青竜刀を振り回す中国兵
現実:砲弾と銃弾と毒ガスの合間から無言の銃剣突撃してくる、ミニ第一次世界大戦状態
ロシアっぽい軍服に身を包み、ガスマスクをつけ、短機関銃で突撃してくる中国兵という現実
これリアルだとイスラム国じゃね?
明朝、我がコンドル義勇軍団の結成式が紫禁城で清の皇帝の御前で行われるとのことで用意された清の軍服(というかドイツ軍のそのままだなこれ)に着替えて迎えに来たメルセデス・ベンツG4の御用車で出頭する。
「す、凄い車ですね。シートもふかふか」
「ウクライナにも自動車くらいはあるだろう」
「た、確かにありましたけど。こんなお金持ちの車なんて見たこともありませんよ」
同乗の義勇兵もどうやらヴィーシャと同じような感想を抱いているらしい。
確かに私の前の世界の記憶ではこれに乗っていたのはヒトラーやゲーリングといった政府高官くらいなものだ。
ドイツ皇帝から溥儀皇帝にプレゼントされた物だと運転手も言っていた。
中国の産業は南部の東亜総合商社の元でこそ軽工業が発達し始めている程度。
30年代の北京は上海や香港に比べれば田舎で道行く僅かな自動車もほとんどが公用車。
21世紀の中国の発展ぶりを知る私から見れば、同じ国とは思えないほどのどかな場所だ。
最初は実質傭兵ということで、肩を赤く塗るような連中と同じような運命ではないかと冷や冷やしたが
この待遇から一目瞭然。やはり専門技能を持った技術職は強いな。
出撃手当もつくというし、しばらくはここで理想のアーリーリタイアメントのための資金を稼がせてもらおう。
紫禁城にて
「ゆえに、かの悪逆なる反乱分子の討伐に遠い国より義のもとに馳せ参じた諸君らの勇気に感銘するものであり、持って我が大清帝国に対するドイツ帝国の友誼に感謝する」
溥儀皇帝が集まったコンドル軍団義勇兵の前で演説を終えると後は宮殿で立食パーティーだ。
実に豪華な中華料理が次々と流れてくるので兵士達も喜んでありついている。
「少尉、見てください。おっきなお肉ですよ!」
むむ、見るからに高級そうな食材が贅沢に使われているな。
ドイツ本土の不況は何処へやら、ここだけなんとセレブリティなことか。
食い物と金で兵士達の忠誠を買うとは、古典的で単純なだけに効果はある。
「今回のドイツによる義勇兵の派遣についてお考えは…」
向こうではドイツ軍の広報が色々と清の将軍にインタビューをしている。
流暢なドイツ語をしゃべることから多分ドイツ留学組だろう。
「無論、我が軍の精強なる兵士にドイツの勇士が加われば連中ごとき…」
まぁいわゆるテンプレ通りの受け答えだ。
上清天国、調べたところでは張天念という奴が真帝(笑
一天道を国教として西洋人を中国全土から叩き出して、地上の楽園(大爆笑
を作り上げると本気で盲信している連中である。
義和団の頃から全く進歩してない…まさしく、なんでこうなったを地でいく連中だ。
ああ、くそったれなアカどものみならずカルト宗教とも戦わにゃならんのか。
西洋の手先である清も悪魔の手先であり、戦死すれば天国に入ることが約束されているらしい。
よろしい、それならお望み通り糞ったれな存在Xの元に片っ端から送り込んでやろう。
おら、存在X。信仰が増えてよかったな、なんとか言えよ。
翌日、我々義勇兵団は武装した装甲列車に乗って義和団もどきとの前線を視察しに行くらしい。
それまでは英気を養い、戦いに備えよとのことだ。
素晴らしい、銃弾が飛び交う前線は清兵に任せて我々は後方で放火後ティータイムを楽しむとしよう。
翌日、たらふく食って疲れるという無上の贅沢を楽しんだ我々は列車に乗って北京から離れた前線近くの駅まで行く予定だ。
それから装甲ハーフトラックに乗って前線を視察するらしい。
列車の中でドイツ軍の軍事顧問が我々に状況を説明してくれた。
「諸君らの中には連中を宗教狂いの馬鹿だと考えている者もいるかもしれんが、
それが多いに間違いだということを言っておこう」
そう言って、連中の戦術がどんなものか。兵器は?練度はなどという質問に答えて言った。
「ああ、全く。ここの現状も知らない本国の連中が軽い気持ちで送り込んだんだな。どうせ未開の野蛮人が棍棒で襲いかかってくるとでも?
連中は確かに野蛮かもしれん、だが手強いぞ」
軍事顧問の少佐によると、連中の中核の将校は中華民国の士官学校の出身で占められており。
何よりも清との絶え間ない小競り合いで実戦経験を積み、兵隊は重砲などの大型兵器は保有していないものの戦術については理解している精鋭揃いだということだ。
「軍事顧問として情けない限りだが、清の軍隊の腐敗ぶりは酷いものだ。
給料は遅配、補給物資は将校が横流しする、兵隊は飯が食えるからという理由で敵に武器を持ったまま寝返る。これでどう勝てというんだ?」
ああ、だから紫禁城の皇帝陛下の親衛隊は白人やインド人っぽい外見の外人部隊で固められていたんだな(遠い目
「連中は使い捨ての兵隊に突撃前に麻薬を混ぜた酒を配るんだ。
天国逝きのチケットだと。そしてこっちの兵隊がラリった連中を防いでる間に精鋭が回り込んでくる」
どうやらこの世界は私が思っている以上にイかれてたらしい。
「連中は戦線近くを突破しても占領なんぞせん。平原に陣取っていれば重砲で殲滅できるが、連中もそれはわかってるんでな。
物資や人間を奪うと山中の要塞にささっと引き上げる、それで戦利品を中央アジアの連中と交換して武器を手に入れてるんだ」
戦利品とは?
「決まってるだろ、人間そのものだ。
労働用の奴隷や嫁として民間人を攫っていくんだ。
向こうは人間は足りないが武器はロシア人の残して言った軍需工場のおかげで余ってる。
中国は人が余ってるが武器が足りない、最悪な自由貿易ゾーンへようこそだ」
なんと、奴隷制度が復活していたとは。
やれやれ、時計の針はそこまで巻き戻ったか。
そうこうしている内に装甲列車が止まり、銃眼からは装甲車が見える。
「義勇兵諸君、地獄へようこそ。すぐに高い給料が支払われる理由がわかるさ」
ああ、やっぱりどうしてこうなった…