Kaiserreichで幼女戦記   作:溶けない氷

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幼女、皇帝になる

ターニャ「4号Gを…せめてF2を…」

 

シャハト「(予算が)ないです」

 

1936年

ドイツ第2帝国の総参謀本部は重要なことに気づいた。

それは…

「観戦武官の報告と比べると…うちの軍隊って正直時代遅れになってないか?」

なってます

ドイツ帝国は世界に植民地を獲得した!しかしその補給線は北ドイツのキール港からドーバー海峡は政治的に使えないため北海をぐるっと大回りしジブラルタルを抜け仮想敵国のイタリア社会主義国の目先を抜けてスエズを抜けインド洋のスリランカの先のシンガポールを抜け、インドシナをさらに抜けて海南島から青島へと至る恐ろしく長大な戦線出会った。

はっきり言えば19世紀の大英帝国でも維持するのは困難であろうし、もっと悪いことには通る領域領域に大英帝国が直面したよりも遥かに強大な敵国が待ち受けていた。

イギリス、フランス、南イタリアにベンガルそしてオーストララシアに日本。

海の上だけでもこれだけの敵と対峙していると言うのに陸ではフランス、そして混乱している東ヨーロッパへの軍の抑えを緩めるわけにはいかない。

敵は多すぎ、維持すべき戦線はあまりにも細長く、ドイツの人口はあまりにも少ない。

 

デーニッツ提督の提言では…

「馬鹿な!海軍に回せる機体がたったこれっぽっちというのはどういうことだ!?」

海軍の現状、それは空母の旧式化。

新鋭艦のグラーフ・ツェッペリンは遥か極東で日本と睨み合いをしている。

ちなみに日本は4隻を保有しているので勝敗は目に見えている。

ともかく艦隊でドイツ軍の空母はわずかに3隻。

しかも世界中に分散配備されており各個撃破の的でしかない。

さらに問題があった。

「陸軍としては海軍の懸案は無用であると考える。

そもそも艦隊は陸上航空隊からの援護の下に行動するべきで空母は艦隊防空の為の戦闘機運用に専念すべきだ」

陸軍参謀本部は航空機はあくまでも陸軍の支援に回すべきで海軍にまで回す余裕はないと主張する。

「そもそも空母が3隻では少なすぎる。これでは艦隊防空すらおぼつかん。

戦艦にしても先の戦争からの代物で旧式化が著しい。

せめて敵艦隊の索敵と防空のためにも後6隻は空母が必要だ」

 

「戦艦の次は空母か?海軍さんは余程予算獲得したいと見える。

そもそも陸軍にしても先の大戦から装備の更新が滞っている。

兵数にしても砲の門数にしてもまるで足りていない。

ライン防衛網とはいうが、これでは現状ザルのような防御力しか発揮できないと本官は提言します」

陸軍参謀本部のゼートゥーア准将の指摘もまた正しい。

先の大戦で、ドイツ軍は全力を振り絞って燃え尽きた。

兵数こそ多いものの大西洋から太平洋までをカバーできるはずもない。

失われた人命と経済的損失は莫大でありながら植民地からの収益はほぼ0。

フランスとイギリスという敵は敵愾心ますます強く残り、先の大戦での足を引っ張っていた二重帝国はもはや帝国どころかまともな国の形骸すら残しておらず帝国は名目だけの存在にまで落ちぶれたバラバラの存在にしか過ぎなかった。

バルカン半島のセルビア人は先の大戦でなんとか落ち着いたと思ったらまたしても独立運動の火を燃やしていた。

ハンガリーはもはや独立国であり、義理程度の同盟をオーストリアと結んでいてあげるという状態。家族で例えると夫婦は別居、子供は家出といったところか。

オスマン帝国はそもそも瀕死の重病人が昏睡状態から戦争という電気ショックで一時的に目を覚ましただけとも揶揄され支配下のアラブ人の反乱は日常茶飯事。

先の大戦での疲弊から国内ではインフレーションが進み更にベルリン恐慌の影響もあり、内政は混乱の極みであった。

 

「近年のロシア情勢は?」

「相変わらず不穏なままだ、選挙が行われるらしいがどうなる事やら…

情報部の連中が漏らしていたよ。ロシア情勢は複雑怪奇だとな」

 

その頃、ロシア議会

王党派(ウチの代表、皇帝一家やけどうちの政党からの人望すらないなぁ…そや!皇帝一族だけど議員が好き勝手できる幼女に投票したろ!流石にこんな馬鹿なことするやつ他におらんだろ)

ボルシェビキ(ウチのはげ人気ないなぁ…せや!あの幼女に投票したろ!

どうせ勝てんのならメンシェビキの候補に票が流れんように嫌がらせしたるわ)

メンシェビキ(ウチの政党最近人気ないなぁ…せや!国民からの支持が無条件で得られる皇族を大統領にしたろ!けどうちが好き勝手できるように何の権限もない幼女にしよ!)

 

うーん、こいつらロシアの政治家は全員国賊レベルのクズですわ。

 

「えーただいまロシア大統領選挙が行われました。

 

(どうしてこうなった)

(どうしてこうなった)

(どうしてこうなった)

 

「ほらほら見なさいノンナ!やっぱやってみるものね!

圧倒的な支持率よ!やっぱりこのカチューシャ様がロシアの支配者になるのは運命だったのね!」

 

「というわけで今日でインチキ共和制はお終い!これからはこのカチューシャ様がエカテリーナ4世としてロシア皇帝になるのよ!

議会は軍で制圧!腐った政治家は追い出すのよ!」

 

議会に突っ込むBT戦車の写真と歩兵。

 

1936年7月のニュース

ロシア大統領選で末端候補とみられていたエカテリーナ・フォン・ロマノヴァ(16歳)が当選。

さらに議会を解散し、皇帝親政を宣言した。

当初は世間知らずの幼女の馬鹿げた行動と見られたが、これに反発した政治家の私兵を先制攻撃で粉砕した手腕が認められている。

ロシアの歴史的には女帝の伝統もあり違和感はなかったようだ。

この電撃的な当選と唐突な皇帝への就任に対してロシア国民からの反応は概ね好評である。

「尊いので」

「誰がなっても同じ、なら可愛いほうがいい」

「写真写りが良かった」

「皇族系候補の中で一番まともそうに見えたから」

「ボルシェビキの立てた候補が落ちるなら誰でも良かった」

「メンシェビキの立てた候補が落ちるなら誰でも良かった」

ロシア国民の80%以上はロシアに将来なんてない

政治家なんて誰がなっても同じと考える悲観的な浮遊票が今回の意外な勝利の原動力だったようだ。

 

またロシア国民は文字が読めないものも多かったが、エカテリーナ候補の懐刀と言われるノンナ女史とクラーラ女史は選挙に飛行機による各地での遊説、および映画の活用で大きな活躍をした。

スローガンの『ロシアを再び偉大な国に!』は帝国崩壊後の国民に強く訴えかける点があったようだ。

また選挙参謀のイオシフ・ゲッベルス氏は今回の勝利を

「意思の勝利ですね。それ以外に要因はありませんよ」

と述べた。

氏はニューヨークにおいて広告代理店で活躍した前歴を買われて就任し、今回の選挙活動では最新の広告理論を展開した。

その手腕はアメリカにおいても注目されており、次回のアメリカ大統領選挙においても機会があればその辣腕を振るうつもりだと述べた。

「こう付け加えれば間違いありません。『何々を再び偉大に!』ってね。

意思さえあれば本当にかつて偉大だったかどうかは問題じゃありませんよ」

 

前世の日本のみなさまこんにちは

ターニャ・デグレチャフです、やっぱこの世界は素敵に狂ってますね。

それともいつの時代もこんなもんで客観的に見れる私が狂ってるのか?

ついに私は華南で新鋭機Bf109の初期型を受領しました。

で、こうなった。

 

そこには脚が折れてひっくり返ったメッサーシュミットのコクピットでもがくターニャの姿があった。

「やはり脚が弱いのが難点だな…整備されていない飛行場が殆どの中華で運用したら脚ボキ連発だぞ…」

この点では固定脚の日本軍の96式にも一理ある。

シンプルな構造故軽く頑丈なのでこういった野戦飛行場での運用が容易という利点も考えれば悪い選択ではない。

 

「デグレチャフ中尉!義勇隊本部より連絡です!

直ちに現時点をもって所定の人員は海南飛行場へ集合とのこと」

 

やれやれ、事故の後でも今回は御構い無しにまたどこかへ飛ばされるらしいな。

そう言われて渡されたのは

サラマンダーカンパニ御一行>

サモア経由ブエノスアイレス行き

のチケットだった。

南米…それもアルゼンチン…この世界ではウルグアイを呑み込んだラプラタ共和国か。

牛肉が安くてうまい国だな、ああ休暇で行くのなら最高だろう。

 


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