Fate/grace overlord 作:ぶくぶく茶釜
アインズ達の会議が続いている間、二日三日と無為に時間は過ぎていった。その間、アタランテは地下世界で謹慎状態で佇んでいた。別に誰かに咎められたわけではない。
精神的な安定を欲した。それを言い訳にして今後の展望を思索している。
自分に出来る事は戦う事だけ。普通の生活など想定されていない。
それがサーヴァントというものだ。
その筈だった。
気にしない者は日常生活を送る。ただそれだけだ。
あの荒くれセイバーですら戦いが無くても気にしない、と言い切っていた。
「………」
宝具は今も自分の意思で出し入れできる。
能力は今も不変であった。
「……自分ひとりでは結局のところ……、答えは出ないか……」
分かってはいた。
誰かに相談したほうがいいことは。
ただ、女サーヴァントが多いので男成分を少しは追加してほしいと思わないでもない。
性格的にろくでもない連中が多い気がするし。話しかけにくい。
至高の御方とかいうのも意外と会おうとしても見つからない。または取次ぎを拒否される。
相手方から話しかけられるまで待つのが一番の早道かもしれない、と思い始めた。
食堂に行けば多くのサーヴァント、というか人間っぽい存在と出会える。
そろそろ一方的にサーヴァントと呼称するのはやめようかなと思い始めた。
元々は呼びやすいから使っているだけだ。
「……青いセイバー……でいいのかな?」
もりもりと食事している一人の英霊。
クラスはセイバーで間違いない、筈だ。
「装備が青いから仕方が無い。……何の用だ、アーチャー。食事中なのだが……」
「汝らは……、地上に出たらどういう暮らしをするつもりだ? 我らはサーヴァント……、の筈だが……。今の自分の身の振り方を考えていてな」
「誰かに召喚されれば応じるまで。それまで私はここに居るつもりだ」
「いつまで?」
「……先の事は考えたくない。もっと数が減れば考えるかもな。……確かにずっと居座れるとは思えない。だが、どうしようもないこともまた事実だ」
思考を放棄すれば悩みは無くなる。それはそれで真理ではある。
それは流石に選びたくない。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
唸りつつ青セイバーの食事風景を眺める。
器用に箸を使い、食べ続けている。
金髪碧眼から西洋の人間。それが日本文化の和食を中心とした焼き魚定食などを食べている。
食べ
自分はまだナイフとフォークなのに。
「同じ存在が一番多いのは汝のようだな。それは何か理由でもあるのか?」
「さあ? 私には
「……セイバー、ランサー、ライダー、アサシンにバーサーカー。私にもアーチャー以外の別クラスとか居るのかな」
「居ると良いな」
良いかどうか分からない。けれども、話し相手にはなってくれそうだと思った。
「……しかし、女が多いな、本当に」
「剪定事象とやらの影響かもな」
本来は起こりえないもう一つの可能性。それが切り取られた概念を『剪定事象』と呼んでいる。
史実では男性だが『女性の場合の歴史が存在したかもしれない』という、その『かもしれない』世界から召喚されるサーヴァントが居る。
平行世界にありながら本筋たる世界に認められる事がない歴史の住人達。
「漏れ出た英雄がたくさん居ようとも彼らは確かにここに居る。それを否定する者が居ても気にしない」
気にしたところで歴史が変わるわけではない。
身もふたも無い言葉ではあるが、真理だと思う。
「……狩りで生計を立てられるのであれば……、私はここで暮らしてもよいと思えるのだろうか」
「守るべき民の居ない別世界の住人になるのは簡単ではなかろうな」
しみじみと青セイバーは言った。
剣のみで今の自分には何が出来るのか。そんな事は考えたくはないが、避けられない問題であるのは自覚している。
それとここの食事はとても美味い。いつまでも居たいのが本音であった。
アタランテ達が少しの間言葉無く食事を楽しんでいると男性達が次々と席に着き始める。絶対数が少ないせいか、とても珍しい生き物に見えた。
一通りのクラスは揃っているのだが無口というか寡黙な者が多い。もちろん例外も居て、お近づきになりたくない、または性格に難がある者も。
現界する時代を間違えたとしか思えない者は懸命に視界から外しておく。
「入れ代わりが激しいなここは」
一斉に来る時もあればまばらな時もある。
移動可能な階層にそれぞれ出向き、何をしているのか。
様々な探知や感知妨害が施されていると聞いている。サーヴァントの能力を持ってすら突破できない施設の強固な防りは驚嘆に値する。
男性の多くは元バーサーカー。食事量はメイドに負けず劣らず。
身体も大きい。それと言葉が通じるのが意外な点だ。
女性陣はほぼ体型に差は無いが、胸の大きさが目立つ者がちらほらと居る。
同じ人物でもクラスによって姿形に差があったり、無かったり。
「顔は同じでも性格とか考え方はやはり違うのかな」
「完全一致は居ないだろう」
感心しているとアタランテの隣りの席にメイドが座り、更に隣りに緑色の外套を着た男性が座る。
席は自由で、誰が座っても指摘されることは無い。
至高の御方が座った席だから駄目だ、という事は無いようだ。
「戦闘民族たるサーヴァントの将来……。具体的にはどう考えたらいいんだ?」
実際の聖杯戦争において、サーヴァントは戦いが終われば役目を終えて英霊の座に帰っていく宿命だ。
それが今は一向に起きない。
完全に死ぬ以外に方法が無いくらいに。
様々な時代背景を持つ英雄たちが得体の知れない世界に幽閉され、先の見えない恐怖と戦う。
「……我々は別に死から蘇った者達ではない。世界にとってとても良くない存在の筈なんだ」
新たな住人を許容する未知の世界。
もし地球であれば何らかの抑止力とやらが働いて自分達は排除される事になる。
「今のまま人生を謳歌したいとは思わないか?」
「そんな事は考えた事もない」
そもそも自分達はサーヴァントとして
その前に誰の意思で自分達はこの世界に現界したのか。
分からない事だらけだ。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
青セイバーと別れ、自室に引き返したアタランテは浴場に行く準備を始める。
長風呂で精神を癒す為だ。
というよりは居心地がいい。
戦いの事を忘れて無心で楽しもうと少し無理をしているところは否めない。
今でも頼めば地上に出られる事になっているとメイド達から聞いている。
近場での散歩程度だが。
「……こんな事をしていていいものか」
戦わないサーヴァント。
実際、自分はもはやサーヴァントではない気がする。だが、宝具は使える。
では何の為に自分は存在するのか。
目的を失ったアタランテという一人の女性。生きているならば何らかの目的は欲しい。
「知識はある。だが……」
サーヴァントとして現界したものは結局、他のサーヴァントと戦う運命にある。
そのために宝具がある。
土木工事する為に存在するわけがない。
「……そもそも聖杯の力が無いのに英霊が存在しえるのか」
英霊とはそもそも単なる召喚儀式で呼び出せる存在ではない。
湯船に身を沈めつつ物思いに耽るもアタランテの知識には限界がある。
結局のところ結論は出せそうにない、ということは理解した。
「聖杯という概念を抜きにした場合は……。何が考えられるのか」
自分の知識に無い問題は結局のところ自分より賢い者に聞くのが早道だ。
まことに遺憾ながらアタランテは自分自身の知識を放棄する選択を選んだ。
そうしないと頭痛が鈍痛のように襲い掛かってくる。