バカな筋肉と優等生   作:にと‪ ꪔ̤

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第二問

 

明久side

 

「酷い目にあった……」

「全くだ」

「…………誠に遺憾」

 

合宿所に到着して早々(と言っても僕は姫路さんの料理をかき込んで何時間も気絶していたみたいだからそう感じているだけなんだけど)。僕達は全く身に覚えのない女子風呂覗きの罪を疑われ、拷問にかけられていた。

証拠不十分ということで一応今日のところは解放されたけど……それでも重石を乗せられた膝は未だに痛みを訴えている。

 

「まあお主らを疑う女子の気持ちもわからなくはないが……少々理不尽ではあったの」

「でも実際こっちには盗撮を普段からやってるムッツリーニがいるからね…」

 

ちらりとムッツリーニを見ると、ムッツリーニはわざと大袈裟に溜め息を吐いてみせた。

 

「………………見つかるようなヘマはしない」

 

その発言はちょっとグレーだと思う。

 

「ま、これで姫路と島田と翔子に協力を頼むのは難しくなっちまったな」

「協力?雄二、何か頼みたいことでもあったの?」

「バカタレ。俺らを脅してる奴は女生徒で尻に火傷があるんだろ?なら女子に見て来てもらうのが一番手っ取り早いだろうが」

「あ、そっか。でも今の状況だと確かに頼みづらいね…。覗きのための言い訳だと思われちゃいそうだし……」

「それも見越してこの騒動を起こしたんだろうな。ヤな野郎だぜ」

 

ケッ、と吐き捨てる雄二。

正体のわからない相手に脅されている、という状況も相まって不機嫌さが増しているようだ。あとは単純に相手のいいようになってしまっているのが気に食わないんだろうな、とも思う。

雄二はプライドも高いし負けず嫌いだしね。

 

「というわけで俺達も相手の裏をかく」

「裏?」

「ああ。女子と手を組むぞ」

「何を言っておる、雄二よ。今しがた姫路や島田や霧島に頼れなくなったと言っておったばかりではないか」

「俺達にはまだいるだろう?協力してくれそうな助っ人が」

 

姫路さん、美波、霧島さん以外の助っ人?

そんなに僕達のことを信頼してくれている女子なんていたっけ……?

 

「ま、少し手順は必要だがな」

 

雄二はそう言うなり、何処かへと電話をかけ始めた。

 

           ⭐︎

 

電話から数分後。

ふと、窓からかしゃん、と物音が聞こえた。

何か風に吹かれた物が当たったのかな、なんて思いつつ窓を見やりーー僕は言葉を失った。

 

「おう、夏目。悪いなわざわざ」

「気にするな」

 

窓の外にーーいつの間にか夏目君が居たからである。

 

「な、夏目君?どうしてここにーーというよりなんで窓に!?」

「?お前達が呼んだんじゃないか。なるべく人目につかないように来てくれと」

 

そ、それは確かに、窓から来たら人目には付かないだろうけどね!?

何から言えばいいのかわからず、口をあんぐりと開けているとーー不意に肩を叩かれた。

ムッツリーニだ。ムッツリーニがフルフルと静かに首を横に振っている。……諦めろということだろうか。確かに、あまり深く考えない方がいいのかもしれない。本人も深く考えていないだろうから。

 

「……雄二よ。まさか協力者とは姉上のことかの?」

「流石だな秀吉。その通りだ」

 

思考を放棄した僕の横で秀吉と雄二が話を先へと進めていた。

えーと……要するに、狙いは夏目君じゃなくて木下さんってこと?確かに夏目君といえば真っ先に浮かぶのは木下さんだけど……。でも、木下さんが僕達の為に協力なんてしてくれるだろうか。

秀吉との話を一度区切り、雄二は改めて夏目君の方に向き直る。

 

「夏目。お前に協力して欲しい事がある。実はなーー」

 

と、雄二は夏目君に僕達の事情をかい摘んで説明をした。

 

雄二のプロポーズが録音され、霧島さんに売買されていたこと。

僕が清涼祭の時にいつの間にか撮られていた恥ずかしい写真を元にクラスの女子に近付くなと脅されたこと。

身に覚えのない女子風呂覗きの罪を被せられたこと。

犯人は尻に火傷がある女生徒であること。

 

話を聞き終わると、夏目君は顎に手を当て黙り込んでしまった。

……まあ、僕達がいきなりこんな話をしたところで信じてくれる人なんて早々にいないだろう。実際疑うのが当然と思われてしまうほど僕達は普段からやらかしちゃってるわけだしね。こういう時だけ信じて欲しいなんて虫のいい話が通るわけが

 

「事情はわかった。それで俺は何をすればいい?」

 

思わず、ぱちくりと目を瞬かせた。

えっ?そんなにあっさり信じちゃうの?

 

「木下姉を目立たずここに連れて来て欲しい」

「わかった。しばし待て」

 

そう言うと夏目君は入って来た時と同様、窓から出て行った。

 

「して雄二よ。夏目を使って姉上をどう説得させるつもりじゃ?」

「夏目に俺達の事情を話してもらう」

「うーん……。夏目君から事情を聞いたところで、木下さんが僕達に協力してくれるとは思えないけどなぁ」

「…………(コクコク)」

 

僕の横でムッツリーニが頷く。

確かに夏目君と木下さんは仲は良いと思うけどーー夏目君が間に入ってくれたからと言って僕達のことを信用してもらえるかどうかは少し別の問題な気がする。

 

「別に俺達を信用してもらう必要はねぇ。ただ、夏目が噛んでるってポーズが必要なだけだ」

「夏目君が噛んでることが必要……?」

「要するに夏目を使って脅すわけだ。協力しないのなら夏目も巻き込んで覗き騒動を起こすぞってな」

「あー……。なるほど」

 

相変わらずこういうことに関しては頭が回るな、コイツは。

 

「しかし雄二よ。姉上がそれでも乗って来なかったらどうするのじゃ?」

「そうなったら仕方ねえ。直接女子風呂を覗くしかないだろうな。幸い夏目は協力するって言ってるんだ、Aクラスも一部は巻き込めるだろ」

「………………惣司は、覗きには協力しない」

「「えっ?」」

 

ムッツリーニの呟きに、僕と雄二が揃って反応を返す。

 

「………………そういうところは真面目だから」

「木下さんの裸が見られるんだよ!?」

「………………好きな奴がいようといまいと、覗きは失礼な行為だと譲らなかった」

「……なあムッツリーニ。その言い方はまるで昔に誘った事があるような「(ブンブンッ)」……そ、そうか…」

 

雄二の発言を食い気味に否定するムッツリーニ。

それがもはや答えているようなものだと思うけど、いつものことなので突っ込むのはやめておくことにした。

 

           ⭐︎

 

夕飯も食べ終わり、30分後の入浴時間まで特にやる事のない手持ち無沙汰時間。

アタシ達は早々に敷き詰めた布団の上で各々自由に過ごしていた。

ごろんと寝転がり天井をぼんやりと見つめていた愛子が唐突に口を開く。

 

「そういえば部活の先輩から聞いたんだけど」

 

話しかけているのか、独り言かはわからないけど皆何かしていた手を止め、愛子の話に耳を傾ける。

 

「ここ、お化け出るらしいね」

「ワオ!ジャパニーズホラー!?」

 

愛子の話にジェシーが食い気味に反応した。

ジェシーは日本文化が好きだと言っていたけど、それはホラーも例外ではないらしい。

愛子もそんなジェシーの反応に気を良くしたのか、ゆっくりと身を起こして語り始める。

 

「うん。何でもここ、遠い昔は墓地だったみたいでね。ここに、旦那さんに先立たれた奥さんが毎日毎日墓参りに来ていたみたい」

「だけどある日、旦那さんのお墓が荒らされているところを目撃しちゃって……。奥さんは慌てて止めに入ったんだけど、その墓荒らしに殺されちゃったんだって」

「あまりにも無念だった奥さんはお化けになってその墓荒らしを取り憑いて殺してしまった。だけど奥さんは墓荒らしを殺したことに気付いてなくて、いまだに墓荒らしを探し回って彷徨っているらしいよ……」

 

…ま、よくある話よね。

大した話でもなく、信憑性もなさそうなので内心ほっと息を吐いた。

結構そういう話苦手なのよね…。心霊現象って物理で何とかならないし……。

 

「む。その反応の感じだと皆あんまり信じてないな〜?」

「当然でしょ。お化けなんていないわ」

「いーや、いるね!今だってボク達をいつ取り殺してやろうかと見張ってるんだよ。ほら、後ろ。そこの窓に今一瞬人影がーー」

「バカね。窓に人がいるわけ、」

 

 

「優子」

 

 

「「「「「ぎゃあぁっ!?!?」」」」」

 

窓外から聞こえたアタシを呼ぶ声に、アタシだけじゃなく部屋に居た皆が悲鳴を上げた。まさか本当に幽霊が出てしまったのかと、恐る恐る振り返ると、窓からーー

 

 

夏目が、慣れた手付きで入ってきた。

 

 

「…………な、なつめ?」

「?どうしたお前ら、そんな化け物を見るような目で」

「な、夏目クン…。何で窓から……?」

「少々訳ありでな。それより女子部屋なんだから二階だろうと窓はきちんと閉めておいた方がいいぞ。窓から入ってくる不審者がいるかもしれん」

「ウーン、大丈夫だよって言いたいところだけど…今実際入ってきたからね。肝に銘じておくよ」

 

身をもって示すとはまさにこの事ね。

 

「ところで、木下の名前を呼んでいたが何か用事か?」

 

気を取り直すように、戦国さんが軽く咳払いをした後夏目に尋ねる。夏目は問いかけに対して鷹揚に頷くと、こちらに手を差し出した。

 

「優子、話があるんだ。一緒に来てくれないか?」

 

……へ?

 

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