中にレーダーへと視線を移す。

 少し前に右翼から来ていたBETAは殲滅され、戻ってきた機体と連携してはいるがやはり向こうの方が物量が上だ。

 すでにだんだんと囲まれ始めている。

 

「上からの指示だ。後退をこれより始める。戦線を京都まで下げ、そこで連携して叩くそうだ」

 

「「「了解」」」

 

 ここはギリギリ光線級のレーザーの照射範囲内に入ってはいない。だが、高く飛び過ぎれば即座に撃ち落とされる事だろう。

 そのため、全機が噴射地表面滑走(サーフェイシング)を行い地表すれすれを飛べば安全に下がれる。

 

 そう、思っていた時だった––––

 

 ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

 という甲高い警報音共にウィンドウが網膜に投影された。

 

「ッッ!!」

 

 それは中隊全ての管制ユニットに鳴り響き、全ての衛士の網膜に現れた。

 それらは戦場に出た者が一番見たくない、そして聞きたくないものを表す。

 

 光線(レーザー)属種からの照射警報だ。

 

「全機!散開!!」

 

 言われるのが先だったのか、動くのが先だったのか。

 とにかくエヴァリスが言う頃にはすでに速度を上げ、散開していた。

 

「い、いやだ……!いやだ!俺はこんなところで––––」

 

 その通信を響かせながら一機のF-15Eが高度を上げた。相当に混乱しているらしくそのことにその衛士は気付いていない。

 

「ッッ!バカ!高度を––––」

 

 それをナフトが注意しようとした時、光がその機体の胸を貫いた。

 光に穿たれたその場所が焼き焦げ、煙をわずかに上げながらそれは墜落、そのまま爆発した。

 

「クソ!」

 

 ナフトはそれを一瞥するとさらに速度を上げ地表ギリギリを滑るように飛ぶ。

 地面に近づきすぎているせいでアラートが鳴るが気にしている余裕はない。

 

 今飛んでいる場所も照射範囲に入っているということは光線級の殆どが丘陵を越えているということだ。

 少しでも高度を上げればすぐに撃ち落とされる。

 

 再び、F-15Eが撃ち落とされ地面に激突、爆発した。別の機体は跳躍ユニットに直撃、そのまま空中で爆発し、破片を地面へと落とす。

 

 全員そのことを気に止める余裕はない。そんな彼らの前に小さな丘が現れた。

 

「あと少しだ!全機、一気に飛べえええ!!!」

 

 エヴァリスの声で全機わずかに高度を上げ、丘の向こうへと飛び込んだ。

 だが、一機は高度を下げるタイミングが遅くレーザーの直撃を受けて落ちた。その同時に爆発。

 

 アーリードッグ中隊は四機の犠牲を出しながらも撤退に成功した。

 

◇◇◇

 

【同年 同月同日 京都府】

 

 アーリードッグ中隊含む在日米軍は京都にまで撤退。そこで国連軍と合流、京都に新たな防衛線を築いていた。

 

 そこは先程まで彼らが戦っていた県境ではなく、完全に京都の中へと入ってしまっている。

 そしてそこは彼らに残された最後の防衛線でもある。

 

 アーリードッグ中隊8機のF-15Eは前衛5、後衛3機が並び射撃による攻撃を行なっていた。

 

 少し離れた場所では国連機を示すブルーカラーのF-4ファントムや武家を示すらしい黒や白の瑞鶴が並んで同じように射撃を行なってはいるがあまり意味はなしていない。

 

(……まずいな。このままだと、ここもいずれ食い破られる)

 

 ここまで撤退し、少し休めるかと思えばすでに目前までBETAが迫っていると聞き今に至る。

 

 おかげでまともに休めずに戦闘を行なっている。集中力もそろそろ限界だ。

 いや、すでに限界だ。騙し騙ししているが、それもどこまで持つかわからない。

 

 しかし、かといってこれ以上は下がれない。

 下がれないならば––––

 

「ドッグ11。これより前に出て注意を引きます」

 

 言うや否やすぐさまエヴァリスから声が飛ぶ。

 

「貴官は死ぬ気か!?ここで前に出ても無駄死にだ!」

 

 それはナフトも自覚している。

 もうここも限界だ。今度は市街地にまで戦線を下げることになるだろう。

 そんな場所で下手に前に出ても意味はない。しかし、とナフトは声を荒げる。

 

「少しでも前線を上げなければいずれ食い破られます!光線級だって今は殲滅できましたが次がいつ来るかもわからない状況です!今ここで叩かな––––」

 

 その言葉を遮るようにエヴァリスへと通信が入った。

 通信は短いものだった。その通信を切ったがナフトの言葉の続きを聞く気は無いらしく、指示を出す。

 

「各機へ通達。これより市街地へと撤退する。向こう(日本)も覚悟を決めたらしい。BETA群を市街地へ誘引した後、艦砲射撃を行うようだ」

 

 ナフトはその指示をレバーを握りしめながら聞いていた。

 下がれと言うのであれば光線級がいない今がチャンスだ。これを逃せば再び撤退に犠牲が出てしまう。

 

「ついでに良い知らせ、と言えるかどうかは微妙なところだが……F-14(トムキャット)が増援としてきてくれるそうだ」

 

 出すだけマシだがやはり動きがワンテンポ遅い。もっと早ければ少なくともここまで大きく戦線を下げることはなかった。

 

 ナフトたちアーリードッグ中隊はBETA群を指定されたポイントまでへと誘導を始めた。

 ほかの部隊も似た命令をされたらしくゆっくりと後退しながら射撃を行っている。

 

 そうして彼らが市街地へと十分な数を引きつけた後、艦砲射撃が行われ日本の首都である京都の街もろともBETAを潰した。

 

 そのおかげかBETAの進行は一気に弱まりそのまま各軍で連携、京都から先に突破されることはなかった。

 しかし、当然ながら京都の街並みは見る影もなく、いたるところに瓦礫が並び、BETAの肉片が並び、破壊された戦術機と怪我人であふれかえった光景が広がることになった。

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