Kaiserreichで幼女戦記   作:溶けない氷

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日本 歴史説明
英仏の破滅は日本にも多大な影響を与えました。フランスの降伏と赤色革命によってそれまでの大戦景気は一気に破綻。
関東大震災の影響も合わせて日本経済は大打撃を受けたのです
更に25年の英国革命による日英同盟の終焉、ドイツによる欧州市場の独占
最大の輸出市場だったアメリカ経済の破滅は輸出産業に依存した日本経済を破綻させたのです
ドイツに対抗して日本が満州に打ち立てた奉天共和国を
外貨の乏しくなった日本は資源(特に食料)輸入の生命線だと捉えています
日本の犬養毅首相が推し進める協調主義と平和的経済発展が失敗すれば
日本は資源を求めての南方進出をせざるを得なくなるでしょう


第9話

広州大暴動の翌日、商社・清航空部隊パイロット養成機関への移動は一時中断となり

私は総督官邸に呼び出されることとなった。

暴動への対応に問題はない、何と言っても相手は武装し警官を殺害したテロリストなのだから

表彰こそされ非難される心配はない。

 

「デグレチャフ中尉、ファルケンハウゼン総督がお呼びです」

総督?ファルケンハウゼン将軍のことか…

私のいた前世では中華民国の軍事顧問だったが、なるほどこの世界では華南総督か。

 

「よく来てくれたな、例のゴタゴタで今は商社の連中もぴりぴりしていてね…

航空教導学校の教官連中も今はテロリストの追跡に駆り出されてしまってね。

人員不足というのは嘆かわしいな、こういう事態に対応できん。

烏龍茶はどうかね?慣れるとなかなか悪くないぞ」

 

そう言って、従者に良い香りの烏龍茶を持って来させた。

 

「はい、いただきます」

「お茶でもしながら話をするとしよう。

さて、君は北部での清軍と反乱軍との航空機同士の実戦を経験したドイツ人の貴重な人材だ

率直に言おう、敵はどうだったかね?」

 

 

「あの機体が何処の物か判明しましたか?」

 

「日本だ、日本軍が満州経由で国境を越えて西部の反乱軍及び中華民国の残党と武器を貿易している。

これまではせいぜい小銃や機関銃、迫撃砲といった軽火器程度だったが、

ここ1年ほどで重砲、戦車、航空機といった大型兵器が登場するようになった」

 

「外務省は抗議を?」

 

「したさ、だが本国の連中の形式だけの遺憾の意が何の役に立つ?

中尉、これはドイツと日本の代理戦争なのだ」

 

「なるほど、では正直な所を?」

 

「構わん、清軍経由ではいつも”我が方有利”しか帰ってこんからな」

 

「では、戦車・航空機、野砲。この重要な大型兵器において清軍の装備は反乱軍の装備に大幅に劣っています。

遺憾ながら、清軍の装備は我がドイツの供与したものでありますが、戦車・航空機の発展が著しい昨今において機関銃しか装備しておりません1号戦車はもはや戦場で偵察以外に居場所は存在しません。

また航空機においても低速の複葉機であるHe51では高速単葉機には全く歯が立たないことは本国の空戦教導隊で実証済みです」

 

「そしてアジアの実戦でわざわざ証明されたな。

理論は正しかった」

 

「そして火力支援の軸である野砲に関しても我が方のは前大戦の中古品の75mmクラスであり、軽量であること以外は敵に対して劣っております。

スピードが増した現代戦においてはトラック牽引の105mmクラスが必要だと考察いたします」

 

「それは、わかっている」

「そして何よりも清軍兵士の士気は非常に低く、とても使い物になりません。」

 

「やはり駄目だったかね?」

「駄目です。将校がアレではどんな兵士もついて来ません。

大ナタを振るう大改革が必要でしょう」

 

「それが出来る皇帝ならな、現実は厳しい。

財閥とドイツの後押しなしでは何もできないお飾りだと誰もが考えているしな。

そもそも清が精強な軍隊を持つことをドイツ本国もこの商社の連中も望んではいないのだよ」

 

成る程、東亜総合商社のドイツ人経営層にしてみれば日本に対する盾のはずの清に噛みつかれることを恐れているのか。

だが、現実に言えば清は紙の盾だ。弱くていいにも限度がある。 

 

 

「ま、君も一度株主総会の記録を見てみればいい。

大雑把にいうと大口株主と小口株主とでの意見の食い違い、日本に対する意識

面白いぞ、欲まみれだと公言する連中が経営する国がどんなものか見るのはな」

 

「日本の進出に抵抗しようという運動は?」

そう、ここは商社であって国ではない。

株主は資本主義に忠実に動く。売れるなら国だって売れ、ただしなるべく高く。

実にわかりやすい国家経営の鑑だと言える。

 

「それどころか、小口株主の大半の意見は商社の株式を景気のいい日本にも解放しようというのが主流だ。株価も上がるしな。

それに対し、大口の意見はあくまでもドイツの支配する植民地としての商社だ。

その割には軍備には金をかけるな、というのが彼らの主張でもある」

 

「成る程、今の所は大口の意見が通っていますが…

それにしても軍備がお粗末すぎるのでは?」

 

東亜総合商社の主力は本国やヨーロッパのドイツ支配国で食い詰めた連中の傭兵が主力だ。

ぶっちゃけていうと時代遅れの小火器で武装した民兵に過ぎず、空は旧式機ばかり。

海に至っては連合艦隊とぶち当たったら30秒と持たないだろう。

空母や台湾から爆撃機がじゃんじゃか飛んで来て終わり!

長門と陸奥が沖合に現れただけで降伏しそうだ。

 

「本国の連中はアジア人がそのように高度な兵器を作れるはずはない、とタカをくくっているのさ。だから本国で使い古されたお古で十分だとな。

新型の輸出許可がなかなか降りん。

現場を一度も見たことのない頭でっかちな連中の言いそうなことだ」

 

凄い、あいつら皆んな馬鹿揃いだ。

これでよく前大戦を勝てたな、ドイツ。ある意味奇跡の国だよ。

 

「成る程、加えて先の株式市場の暴落によって不況の波はチャイナにまで押し寄せて来ています。

この状況で新型兵器の導入は厳しいでしょうね」

 

「ああ、だが幸いにして何にもまして株価優先の商社の株価はそこまで下がらんで済んだぞ。

ルールを捻じ曲げられる連中が支配する会社だからな。君も何口か買ってはどうかね?」

 

「検討しておきましょう」

 

「よろしい、では次の君の任務だが不本意かもしれんがテロリストの掃討に行ってもらう」

「テロ…中華民国残党ですね」

中華民国は袁世凱が好き放題して皇帝になろうとした後、大戦の後のドイツによる1926年の清国の再建支援によって消滅しました。

清が河北を支配することと引き換えに華南をドイツ、上海や香港などの西洋人の租界は自治都市になった。

滅んだ国に未練がある連中が漢人の為のチャイナを掲げて“中華民国復興”の為にテロを繰り返しているのだというのが現状だ。

 

現時点でのチャイナの人口は

清6570万人 東亜総合商社1億5000万人 奉天共和国 3200万人と巨大な市場を形成している。(貧民がやたら多いので魅力的かどうかは別として)

ドイツ7400万と比べれば凄まじい大人口のこの大陸の商業を制することがいかに魅力的かわかるだろうか。

 

「そうだ、重慶を中心にした軍閥が黙認するテログループが破壊行為を繰り返している。

我々はこれから犯人とその一味を引き渡さなければ連中に懲罰制裁を行うつもりだ」

 

「成る程、私にその露払いをせよと命じられるのですね?」

 

「そうだ、義勇兵団からも許可はとってある。

今回の任務は回答期限切れした場合の戦略爆撃の護衛だ、本国駐屯軍の爆撃機が既に待機中で回答期限切れと同時に重慶を爆撃する」

成る程、重慶爆撃をドイツ軍が行うというのか。

「了解いたしました。デグレチャフ中尉は任務を拝命いたします」

 

当初の予定は少々狂ったが、ここで更に護衛任務をこなせば教導団で発言権を得て更に上を目指すことも可能。

 

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