あなたへおくる物語   作:紫炎.2

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正真正銘、新稿です。ここから先はリメイクもへったくれもないお話です。

家を壊す人に、新たな出会い。

それでは、どうぞ。


第9話:少年と侍

「ちょっと! 何をしているんですか!?」

 

あまりの光景に唖然とするも、すぐに我に返り、家を壊そうとしている人を止めようとする。

 

「うるさい! こうするしか・・・・・・こうするしかないんだよ!」

「いや、だからって・・・・・・!」

「もう放っておいてくれ!」

 

僕たちの制止を振り払い、泣きながら家を壊し続ける村人さん。あまりの事態に理解が追いつかない。

 

「どうしてこんなことを・・・・・・」

「わからん・・・・・・気でも狂ったのか?」

「なら他の人が止めるでしょ!? でも他の人は・・・・・・!」

 

さやかの言うとおり、周りの人達は止めるどころか、目を背けてそそくさと去って行く。まるで関わりたくないと言わんばかりに。

 

「いくら何でもおかしいよ!?」

「俺もそう思うけどよ・・・・・・」

「あんたら、余所からやってきたのかい?」

 

当麻とさやかが言い争っていると、別の村人の男性がこちらに来た。男性はとても憂鬱そうにしており、元気がない。

 

「ならこの村から早く出ることだね」

「あの、どうしてあんなことに・・・・・・」

「余所から来たアンタ達には関係の無いことだよ」

 

すぐに村を出るんだよと言って、男の人は去って行った。そうは言われても、これを放って置くわけには行かないし、第一帰るための手段がない。

 

「気にするなと言われたけど・・・・・・」

「どうにか出来ねぇのか、あれって」

「いくら何でもあの人が可哀想だよ」

「・・・・・・まぁ、込み合った事情があるんだろう。それを探る前に俺たちは泊まる場所を探さねぇと」

 

このままじゃあ野宿になっちまうと雄二が頭を掻きながら言う。考えてみれば、僕たちは宿屋の予約をしていなかった。破壊行為は気になるけど、僕たちも泊まる場所を確保しないと野宿になる。僕たちはとりあえず泊まる場所を探すことにした。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「「「・・・・・・どうしよう」」」

「まさか宿泊拒否をされるとは・・・・・・」

 

僕たちは村の一角で立ち往生していた。理由は簡単、誰も泊めてくれないのである。

 

「唯一あった宿屋まで宿泊拒否をされるなんて・・・・・・」

「きっと当麻と雄二のツンツンヘアーが相手を威嚇したからだ・・・・・・」

「「おい」」

 

僕の冗談に二人がツッコミを入れる。正直、こんな冗談でも言わないとやってられないのだ、勘弁して欲しい。

 

「・・・・・・こうなりゃあ野宿するしか」

「い、嫌だよ! 私はしっかりとしたベッドで寝たいよ!」

「そもそも、村の中で野宿するのは迷惑行為だろ・・・・・・」

「でも、外は魔物だらけだし・・・・・・」

 

恥を忍んで村で野宿するか、外で野宿するか・・・・・・村の中央で途方に暮れてしまう。

 

「おい、アンタ達」

「うん?」

 

村の中央で途方に暮れていると、一人の少年が声を掛けてきた。少年は野袴姿をしており、とても勝ち気な目でこちらを見ている。背中には竹刀を背負っており、田舎の剣道少年という感じだ。

 

「さっきから村で何をしているんだよ?」

「えっとね・・・・・・泊まる場所を探しているの」

「泊まる場所? 宿屋があっただろう?」

「宿泊は受け付けていないだって・・・・・・」

「はぁ?」

 

さやかが事情を話すと少年は何言っているんだ、コイツという顔になる。そう言われても、実際に宿泊拒否されたからなぁ・・・・・・。

 

「あんたらって、話が下手なのか?」

「おおっと、そう来たか」

「しょうがねぇなぁ。俺が言ってきてやるよ」

「いや、だからね・・・・・・」

「な~に、任せとけって!」

 

そう言うと少年は泊める間もなく宿屋に向かっていった。

 

「いきなりなんだったんだろう、あの子」

「さあな。だが、俺たちよりも可能性はあるかも知れないな」

「どうして?」

「多分、この村のガキなんだろう。だから余所者の俺たちよりは内情を知っている分、可能性はあるってことだ」

「確かに・・・・・・っと、戻ってきたぞ?」

 

僕たちが雄二の説明に納得していると、先ほどの少年が戻ってきた。だが、先ほどの勝ち気な雰囲気とは違い、ズカズカと怒りながらこちらに来ている。あの様子だと・・・・・・彼の様子から交渉はうまくいかなかったんだろうと思い、意気消沈した。

 

「お帰り~。どうだった・・・・・・って聞くまでもないか」

「何だよ、アイツら! 『事情を知らない奴は泊められない』って! ふざけてんのか!?」

「まぁまぁ、落ち着いて・・・・・・」

 

怒る少年をさやかが宥める。彼でもうまくいかないとなると、一体どうすれば良いのか・・・・・・本格的に手詰まりとなり、僕と雄二と当麻は頭を抱えた。

 

「ったく・・・・・・おい、あんたら」

「何かな?」

「狭いの我慢できるか?」

「まぁ、屋根があるところに泊まることが出来れば大丈夫だが・・・・・・」

「じゃあ、俺の家に来いよ」

「「「「えっ」」」」

 

少年の思わぬ提案に驚く。あれ、余所者は泊めないじゃなかったのかな?

 

「そりゃあ、嬉しい提案だけど・・・・・・良いの?」

「いいって。そんなに大きくはないけど、これぐらいの人数なら大丈夫だ」

「いや、そうじゃなくて・・・・・・僕たち、余所者だよ?」

「だから、良いって言っているだろ? 第一、俺たちも余所者だっての」

「たち?」

 

少年の言葉に疑問を抱く。彼らが余所者? それに“たち”ってことは・・・・・・。

 

「もう一人いるのか?」

「あぁ・・・・・・まぁ、今は怪我人で、寝たっきりだけどな」

「そうなんだ・・・・・・一応傷クスリはあるけど」

「本当か? なら、なおさら来てもらわないとな」

 

クスリがあることを聞くと、少年は笑顔になる。その様子から察するにかなりの重傷人なのだろう。

 

「そういえば、お前の名前を聞いてなかったな」

「あれ? 言ってなかったか?」

「いや、聞いてねぇな」

「そっか・・・・・・それじゃあ、改めて」

 

少年はこちらを見据えて自信満々に言う。

 

「俺の名前は明神弥彦。侍を目指して修行中の男だ!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「じゃあアンタらは、宿題のためにここに来たのか」

「そうだね。でも、まさかこんな事態になっているなんて・・・・・・」

 

僕たちは弥彦君に案内されながら、村の中を歩く。正直、もう歩くのも億劫だが、彼の家が村の外側らしいので、そこまで歩いて行っている。

 

「また大変な時に来たもんだな」

「全くだ。まさか自分の家を壊しているキチガイに出くわすとは思わなかったぜ」

「あぁ、アレか。アレには理由があるんだよ」

「理由?」

 

雄二の呟きに弥彦君が応える。理由って・・・・・・やっぱり何かあるんだ。弥彦君は今も壊されているであろう家の方を見る。

 

「別に気がふれたとかじゃないし、趣味ってわけでもないからな」

「じゃあ、尚のことどうして?」

「それは・・・・・・おっ、着いた」

 

しばらく歩いていると、小さな一軒家に着いた。そこまで大きくなく、昔ながらの民家で軒先には木工用の道具は広がっていた。弥彦君は「遠慮すんなよ」と言いながら、家に入っていく。僕たちも弥彦君に続いて家に上がらせてもらった。

 

「「「「失礼します」」」」

「おう・・・・・・剣心! 帰ったぜ!」

「うん? あぁ、お帰り弥彦。それと・・・・・・ようこそ、お客人」

 

玄関を上がり土間を進むと、広い畳が広がっており、そこに一人布団に寝ていた男性がいた。男性は僕たちに気づくと布団から起き上がり、布団の上に座る。

 

「おい! 寝てろって!」

「大丈夫でござるよ。今日はまだ良い方でござるから」

「全く・・・・・・あっ、そうだ」

 

少々辛そうな様子の男性に弥彦君はため息を吐く。余程この人が大事なのだろう、先ほどとちがい、すごく男性を心配している。弥彦君は思い出したかのように、こちらの方を向いた。

 

「こいつら、今日の宿がないそうなんだよ。泊めてやっても良いか?」

「ふむ・・・・・・いいでござるよ」

「おっし! 良いってよ!」

 

泊まっても良いと聞き、僕たちはよかったと安心して息を吐いた。これで駄目だったら、本当に詰んでいた。男性は優しげな表情をしており、長い赤髪の後ろ髪が特徴的だった。頬には十字傷が刻まれている。

 

「ありがとうございます。えっと・・・・・・」

「剣心。緋村剣心でござるよ、お客人」

 

男性は座りながらも丁寧に挨拶をしてくれる。僕たちもできる限り失礼にならないように、自己紹介と挨拶をした。その後、僕たちの事情を話した。

 

「なるほど・・・・・・この村の伝説を聞きに」

「はい、そうなんです」

「ふむふむ、若い時から事実を確認するために、このような辺境にまで・・・・・・なんと勤勉なことか」

「いや、結局は宿題を忘れた罰みたいなものですから」

「だからといって、この片田舎にまで足を運ぶことなど、現代の学生にはそうそうおらんでござるよ」

 

僕たちの話を緋村さんは弥彦君に治療されながら笑顔で聞いてくれた。先ほど傷クスリの全部を弥彦君に渡してから弥彦君はずっと緋村さんの傷跡に塗っている。

 

 

「あの・・・・・・その傷跡は?」

「あぁ、これでござるか?」

 

緋村さんは傷クスリが塗られている傷を見る。正面から大きく切られた切り傷はとても痛々しい。

 

「これは少々油断して切られただけでござるよ」

「切られたって・・・・・・大丈夫なんですか?」

「大丈夫「なわけねぇだろ、バカ」おろろ・・・・・・」

 

元気そうにしようとした瞬間、弥彦君に間髪入れず否定されたため緋村さんは困ってしまう。弥彦君の言うとおりなら、元気そうにしていても空元気ということになる。

 

「夕食は?」

「あ、来る前に買ってきた弁当とかを・・・・・・」

「ならば、そろそろ寝るといい。生憎と仕切りがないため、男女同じ部屋になるが・・・・・・」

「あっ、大丈夫ですよ。私はそこまで抵抗はありませんから」

「それはよかった。では、悪いがお先に・・・・・・」

 

あまり触れられたくないのか、弥彦君が傷クスリを塗りおえた所を見計らって、緋村さんは服を直し横になった。その後、程なく寝息が聞こえてくる。寝静まったのを見計らって、さやかが弥彦君に尋ねる。

 

「この人が弥彦君が言っていた・・・・・・」

「あぁ・・・・・・緋村剣心。俺の親代わりで、目標としている侍だ」

 

寝ている緋村さんを心配げに見る弥彦君。その表情から緋村さんを慕っているのが分かる。

 

「間の抜けた感じがする奴だけど、いざ刀を握ると別人みたいになるんだ」

「そんな感じには見えないけど・・・・・・」

「本当だぜ。この間なんてなぁ・・・・・・」

「あ~、話の腰を折るようで悪いが、弥彦?」

「何だよ?」

「すまんが、そういう話は明日にしてもらって良いか? 今日は疲れていてな」

「あっ・・・・・・そうか。お前達って宿を探していたんだよな」

 

話に花が咲く前に雄二が話を中断する。正直、もうクタクタなのですごく助かった。弥彦君はタンスの方に行き、ここに布団があるからと教えてくれる。

 

「でも、足りるか?」

「ないなら雑魚寝でいいぞ。屋内であればいいからな」

「あっ、毛布は足りるけど、布団は一つだけだ」

「じゃあ、さやかが使えよ。この中で唯一の女なんだからな」

「普段そんな扱いしないくせに、何でこんな時だけ女の子扱いなのかな・・・・・・」

 

若干不満そうにしながらもさやかは布団と毛布を受け取り、僕たちは毛布を取る。弥彦君も自分の分の布団を取り出し、緋村さんの近くに敷く。

 

「じゃあ、俺は先に寝るからな」

「うん、おやすみ」

「おう、おやすみ」

 

そう言うと弥彦君は横になり、程なくして寝始める。僕たちは少し離れた場所に集まって、話をする。

 

「泊めてもらえて良かったよ」

「あぁ。一時はどうなることかと思ったぜ」

「本当、今日は色々あったからな・・・・・・」

「うん・・・・・・本当にね・・・・・・」

 

本当に色々あった・・・・・・帰りの駅が消えたり、魔物に出会ったり、家を壊している現場に遭遇したり・・・・・・改めて思い返してみても、一日で起こった出来事とは思えないほどのものだ。

 

「雪代さんに会えなかったら、どうなっていたかな・・・・・・」

「何とかしていたとは思うが・・・・・・無事では済まなかっただろうな」

「うん・・・・・・大丈夫かな、雪代さん」

 

僕たちを助けてくれた雪代さんのことが心配になる。あの後、一人で鉱山の方に行くと言って、魔物達がいる外に行ったきりだ。いくら強いと言っても、魔物が現れる場所に長い間いることに心配になる。

 

「・・・・・・なぁ、もう明日にしようぜ」

「当麻?」

「確かに色々あったけどよ、これ以上話し合っても情報が足りないし、あの人は俺たちが心配するほど弱い人じゃないだろ?」

「確かにそうだけど・・・・・・」

「そうだな、上条の言うとおりだな」

 

当麻の言葉を聞いてもなお、心配な僕とさやかに雄二が言葉を挟む。

 

「何を考えるにしても、思うにしろ、俺たちはこの村に来たばかりで何も知らない。だから、明日からは情報収集だ」

「情報収集・・・・・・」

「そのためにも今はしっかりと休んで、明日から動いていくぞ」

「・・・・・・うん、わかった」

「わかったよ、雄二」

 

強引に話を締めくくる雄二の話を聞いて、さやかも僕も納得した感じで返事をした。当麻や雄二の言うとおり、雪代さんはとても強いから大丈夫だと思い、明日からの行動に賛成した。

 

「よし。それじゃあ、もう寝るか」

「そうだね・・・・・・私ももう眠い・・・・・・」

「あぁ・・・・・・俺もだ・・・・・・」

「僕も・・・・・・」

 

いざ寝ようということになると、今までの疲れがどっと溢れてきたのか、すぐに眠くなる。さやかは布団に、僕と雄二、当麻は毛布を被って床にそのまま寝始める。

 

(最初は観光気分だったんだけどなぁ・・・・・・)

 

観光気分でやってきた宿題の課題研究だったけど、思わぬ事態に巻き込まれたなと思いながら、僕はそのままゆっくりと意識が沈んでいった。

 




明神弥彦と緋村研心、二人は何者か。この村で起こる異変とは。

次回もお楽しみに。
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