Fate/grace overlord 作:ぶくぶく茶釜
次の日の昼ごろ、昼食を摂っていたら鳥人間であるペロロンチーノがやってきた。
もちろん、側にはお供のメイドが控えている。
「……随分と長い会議だったようだな」
「そうでもないよ。というか俺は別に君の担当じゃないし」
それでも拾った張本人だ。自分の事なのに今の今まで本当に忘れていた。
すぐさま居住まいを正す。
「……失礼。今のは言葉の綾だった。村の人達と相談して少しずつ街の方に行ってもらう事になった。君も近日中には村にでも行ってもらうけれど……。決めるのは君だ。……俺個人としては……側に置きたいな……。愛嬌とかじゃなくて……」
コレクション的な、とはさすがに口が裂けても言えない。本当に裂けていても言えない。
裸に剥くと個性が薄まる。出来れば服一式付きで欲しい。そんな欲望が渦巻く。
服装や武器もセットでアタランテという女性丸ごとが欲しい。
「他のサーヴァントにもそんなことを言っているのだろう?」
「そりゃあ、男だからね」
「地下世界で一生を過ごす気は無い。しばらくこの世界を満喫するのも悪くはないかなと思っている。その上で何も出来ないと分かれば……、汝に下る選択もあるかもしれない」
戦闘行為や聖杯にまつわる戦いでもない限り。
それ以外の自分の存在価値とは一体何なのか。それを考える時間は今まであったけれど、一つ
「そういえば、弓を持っていたよね?」
「ああ」
「あれって、複数出すこと出来るの? 一つを机に置いた後、もう一つ霊体化を解くとかで……」
「複数の宝具であれば可能だが……。我の宝具は……おそらく一つしか出せない」
青セイバーの剣も二本に増えれば脅威だ。とはいえ、他人の宝具についてはよく分からないけれど。
アタランテは試しに『
出した弓はペロロンチーノが持っても燃え上がったりはしなかった。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
ペロロンチーノは新たなメイドを呼びつける。
周りに声を発したわけではなく、魔法による伝達だ。それによって現れたのは戦闘メイドのナーベラル・ガンマ。
ふっくらと膨らんだ金属製のスカートを身に付けているメイドである。
「……毎回思うのだが……、メイドばかり呼ぶのだな」
「うちには有能なメイドが多いからね」
「……そうではなくて……。魔法を使うのならば魔導師とか専門の者を呼ぶと思っていた」
メイドも魔法を使えるようだが本来は小間使いの筈だ。それがどうして魔法を扱えるのか疑問だった。
「もちろん俺の好みだ。……確かに簡単な仕事に対して戦闘メイドでは役不足だ。……呼んでしまったものは仕方が無い、と思って諦めて」
「……そういうものか。随分と軽い扱いのようで驚きなのだが」
アタランテが疑問に思っている間、ペロロンチーノはナーベラルに命令を与え、弓を持たせた。
その後でナーベラルは魔法のスクロールを使用する。
「もう一度、弓を出す感じで……」
「うむ」
手馴れた感じで宝具を出す感覚に意識を向ける。するともう一つの
「………」
既にテーブルに乗っているものと自分が握っている宝具とを何度か往復するように見比べた。
ありえない事が起きた。それだけははっきりと分かる。
「きゃあ!」
嬌声に似た奇声を上げて宝具を投げ出すアタランテ。尻尾が総毛立っている。
ガシャと硬い金属音を響かせて二つの
唯一無二の宝具のはずがどうして分裂したのか。いや、増殖かと混乱してくる。
とんでもない事が起きたことだけは確かなのだが、何なんだこれはと何度も思う。そして、頭が熱くなってくる。