(それと最後の人称は誤字じゃ)ないです
表情
さて、一式加賀さんに任せたわけだけど事務処理はしないとな
「面倒だなぁ」
先程提督がいつもより少し険しい顔をしていたけれど何かあったのかしら?後で聞いて見ましょう
「加賀さん」
「なに?暁ちゃん」
「これからお掃除するのよね?手伝ってあげても良いわ……あげようか?」
「えぇ、お願いするわ」
時々言われるのだけれど私って怖いのかしら?
よく『無表情』だとか『仮面』とか言われるのだけれど……
まぁ今はそんなことより片付けよね、集中よ集中
まず掃除用具と軽巡の子達を準備しなきゃね
「終わらねぇよちくしょー」
(はいはい口より手ぇ動かせー)
(ウォッ!ビックリした涙音かよ、脅かすな)
(お前俺のこと忘れてたろ、悲しいわぁ)
「提督」
「ファッ!?」
「うわっ!何ですか!」
「んだ加賀さんか」
「酷い云われようですね、取り敢えず掃除終わって案内も済ませときましたよ」
「もうそんなに経った?」
時計を見ると、昼過ぎ位だった針はいつの間にか半周廻っている
「提督今日はずっとボーッとしてますが大丈夫ですか?」
「あぁ」
「お昼頃は何か考えてたんですか?」
「……?なんのこと?俺何か考えてたっけ?」
「えぇ結構厳しい顔してましたよ?いつもの薄笑いが消えるくらいには」
「あぁ、そういやこの薄笑いもいつから言われるようになったかわからないんだよな…よく自分のことは自分がよく知ってるって言うくせに俺は俺のことよくわかんねぇんだよな、何かいっそ笑えてくるな!」
「提督は……」
「ん?なに?」
「提督は何者なんですか?よく考えてみたら自分から戦場に向かう意味も死ぬかもしれない場所に留まる理由も無くないですか?」
「確かに自分の事も分からねぇ俺だがその二つの問いには答えられるぜ?どっちも面白そうだからだ」
そういった提督の顔は本当に楽しくて仕方ないような笑みを思い浮かべていた……中身の詰まっていない空っぽな笑みを
この人は本当に何者なのだろう
あのときも話してくれたのは着任の二、三年前からで小さい頃の話も学校の話もしていなかった
何だかこの鎮守府にいる皆の世界を地獄から楽園に変えた人の世界こそが地獄かのように
シュ──ッ!
「ん?何ですかこの音」
「そろそろ薬の効果でも切れんじゃねぇかな?ちょっと部屋戻るわ」
何か急に自分の体からガス漏れの音がしたらビックリするよな
さてと、妹から借りてるやつを士官服に着替えるとするか
「おおこれこれ、良かった何もなくて」
「どうです?終わりました?」
「もう少し待ってくれ!」
着替え終わって思ったんだが携帯品って最悪拳銃一丁に刀があれば良いなって感じなんだなって昨日今日で分かったな
三八も九九もヘカートもFive-seveNも使わなかったしな
(日本軍ライフルは幌筵のとき使ったけど)
「終わったぞ」
「提督」
「汚ねぇ部屋に入るもんじゃねぇぞー」
「気にしないのであしからず」
「このままサボローしようと思ったのに」
「提督の『小学生』の時とか『中学生』の時の話を聞きたいです、暇なので」
「暇潰しかよ!てか仕事は!?」
「大淀さんがほとんど終わらしていて、サインが必要なやつを先程提督が終わらしました」
「俺二週間以内に大淀に最低三日の休暇あげるんだ」
「それなんてフラグですか」
「休暇をあげないフラグですね」
「可哀想に大淀さん」
「提督と呼ばれちゃいるが俺は軍曹とかが丁度良いと思っている」
「急になんです?」
「加賀さんが子供んときの話しろって言ったんだろ?」
「えっ?まぁそうですけど」
「俺は確かに指揮官としての素質はあるんだろうが、人の上に立つような人間じゃないんだよ」
「だからって何故軍曹という中間管理職に……」
「全部上の責任に出来んだろ?まっ下の人間に疑念を向けられているようじゃ無理だろうがな」
「まぁ確かにそれには賛成です……が、それの『何処までが本心』ですか?」
「……は?何処までが本心もなにも全部本心だ」
「何かを隠している気がするんですよ、その『この二年全く何も読めない表情』に」
「……さぁな、幌筵の疲れがまだ残ってんじゃねぇ?加賀さんや」
「そうかもしれませんね」
「まだ一時にもなってないんだから半日自由にでもしたら良いんじゃないか?三十分で掃除を終わらせてるし」
「掃除に関しては軽巡と駆逐の皆に手伝ってもらったから楽だったわ、まぁでも休ませてくれるなら休ませてもらうわね」(今日ももう無理でしょうね、今度にしましょう)
「あぁじゃあな」
「本心……か、俺も分かんねぇよそんなもん」
空は一人でそう呟く
その呟きを黙って聞く波音は空の記憶を知っている
そうしてこう思う
何故お前に小学校の記憶が無い?中学も辛うじて残っている小学の記憶もおかしいところだらけだ
どうして違和感を覚えないのか
それに空の無意識は答える
それが俺のできる唯一の保身だからだ
『違和感なんてない、不自然なところもない』とそう思わないと「僕」はおかしくなってしまうだって僕が封印したんだから
加賀さんは提督の過去が少々気になるようです
というか鎮守府の子達皆そうかも、だって過去の話直近二、三年しかしてないんだもん