バカな筋肉と優等生   作:にと‪ ꪔ̤

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第六問

「ここにいたのか、木下さん」

 

アタシ達がゆっくり談笑していると、がらりと障子が開けられて、大柄でしゃくれた長い顎が特徴的な男子生徒ーー大森漠君が息を切らせて入って来た。

 

「…もしかして、何か問題?」

「…ああ。うちの学園の生徒が、大声でFクラスが汚いだのと話している。それも何度もだ」

「「何だって!?」」

 

苦々しい顔で告げる大森君に詰め寄る吉井君と坂本君。

…うちの生徒が営業妨害?嫌がらせにしては少しやり過ぎなような気がする。それに、それに対する吉井君と坂本君の食いつきも少し異様だ。…何かワケありだったりするのかしら…。

 

「チッ、道理で客が来ねえはずだ…!」

「雄二、早く行こう!このまま閑古鳥じゃ困るよ!」

「わかってる!…だが、Aクラスか……」

「そんなこと言ってる場合じゃないって!」

 

「木下さん、」

「いいわよ。吉井君と坂本君で解決してくれるならそれに越したことはないわ。…それと大森君、代表に会場に直接向かう、と伝えておいてもらえる?」

「了解した!行くぞ、吉井、坂本!」

「「おう!」」

 

ばたばたと去って行く三人。それを、ひらひらと手を振りながら見送った。

 

「さて、アタシもそろそろ行かないと…ご馳走様」

 

食器類を一カ所にまとめ、紙ナプキンで軽く口元を拭い立ち上がる。

 

「お代はいくらかしら」

「妹を連れて来てもらったんだし、ウチが奢るわ」

「…わざわざ気にしなくて良いのに」

「ウチが勝手にしたいだけだし、気にしないで」

「そう?…それならお言葉に甘えるわ」

 

島田さんに礼を伝え、Fクラスを後にする。

…それにしても…島田さんは良いお姉さんなのね。

アタシにはとても真似出来ない所業に感心する。アタシも秀吉あれくらい優しく…いや無理ね、普通にイライラするもの。色々なことで。

そんなことを考えてながら歩いて会場に向かうと、まだ誰もいないようだった。

しばらくぼーっとしていれば、パタパタとメイド服のスカートを揺らしながら代表が駆けてくる。

 

「…………遅くなった」

「大丈夫よ、まだ先生も相手も来ていないし」

「…………そう、よかった」

 

ほっ、とため息をつく代表。

余程ペアチケットが取りたいのか、かなり張り詰めているみたいだった。

ほぐしてあげたいけど…何かないものかしら…。

なんてウンウン唸っていれば、いつの間にか対戦相手も今回の担当の遠藤先生も来ていた。

 

「両者共、準備は宜しいですか?」

 

アタシは短く返事をし、代表が小さく頷く。

相手のカップルらしき男女の対戦相手もこくりと頷いた。

 

「では、試合開始です!」

 

「「「「試獣召喚(サモン)!!!」」」」

 

『Aクラス 霧島翔子 & Aクラス 木下優子

 英語W   334点  & 318点     』

          VS

『Bクラス 加西真一 & Bクラス 入江真美

 英語W   179点  & 166点     』

 

前回よりも相手の点数は高いけど、それでも問題無さそうだ。

 

「流石Aクラス…どうしよう、真一君…」

「大丈夫!俺達二人ならAクラスだって目じゃないさ!ペアチケット、絶対とってデートしよう、真美」

「…真一君…!」

 

二人の熱々なやり取りを冷めた目で見る。

…なんか、こう…見ているこっち恥ずかしいわね…。

 

「……ア……ト……たさ…い」

 

ちらりと横目で代表を見ると、俯いてブツブツと何か呟いていた。さらさらと長い黒髪が揺れてだいぶ怖い。まるで貞子みたいだ。

 

「……ペアチケットは、渡さない…!!」

「えっ、きゃあああ!!!」

 

ブォンッ!勢いよく振り下ろされた日本刀を慌てて避ける相手の召喚獣。

 

「真美!」

 

慌てて庇おうとする男子の召喚獣をランスで牽制する。

 

「アタシのこと…忘れちゃ嫌よ、イロ男君?」

「くっ…!」

 

突き立てたランスを引き抜き、間髪入れずに振るう。

相手も剣で受け止めたが勢いに負け、そのまま後ろに倒れ込んだ。相手を馬乗りで押さえ込み、首へ向け全力でランスを突き立てる。

 

『Aクラス 木下優子 VS Bクラス 加西真一

 英語W  318点  VS 0点        』

 

跡形もなく消える相手の召喚獣。

 

「真一君!」

「油断は禁物よ、よく覚えておきなさい」

「きゃあああっ!」

 

相手が動揺した隙に、代表の召喚獣が素早く肉薄する。

二体の召喚獣が消えたことを確認し、遠藤先生が高らかに宣言した。

 

「勝者、霧島翔子、木下優子ペア!」

 

ふぅ…二回戦も無事に終えられてよかった。

…悪いけど、代表のためにデートは諦めて頂戴、と心の中で謝りながら会場を後にした。

 

「次はもうすぐなんだっけ?」

「………うん。B会場で現代社会」

 

試験召喚大会は、出場者の多さから二つの会場を臨機応変に使いつつ行われていた。先程いたのはA会場だったが、時間の都合でアタシ達はB会場に移動しての試合だ。

時間ギリギリではないものの、対戦相手はもう来ていたようだ。

 

「…出来れば…貴方達とは当たりたくなかったです」

 

そこに立っていたのは、クラスメイトの佐藤さんとーーもう一人は知らない女生徒だった。

 

「そうね、アタシも当たりたくなかった…。でも、クラスメイトといえど勝負は勝負。容赦はしないわ」

「是非、そうしてください。全力の貴方達に勝ってみせます」

「あら、言うじゃない」

 

「すまない、遅くなったな」

 

バチバチと火花を飛ばしあっていると、西村先生が小走りでやってきた。あれ?現代社会は氏家先生じゃ…?

 

「担当の氏家先生なんだが、今日は外せない用事で休んでいてな。代わりに俺が務める」

 

なんだ、それなら納得だ。

西村先生がアタシ達を交互に見て、うむ、と頷く。

 

「お互い気合は十分なようだな。ーーでは始め!」

 

「「「「試獣召喚(サモン)!!」」」」

 

『Aクラス 霧島翔子 & Aクラス 木下優子

 現代社会 312点  & 315点      』

          VS

『Aクラス 佐藤美穂 & Bクラス 里井真由子

 現代社会 328点  & 196点       』

 

全体的な点数は勝っているけれど、個々の点数は劣っている。

前は点差があったからあまり考えずに振るえたけど…この点差での力技は厳しそうだ。さてどうしたものか…。

 

「やあーっ!」

 

そんなことを考えていれば、里井さんの召喚獣がこちらへ向かい、剣を振り下ろしていた。咄嗟に横っ跳びをさせて避けさせる。

 

「はぁッ!」

 

間髪入れずに佐藤さんの召喚獣がこちらへ剣を振るう。だけど剣は掠めていたのか、アタシの召喚獣の頬からツー…と血が垂れた。

 

「やってくれるじゃない…!」

 

乾いた唇をぺろりと舐め、集中する。

…そうだ、今まで1対1が二つの形式でやってきたから忘れてたけど…1対1で敵わないなら、2対1に持ち込めば良い!

 

「真由子ちゃん、危ない!」

 

里井さんの召喚獣に向けてランスをと振るうと、里井さんの召喚獣は消えていった。けれどそれと同時に、佐藤さんの召喚獣がアタシの召喚獣の腕を切り落としていた。

 

「代表!」

「…………(こくり)」

 

佐藤さんの召喚獣の後ろから、代表の召喚獣が胸元を剣で刺す。アタシの召喚獣も落としたランスを拾い上げ、とどめと言わんばかりに胸元を突いた。

佐藤さんの召喚獣も、粒子となり消えていく。

 

「勝者、霧島翔子、木下優子ペア!」

 

西村先生の宣言を聞き、ふぅ…とため息をついた。

 

「今回は負けちゃいましたけど…次の時は負けません!」

「今度も、アタシ達が勝つわよ。…ねえ代表?」

「……………勿論」

 

互いに不敵な笑みを浮かべつつ、会場のステージから降りる。

次に戦う時が楽しみ……なんてね。

そんなことを思っている自分に、密に苦笑いを零した。




出演キャラクター【()内は作者様】
・大森漠(kitto‐様)
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