あなたへおくる物語   作:紫炎.2

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・・・・・・書いていたら、前話を越える字数に。本当、書きたいことが増えていくなぁ。

剣心の怪我のためにグリーンストーンを求めて、龍山坑道に向かう明久と雄二。その頃、当麻とさやかは・・・・・・?

それでは、どうぞ。


第11話:グリーンストーンを求めて

「治療できないってどういうことですか!?」

「お、落ち着いてくれ・・・・・・」

 

村の中にあった唯一の診療所に来た当麻とさやかだったが、医者の予想外の言葉に詰め寄る。医者は心底困ったように頭を掻く。

 

「大怪我した人がいるんですよ!? それを助けるのが医者なんじゃないんですか!?」

「だから、落ち着いてくれ・・・・・・何も治療しないとは言ってないよ」

「だったら!」

「お、落ち着いてくれって!」

 

医者に詰め寄る二人を落ち着かせるように医者は二人を説得する。少しすると二人も冷静になり、医者の話を聞く。

 

「私だって緋村さんの怪我を治したい・・・・・・でも、無理なんだよ」

「だから、どうして・・・・・・!」

「治療薬がもうないんだ」

 

医者は棚を開けると、スッカラカンになった棚を二人に見せる。その状態を見て、二人は愕然とした。

 

「そ、そんな・・・・・・」

「この村は物流を断たれたせいで、食料以外手に入れる術がないんだ」

「マジかよ・・・・・・」

「食料以外はって食料はどうやって手に入れているんですか?」

「ここは元々作物と採掘町として有名だったからね」

 

でも、その作物だって・・・・・・医者は苦々しく呟く。予想以上に不味い状態を知った当麻とさやか。魔物に脅されて家を破壊しなければならない上に、物流を断たれ食料も尽きかけてきている。そんな状態なら討伐を急ぐのも分かる。

 

「せめてグリーンストーンさえあれば・・・・・・」

「「グリーンストーン?」」

 

聞き慣れない言葉に二人は反応する。医者はしまったと顔を顰めてしまう。

 

「グリーンストーンって?」

「いや、何でもない」

「教えてくれ! それがあれば剣心さんは助かるんだろう!?」

「だから、何でも・・・・・・」

「「お願いします!!」」

「ウゥ・・・・・・」

 

二人は話題をそらそうとする医者に頭を下げてお願いする。話をそらそうとしていた医者だったが、あまりに二人が真剣に頼み込むので、観念して話し始めた。

 

「わかった・・・・・・とりあえず、そこに座りなさい」

「「あ・・・・・・ありがとうございます!」」

「ただ、一つだけ約束だ。この話を聞いても、その場所に行かないこと。いいね?」

「えっ、どうして・・・・・・?」

「それが採れる場所は今や魔物の巣窟になっているからさ。下手すれば死に繋がる」

 

医者として、それは許せないからねと医者は強い口調で二人に告げる。二人は渋々ながらも、はいと応えた。

 

「グリーンストーンっていうのは、この地方だけで採れる傷薬だ」

「傷薬?」

「通常の傷薬とは違い、外傷であれば非常に高い治癒能力を持つ鉱物でね」

「鉱物って・・・・・・薬草とかじゃないんですか?」

「あぁ。一説では、龍山の薬草や解毒草の成分が地中を通ってカラーストーンに染み出した結果だと言われている」

「カラーストーン?」

 

さらに聞き慣れない単語に二人は困惑する。医者はそういえば説明していなかったとカラーストーンの話をする。

 

「カラーストーンっていうのは龍山坑道で採れる特有の鉱物で、同じ色同士をぶつけると割れてしまう石のことなんだ」

「そんな物が・・・・・・でも割れたら意味がないんじゃ・・・・・・」

「まぁ、そこは色々とこの村独自の加工技術で売りに出したりしているだけど・・・・・・今はいい」

 

医者は詳しい説明を切り上げて、グリーンストーンについて話し出す。

 

「先程も言ったとおり、グリーンストーンには外傷に対して非常に高い治癒能力がある。また、一説では呪いも消し去ってくれると言われているんだ」

「それは・・・・・・すごいですね」

「あぁ。それさえあれば緋村さんの怪我も治せると思うだけど・・・・・・」

「魔物が?」

「あぁ・・・・・・」

 

そう言うと医者は悔しそうに俯いてしまう。その姿から、医者としての役割を果たせずに辛い気持ちがにじみ出ているかのようで、当麻とさやかは何も言えなくなってしまう。

 

「医者として恥ずかしいよ・・・・・・村の人達のメンタルケアもうまくいかないし、怪我人も治せないなんて・・・・・・」

「それは・・・・・・」

「これじゃあ、何のために私は医者になったのか・・・・・・」

 

こんな時のためじゃなかったのかと俯きながら話す医者の姿に、さやかと当麻は途方に暮れてしまう。医者でさえこうなのだ、他の村の人達もこれぐらい参っているのか、それ以上か・・・・・・この村の現状を二人は実感した。

 

「困難に対して何も出来ないなんて・・・・・・これじゃあ、巴さんの二の舞だ」

「えっ・・・・・・? それってどういう・・・・・・」

「おい! ここに学生二人が来てないか!?」

 

何か重要なことを呟いた医者に詳しく話しを聞こうとした時、突然診療所に弥彦の声が響いた。何事かと三人は診療所の外に出る。

 

「あっ、弥彦君! どうしたの?」

「二人ともいたのか! ちょっと不味いことになった!」

「不味いこと? それって・・・・・・」

 

剣心さんの容態が悪化したのかと二人は思ったが、弥彦の口からそれ以上のことが飛び出した。

 

「吉井と坂本が龍山坑道の方に行っちまったんだよ!」

「なんだって!? あそこは今は魔物の巣窟になっていて、一般人は立入禁止なんだぞ!? 何故そんなところに・・・・・・!」

「俺がグリーンストーンのこと話してしまって・・・・・・」

「それでか・・・・・・」

 

弥彦の話を聞いて、医者はなんたることだと天を仰ぐ。弥彦もどうしようととても困惑していた。すると、当麻とさやかが走り出す。

 

「おい君たち!? どこに行く気だ!?」

「決まっているだろ! 二人の所に行くんだよ!」

「話を聞いていなかったのか!? あそこは魔物の巣窟なんだぞ!?」

「そうだとしても、二人を放っておけないよ! 二人は友達なんだもん!」

「おい、待て!」

 

医者の制止を振り切り、さやかと当麻は町の出口に向かう。周りの様子などお構いなしに二人は急いで村の外に向かう。

 

「急がないと・・・・・・二人が危ないよ・・・・・・!」

「あぁ・・・・・・特に明久だ。あいつは誰かのためなら自分のことを顧みねぇからな!」

「うん、誰かさんと一緒でね!」

 

二人は先に行った二人のことを、特に明久の方を心配しながら走っていく。そして村の出入り口に着き、そのままの勢いで村の外に出る。

 

「ふぎゃ!?」

「あぶっ!?」

「うおっ!?」

 

いざ坑道へといったところで、誰かとぶつかってしまう。勢いよくぶつかったため、二人はとても痛そうにしていた。

 

「うぅ・・・・・・痛い・・・・・・」

「痛つぅ・・・・・・あ、すみません・・・・・・」

「痛ってぇな・・・・・・って、お前ら?」

「あっ・・・・・・あなたは!」

 

痛がりながらも謝る二人だったが、ぶつかった人を見て、二人は希望を見出したかのように喜んだ。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ふぅ・・・・・・やっと着いたね」

「あぁ・・・・・・まったく、ここまで来るだけで一苦労だぜ」

 

村の外に徘徊している魔物達を何とかやり過ごしながら進んでいき、とうとう龍山坑道に辿り着いた。ここまで来るのにどれだけ苦労しただろう。

 

「ガチのかくれんぼをすることになるとはね」

「その言うわりにはやりなれていたが?」

「うん・・・・・・何でだろうね?」

 

逃走や殴り合いなら慣れているんだけど、隠れるのはそこまで得意じゃなかったはずだ。どうしてかなと首を傾げる。

 

「まぁいいさ、とにかくとっとと取る物取って村に戻るぞ」

「うん、そうだね」

 

いくら考えても思い浮かばなかったので、雄二の後に続いて坑道に入っていった。坑道の中はランプの灯りで思っていたよりも明るく、先の方まで見渡せた。通路自体はそこまで大きくないが、人が数人通れるぐらいには広く、天井もそれなりに高い。

 

「もっと狭いイメージがあったけど・・・・・・ここはそうでもないね」

「そうだな。案外捜し物はすぐに見つかるかもな」

「確かグリーンストーン・・・・・・だよね」

 

弥彦君から聞いた話を思い出しながら、先に進む。グリーンストーンっていうからには緑色の石ってことだよね。だから、緑色の石を探せばいいってことかな。僕は周囲を注意深く見渡す。

 

「緑色の石・・・・・・緑色の石・・・・・・」

「・・・・・・止まれ」

 

雄二が手を出して、僕を止める。急に目の前に手を出されたので少し驚いた。一体どうしたのだろう?

 

「雄二? どうしたの?」

「静かにしろ。魔物だ・・・・・・」

「ッ・・・・・・」

 

その言葉に僕は積み立てられていた木箱の陰に隠れる。雄二も同じように隠れて、魔物の方を伺う。僕も木箱からゆっくりと魔物の方を伺う。

 

「・・・・・・ナメクジか?」

「にしては唇でかいよ」

 

通路の先にいる魔物らしき生き物を警戒しながら見る。普通のナメクジの数倍はある奴で、唇が異常に大きいのが特徴的だ。他にはスライムもいる。

 

「道が一本道の分、逃げ道や隠れる場所が限られてくるな」

「どうする? このままじゃあ戦闘は避けられないよ?」

「いざとなれば闘うが・・・・・・なるべく避けたい。だから、このまま無視して突き進むぞ」

「うん、わかった」

 

魔物を睨み付ける雄二が拳を握るのを見て、僕も覚悟を決める。僕も無事じゃあ済まないことぐらいは覚悟済みだ。僕たち二人は魔物がこちらとは正反対を見る時を見計らって、物陰から出て走り出す。

 

「ッ!?」

「雄二!」

「構うな! 進め!」

 

もう少しで抜けると思った時、魔物はこちらに気づく。僕たちはこのまま走り抜けようとする。魔物は行かせまいとこちらに飛びかかってきた。

 

「うおっ!?」

「あぶなっ!?」

 

間一髪それを避けて、僕たちはそのままの勢いで坑道の奥に走っていった。しばらくすると、魔物の姿が見えなくなり、幾らか開けた場所に着いた。

 

「ハァハァ・・・・・・やっぱり・・・・・・魔物に会うたびに・・・・・・・こうやって逃げるの、疲れる」

「できる限りは・・・・・・怪我をするのは・・・・・・避けたいからな。しょうがねぇ」

 

息を整えるために近くの石に背中を預けて座った。魔物との闘いを避けるためとはいえ、こんなことを続けているといつか大怪我しそうで怖い。だけど剣心さんのためなら、そして弥彦君のためならば頑張れる。

 

「ふぅ・・・・・・よし、奥に行こう」

「だな・・・・・・その前に・・・・・・」

 

この石をどうにかしないと、と進路を阻む石を見る。普通の石とは違い、目の前に広がる石は光に反射するほどの赤い石で、他には青色、黄色の石が行く手を阻んでいた。

 

「何か、普通の石とは違うな」

「触っても大丈夫かな?」

「まぁ、大丈夫だろう。さっきもこの石を背にしていたし」

 

それなら大丈夫かなと思いつつも、どうすべきかと悩む。思いの外、この石達が邪魔して進めないのだ。石をよじ登って行こうにも、大きく天井近くにまで高さがある。これでは通り抜けることができない。

 

「放置された鉱山とはいえ、こうもでかい石がゴロゴロと転がっていたんじゃなぁ・・・・・・」

「これじゃあ、先に進めないよ」

「だが、道はこの先に進んでいるし、レールも通っている。つまり、この先に進む術があるってことだ」

「う~ん・・・・・・石をツルハシとかで砕くとか?」

「それが一番現実的なんだが・・・・・・肝心のツルハシがな・・・・・・」

 

辺りを見渡してもツルハシやドリルといった採掘用の道具はなく、あるのは使い古したトロッコしかなかった。

 

「あぁ、くそ。もっと鉱山について情報収集するべきだった」

「ごめんね、僕が急がせたばっかりに・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・どうしたの? 急に呆然として?」

「い、いや、何でもねぇ」

 

僕が謝ると雄二が急に呆然としてこちらを見てきたので、どうしたのかと尋ねるが雄二は顔をそらす。時々転入生5人組は僕と話していると、こんな風になる時がある。僕の言葉に驚いているようだけど、一体何に驚いているのだろうか?

 

「と、ともかくだ。どうにかして先に進まねぇと・・・・・・」

「石か・・・・・・とりあえず、どけてみる?」

「あぁ、やってみるか」

 

雄二と僕は青色の石の前に立ち、石を思いっきり押した。

 

「うおぉ!?」

「うわぁ!?」

 

石は思っていたよりも簡単に動き、勢いよく奥の方に進んだ。僕と雄二は簡単に動くとは思っていなかったため、前のめりになって倒れそうになるが何とか踏み止まった。

 

「お、思っていたより軽かったな」

「うん、そうだね・・・・・・ってあれ?」

 

姿勢を戻し、前の方を見ると押したはずの青い石がなくなっており、地面には青い破片が散らばっている。

 

「これってもしかして・・・・・・砕けた?」

「あぁ、らしいな。だが、どうやって・・・・・・?」

 

砕けた青い石の破片がある場所に行き、その周辺を調べる。周りと変わらず色鮮やかな石があり、行く手を阻んでいる。特にこれといって変化はないようだが・・・・・・。

 

「やっぱり何もないね・・・・・・」

「いや、変化はあるぞ」

「えっ?」

「破片が多すぎるし、散らばっている場所がおかしい」

 

雄二はしゃがみ込み、地面に落ちている破片を見渡す。僕も雄二と同じように地面の破片を見ると、石の進行方向とは別の場所に同じ青い破片が散らばっていた。これはどういうことだろうか?

 

「えっと・・・・・・つまり?」

「・・・・・・もしかすると」

 

何が起こったのかさっぱりわからない僕に対して、雄二は何か思いついたのか、今度は赤い石の方に近寄り、それを押して別の赤い石にぶつける。すると、石同士が音を立てて砕け散った。

 

「おぉ!?」

「なるほどな・・・・・・削り取る道具がいらないわけだ」

 

合点がいったと雄二は頷く。なるほど・・・・・・つまり・・・・・・。

 

「石と石同士をぶつければ良いんだね?」

「おそらくは同じ色同士でしかならないがな」

 

見ろと雄二は他の石を見るように言う。辺りを注意深く見渡すと、異なる色同士の石が接触している物がある。だが、それらの石は割れていない。

 

「だから同じ色同士でしか?」

「そういうこった。不思議な石だよな」

 

そう言って雄二は行く手を阻む石を押し始める。僕も同じように同じ色の石が重なり合おうように石を押した。しばらくして、邪魔になっていた石が全部砕け、奥の道に進めるようになった。

 

「うし、さっさと進むか」

「うん、行こう」

 

僕と雄二は魔物の気配に注意しながら、坑道の奥に進んでいく。途中、先程と同じように色鮮やかな石が行く手を阻むが、同じ色同士をぶつけて砕いていく。

 

「ふぅ・・・・・・これで何個目かな?」

「さぁな、数えちゃいねぇよ・・・・・・なぁ、明久」

「うん? 何、雄二?」

 

そうやって進んでいると、雄二が話しかけてきた。僕は他の道を阻む石を押しながら応える。

 

「お前は昔、何やっていた?」

「僕の昔? 一体どうしたの?」

「ふと気になってな。人の命が掛かっているかもしれないとはいえ、躊躇せずにここに行こうとしたからな」

 

ふむ・・・・・・つまり、雄二は昔、僕に何かあったからこんな無茶なことを躊躇せずにできたのかと思っているわけだ。神妙そうな雄二の顔から察する。

 

「特別、何かあったわけじゃないけど・・・・・・強いて言うなら、当麻のおかげかな?」

「アイツが?」

「うん・・・・・・小学生の頃に出会ったんだけど、当麻はとても不幸なんだよ」

「不幸って・・・・・・お前・・・・・・」

「道を歩けば棒に当たり、走り出しては高確率で転ける。強面のお兄さんに絡まれたり、能力者同士の喧嘩に遭遇したりと・・・・・・正直、神様に嫌われているんじゃないかなってぐらいに不幸だよ」

 

実際、高確率で当麻は色々な不幸に合っている。見ていて哀れな・・・・・・ってぐらいに。僕はこれまでの当麻の不幸をしみじみと思い出す。

 

「本当、神様って残酷だよね」

「そんなにか。つーか、それがどうしたんだよ?」

「当麻はね、そんなことに負けなかったんだよ。どんなことがあっても挫けず、まっすぐ立ち向かっていってね。だから、僕もそんな風になりたいと思っているんだ」

 

当麻のように誰かのために一生懸命になれる人になりたいから、僕は躊躇せずグリーンストーンを求めてここに来た。話しながら押していた石が砕け、さらに奥に進む道が開かれる。

 

「まぁ、そんなところかな?」

「・・・・・・やっぱり、変わらねぇな」

「えっ? 何か言った?」

「いや・・・・・・ただ、納得しただけだ」

 

進むぞと雄二は先に進む。僕はそれに続いて坑道の奥に進んだ。しばらく進んでいると、広々とした空間に出た。ここにある石は壁側に寄せてあるのと、中央に集められている。何か特別な物でもあるのか、魔物の気配がない。

 

「ここは・・・・・・最深部か?」

「みたいだね・・・・・・ここにグリーンストーンがあるのかな?」

 

一息吐いて辺りを見渡す。正直、魔物から逃げたり、石を押したりと結構疲れてきている。帰りも同じ事をしないといけないから相当きついのが本音だ。

 

「早く見つけて帰ろう。結構時間が掛かったし」

「だな。さ~て、どこにあるか・・・・・・と」

 

見渡す限り魔物の存在は感じられないが、それでも出てこないとは限らないため、辺りを警戒しながらグリーンストーンを探す。壁側の方にはそれらしい石が見つからない。

 

「ねぇな・・・・・・」

「・・・・・・ねぇ、雄二」

「何だ、明久?」

「あの石が密集している辺り、緑色に光っていない?」

「・・・・・・お、本当に光っていやがる」

「でしょ? きっと、あそこにあるんだよ」

 

中央の石が密集している場所に緑色に光っているのを見て、そこに雄二と一緒に向かう。石が密集しているだけあって、砕く石の順番を考える必要があったけど、雄二が簡単に解いてくれてほどなく緑色の石まで辿り着いた。

 

「おぉ・・・・・・すごいね・・・・・・」

「あぁ・・・・・・見事だな・・・・・・」

 

緑色の石はとても暖かい光を放っており、疲れた体を癒やしてくれた。石や土などで覆われている坑道の中で、唯一豊かな自然の息吹を感じさせてくれる不思議な雰囲気を醸し出している。そんな暖かい石を前に、僕と雄二はその石に魅入っていた。

 

「・・・・・・色々あったけど、こんな良いものを見られたなら、来た甲斐があったね」

「あぁ・・・・・・正直、この世界に来て、初めて良かったと思えるぜ」

「そうだね・・・・・・って、この世界?」

「い、いや! 何でもねぇよ! さぁ、さっさと石を運び出そうぜ!?」

「む~・・・・・・まぁ、いっか。全部は無理でも抱えて運べる分は持っていこうか」

 

雄二が気になることを言ったような気がしたけど、はぐらかされたのでグリーンストーンを削ることにした。さて、どうやって削ろうかなと思い、僕はグリーンストーンに近づく。

 

「う~ん・・・・・・他の石に比べて、この石は硬いね」

「みたいだな・・・・・・おっ、良い物発見」

 

そう言うと雄二は石から少し離れていき、すぐに戻ってきた。その手にはツルハシがあった。

 

「どうやらグリーンストーンにはこれを使うそうだな」

「よし! 早速、それを使ってグリーンストーンを削ろう」

「その必要はない」

「「・・・・・・誰だ!?」」

 

唐突に僕たち以外の声が聞こえ、僕たちは身構える。僕体以外に一体誰が・・・・・・!

 

「何故必要ないか? それは・・・・・・ここで死ぬからだ!」

 

謎の声と共に何かが猛スピードで突っ込んできた。咄嗟に僕たち二人は防御するが、そいつはそのスピードのまま、僕たち二人を蹴飛ばした。

 

「がっ!?」

「ぐわっ!?」

 

僕と雄二は蹴飛ばされた衝撃で、グリーンストーンに叩きつけられた。

 

「いたぁ・・・・・・雄二、大丈夫?」

「な、何とか・・・・・・いてぇ!?」

 

僕は何とか起き上がるが、雄二は足を痛めたのか、うまく起き上がれない。よく見ると、一緒にツルハシが雄二の足下に転がっている。恐らく、ツルハシが足に直撃したのだろう。僕は雄二を気にしつつも、襲ってきた相手を見た。

 

「ほぅ・・・・・・生きていたか。人間にしては強い方だな」

 

そいつは二足歩行で歩く大柄の虎で、開いた口には真っ赤な人間の顔があった。その目はこちらをしっかりと見据えている。

 

「だ、誰だ、お前は?」

「冥土の土産に教えてやるよ・・・・・・俺はワータイガー。名前はまだないが、いずれいただく予定さ」

 

ワータイガーと名乗る奴は余裕綽々といった感じで、こちらを見下してくる。

 

「ここまでご苦労さん。だが、残念ながらここでお前らは終わりだ。なんたって、ここは俺様の狩り場だからな」

「狩り場・・・・・・だと?」

「そうだ。最後の希望とばかりにその石に縋り付いてきた人間を、この俺が襲うのさ」

 

最高だぜとワータイガーは舌なめずりをする。明らかに僕たちのことを格下と見て油断しきっているが、実際今もダメージが深くて、僕は立ち上がるだけで、雄二は話を聞くだけで精一杯だ。

 

「やっと見つけて喜んでいるところをこの俺様が襲う。そして、実力の差を思い知って、絶望するのさ。本当に楽しくてしょうがないぜ」

「命乞いをしても?」

「あぁ、命乞いをしてもだ。その時の人間の味は本当に格別だぜ」

「この野郎・・・・・・!」

 

あまりの胸くそ悪い話にイライラする。どうにかしてコイツに一発殴りつけてやりたいけど・・・・・・僕は雄二の方を見る。雄二も同様に歯を食いしばり、怒りを隠せていない。だけど、未だに立ち上がることが出来ずにいた。

 

「どうする? お前達も命乞いをするか? もしかしたら助けてやらんでもないぞ?」

「誰がするか、この獣野郎!」

「おー、おー、威勢の良いことだな、お前は。で、そっちは・・・・・・?」

 

雄二から僕の方を見るワータイガー。僕もコイツに頭を下げるのも、命乞いをするのもまっぴらゴメンだ。でも、このままじゃあ・・・・・・僕は一瞬、雄二を見て、覚悟を決めた。

 

「・・・・・・」

「おっ・・・・・・?」

「なっ、おい! 明久!?」

 

僕は膝を着き、頭を下げて・・・・・・土下座をした。

 

「バ、バカ野郎!? 何をしてやがる!?」

「おー、おー、何て健気な奴なんだ、お前は」

「・・・・・・どうか、どうか命は助けてください」

 

そして、命乞いの言葉を口にした。

 

「ひゃーはっはっはぁ!! 今の話を聞いて、本当に命乞いをしやがってぜ、コイツ!? 本物のバカだぜ!?」

「あ、明久・・・・・・」

 

あの野郎の耳障りな声が聞こえて、怒りで体が震える。雄二は僕の情けない姿に失望したかのような視線を送ってきているのが分かる。僕も同じ立場だったら失望しているだろう。それでも、僕は土下座の姿勢を続けた。ワータイガーはこちらに音を立てて、目の前までやってきた。

 

「いいぜ、お前のその命乞いに免じて・・・・・・」

「明久・・・・・・お前って奴は・・・・・・」

「喰ってやるよぉ! いただきまーす!!」

 

すぐ近くにいるのか、ワータイガーの臭い息が頭に掛かった。

 

(今だ!!)

 

僕は手に砂を握りしめて、全力で頭を上げた。

 

「ガッ!?」

「い、つぅ!?」

 

ゴチンと鈍い音が響き、後頭部に強烈な痛みが走る。その痛みで作戦が成功したこと理解しつつも、痛みを無視して握りしめた砂をワータイガーに投げつけた。

 

「ぐわぁ!? 目がぁ!?」

「ハッ! バーカ! 誰がお前なんかに命乞いするかよ、間抜け野郎!」

 

そして、僕は目を擦るワータイガーの横をすり抜けて走り出した。

 

「・・・・・・はっ!? おい、明久! まさか、お前!?」

「おらぁ! 来いよ、間抜け野郎! テメェに追ってこれる度胸があるならな!?」

「こ、この人間ごときが!? 覚悟しろ!」

 

ワータイガーは僕の思わぬ反撃に怒り狂い、走る僕を追いかけてきた。よし、狙い通り・・・・・・後はコイツを鉱山の外まで連れ出せれば!

 

「やめろぉ! 明久!」

 

雄二の声を置き去りにして、僕は背後から猛烈な勢いで迫ってくるワータイガーを相手に命をかけた鬼ごっこを始めた。

 




な、長かった・・・・・・そして、これが年内最後の投稿になるでしょう。

強力な魔物であるワータイガーを相手に命をかけた鬼ごっこを始めた明久。彼は生き延びることが出来るのか?

次回をお楽しみに。そして、良いお年を。
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