今回の完結は酷く時間がかかってしまいましたが、最後までお付き合いいただければ嬉しいです~!
明久side
「ひ…酷い目にあった…」
「全くだ」
「まぁ、まだ良い方だろ。普通に考えたら良くても停学、悪くても退学だぞ」
「うん、まあ、そうなんだけどさ」
結局三人とも、鉄人から逃げ切ること出来ず。三人揃って鉄人からきついお灸を据えられた。うう、思い出すだけで背筋が寒くなってきた……。
「悪かったな、夏目。事情も知らせずに巻き込んじまって」
「気にするな、怒られるのは慣れてるしな!」
「そこ絶対胸を張るとこじゃないよね??」
脳裏に浮かぶのは普段は冷静沈着な秀吉のお姉さんーー木下優子さんが夏目君に怒鳴る姿だ。……うん、何だかしょっちゅう見かけてる気がする。
そう三人で帰る支度しながら雑談していると、
「夏目君。少し良いですか?」
ピンク色の髪を一つにまとめ、スーツをぴっちりと着こなした眼鏡の女教師(ここ重要)ーー高橋女史が夏目君だけを(ここ重要)呼び止めた。
「何だ?説教は鉄人だけじゃないのか?」
「坂本君や吉井君にはありません。ですが、夏目君。貴方には担任として話があります」
「「「……担任として?」」」
全員が首をひねる。
何だろう。夏目君は普段から僕らのように逃げ回っている問題児という訳じゃないし、花火を打ち上げた実行犯でもない。というかむしろ、僕らが無理矢理巻き込んだようなもので、夏目君が特別怒られる理由はないと思うんだけどな…。
「……Aクラスはその学年、ひいては学園の模範となるべき存在です。それなのに…。何です?この騒ぎは」
高橋女史の冷たい視線が、夏目君を射貫く。鉄人の暑苦しい指導とは違い、静かに怒る高橋女史はまた鉄人と違った怖さがあった。
「ーーま、待ってください先生!夏目君は僕達が無理矢理巻き込んじゃっただけで、」
「黙りなさい、吉井君」
僕の主張はぴしゃりと突っぱねられた。その容赦のなさに思わず怯んでしまう。
「一緒に居たのであれば、貴方は吉井君と坂本君を咎め、その行動を止めるべきでした。学園の模範生徒として、貴方にはその義務があったはずです。それを、止めるどころかあまつさえ協力するなんて…」
「お言葉だが高橋女史。俺達の行動が夏目に止められていたら、学園は潰れていた可能性があったんだ。それでも模範的な生徒として止めるべきであったと言うのか?」
「ええ。言います」
その真っ直ぐに僕達を見る瞳に、正直ーー畏縮した。これは、この真っ直ぐさは。どんな言い訳をしようと無駄だと、本能が訴えている。
「……吉井、坂本。先に帰ってくれ」
「で、でも!」
「庇ってくれたことは嬉しい。…だが、女史の言うことも確かだ。俺は腐ってもAクラスの生徒。模範的な生徒として、お前達をとめる義務はあった」
「「……」」
「だから、説教を受けるべき理由はある」
そう言うと、適当な椅子にどっかりと座り込む夏目君。
「……夏目君。話は最後まで聞きなさい」
「最後まで?」
「ええ。確かに今回の貴方の行動は賞賛されるようなものではありませんがーー坂本君の言うように、それに助けられたのも事実です。ですので、長々と説教するつもりはありません」
「「「……!」」」
「それに、今回の件は学園側にも被がありました。なので、今回は目を瞑りましょう」
「ですが、二度目はありません。同じ失敗は二度としないように。…良いですね?」
そう言うと、高橋女史は踵を返して職員室から出て行った。後に残されたのは、僕達三人。
「…帰るか」
「そうだね」
雄二が鞄をとって出て行き、僕も後を追いかける。だけど、夏目君が一向に出てこない。
「夏目君?帰らないの?」
「…待ってくれ、この椅子、めちゃくちゃ座り心地が良い…!!」
「「…………………………」」
何だろう、夏目君の耳はちゃんと正常に機能しているんだろうか。早めに耳鼻科とか行った方がいいんじゃないだろうか。
雄二がハァ、とため息をつく。
「おい、早く来ないと電気消すぞ」
「む、すまん。つい」
「というか、Aクラスってリクライニングシートじゃなかった?座り心地良くないの??」
「悪いわけじゃないが、硬いな」
「「硬い」」
「ああ、寝ると体がバキバキになる」
意外だ。何となくだけど、設備全てが快適に使えるイメージがあったんだけどなぁ。
「…なるほど。ああ、でもそう思うとFクラスは寝心地は良いよね」
「確かに寝転がれるのは有り難いが…今回の予算で畳新しく出来ねえかな…」
「どうだろうね、収支をまとめたノートをチェックしてみないと何とも言えないなぁ」
「売り上げで設備を買うのか?なら俺は布団が欲しい」
「ガッツリ寝る気できたな」
「本当に何で夏目君がAクラスなのか、時々凄く疑問に思うよ…」
絶対僕と思考レベルは変わらないと思う。
そんなくだらない話をだらだらとしていたら、あっという間に校門まで来ていた。
「僕達はFクラスの打ち上げに行くけど、夏目君はどうするの?」
「うーむ…正直打ち上げはまだやっているのかわからなくてな。一応誰かに確認をうぉっ」
「おいこれ、早く行った方が良いぞ。木下姉絶対キレてるぞ」
夏目君の携帯を覗き込んでみると、ずらーっと並ぶ木下さんからの着信履歴。こ、これは中々…。
「そうだな………いや、ちょっと待ってくれ。吉井に頼みたいことがーー」
☆
優子side
「すまん、遅くなった」
からんころん、と店のベルが派手に鳴った。
見慣れた赤い髪が夜風にさらさらと流されている。いつもの無駄に整った顔は手酷くやられたのか、ところどころ腫れていたり絆創膏が張られていた。綺麗だった制服も何処か薄汚れているし、まさに満身創痍という感じだ。
「遅かったね、先に始めてたよ」
「悪いな」
久保君がお茶の入ったグラスを渡すと、余程喉が渇いていたのかすぐに飲み干してカンッと勢い良くテーブルに置く。
「ーー翔子、いるか」
「……………………何?」
夏目がそう言いながら辺りを見渡すと、アタシの隣に座っていた代表が立ち上がり、夏目の元へ行った。
すると夏目は、自分のズボンのポケットから一枚の封筒を取り出し、代表に手渡す。
代表が封筒を開けると、出てきたのは如月ハイランドパークのプレオープンチケットだった。
「…!惣司郎、これ、」
「吉井が譲ってくれた。礼なら吉井に、「ありがとう、惣司郎!」」
そう言われると夏目は、珍しく驚いた顔をした後にーー酷く、こっぱずかしそうにそっぽを向いたのだ。
☆
「怒らなくて良いのかい?」
楽しそうに話す代表と夏目を眺めていると、本田君がお茶の入ったグラスを持ってアタシの横に腰掛けた。
「……ええ。正直、校舎を破壊したって聞いた時はめちゃくちゃ怒鳴りつけたくはなったけど」
「……けど?」
「代表の笑顔を見てたら、何だか気が抜けちゃったわ」
アタシがそう肩を竦めると、本田君は心底楽しそう笑い、お茶を啜った。
終わった!!!終わり!!!ました!!!!!
最後までお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました!そして重ね重ねですがお気に入りの200突破。本当に嬉しいです!ありがとうございます…!感想、評価もこんなにもらえる作品になるとは思いませんでした。気まぐれ、亀更新なのでまだ間が空いた更新になったりしまうかもしれませんが、飽きずにお付き合いいただければ幸いです。
さてちょっとした予告を。
要望のあったオリキャラまとめをひとまず出すのと、本作の原作キャラの簡単な設定集のようなものを出してから3巻の合宿編に移りたいと思います。夏目の前についに恋のライバル登場?で優子のSAN値が大ピンチ!(予定)それではお楽しみに!