Fate/grace overlord   作:ぶくぶく茶釜

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#023

 act 23 

 

 アインズとしては全員を監禁する案を取りたいと思った。もちろん、それは安易な方法なので面談することも大事だとも思っている。

 部下達から色々と報告は受けていたがサーヴァント達が大人しく過ごしているので、少し妥協してもいいかなと思っていた。

 既に地上に出しているサーヴァントは居る。だが、それは数ヶ月も前の話しだ。

 新たに招いた存在が前と同じく友好的とは限らない。事実、第七階層に拘束している者も居る。

 だからといって全員を一緒くたにする事は不味いとも思っている。

 

「私の鶴の一言ということで従ってくれるとありがたい」

「……主の言葉に逆らえるものか……。そちらの決定には従う所存だ。……だが、……怖いのだ。ここしばらく安穏としていて急に自由になる事が……」

「……自由が怖いのですか?」

 

 アインズとしては珍しい人種だと思った。もちろん見た目も変わっていて驚いたけれど。

 もし自分達の()()に合えば仲間達の意見次第では迎え入れる事になるかもしれない。

 特にペロロンチーノが気に入っている相手だ。アインズとて無下には扱えない。

 というか、女性はほぼ全員だと思うが。

 

「当の昔に滅びた存在が魔術師の都合で現代に召喚される。今更自由を貰っても我にはその使い方が分からない」

 

 聖杯にかける願いを聞かれる事がある。けれども自分の自由は望んでいない。

 あくまで英霊とはマスターの願いを叶えるためだけに殺し合いをする道具だ。

 もちろん、サーヴァント自身にも願望があるから最後の最後で裏切ったりする。

 

「そういうモヤモヤする気持ちがあるなら一度は思い切って外に出る方がいい」

「……そうか」

「こういう時はさっさと行動するに限る。アルベド、ユリを呼べ」

 

 控えていた角が生えた女性は恭しく一礼し、部屋を出た。

 アインズとしては敵かも知れない者だとしても無闇矢鱈に監禁したいとは思っていない。それはこのナザリック地下大墳墓は自分達の拠点だから。

 

 他人に荒らされたくない。

 

 その気持ちがあるからアタランテの地上への帰還はむしろ歓迎したい。

 だが、実際は深読みされて話しが思っていたより進まなくなってしまった。というより自分達も結構深読みしている自覚はある。

 今まで監禁しておいて外に出た方がいいですよ、と言っている自分の言動がおかしい事も。

 

         ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 数分後に部屋に呼ばれたのは一般メイドとは違う服装の人物だった。

 夜会巻きにした黒髪に色白の肌は白人系というよりは死人のような白さがあり、整った顔立ちはどこか東洋人を思わせる。

 メガネの位置を気にしているところから神経質そうな印象を与え、両腕にはメイドには似つかわしくない緑色を基調とした棘付きのガントレットが装備されていた。

 

「お待たせいたしました。ユリ・アルファ、御身の前に」

 

 アインズに恭しく跪くユリという女性。

 

「早速だが、彼女を地上に向かわせたい。転移の準備を」

「はっ、(かしこ)まりました」

「では、移動しましょうか」

「い、今からか?」

 

 今まで随分と待たせた事態が急に進展するのは逆に不審に思う。だからこそアタランテは尋ねた。

 

「人助けを目的としていてほぼ軟禁状態にしたお詫びを兼ねているつもりだ。客人はどう思っているのかは知らないが……。本来、この施設に他人を多く抱え込む気は無い」

 

 安全を考慮して色々と調査したい気持ちはある。

 仲間達が悪乗りする傾向にあるので説明すればするほど悪い方に偏りそうになるのが頭の痛い問題となっている。

 うまく説明できる自信があればいいのだが、とアインズは口には出さないが色々と頭痛の種を抱えていた。

 移動を開始するアインズというアンデッドモンスターの後をついていくアタランテ。

 施設の代表者の言葉だから、ということもあるかもしれない。疑いを少し持ちつつアインズの無防備な背中を見ていると矢を撃ちたくなる。

 実際に撃った場合は豪奢なローブ、またはガウンのような着物に刺さるか、弾き飛ばされるか。

 出来れば矢避けの効果が付与されていてほしいと思う。

 いや、今は敵対行動を取るべきではない、という思いもある。

 移動といっても室内にある別の部屋だったが。

 ユリと呼ばれる武装メイドがアタランテを気にしつつ扉に木枠のような簡素なものを設置し始める。

 

「このアイテムの事は既に知っていると思うから……」

「承知しました。……設置を終了致しました」

「うむ。では、客人。地上に通路が繋がった筈だ。私が先に移動する。あなたは後からついて来てほしい」

 

 アインズの言葉にアタランテは無言で頷く。

 それをアインズは確認しなかったようだが、黙って扉に向かって進んだ。

 階層移動の時にアタランテは似たような現象を目撃しているし、体験もしているので驚きは無かった。

 扉を開くわけではなく、別の空間へと転移する為に姿そのものが木枠の中に吸い込まれるように消える。それはまるで扉が幻で偽装されているように見えるものだった。

 通る時は問題ないのだが、転移先に誰かが居た場合はどうなるのか気になったが()()()からやって来る場合は普通にぶつかるだけだという。

 それと木枠のアイテムは常時設置する事が出来ないものなので人の往来は常に管理されているという話しだった。

 確かに出会い頭にぶつかる経験は無かった。けれどもやはりぶつかりそうなおそれがあった為に目を薄く(つむ)る。

 


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