明日も2話更新を目指しますが……もしかしたら1話だけになるかもしれません。
【1998年 8月10日 京都】
BETA集団へと長刀を持った米国軍のF-15Eが突き進む。
飛びかかってくる小型種はそのほとんどを回避、もしくは踏み潰すだけで進路上にいないものは無視する。
今優先すべきは大型種、要撃級集団だ。
1体の要撃級に急接近、双腕が振るわれる前に左の腕を切り飛ばした。そのまま踏み付けると長刀を突き刺し、36㎜を放つ。
息絶えたことを確認することなく、その要撃級を踏み台にして跳躍、着地付近にいる戦車級を射撃で潰し、着地の直前に長刀を振るい残った個体を切る。
新たな戦車級などの小型種にとりつかれる前にサーフェイシングで目の前にいた要撃級に接近、しかしわずかに要撃級の腕のほうが早い。
長刀の攻撃範囲に入るよりも早く腕を振るおうと大きく掲げる。
それを見るやいなや跳躍ユニットの噴射口を前面に向け一気に吹かし、急ブレーキをかける。
しかし、勢いを完全に殺すことはできずにわずかに滑る。
その勢いを生かすように主脚で着地すると思いっきり地面を踏み込む、跳んだ。
そのまま空中で回転しながら要撃級の一撃をスレスレでかわし、その背後を取る。
120㎜滑腔砲が放ち要撃級に大穴を開けた。
鳴り響く警報音が新たなBETAが近づいてくることを告げる。
自機の位置を確認、周辺のBETA密度も確認、進行方向も確認、そして種別を確認するとすぐさま行動を始めた。
小型種は可能な限り無視することは変わらない。いちいち相手にしていては燃料も弾も足りなくなる。
ナフトは標的として定めた要撃級へ向けて36㎜弾を放つ。無数の穴を開けようやくその個体は息絶えた。
さらにその左にいる要撃級には跳躍ユニットを吹かして急接近、その個体の右側から一気に後方に回り込むと長刀で切る。
ほんの数秒で要撃級2体を仕留めるとすぐさま移動。
近接戦闘でじっとしていればあっという間に食われる。
そもそも第2世代戦術機であるF-15Eは止まっているよりも動き続けているほうがずっと強い。
向かってくる戦車級の群れをかわし、新たな要撃級へと肉薄。攻撃を受ける前に腕を断ち切り、36㎜弾を放つ。
左にいたもう1体は足を撃ち抜き、右にいた個体は長刀で突き刺しトドメで120㎜滑腔砲。
3体を倒す頃には足元に戦車級の群れがあった。
飛びかかろうとする個体は突撃砲で掃討、飛びかかってきた個体は長刀で薙ぎ払う。
足元にいたほとんどを倒すと移動を再開し、再び大型種狩りへと戻る。
しかしその途中で突撃砲の弾が切れた。
そして目の前にいるのはもはや見飽きてきた要撃級だ。
「はぁ……はぁ……、のッ!!」
ナフトは弾切れになった突撃砲をその要撃級に向けて投げる。
対する要撃級はその突撃砲を右腕で弾き飛ばした。それと同時に大きな隙が生まれた。
すぐさま膝装甲ブロックから短刀を逆手に持つと急速接近、要撃級の腕が大きく振るわれた右に滑り込むと短刀を一息に突き刺す。
しかし、わずかに浅い。
さらに要撃級が腕を振るおうと大きく掲げ始めている。
このままではあと数秒後にはぺしゃんこになるだろう。
(なら!!)
その現状を悟るやいなやすぐさま跳躍ユニットを前方に向け吹かした。
短刀で引き裂きながらF-15Eは後退、要撃級の攻撃範囲から逃れるとすぐにわずかに跳躍ユニットを吹かし空中へ、そこで1回転するとその背後に着地、長刀で2回クロス字を作るように切った。
ナフトは時間を確認。そして驚いた。
まだ他の機体が撤退してから2分ほどしか経っていない。体感的にはすでに2時間以上はここで戦い続けていた。
BETAの光点は少し減ってはいるがまだまだだ。
わずかに動きが止まっているF-15Eへと戦車級が飛びかかるがそれを短刀で切り飛ばし、別の方向から来ていた個体は長刀で串刺しにする。
再びレーダーを確認。まだ青い光点は残っている。それぞれに「ドッグ1」、「ドッグ6」の文字が振られている。
後方に残った2人と自分はまだ生きてはいる。
(ああ、だが……)
そろそろ限界だ。
燃料は3割を切った。戦闘機動はどう頑張ってもあと数分が限界だろう。
疲労もあってか目の前がわずかに霞む。
動きもだんだん悪くなっている。
レーダーには未だ無数にある赤い光点。
(だが、どうせここで死ぬのならば……)
ナフトのF-15Eは短刀を放り捨てると新たな短刀を装備、今度は順手に持ち構えた。
「より多くを、道連れにする」
その直後だった。
レーダーにアンノウンを示す白い光点が4つ現れた。
それらの光点が通り過ぎた場所の赤い光点は次々と消えていく。
それは次第にこちらに近づき、目視の範囲に入った。
「な……んだ。あれは」
目視で確認して驚きと同時に疑問が浮かんだ。
近づいて来たのはやはり4機の戦術機だ。しかし、見たことがない。全く知らない戦術機だった。
機体の形状は全て同じたが色がバラバラだった。赤と黄色と白が2機。
たしかにBETAは色を認識できていないらしいが、とはいえナフトからしてみれば開発者や設計者はトチ狂ってしまったのかと疑いたくなった。
ナフトは知り得ないことだがそれらは後に武御雷と呼ばれるようになる戦術機、その先行量産機たちだった。
そのうちの赤い機体から通信が送られて来た。
『米国部隊に告げる。帝都防衛に感謝する。我々は帝国斯衛軍に所属する者だ。事情があり己が所属を示せない無礼を許してくれ』
その声は女性だった。
それに少し驚きながらも送られてきた通信に対し、最近どうにか覚え出した日本語でナフトは答える。
「助かった。助け、ありがとう。感謝。私たち、する」
『英語で構わん。今は時間が欲しい。違うか?』
その国に住む文化や習慣、言葉を使ったほうがその国に馴染める。その思いで勉強を続けていたが、やはり他国の言語を覚えるのは難しい。
そう思うと同時に少し申し訳なく思いながらナフトは一息ついた。
「すまない。日本語はまだ勉強中でね。次に貴官らに会う時にはもう少し話せるようにしておくよ。少し待ってくれ。中隊長に通信を繋ぐ」
「頼む」の声を受けながらエヴァリスへと通信を送る。
『どうかしたかドッグ11。アンノウンが来たようだが』
応答に応じたエヴァリスは肩で息をしているが様子を見るにまだ無事なようだ。
振動もないあたりBETAの進行も少し落ち着いているらしい。
「帝国斯衛軍です。もしかしたら連携してここから抜けられるかもしれません」
『斯衛が?我々と協力する、と?』
帝国近衛軍は将軍家の護衛が主な任務である。そのため、わざわざ米国軍がいるここまで出てくる必要はないはず、と言うことは何かしらの理由がある。
そこにつけ込めれば––––。
「はい。可能性はあります。今通信を繋ぎます」
言うとすぐにその斯衛の機体とのデータリンクを一時的に許可して通信を繋ぐ。
『こちらアーリードッグ中隊隊長。エヴァリス・バードウィンだ』
『申し訳ない。私たちは諸事情に多くを話せない。それは許してほしい』
見たことがない戦術機、それを駆ってまで現れた斯衛。
明らかに何か目的がある。それはわかるがその言い方だと察することすら許されることはないらしい。
『了解した。深くは詮索しないようにしよう。ただし、代わりと言ってなんだが我々の後退の援護を頼みたい』
『もちろんだ。我々はそのために来た。3機が先行する。しんがりは私が勤めよう』
『了解した。感謝する』
それからすぐさま行動を始めた。
先頭を行くのは白2機と黄色の戦術機。そのすぐ後ろをエヴァリスとドッグ6の機体が飛びその少し後ろにナフト、一番後ろに赤い戦術機が並ぶ。
先頭を行く白と黄色の戦術機は突撃砲を放ち、長刀を振るい可能な限り安全な道を作りながら先を行く。
驚いたのはその速さだ。
F-15Eよりもさらに速い速度でBETAに接近したかと思った時にはすでにそのBETAは死んでいる。
『すごいな……あいつら』
『ああ、さすがは
2人の通信を聴きながらナフトも目の前の見知らぬ戦術機を見る。
圧倒的な機動力。それを充分に生かした格闘戦。どれを取ってもあの機体に隙はない。
さらにそれを圧倒なものにしているのは乗っている衛士も理由だろう。
迷いなく突っ込み切る。飛んでくる攻撃を見切りかわすとすぐさま反撃。
無駄を極限までなくした近接戦。これこそまさに惚れ惚れすると言うことだろう。
そんな彼女らの協力により、アーリードッグ中隊3機は無事にBETAの包囲網から抜けることに成功、そのままCPの指示に従い戦線を離脱した。
結局彼女たちの真意を知ることなく包囲網を抜け、安全圏に入ってすぐに謎の戦術機4機とは別れた。
ナフトが基地に戻った頃、帝都の放棄が決定した。
整備班長の「よくもここまで使ってくれたな」と怒り混じりの安心したような声を聞いて申し訳なく思いながら感謝したことは印象的だった。
かくして、日本帝国軍、在日米国軍、国連軍は一ヶ月の奮闘虚しく帝都防衛に失敗。関東圏まで戦線を大きく下げることになった。
そこから大きく巻き返すことが出来ず、佐渡島にBETAはハイヴを建造。
それが引き金となり、米国軍は日本の度重なる命令不服従を訴え、日米安保条約を一方的に放棄、在日米軍を全て引き上げた。
事実上、日本を見捨てた戦力引き上げであることなどナフトからは容易にわかった。