Fate/grace overlord 作:ぶくぶく茶釜
原理としては単純でペロロンチーノも予想はしていたが実際に目にすると滑稽で面白く、そして、とても興味深い現象だった。
魔力を用いて出し入れする宝具。そして、その宝具自身も魔力でできている。だからこそ霊体化させてサーヴァント達の意思により呼び出せる特別なマジックアイテムだ。
ならば同じく魔法的な加護を与えて、それに見合った魔力を新たに与えればどうなるか。
普通ならば不可能だ。ペロロンチーノの持つアイテム全てに通用することはない。それは
新たに現われた
「……詳細は……申し訳ありません。解読できない文字が多数あるようで……」
「この世界に適応した武器ではないのか? 言語は互いに理解出来るが文字は違っていたところから……。……でもまあ、結果は想像の範囲だ」
少し残念だ、とペロロンチーノは思う。
単純に自動翻訳されていなかった事だが。
「二つともアーチャーさんの意思で消せると思うよ。そして、次に出そうとすると一つしか出せなくなる」
「……そ、そういうものか」
おっかなびっくり自分の宝具をつつくアタランテ。
その光景がとても可愛く見えてペロロンチーノ的には大満足だった。
猫科の動物らしく毛羽立った尻尾は撫でない限り、すぐには戻らない。だから、とても触りたいと思った。
「弓が二つに増えた状態で必殺技を使えたら面白いですよね」
二つ使う場面はアタランテには想像も付かない。だが、とてもバカバカしい光景になりそうな気はした。
さすがに足で使うのは格好が悪い。というよりアポロンとアルテミスにとてもとっても失礼だと思った。
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宝具が増えて驚いたが奇跡を目の当たりにするのは心臓に悪い。サーヴァントならば『霊核』に悪いが正しいか。
とにかく、色々と驚かせてくれる。
「……こほん。……汝は宝具をなんと心得るっ!」
シャーと威嚇するように怒鳴るアタランテ。
自分でもどうして大声で怒鳴ったのか分からないけれど、ここは怒る場面だと思った。
奇跡を成す魔法かもしれないが、あまりにも方法が安直過ぎて混乱する。
メイドの魔法程度でどうやったら宝具が増えるのだ、と。
「出来ちゃったものは仕方ないだろう。これは俺のせいじゃない」
「……そうだとしても……。二大神に申し訳が立たぬ」
宝具が増えても効果は変わらない。そして、破壊したわけではない。
新たにもう一つ宝具が出て来てしまっただけだ。
「……父上。父上の宝具を増やしてもらって、そっちの方をオレにくれよ」
「……モードレッド卿。そなたはバカか?」
「バカでもなんでもいいから。一度は持ってみたかったんだよな。選定の剣ってやつを」
少し離れた位置に居たセイバー達が賑やかに談笑していた。
他にもアタランテの叫びに興味を持った者達が顔を覗かせてくる。
「絶対使わないから。記念品として」
「その前に貴殿は我が宝物庫から色々と簒奪していったではないか」
「あれは……、永遠に借りただけだ。盗んでないし」
苦笑しつつ荒くれセイバーがアタランテのテーブルの側まで歩み寄ってきた。
白銀の鎧の兜は無かったけれど、武装はいつも通りだった。
「真名解放すれば大抵の宝具は使えるらしいけど、アーチャーの宝具もオレが使えたりするのかな?」
「……それは分からん」
「増やしては不味い宝具があれば言ってくれ。何でもかんでも実験する気はない」
例えば無限増殖系。
地下施設が崩壊するようなものはペロロンチーノとて勘弁願いたいと思っている。
白銀の鎧をまとうセイバーがアタランテの弓を持ち、弦を引っ張る。弓矢は勝手に出て来ないが矢があればセイバーでも扱う事が出来る。
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そもそも宝具はそれぞれのサーヴァント特有の武器だ。他人に譲渡する想定にはなっていない。
聖杯戦争時は全てのサーヴァントが敵になるので武器の貸し借りは基本的にしないものだ。だから相手の宝具を持って確認するような事は今まで起こり得なかった。
「えっと、確か……二大神に奉る……だったか?」
「こ、こら。勝手に使うな」
「本当に宝具を解放できたらスゲーよな」
子供っぽく笑いつつ、魔力を少し込める。すると弓の宝具が少しだけ輝いた。
更なる加減によれば
「宝具を増やすだと……。面白い」
そう言いながら姿を見せるのは逆立った金髪に白人系の肌、黄金の
クラスはセイバーではなくアーチャー。
希少な男性サーヴァントの一人だ。
「増やした宝具を
「……いきなりやってきて何だ、貴様は」
というよりここまで派手なサーヴァントが居たとは驚きだ、とアタランテは思った。
全てのサーヴァントと面通ししたわけではないので、知らない者がまだまだ居る。それはアタランテだけの問題ではなく、後から参入した者も驚いていた。
「クラスは貴様と同じアーチャーだ」
「……雰囲気的にはセイバーにしか思えないんだが……」
弓兵が目立つ格好をしているのだから、と荒くれセイバーは思う。
見た目には騎士。派手な鎧は高貴の存在が身につけるので王クラスの英雄。
ローマ皇帝のセイバーも見た目に派手な服装だ。
「英雄王。そのアーチャーは体調が優れない。あまり苛めてくれるな」
と、助け舟を出してくれたのは荒くれセイバーが父上と呼び慕う青セイバーだった。
自分の食事を済ませ、きちんと後片付けと手洗いを済ませてからやってきた。
普段は全身鎧を身につけているのだが、今は簡素な青い服装になっている。
「なんだセイバー。
「この場所での戦闘を避けるためだ」
食事が出来る場所を壊されるのは青セイバーには我慢ならない。そういう雰囲気を怒りで表現する。
食べ物の恨みは怖いぞ、と。
もちろん宝具の増殖は多少なりとも気になっていた。