Fate/grace overlord 作:ぶくぶく茶釜
地下空間から一転して飛び込んでくるのは日の光り。
それは第六階層よりかは穏やかな日差し。
新しい景色に鼻腔をくすぐるのは真新しい新鮮な空気。
一面は緑色一色の草原。
遠くには山も見えた。
「……ここが地上世界……」
「幻などではなく本物の地上だ」
潜り抜けた先は何処かの建物だったが最初に飛び込んできたのは外の景色。それから室内に意識を向ける。
木造建築という事は分かったが、中から見たのはこれが初めての事なので少しだけ思考が混乱した。
第六階層に似た世界かと。
アインズが手で外を指し示すのでアタランテはゆっくりと歩を進めた。
「外に出てもいいですよ」
「……う、うむ……」
今まで地下施設に囚われていた事を
このまま出ると命が無い。そんな強迫観念が襲ってくる。
それはつまり地下施設に心身ともに依存し、外の世界を恐れてしまっているからともいえる。けれども、自分が望んだ世界だ。
強引にでも進めなければ今までの労力が無駄になってしまう。
「……外、外……。外なんだ。ここが……」
一歩ずつ進み、視界一杯に広がる新緑を確認していく。
既に開け放たれた扉に手をかけて周りに意識を向ければ、なんと広い草原なのかと言葉無く驚愕する。
見渡す限り草原なのだが遠くには山や森がある。
地平線が見えるほどの草原ではない。
果てのある草原だ。
舗装された道路は無いが土が露出した獣道が見えた。だが、人の気配はまるで無い。
「この建物は初期に作らせたログハウスだ。待ち合わせ場所として良く使っている。ここは村や街からはかなり離れている。近場まで片道で二日ほどといったところだ」
後ろからアインズが説明した。
「村はあるのだな?」
「人の居ない世界ではない。それは保障する。移動に不便なのは我が拠点を守る為のもの。懇意にしている村の案内をしてやりたいところだが……。その前に客人……。この景色を見てまだ不安を覚えるか?」
そう言われてアタランテは即座に頷いた。
真新しい景色には驚いた。だが忘れてはいけないのはこの地域は自分にとって覚えの無いものであるということだ。
知らない世界だという事を改めて自覚し、そして少しずつ恐れが膨らむ。
本当にここは何処なのか、と。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
身に覚えの無い風景。
英霊としての記憶にも無い。
全くの未知。
それが視界一杯に広がっていた。
「……溢れる魔力は大地から止め処も無く……。ここは本当に神代の世界か……」
一歩踏み出せば後戻りは出来ない。
そう思わせるだけの迫力があった。
地上の大地に一歩踏み出した途端に純潔の狩人たるアタランテは膝を折り、その場に座り込む。
大地に手を当てれば生命の息吹が手袋越しに伝わって来るような感覚がある。
「……美しい世界だが……、人の気配がまるで無い……」
「この辺りは特にそうだが……。もっと向こうまで行かないと駄目だがね」
呆然と佇むアタランテに欲していそうな答えを丁寧に伝えるアインズ。
世界について。村や町について言える範囲を教える。
自然豊かな風景に感動を覚える者を無下に扱わない。それがアインズの本心かどうかは他人には窺い知れない。
「魔力については良く分からないが……。貴女がそれを感じ取れるのなら、そうなのでしょう、としか言えない」
そもそも大地に魔力が溢れている、などと聞いた覚えが今まで無かったので逆に驚いた。
確かに魔法が扱えることには不思議に思っていたが、本格的に解明しようとは思わなかった。それはそういうものだと思っていたので。
「文明は中世ヨーロッパと言われているのだが……。貴女の知る世界について私は分からない……。だから、どう言えば正確に伝わるのかは……」
「現代社会は知っている。私が召喚された時代は紀元前ではないことは理解した。その中間地点だというのならばそうなのだろう、と……」
紀元前と聞いて色々な神話体系がアインズの頭蓋の中に閃いていく。
仲間からギリシア神話やメソポタミア文明だとか色々と言葉が出ていたがアタランテという人物は何かの神話世界から現代に召喚された
アインズの理解力では詳しいところまでは解明できないが、自分の知らない概念がある事は嘘ではないようだ。
信じるか信じないか、という話しでは片付けられない事が確かに存在する。今はそういう理解でいいと判断する事にした。