バカな筋肉と優等生   作:にと‪ ꪔ̤

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コラボ書籍楽しみです。




第五問

 

強化合宿もいよいよ三日目を迎えた。

生徒達だけでの自習は昨日こそ少々騒がしいだけの状態だったがーー二日目の今日となれば昨日より騒がしくなっている。特にFクラスなんて勉強すらしておらず、皆寝たり紙飛行機を飛ばしたり、誰かと話していたりとほぼ無法地帯だ。

……西村先生は毎日あれの面倒を見ているのね…。お疲れ様ですと心の中でそっと手を合わせた。

いつもだったら勉強に集中出来なくて怒っていたところだがーー今日ばかりは都合がいい。教科書を立てて手元を隠し、さらに念を入れて机の下で携帯を操作する。

 

【To:玉野美妃 From:木下優子

ちょっと話したい事があるの。今抜けられたりする?】

 

….送信、っと。

するとすぐに返信が返ってきた。

……有難いけど、ちゃんと自習してるのかしら。今一応自習とはいえ勉強時間なんだけど……。

……まあ、アタシもこんな事してる時点で人の事は言えないのだけど。

 

【To:木下優子 From:玉野美妃

大丈夫だよ!トイレに行けばいい?】

【To:玉野美妃 From:木下優子

ええ。ありがとうね】

 

携帯を閉じてポケットを素早く滑り込ませる。

周りにいた子達にちょっとお手洗いに、と声を掛ければ特に疑われる事もなくいってらっしゃいと見送られた。入り口脇にいた先生にもその旨を伝え、部屋から出る。そのまま突き当たりまで進んで右手のトイレに入れば、見慣れた黒髪のおさげの女生徒が手洗い場の前に立っていた。

 

「ごめん、待たせたわね」

「ううん、全然!」

 

にぱ、と彼女は明るく笑ってみせる。

玉野美妃。数少ない、共通の趣味で仲良くなった友人だ。

 

「それでどうしたの?自習を抜け出して、なんてよっぽどだよね?」

「……美妃に、お願いしたい事があって」

「深刻な顔だねえ。何か悩み事?」

「……悩み、というか…」

「いいよ、何でも。何があっても優子は友達だもん!」

 

ね、と手を握ってくれる彼女。

嬉しい言葉だけど、何かやらかしている前提なのはちょっと複雑だ。

……だけど、そう言ってくれるのなら。

彼女に打ち明ける勇気が出た。お願い、と勢いのまま言葉を紡ぐ。

 

 

「お尻を見て欲しいの!」

 

 

◆◇

 

 

「……つまり優子はお尻に火傷跡がある女の子を探してて、その人を探すのを手伝って欲しいんだね?いきなりびっくりしちゃったよ〜」

「ご、ごめん……」

 

勢いのあまり言葉を省略し過ぎてしまった……。変な癖を持ってしまったと誤解されかけたが、何とか弁明する事が出来た。昨日の夜、予め「お風呂で落とし物を拾ってもらったのでお礼を言いたい」って言い訳を考えてあって良かった…。

……ちょっと無理矢理感が否めないけど、先のインパクトが大き過ぎて美妃はあまり気にしていないようだった。怪我の功名というやつだ。

 

「うん、いいよ。お尻を見て回るのちょっと恥ずかしいけどね」

「うぅ、ありがとう美妃…!お礼はちゃんとするから……」

「いやいや、お礼なんてそんなーー」

「吉井君と坂本君のツーショットでいいかしら」

「ありがとう優子。優子と私は親友だよ」

 

ぐっ、と固く握手を交わす。

深く語り合わずとも分かり合える、それがアタシと美妃の交わした友情の全てだ。

 

「それじゃ、頼むわね」

「任せて!」

 

あまり長引いても怪しまれるので、ほどほどに切り上げて美妃と別れた。ぽちぽちと夏目にメールで連絡を取りながら帰路を辿る。

……ちなみに、坂本君に脅された腹いせに二人を売ろうとしているわけではない、決して。

 

 

◆◇

 

 

明久side

 

 

「それじゃあ、私はこれで」

「うん。ありがとうね、姫路さん」

 

浴衣から着替えた姫路さんが、大切そうに浴衣を抱えながらぺこりと頭を下げて部屋から出ていく。撮影は(主にムッツリーニのせいで)大変だったけど、きっといいものが仕上がったはずだ。

……僕も、思わぬおこぼれ(姫路さんとのツーショット)をもらっちゃったしね。

 

「撮影も終わった事だしとっとと寝ようぜ」

 

ふわあ、と大きく欠伸しながら布団を引っ張り出す雄二。思えばここ最近は補習漬けで寝不足が続いていた。さっきまで気にならなかったけど、自覚すると身体がずっしりと重くなり雄二につられて欠伸をしてしまう。思いの外、疲れているみたいだった。

 

「ゆっくり出来るのは久しぶりじゃのう」

「秀吉も僕らに付き合って補習受けてるもんね」

 

秀吉もムッツリーニも布団を敷き、その上にごろりと寝転んだ。消灯時間までまだ1時間くらいあるけど、早めに寝る分には何も言われないだろう。と言ってもすぐに眠れるわけでもなかったので、適当にだべりながら寛いでいるとーー不意に、がらりと扉が開いた。

 

「……悪い、寝るところだったか?」

「……夏目か。どうした?」

 

身体を起こすのも億劫なのか、ぐうたらと寝転んだまま雄二が声を掛ける。

 

「優子から頼まれた事があってな。寝るなら出直すが」

「……明久、」

「はいはい。どうしたの、夏目君」

 

頭も身体も人一倍動かしている雄二はもう眠気が限界だったのだろうーーパスされてしまったので、代わりに要件を聞く。

 

「坂本と吉井のツーショットを撮らせて欲しい」

「はぇ?」

 

木下さんの頼み事なら、てっきり犯人探しに関係している事だと思っていたので思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「僕と雄二の?何で?」

「……世の中、知らなくていい事もあるだろう」

「何!?怖いんだけど!?!?」

 

さっと意味深に視線を外される。

別に雄二と写真を撮ったことなんて何回もあるし抵抗もないんだけどーーなんだろう、この背筋に走る悪寒は。

 

「…………もしかして、木下姉って(コソコソ)」

「……いや、姉上はナマモノには興味がないはずじゃ(コソコソ)」

 

秀吉とムッツリーニが後ろで何か話しているみたいだったけど、小声だったのであまり聞こえなかった。

 

「とにかく、何も言わずに今から言うポージングで写真を撮って欲しい」

「ポーズも指定なの?別にいいけど……」

「じゃあまず吉井が寝ている坂本に跨って、」

「……こ、こう?」

「ちょっと顎を持って顔を寄せてーー」

「……」

「そのままキス」

「何言ってんの!?!?」

「冗談だ」

 

かしゃ、とそのまま写真を撮られる。

いきなり撮られたから笑顔じゃなかったけど良かったのだろうか。

 

「……どう思う?」

「……問題作」

「そんなに酷い顔してた?」

「これは…。いや、撮り直さんで良いのじゃが…。うむ、問題作じゃな……」

 

一体どんな写真が撮れたというんだ。

 

「……とにかく助かった。ありがとう」

「よく分かんないけどまあ、力になれたなら良かったよ」

 

犯人探しにこの写真が何の役に立つのかは謎だけど、木下さんのことだからきっと何か考えがあるんだろうと深く考えない事にした。夏目君の言う通り、これは多分知らなくていい事なんだろうし。

 

「………………惣司」

 

邪魔したな、と立ち去ろうとする夏目君の背中にムッツリーニが声を掛ける。

 

 

「……データ、後で送ってくれ」

 

 

……本当に、何で必要な写真なんだろう。

 

 

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