あなたへおくる物語   作:紫炎.2

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ようやく完成しました・・・・・・また長くなったなぁ。いつになったら第1章が終わるのかな。

それでは、どうぞ。



第15話:雪代巴とモヤモヤ

「それでは失礼します」

「お大事に~」

 

診察を終えて、医者の草壁とその手伝いをしているさやかが民家から出る。二人は他の民家を壊していた男性の診察のため、この民家を訪れていた。

 

「あの様子なら大丈夫かな」

「本当によかった・・・・・・いきなり倒れたって聞いていたから」

「気が狂うほどのことをずっとし続けていて、疲労がたまっていたんだろう」

「剣心さん復活を聞いて、安心したと」

 

納得した様子でさやかはウンウンと頷く。それだけ剣心の復活が彼らに希望をもたらしたのだろう。草壁とさやかは診療所に向かう。

 

「おっ、さやか」

「あっ、当麻に雄二」

「おう。診察は終わったのか?」

「あぁ、終わったよ。過度の疲労以外に問題はなかったよ」

 

歩いている途中、村の見回りをしていた当麻と雄二に会う。二人は剣心がいなくなる間、村の守りをどうするかを話し合うため、この村の村長と話をしてきたのだ。

 

「そっちはどうだった?」

「とりあえず話は聞いてもらえた所だな。この調子で明日には具体的な話をするさ」

「雄二の奴、この手の話し合いに慣れている様子だったぜ」

「そうなのかい? その年齢でそれはすごいね・・・・・・」

「まぁ、似たような奴らの扱いには慣れているからな・・・・・・」

 

そう言って雄二は目線を反らす。三人は何か大変なことでもあったのかと思い、深く聞くのはやめておいた。そうしている内に診療所に着き、そのまま中に入った。

 

「ふぅ・・・・・・初めて診察の手伝いをやったけど、結構大変だね」

「それにしてはやり慣れている感じだったけど・・・・・・もしかして、医者を目指しているのかい?」

「いえ、そこの当麻がよく怪我をするので、自然と出来るようになっただけですよ」

「そ、そうなのかい・・・・・・」

「当麻・・・・・・お前・・・・・・」

「ち、ちげーし・・・・・・俺だって、怪我をしたくてしているわけじゃないし・・・・・・」

 

男二人に見られ、思わず視線を反らす当麻。本人も悪いと自覚しているのか、バツが悪そうに頭を掻く。

 

「俺だって怪我したくねぇよ。でもな・・・・・・なぜかいつも怪我をするほどの不幸に見舞われるんだよ・・・・・・」

「本当・・・・・・何故か、ね・・・・・・」

「お、おう・・・・・・」

「そ、そうなのかい・・・・・・」

 

これまでのことを思い出し、どこか遠くの方を見る当麻とさやか。何とも言えぬ二人の雰囲気に押され、雄二と草壁はただ頷くことしか出来なかった。これ以上この話題を引っ張るわけにはいかないと雄二は別の話をすることにした。

 

「な、なぁ草壁さん。この村ってカラーストーン以外に何かあるのか?」

「えっ、カラーストーン以外に? う~ん・・・・・・あっ」

「おっ、あるのか?」

「あるにはあるけど・・・・・・話して良いのかな・・・・・・」

 

何か思いついたか草壁であったが、どういうわけか話そうとしない。その様子から話すべきかどうかを悩んでいるようである。

 

「この村の英雄についての話なんだけど・・・・・・それならどうかな?」

「英雄? それって誰のことなんだ?」

「この村の名前にもなっている女性のことさ。名前は『雪代巴』と言う」

「あれ? それって・・・・・・」

「・・・・・・あぁ、俺たちの目的じゃねぇか」

「そう! そうだよ! 私たちの宿題!」

 

思い出したとさやかと当麻は手を鳴らす。この村に来てからは何かとゴタゴタに巻き込まれて、すっかり忘れていたらしい。

 

「うわぁ・・・・・・忘れるところだったよ。これでさらに『忘れました』なんてことになったら・・・・・・」

「あぁ・・・・・・想像すらしたくねぇ」

 

二人は副担任のジェイド・カーティスの嫌みったらしい笑顔を思い出しながら身震いする。

1ヶ月の間でジェイドの得体も知れない恐怖を味わった雄二も、二人と同様に身震いをした。

 

「そうだな・・・・・・草壁さん、その話を今お願いできますか?」

「別に構わないけど・・・・・・」

 

そう言う草壁の顔はあまりいい顔をしていない。その表情に何かしらの引っかかりを覚える雄二だったが、当麻とさやかは早く話を聞きたいのか、草壁をせかす。

 

「お願いします! これで宿題ができませんでしたなんてことになったら・・・・・・」

「殺される・・・・・・冗談抜きで殺される・・・・・・」

「わかった、わかったから落ち着いてくれ。さて・・・・・・」

 

草壁は診察室の椅子に座り、三人に適当な場所に座るように言う。三人は各々椅子とベッドに腰を掛けて、話を聞き始める。

 

「この話は昔、どういうわけか大勢の魔物が攻め込んできた時の話だ」

「マジか・・・・・・土御門の言うとおりじゃねぇか」

「でも、どうしてこの村を?」

「そこは今でも分かっていないんだ・・・・・・ただでさえアフリカ大陸が魔王に占拠され、魔物の脅威が世界中に知れ渡った時期だっただけに、みんな大慌てさ」

 

当時のことを思い起こし、草壁は宙を見上げる。あまり良い思い出ではないのか、複雑そうな表情になる。

 

「後から知ったけど・・・・・・日本の初めての大規模な魔物の動きはこの時が初めてらしくてね、田舎だったのも相まって警察も軍隊も初動が遅れたんだよ」

「そうだったんだ・・・・・・てっきり沖縄占拠が日本での大規模活動かと思っていたよ」

「本当、何でこんな田舎の村を狙ったんだろうな?」

「ちょっと待て。何だ、今の沖縄占拠って」

 

話の途中、聞き慣れない言葉を聞いたのか、雄二が話を中断して二人に尋ねる。それに対して、雄二以外は全員唖然とした。

 

「・・・・・・マジで知らない?」

「が、概要は知っているし・・・・・・」

「うそぉ・・・・・・さすがに常識だよ?」

「これが今の学生のレベル・・・・・・か・・・・・・」

 

あまりの反応にさすがの雄二も焦り誤魔化そうとするが、誤魔化しきれず三人から可哀想な目を向けられてしまう。

 

「教科書にしっかりと書かれているから・・・・・・な?」

「・・・・・・スマン、何か・・・・・・話の腰を折って・・・・・・」

「いいよ・・・・・・別に、ね?」

「えっと・・・・・・続きを話して良いかな?」

「あっ、はい。どうぞ」

 

何ともいたたまれない空気となり、強引に話を変えるために草壁が話を戻す。

 

「とにかく、当時はとても混乱していてね、逃げても無理だ、このままじゃあ殺される・・・・・・そんな感じの雰囲気が村全体を覆っていたんだ」

「車とか電車とかで逃げたりは?」

「電車はまだ走っていなかったし、車も持っている家族がさっさと逃げてしまったからね・・・・・・本当、あの頃は酷かった」

 

そう話す草壁の表情は重い。余程、酷い状況だったことがその表情から見て取れる。

 

「その時の私は子供で、大人達が慌てふためいているのを見て、とても不味いことが起こっているとしか分からなかった。だから、不安になって見ているしかできなかった」

「その時にいたんですか?」

「あぁ。その時だ、村で一人の女性が声を上げたのさ」

「それが雪代巴さん・・・・・・」

「うん・・・・・・あの人は村の中でも少々異質で、剣術を納めていたし、魔法も使うことが出来たんだ」

「魔法を?」

 

魔法を使えることを聞いて驚く当麻とさやか。まさかこんな辺境の地で使える人がいるとは思わなかったからである。

 

「村の若い人がどんどん都会に行く中、彼女は村に一人残り村の仕事をよく手伝っていた。神秘的な雰囲気もあって、村の中では人気者だったよ」

「それはまた・・・・・・いい人だったんですね」

「あぁ・・・・・・本当にいい人だった」

 

そう言って草壁は近くの棚に置いてある写真立てを取り、三人に見せる。そこには男の子が二人と農作業着を着た女性が一人、仲良く写っていた。雲一つない青空の下、金色の稲穂を背にして、三人仲良く写っている。

 

「うわぁ・・・・・・綺麗な人・・・・・・」

「この写っている子供が?」

「片方は私で、もう片方は弟の縁だよ。コイツはとても巴さんに懐いていてね・・・・・・」

「・・・・・・縁?」

 

楽しそうに語る草壁に、ふと聞き覚えのある名前を聞いた雄二が首を傾げる。最近、どこかでその名前を聞いた気がすると。

 

「雪代縁っていうのさ。あいつは今は・・・・・・」

「えっ? 雪代縁って・・・・・・」

「あの縁さん?」

「知っているのかい!?」

 

急にあの人かなと言おうとした時、急に血相を変えて当麻達に掴みかかる。あまりの変わりように三人は焦ってしまう。

 

「お、落ち着いてください。そんな急かされても・・・・・・」

「あ、あぁ、済まない・・・・・・何せ消息不明の奴の名前を聞いたものだから」

「えっ!? 消息不明!?」

「あぁ、縁は・・・・・・っと、これは話の続きを話した後の方がいいな」

 

彼がこの村の出身であることと、消息不明扱いになっていることに三人は驚いた。彼はこの村周辺におり、今も村の近くにいると思っている。そんな彼が消息不明扱いになっていることに驚きを隠せない。草壁は雪代縁の話をする前に、先程の話の続きを話していく。

 

「この女性・・・・・・雪代巴さんは大勢やってくる魔物を『自分がこの不思議な力で倒してきます』と言って魔物の軍勢に対して立ち向かったんだ」

「立ち向かったって・・・・・・たった一人で!?」

「・・・・・・まぁ、そうだね」

 

当時の敵の数がどれくらいかはわからないが、すくなくても軍勢と呼ぶからには数え切れないほどの魔物がいたのだろう。それはたった一人で立ち向かうなんて・・・・・・。

 

「すごいなぁ・・・・・・その人」

「うん、本当に凄いよ。それだけ村の人達のことが大切だったんだね」

「・・・・・・あぁ、その人は本当に凄い人だった」

「・・・・・・?」

 

どこか歯切れの悪い言い方に雄二は首を傾げる。話を聞く限り、当麻とさやかのように雪代巴という人物は勇気ある人という印象を受けるが、草壁の様子から何か違和感を感じる。

 

「その人はたった一人で立ち向かい、魔物達を追い返したんだ」

「はぁ~・・・・・・まさしく英雄だったんですね」

「あぁ・・・・・・彼女はまさに英雄だった。命と引き替えにね」

「あっ・・・・・・それって・・・・・・」

「大勢の魔物を相手に無事で済むはずもなく、彼女はその闘いで命を落としたんだ」

 

死んでしまったということに、重い空気が流れる。彼女は大切な物を守るのと引き替えに、命を落としたという現実が重くのしかかる。少しして、草壁はまた話を続ける。

 

「・・・・・・彼女の死を悼んだ村の者達は、彼女の功績を語り継ごうと決めた。村の名前も『巴村』と改めて、彼女のことを忘れないようにと村の英雄として祭っている」

「雪代巴さんのことを・・・・・・」

「優しいあの人のことを忘れないように・・・・・・これがこの村に語り継がれているお話さ」

「成る程な・・・・・・よく分かったぜ」

 

話を聞いた当麻とさやか、雄二は話の内容をよく噛みしめる。村を守るために闘い、命を落とした女性の話を、決して忘れないように。

 

「それでね、この話には続きがあって・・・・・・英雄である雪代巴さんには弟がいるのさ」

「それが・・・・・・」

「そう、さっき名前が挙がった雪代縁さ」

 

そう言って草壁は先程戻した写真立てをもう一度手に取る。その写真を三人に見せながら、一人の少年を指さす。

 

「この黒髪で、生意気そうな顔をしているのが縁さ。コイツ、根っからのシスコンでね」

「シスコン・・・・・・?」

「それに黒髪って・・・・・・」

「あぁ。まぁ、両親が早い内に亡くなって、姉の巴さんしか家族がいなかったから無理もないけどね」

 

昔を懐かしむように草壁は縁のことを話す。まるで友達だったかのように。

 

「もしかして、友達だったんですか?」

「あぁ、家が隣近所だったからね。こんな田舎だし、他に若い子供もいなかったから自然と仲良くなったんだ。それで・・・・・・」

「すみません、多分人違いかと・・・・・・あの人、髪の色は白かったですし」

「そうか・・・・・・いや、いいんだよ」

 

気にしないでくれと草壁は言うが、人違いと聞いて気を落としているのがよく分かる。よほど大事な友達だったのだろう。

 

「縁の奴、巴さんの一件があって少しした後に消息不明になったんだ」

「消息不明・・・・・・」

「巴さんのことで村全体と揉めてね、その後すぐに行方を眩ませたんだ」

 

草壁はどこにいるのかわからない雪代縁のことを想う。その雰囲気から、とても仲が良かったことが分かり、さやかと当麻は何も言えなくなってしまう。唯一、雄二は何か考え込むかのように目を伏せていた。しばらくすると、雄二が顔を上げる。

 

「草壁さん、今の話は本当か?」

「あぁ、そうだけど・・・・・・?」

「そうか・・・・・・そうなると、やはり・・・・・・」

「雄二・・・・・・?」

 

何か分かったかのように雄二は頷く。その様子を見て、どうしたのかと聞きたげにさやかは声を掛ける。雄二は何もないとばかりに首を振った。

 

「とりあえず、話してくれてありがとうございます、草壁さん」

「いや、いいさ。あまり面白い話ではなかっただろう?」

「いいえ、とても参考になりました」

 

話の内容はいい話ではなかったが、三人は宿題の課題はこれで大丈夫だと思い安心した。

 

「そんな大変なことがあったなんてね・・・・・・」

「こんな田舎の話だし、あまり信じてくれる人もいなかったからね」

「ここを攻める利点なんてあるのかって話だからな」

「今となっちゃわからねぇが・・・・・・まぁ、いいさ。話はこれぐらいにしようぜ」

 

雄二がそう言うと草壁は荷物を整えて、全員で診療所を出る。草壁は剣心の診察のために、雄二達は泊まっている場所が剣心の家だからである。四人は剣心の家に向かうのであった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

村の人達が寝静まった後、僕は一人家の外で空を見上げていた。夜の時間帯のため、薄暗かった周囲はより一層暗く、闇が覆っており静寂だけが辺りに漂っている。

 

「眠れないのかな?」

「剣心さん・・・・・・」

 

そこに剣心さんが現れて、僕の方に近寄ってくる。そのまま隣に立ち、先程の僕のように空を見上げた。

 

「こうも闇に覆われていては、星空が輝く夜空を見ることも出来ぬな」

「そうですね・・・・・・」

 

僕は剣心さんと一緒に空を見上げる。空は雲に覆われているような空ではなく、唯々底が見えない闇が広がっていて、まるで今の僕のような様相だった。先程から頭に浮かぶモヤモヤがより一層広がりながら、大きくなっていく。

 

「何か悩みでも?」

「えっ、いや・・・・・・その・・・・・・」

「こんな時間に、しかもそのような浮かない顔をしていれば、誰でもそう思うでござるよ」

「・・・・・・やっぱり、そう見えますか」

 

剣心さんに指摘され、僕はいつもより弱い笑みを浮かべた。隠すようなことでもないし、正直誰かに話したかったことなので、僕は剣心さんに話すことにした。

 

「昨日、縁さんに助けられた時のことなんですけど・・・・・・」

「確か、強い魔物に襲われた時だったかな」

「はい。その時に縁さんが躊躇なく魔物の首を刎ねたんです」

 

あの時の光景を思い出しながら、ゆっくりと話していく。僕を殺しに掛かった虎男のような魔物、そのまま殺されかけた時、縁さんのナイフが奴の頭に刺さり、そのまま首を切り落としたこと・・・・・・今思い出してもモヤモヤとした嫌な気持ちが頭に残る。

 

「あの魔物のことなんて気にしていないんですけど・・・・・・」

「うん、それで?」

「何ていうか・・・・・・目の前で首を飛んで・・・・・・それで・・・・・・」

「ふむ、そうか・・・・・・」

 

別にあの魔物のことを気に掛けているわけではなく、目の前で首が飛んだ光景が記憶に、目に残ったのだ。衝撃的に、鮮明に・・・・・・僕は立っているのも億劫になり、その場に座り込む。剣心さんは未だに空を見上げている。

 

「普通に、平和に暮らしていれば、そのようなこととは無縁であるからな・・・・・・君が戸惑うのも無理はない」

「それはそうなんですけど・・・・・・」

「だが、本当はそうではないのだろう?」

 

僕が本当に悩んでいることを分かっているかのように優しい笑顔で剣心さんはこちらを見る。その笑顔と雰囲気に僕の中のモヤモヤが形になっていくような気がして、そのまま言葉にする。

 

「縁さんに助けてもらったのに、僕はその時の縁さんを人間とは違う生き物のように思ってしまったんです」

「それが君の心に引っかかってしまっていると・・・・・・」

「はい・・・・・・」

 

僕を殺そうとした虎男のような魔物が言葉を話せたせいか、変な肩入れをしてしまっている。そのせいか、奴の首が飛んだ時の光景が目に焼き付き、それをした縁さんを複雑に考えてしまう。

 

「縁さんは僕のことを助けてくれたのに・・・・・・その恩人に対して僕は・・・・・・」

「ふむ・・・・・・君は優しいな」

「優しいって・・・・・・そんなことは・・・・・・」

「いや、優しいよ」

 

突然、剣心さんに優しいと言われて焦ってしまう。今までそんなことを言われたこともないし、自分のことをそんな風に思ったことすらない。だから、いきなりそんなことを言われてちょっとむず痒い。

 

「自分が殺されかけた後に、そんな風に相手のことを想えるのは中々できないことだからな」

「そうなんですか?」

「あぁ、特に拙者のように闘いに身を置いている者は・・・・・・な」

 

腰に差している日本刀に手を置きながら、剣心さんは物思いに耽るかのように目をつぶる。その仕草から伝わる物静かな雰囲気に、僕は黙って剣心さんの言葉を待つ。

 

「拙者のように力ある者達が誰かを守っても当然のようにされ、そんな風に守ってくれた人に色々な想いを抱くことなど、ほとんどなくなったからな」

「そんなことが?」

「あぁ。先程弥彦が話してくれた雪代巴という女性にしてもそうだ。守ってくれたことに感謝をしているが、その女性自身のことはあまり考えていないようだった」

 

昼頃に弥彦君が意気揚々と話してくれた女性の話を思い出す。そういえば、彼女は命を賭けて村を守ったということはわかったが、どうして彼女がそこまでして村を守ろうとしたのかは分からなかった。命を賭けるほどの理由・・・・・・一体どういうものだろう。

 

「君がその縁という人物のことを想うのなら・・・・・・そのまま彼のことを想い続けてやってみてはどうかな?」

「想い続ける・・・・・・」

「あぁ。そうすれば、その複雑な思いにも答えが出ると思うでござるよ」

 

想い続ける・・・・・・か。うん、何かやることが分かった気がする。剣心さんに諭されて、僕は頭の中をぐちゃぐちゃにしていたモヤモヤがスッキリと晴れ渡ったような気がした。僕は立ち上がって、剣心さんの方に体を向ける。

 

「ありがとうございます、剣心さん。おかげで悩みが吹き飛びました」

「そうか、それはよかった。では、そろそろ寝るとしよう。まだ時刻は深夜の時間だからな」

「はい!」

 

剣心さんは身を翻して、そのまま家に戻る。僕も気持ちが落ち着いたのか、あくびをしながら剣心さんの後に続いた。とりあえず、今やれることやろう。そして、事件が解決した後に改めて縁さんを探し出して、色々話をしよう。全てはそこからだ。

 




せまる対決のために準備を続ける。そして、その当日に・・・・・・。

次回も、お楽しみに。
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