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第一問
四分咲きの桜が新入生を迎えるように大きく花開く散道。アタシとそのアタシと瓜二つの顔の美少女改め美少年の弟、秀吉はゆったりと歩いていた。
「いい朝ね」
「…姉上は気楽でいいのう」
肩程の茶髪を揺らして堂々と歩くアタシと対照的に、秀吉は背を丸めて、緑色の瞳に不安を映しながら白線を眺めつつ歩いている。
「クラス替えを気にしてるの?馬鹿ねえ、Fクラスに配属されたくなきゃ勉強すれば良かったのに」
アタシ達の通う文月学園は、2年から成績順でクラスが振り分けられるようになるのだ。頭の良いAクラスはとても良い環境で勉強が出来るし、逆に頭の悪いFクラスは劣悪な環境での勉強を強いられる。
部活に熱を注ぎ、勉強を疎かにしている秀吉はかなり頭が悪く、恐らくだけど良くてもEかD、悪ければF…といったところだろうか。まあ、完璧美少女のアタシなら確実にAクラスだろうけどね!
「確かにそうなのじゃが…ワシは部活の方が大切での。それに、大方あやつらも同じクラスになるじゃろ」
と秀吉は嬉しそうに目を細める。あいつら、というのは秀吉がいつもつるんでる馬鹿三人組だろう。確かに成績は大差ないようだし、順当に行けば同じクラスだ。
「ま、世の中勉強だけが全部じゃないわ。アタシに迷惑をかけない程度なら好きにしなさい。迷惑かけたら…わかってるわよね?」
「わかっておるから指をポキポキと鳴らすでない姉上!」
「おはよう、木下姉弟」
そんな話をしながら歩いていると、浅黒い肌の体格のごつい教師ー西村教諭が声をかけてきた。
「「おはようございます、西村先生」」
趣味がトライアスロンということや、驚異的な身体能力のせいか渾名は「鉄人」。生徒からはとても怖がられていたりする。ちなみにアタシもこの先生は苦手というか怖い。
「ほら、受け取れ」
「「ありがとうございます」」
「木下姉はーーよく頑張ったな」
手渡された封筒を開けると、中に入れられていた紙に書かれていたのは『木下優子 Aクラス』の文字。…ふう、
「木下弟。部活に熱心なのは結構だが、勉強も両立出来るように」
「むう…」
とふくれっ面の弟の手元を覗き込めば、『木下秀吉 Fクラス』の文字が。
「結果が悔しければ、試験召喚戦争を起こすか来年また頑張るかだな」
と西村先生はうんうんと頷いた。
試験召喚戦争ー、文月学園はクラスの振り分け方も特殊だけれど、それ以上に注目されていることがもう一つ。ずばり、『試験召喚獣システム』だ。
文月学園のテストは制限時間1時間で問題は無制限。つまり、テストの点数は無限に伸びる。そして、その点数に応じて強さの決まる召喚獣というものが存在する。
その召喚獣を用いてクラスの設備を賭け、戦うのが試験召喚戦争、というわけだ。
「…そうじゃの、まあ、クラスメイト次第じゃが」
「そろそろ行きましょう、秀吉。アタシ、早くAクラスの設備が見たいわ」
「わかったのじゃ」
「…思うところは色々あるだろうが、各々配属されたクラスで頑張ってくれ」
「「はい(なのじゃ)」」
西村先生に見送られ、玄関へと向かうとーー下駄箱の前に、一人の男子生徒が立っていた。
春風にさらさらと揺られる赤い髪に、同色の鋭い瞳。整った顔立ちで、下駄箱に投げやりに背を預けている。
アタシ達を見つけると、さっきまでの気怠そうな雰囲気は何処へ消えたのか、こちらにぶんぶんと大きく手を振った。
「おはよう!!!」
「おはよう馬鹿」
「おはようじゃ、夏目よ」
彼の名前は夏目惣司郎。去年のクラスメイトだ。
「…で?テストはどうだったの?まさかアタシに教わっておいてFクラス…なんてないわよね?」
「そうプレッシャーをかけるでない、姉上」
去年、というか今年の春休みは夏目たっての希望でアタシが勉強を教えたのだ。もう…この…本能で生きているようなコイツに勉強を教えるのにどれだけ苦労したことか…!!
「喜べ優子、また同じクラスだ!!」
と、広げた紙に書かれていたのはーー『夏目惣司郎 Aクラス』
「「は、はああぁぁぁ!?!?!?」」
思わず秀吉と共に素っ頓狂な悲鳴を上げてしまう。三権分立を聞かれて、大真面目な顔で司法、立法、漢方とかのたまったコイツがAクラス!?!?
「ちょ、え!?何をしたらそんなに成績が上がるのよ!賄賂!?」
「いくら俺でも泣くぞ」
「もしくはミスじゃ」
「む、
「妙なニュアンスで弟と呼ぶでない!」
「ーーコホン。まあ、強いて言うなら愛の力、だな」
と勿体ぶって咳払いをしてからキラリと瞳を光らせる夏目のおかげで昂ぶっていた気分は冷えた。
「アンタは…またそんなことを…」
「そんなこと、とは失礼だな。俺は本気だ」
「本気でお前のことが好きなんだ、優子」
真っ直ぐな瞳に射貫かれるような感覚に陥る。
「その腕ひしぎ、見事だ!惚れた!!」と告白(?)されてから早1年。その日からコイツは一度断ったにも関わらず、何度も何度も告白してきた。それでも、こういう真面目なトーンで言われるのは慣れない。
「…ハイハイ。とりあえず詳しい話は移動しながらしましょう」
「わかった」
「んむ、良いのか夏目」
「無理に返事は求めん、俺が好きで言ってるだけだからな」
「そうじゃったか。…それにしても、本当に何故急に成績がこんなにも上がったのじゃ?去年はワシと同じくらい酷かったと聞いておるが」
「春休みの大半を勉強に費やした…というのが最もな要因だろう。あとはまあ、選択問題はいつも全問当たるし、張ったヤマも全部当たったからな」
「恐るべし野生の勘、ね」
前々から妙に鋭いところがあるとは思っていたけど、まさかここまでとは。
「それに、優子に教えてもらったし、何よりーー優子と同じクラスになりたかったしな」
「お熱いのう」
「うるさいわよ秀吉」
「あ、姉上ッ…!関節はそれ以上曲がらなッ……な、夏目、助け、!!」
「相変わらず綺麗な曲げ方だな」
「な、夏目えぇっっ!!!!」
結局、Aクラスに着くまで余計なことを言い続けた秀吉は、アタシの関節技を受け続け、若干色の変わった腕をさすりながらFクラスのある旧校舎まで歩いていった。