Fate/grace overlord   作:ぶくぶく茶釜

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#011

 act 11 

 

 結論の出ない問答は不毛。そう判断したアヴェンジャーは髪の毛を掻き毟る。

 自分でも何か言わなければ、と思うのに何も言葉が出て来ない。

 荒い鼻息を出す彼女をルーラーが背中を撫でつつ宥める。

 

「あえて言いにくい事を尋ねるが……。我らがここで死ぬとどうなるのか……。個人的な見解でいいから聞かせてほしい」

「元々が英霊ですので、消滅するのが基本かと」

 

 生物と同じく出血やケガをし、時には命を落とす。

 消滅と言っても『英霊の座』に記録されてから消滅する、というのが通説だ。

 アタランテの知識の中ではそうなのだが、実際に死んで確かめたわけではない。

 好き好んで一回死んで確かめようと思う勇者はおそらく居ない。それについてルーラーも苦笑を浮かべていた。

 

「役目を終えました~。はい、皆さん。一緒に死にましょう~。……って死ぬバカが居たら見てみたいわ!

 

 と、アヴェンジャーが吐き捨てるように言った。

 死にたがりの英霊でもない限り、率先して死ぬ人は居ない。

 罪深い英霊ならば多少はありえなくはない気もするけれど。

 

「殺し合いをする必要が無い、としても相手が恨みつらみ……。または戦いたいという理由を持っている場合はどうすればいい?」

「……あ~、居るよね~。戦闘バカって」

「違う時代の英雄と戦いたいと思う方は少なからず居るかもしれませんね。……それはそれで厄介ですが……。お互いの同意が必要だというルールでも課せば……。あぁ……、あらゆる手を使って戦いに導く場合もありますか……。う~ん」

 

 それでは結局聖杯戦争と変わらない。

 怨恨でもない限り戦闘するのは任意が望ましい。けれども血が見たいという狂気にかられた英霊が居ないとも限らない。

 殺人鬼が英霊になった場合は戦闘は避けられない、と思う。

 

「アタランテはどうしたいですか?」

 

 改めて聞かれても答えに困る。けれどもいずれは聞かれると予想していたので現時点で言える事を言うだけだ。

 

「……分からない」

 

 目的を急に失った英霊にこれからの事など分かるはずがない。

 少なくとも他の英霊と戦いたいという願いは無い。

 戦い以外となると、平穏な生活を営めれば充分だ、が適切か。

 

「ルーラーはその点ではどうするんだ? 改めて祖国救済に邁進するのか?」

「時代がかなり過ぎていますからね。でも、せっかく生を受けたのですから楽しみたいですよ」

 

 と、言いつつアヴェンジャーに顔を向ける。

 あなたはどうするのですか、という無言のメッセージを送る。

 

「私は好きなように生きるだけだ」

「サンタたる私は冬以外に活躍出来そうにないです」

 

 サンタ以前に薄着の格好を何とかしないと、と思ったところでアタランテとルーラーは気付いた。

 ランサーは寒い季節限定かもしれないが、ふとしたきっかけで装備が薄着に変わってしまう恐れがある事を。

 

「元々が英霊……。寒さには強いと思いますよ」

「そうとは思えませんが……」

「風邪をうつしたら殺すわよ」

あなた(アヴェンジャー)はバカだから風邪は引きませんよ」

「はあ!?」

「二人共ケンカしないの」

 

 元が同じ存在であってもクラスの違いなどで性格まで差が生まれるのは不思議だとアタランテは思う。

 

         ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 自分たちばかり話していたが壁際に居る施設の関係者をつい(ないがし)ろにしていた。

 話しに聞き耳を立てているようだが、合間に食事を持ってきてもらっていた事は忘れていない。

 それにランサーが先ほどから黙々とお菓子を食べ続けていたことも。

 

「興味本位で聞いていたけど……。うん。まず、最初に外に出るのはもう少し後にしてもらうよ。我々には敵が多い。君たちを信用するしかないけれど、情報漏洩はとても困るので」

「そ、そうでしたか」

「と、いうのは建前さ。君たちにも事情があるのは他の人達からも聞いている。戦闘行為が避けられないなら、しばらくここで生活する方が安全だと思うよ。永遠に、っていう事はしないつもりだけどね」

 

 やまいこの言葉はどこまで信じられるかは分からないけれど、アタランテ達の身の安全は考慮する気があるらしい。

 相手の立場に立てば施設の情報を漏らされるのは面白くない、という理由も納得出来る。

 

「……客人の安全を保証できないようでは君たちを助けた事が徒労に終わってしまう。少なくともボクは弱きものの味方でいたい」

 

 囁くようにやまいこは言った。

 他のメンバーと同意見というわけではなく、あくまでもやまいこ個人としての見解。

 

「もう少しメンバーが揃わない内はどっちみち滞在していてもらうけれどね。いきなり外に放り出して、また行き倒れられるのは寝覚めが悪い」

「……すまない。色々と世話になっていて……」

「こちらこそです。やまいこ様」

 

 顔だけはやまいこに向けて、お菓子をひょいパクひょいパクとランサーは食べ続けていた。

 それに気付いたアヴェンジャーが自分の分も食べられると思ってランサーの頭を平手打ちする。

 

「我々の他にまだ居るんですよね?」

 

 居たとしても会いたくない人種、というか英霊が居るような気がした。特にうさるいのとか人間的に嫌悪感を抱きそうなのが。

 

「連れてくる? 敵同士っぽいから隔離してみたんだけど……」

「ルーラーとしては全員を把握しておきたいですけど……」

 

 アヴェンジャーのジャンヌに顔を向けると彼女は顔をすぐ逸らした。

 話しかけるな、という意思表示だと思われる。

 

「私は構いません。……出来れば理性的な方なら、と……」

「全員かは分からないけれど……。割りと飢えに勝てない人が多い」

 

 そうやまいこが言うとアタランテ達は唸った。

 三度の食事が何より大好き、という事かも知れない。または食に恵まれない時代背景がある、とも言える。

 

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