ソードマンと呼ばれた者について   作:諸葛ナイト

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バトルダンサー
明星見える前(上)


【1999年 2月4日 カリフォルニア州】

 

 アメリカのカリフォルニア州にある米軍基地の資料室でナフト・アーリストは1人パソコンの前にいた。

 

 画面には半年前のニュースの記事が表示されており、それには「帝国軍敗北、横浜にハイヴ建設」の文字がある。

 

 これは米軍にも責任があることのはずだ。米軍が全軍を一斉に引き上げなければ少なくとも後3ヶ月はこうなることを防げた。

 しかし、上層部は「これ以上自国の兵を失うわけにはいかない」などと言い、日本を見捨てる行動に出た。

 

 自国主義があるのはどこも同じではあるがこの国は特にその色が強い。

 その証拠に米軍は日本から戦力の引き上げを行ってから主だった行動を起こしていない。

 

 それがおかしいとは思わない。自国が大事なのは当然だ。

 だが、それでもせめて手を貸すぐらいはしてもいいはずでは?とナフトは思う。

 

 このモヤモヤを誰かに言いたいが白い目で見られるのがオチだ。

 

(にしても、なんで上は何もしない……このまま日本が落ちれば次はここだ……)

 

 流石にそこまで上もバカではないはずだ。

 と言うことは何か狙いがあって傍観していると見るべきか。

 

(それとも……何かしらの策があるとか)

 

 そう、例えるならばハイヴを一瞬で制圧できる物がある、もしくは開発しているとか……。

 それを試すための場所と状況を待っているとか……。

 

 理想は核兵器のような広範囲への強力な攻撃が可能なもの、それでいて光線属種のレーザーですらものともしないものか意味がないもの。

 

 そこまで考えてナフトはそれを鼻で笑った。

 あまりにも夢物語だ。そんな兵器など人間の技術で作れるわけがない。

 

「あ!こんなところにいた!」

 

「ん?ああ、エルヴィア少尉か」

 

 資料室に入ってきたのはシルヴィ・エルヴィア。

 アーリードッグ中隊に3ヶ月前に配属された女性衛士だ。

 

 短く切りそろえられた銀髪と青い目。目鼻のはっきりとした顔立ち。髪を伸ばし黙っていればさぞかしモテることだろう。

 

「もー!アーリスト“中尉”!私に近接戦闘教える約束ほっぽり出して何してるんで、あわわっ、あう!」

 

 怒りを露わにしながら歩いてきたが急に躓きバタンッ!と言う音ともに倒れた。

 

 この通り彼女は少し抜けている。かなり、と言わないのは一応は軍に入っており、衛士であるからだ。

 しかしそれも最近は「運が良かっただけなのでは?」とナフトは思い始めている。

 

 ちなみにナフトはあの帝都防衛での功績を認められ中尉に昇進した。

 それとほぼ同時期に「ジャップマニア」と呼ばれることはなくなり、代わりに「バトルダンサー」と呼ばれるようになった。

 

 曰く、踊るように戦場を動き回りBETAを殺す。

 

 安直かつ恥ずかしい呼ばれ方ではあったが「ジャップマニア」と違い侮蔑は込められていない。

 尊敬の意味で呼ばれているのならなおさら本人がとやかく言えない。そもそも言ったところで誰も聞かないだろう。

 

「大丈夫か?エルヴィア少尉」

 

 言いながら転んだ部下へと手を伸ばした。

 

「へ。あ、その……だ、大丈夫……です」

 

 シルヴィはその手を取って立ち上がった。軽く服をはたき埃を落として咳払いをすると再びナフトを問い詰める。

 

「そ、それで!なんで教えにきてくれなかったんですか!シミュレータの前で強化装備で1時間待ったんですよ!全然来ないし、周りからは笑われるしでもう散々でした……」

 

「……すまない。少し調べ物だ。すぐに終わると思っていたんだが、思いのほか探してしまってね」

 

「あ、そうだったんですか?もう終わりました?」

 

「ああ、終わったよ」

 

 ナフトは使っていたパソコンをシャットダウンさせようと操作をする。

 

「あ、よかった。なら、今からPX行きませんか?お腹空きました」

 

「……私を待ってただけだろう?なのに腹が空くのか?」

 

「空きます!」

 

 シルヴィはナフトの質問に「当然です!」と強く答えた。

 

「太るぞ」

 

「……中尉って、本当にデリカシーないですよね」

 

 シルヴィはため息をつきながらお腹のあたりを軽くさすった。

 そしてちらりとナフトを見て、自分の体を見て「ちょっと太ったかな」と小声で言うとさらにため息をつく。

 

 そんな彼女の行動の意味が分からずナフトは首をかしげるしかなかった。

 

◇◇◇

 

 昼時もあってかPXにはそこそこの人がいた。

 人が混む前にナフトはAセット(パン二個とスープ、牛肉を炒めたもの)、シルヴィはパスタを頼み、それぞれ受け取り、適当な席に座る。

 

 三分の一ほど食べた辺りでシルヴィが聞く。

 

「あ、そう言えば、中尉って半年ぐらい前は日本に居たんですよね?」

 

「ああ、居たが。どうかしたか?」

 

「日本のご飯が美味しいって本当ですか!私食べてみたいんですよ〜寿司とか!」

 

 目を輝かせながら言う彼女にナフトは肩をすくめる。

 

「残念だが。私は食べたことがない。向こうではアメリカ人はあまり好意的に見られないからな……まぁ、合成食は普通だったな」

 

 期待に添えずにすまない。と言外に伝えた。

 それを聞くやシルヴィは少ししょんぼりしたように「そうですか……」と言い食事に戻った。

 

 シルヴィはスプーンでパスタを遊びながらため息をつく。

 

「なんで……仲良くなれないんですかね……」

 

「……さぁな」

 

 「人類に共通の敵ができれば自ずと人類は手を取り合う」そんなことを誰かが言っていたような気がする。

 

 しかし現実はどうだろうか。

 

 結局は責任の押し付け合い、損得勘定、そんなものばかりだ。何一つとして変わっていない。

 これから先も変わることはないだろう。

 

(少しぐらい変わってもいいだろうに……)

 

 このまま考え込み始めてはまたとなりの少女に何か言われかねない。思考の海に入りそうになったのを無理矢理引き上げる。

 

「まぁ、そう言うことは哲学者なりその手のプロに考えさせればいいさ」

 

「んー、それもそうですねぇ」

 

「食べたらやるぞ。みっちりな」

 

「ん!そうですよ!みっちりきちんと1から10まで教えてくださいね!じゃないと怒ります」

 

 もうすでに怒ってるじゃないか。と言うツッコミはパンを飲み込むことで一緒に流した。

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