討伐に向けて、動き出す人々。
それでは、どうぞ。
「坂本君、今集められる人数は集めたよ」
「ありがとうございます、村長」
「いやいや、これぐらいしか私には出来ないからね」
巴村の村長に雄二はお礼を言う。彼らは今、まだ気力が残っている村人と一緒に村の集会所に集まっていた。何故、集まっているのか、それは昨日のうちに雄二が村長に頼んでおいたからである。
「しかし、みんなを集めて一体どうするつもりだい?」
「なに、ちょっと景気づけをしようかと・・・・・・」
理由を尋ねる村長に雄二は少しはぐらかしながら答える。大広間に集められた村人達は一体全体何なのかと、ざわめき立っている。雄二はその様子を見ながら、少し目を閉じる。
(ここが正念場だ・・・・・・気合い入れろ)
自身に言い聞かせながら、静かに深呼吸をする。あの時、Aクラス打倒のためにFクラスの奴らをやる気にさせた時のようにすればいい。そうすれば、きっとうまくいく。あの時とは違う、緊張感に包まれながらも雄二は静かに壇上を見据えた。そして、覚悟を決めて壇上に上がる。
「おい、誰か現れたぞ?」
「誰、あの子?」
「まだ子供じゃないか・・・・・・」
集めた張本人である村長が現れると思っていた村人は、突然現れた雄二に困惑する。困惑する空気の中、雄二は視線や空気を無視して壇上に上がる。壇上に置いてあるマイクに電源をつけると話し始めた。
「今日はここに集まってくれて、ありがとうございます。俺は外からやってきた学生の坂本雄二です」
「学生・・・・・・?」
「外からやってきたって・・・・・・」
現れた少年が学生であることと、学生が壇上に上がり話し始めたことに村人達は困惑する。雄二は自分に注目が集まったことに一息つき、この場にいる村人全員を見据える。
「この村の現状について、村長や他の人に話を聞きました。その上で・・・・・・」
ここで言葉を一旦止め、もう一度村人全員を見渡す。そして、もう一度彼らを見据えて言い放った。
「このままでいいのか、アンタらは」
強く、語気を荒げて言い放った。
◇◆◇
翌日、当麻とさやかは巴村を散策していた。昨日、草壁の話を聞いて、その人が守った村をしっかりと見ておこうと思ったのだ。
「あらためて見てみると、本当に田んぼしかないね」
「そうだな・・・・・・これが話にあった巴さんって人が守った故郷なんだろうな」
来た時は家を泣きながら壊すという奇行に驚いたが落ち着いて村の中を散策すると、緑が豊かな場所で田んぼは水田となっており、所々に苗が見えている。陽が照っていれば、日の光に照らされた綺麗な水田を見ることができるだろう。
「できれば、空が明るい時に来たかったな。それなら、もっと良い気分で観光できたのにな」
「うん。それに・・・・・・あんなものまで見なくて良かったよね」
そう言うさやかの視線は破壊された建物に注がれていた。彼らが来た時からそれはあり、とても雑な壊され方をしたそれは今の村の現状を物語っているかのようだ。当麻もその惨状を見て、歯がゆい思いをする。
「・・・・・・これ以上、あんなものは増やさないようにしないとな」
「大丈夫。明日には剣心さんがやってくれるって!」
「だな・・・・・・俺たちも助力したかったけど・・・・・・」
当麻は複雑そうな表情で頭を掻きながら、今朝のことを思い出す。今朝の朝食の時、明日の討伐について剣心は『一人で闘う』ことを話した。
『一人で闘うって・・・・・・大丈夫なんですか?』
『あぁ・・・・・・前回は敵について何も知らなかったが故に敗北した。だが、今度はそうはいかん』
『トリッキーな敵ってことですか? なら、なおさら誰か手伝った方が・・・・・・』
『いや、そういう敵ではない。奴は単純に強く、現状、拙者しか相手にならん』
『そんなに強いですか・・・・・・』
断固として譲らぬ剣心に全員が黙ってしまう。それほどまでに強い敵を前に、剣心は周りに気を配れる余裕はないということなのだろうか。そんな中、雄二が口を開く。
『そんなに強いなら、なおさら剣心さん一人を行かせるわけにはいかねぇんだが・・・・・・』
『いざ奴と闘うとなると、奴一人に集中しなければならない。そうなれば、他の者を守ることができないのだ』
『さらに集中も削がれるってことか・・・・・・』
『分かってくれたか?』
剣心の言葉に雄二は少し考え込みながらも頷いた。こうして、剣心の言うことを受け入れ、剣心以外の者達は村に残ることになった。
「剣心さんがあそこまできっぱりと言うってことは、相当強いだろうな」
「うん、心配だよね」
直に剣心の強さを見たわけではないが、訓練の風景を見ていた明久とずっと一緒にいた弥彦の話では、剣心はいわゆる剣の達人のような強さを備えているらしい。そんな剣心が一度敗れている敵なのだ、なおさら心配になる。
「せめて超能力が使えればなぁ・・・・・・」
「レベル0の俺たちにそれは無理だろ・・・・・・魔法だって使えないのに」
さやかは悔しそうに両手を見つめ、当麻も空に右手をかざす。
レベル0、それは学園都市において超能力の才能、能力が該当するものがないという証拠である。学園都市には多くの魔法知識や技術がある一方、脳の研究も進めており、その過程で少年少女に超能力が発現することがある。その能力の規模や潜在能力を計測して、レベル1から5までの判定を下される。
その中で、さやかと当麻は共にレベル0の判定を下されており、超能力はないとされている。
「こう、サイコキネシスのような能力があればなぁ・・・・・・」
「超能力少女さやかちゃん、ここに見参!ってね・・・・・・」
それさえあれば剣心さんに助力することができたのにと肩を落とす二人。ちなみに、当麻の幻想殺しは計測上、該当するものがなく、発展のしようがないということからレベル0ということになっている。
「あーあ、こんなに力がないのが悔しいと思う時が来るなんて思わなかったよ」
「俺は何度かあったが・・・・・・今が一番そう思う」
掲げた右手を握りしめて、悔しそうな表情を浮かべる当麻と俯き、両手を握りしめるさやか。二人は共に自身の力のなさを悔やむ。
「・・・・・・あれ?」
「どうした・・・・・・って、何だ、あの集団?」
これ以上悩んでもしょうがないと顔を上げたさやかだったが、何やら何人かの集団が剣心の家に向かって行っているのが見えた。当麻も同じようにその集団を見る。その集団から並々ならぬ雰囲気が立ちこめている。
「村の人達・・・・・・か?」
「何か、すごい気合い入っている雰囲気だけど・・・・・・」
「何だろうな・・・・・・俺たちもついて行ってみるか」
「うん、そうだね」
尋常ではない雰囲気にさやかと当麻は心配になり、二人は集団の後をついていくことに。程なくして、集団は剣心の家に着く。家の方では剣心が軒先で素振りをしており、明久と弥彦がそれを眺めていたようだ。
「えっ、ちょ、なに。何これ?」
「な、何だよ。アンタ達、一体どうしたんだよ?」
「・・・・・・これは村の人々、一体どうしたのかな?」
急に現れた集団に明久と弥彦は戸惑い、剣心は集団の方を見る。さやかと当麻は集団の後ろの方にいるため、表情を窺い知る術はなく、ただ見守ることしか出来ない。剣心の声に応えるかのように、少し年を取った者が前に出る。
「緋村さん、俺たちも一緒に戦うよ」
◇◆◇
「剣心、やっぱり俺も・・・・・・」
「駄目でござる。特に弥彦は」
「何でだよ、俺なら・・・・・・」
「そもそも弥彦には村の守りを頼んだはずだぞ。それを放棄するのか?」
「う~・・・・・・」
「じゃあ、僕が・・・・・・」
「お主はもっと駄目だ」
「ですよね~・・・・・・」
少し時間を遡り、朝の朝食を食べ終わった後のこと。剣心の家に集まっていたみんなはそれぞれやることがあるため、各々散って行った。草壁は村人の巡回検診、雄二は一人でどこかに出かけ、当麻とさやかは村の見回りに行った。残った剣心は調子を取り戻すため、軒先で剣の素振りを、明久と弥彦はその剣心を見守っていた。
「剣心さんの素振り・・・・・・何て言うか、格好いいよね」
「あぁ、素振り一つとっても、こう・・・・・・堂に入っているって感じだよな」
「うん。刀を振り下ろす時、ヒュって風を斬るような音がするし」
「俺も早く刀で素振りしてぇなぁ・・・・・・」
「勘違いしないでほしいのだが、本来、素振りに日本刀を用いることはないでござるからな」
「えっ!? そうなんですか!?」
「マジかよ!?」
「うむ。時間がないため日本刀を使っているが、本来は弥彦のように竹刀や木刀を用いる」
衝撃の事実に驚く二人。その様子を見て、剣心は早い内に訂正できて良かったと安心した。特に弥彦は剣術を志すだろうと思っていたので、本当にそう思う。驚く二人の顔を少々困ったような顔で見る剣心だったが、気を取り直して素振りに戻る。
「うわぁ・・・・・・初めて知ったよ。てっきり、竹刀から木刀、そして日本刀に段階を踏むのかと思っていた」
「俺もだ・・・・・・マジかよ・・・・・・」
驚いていた二人だが、落ち着いてくるにつれて意気消沈し始める。二人は、特に弥彦はこのままいけば、稽古で日本刀が扱える日が来ると思っていたので、結構落ち込んだ。弥彦と違い、そこまで落ち込んでいない明久と素振りに集中していた剣心は弥彦の落ち込み具合を見て、何とか励まそうとした。
「弥彦君、大丈夫だって! いつか刀を振れる時が来るって!」
「うむ、そうだぞ弥彦。いずれは・・・・・・うん?」
何かがこちらに迫ってきている雰囲気を感じて、剣心はそちらの方を向く。その視線の先には何人かの人々が、こちらに向かって歩いてきていた。明久と弥彦もそれに気づき、そちらの方を見る。
「えっ、ちょ、なに。何これ?」
「な、何だよ。アンタ達、一体どうしたんだよ?」
「・・・・・・これは村の人々、一体どうしたのかな?」
思いも寄らぬ事態に困惑する二人に対し、剣心は警戒しながらやってきた理由を尋ねる。すると、集団の中から一人年を取った者が歩み出る。
「緋村さん、俺たちも一緒に戦うよ」
「・・・・・・何だと?」
前に出てきた者の言葉に剣心は耳を疑うかのように驚く。それを聞いた明久と弥彦も驚いていた。
「俺たちも自分が生まれた故郷を守りたいんだ!」
「そうだ! これ以上、魔物の好き勝手にはさせねぇ!」
「畑仕事で鍛えた力を見せてやる!」
最初の一人目の声を皮切りに、他の人達も声を上げる。思わぬ事態に困惑する三人の前に、もう一人集団から歩み出る。その者は三人にとって、とても見知った顔だった。
「雄二!? 何でその人達と一緒に!?」
「何でお前がそいつらと一緒にいるんだよ!?」
「・・・・・・坂本君、もしやこれは君が?」
「あぁ、そうだ。俺がこいつらに発破を掛けたんだ」
雄二はしてやったりと意地悪い笑顔を浮かべながら、三人に近寄る。その表情を見て、コイツが村人に何かをして、このように決起させたのだと確信した。盛り上がる村人達をかき分けて、当麻とさやかが近寄ってきた。
「い、一体全体どうしたの、これ?」
「何で村人達が決起しているんだ?」
「なに、剣心さん一人に託すのもどうかと思ってな。動けそうな人達を集めて、説得したんだよ」
他の者が集まってきたところで雄二は説明を始める。雄二はなるべく剣心を万全の状態で、この一件を引き起こした魔物の所に連れて行きたかった。だが、剣心はどういうわけか頑なに同行者を認めない。
「少なくても戦える弥彦や、戦闘経験のある明久や当麻、あとは応急手当に長けているさやかがついていけば、よっぽどのことがない限り後れを取ることはないと思った」
「あれ? 雄二は?」
「無論、俺も行くつもりだった。特にバカが無茶をやらかして、マズイ事態になるのだけは避けたいからな」
「雄二、バカと言って僕を見るのはやめようか。まるで、僕のことをバカと言っているようじゃないか」
「その通りだよ、バカ」
「てめぇ!?」
「まぁまぁ・・・・・・」
普通にバカ呼ばわりされて怒る明久だが、話が進まないと思ったさやかが押しとどめる。雄二は怒る明久を無視して、話を続ける。
「俺はなるべく剣心さんには万全の状態で闘いに望んで欲しい。だが、戦える人間がいなくなると村の守りが心配だ」
「・・・・・・少なくとも拙者がいない間の守りは心配だな」
「だから、戦える人数を増やしたってことだ。少なくても一日、いや半日ぐらいなら村の住人だけでも大丈夫だろうと思ってな」
「ふむ・・・・・・考えたものだ」
剣心は雄二の考えに驚く。雄二はどんな理由があるにせよ、元凶の討伐は絶対に果たされなければならない。そうしなければ、自分たちは学園都市に帰れないからだ。だから、万全を喫するために村人達を立ち上がらせたのだ。
「苦労したぜ。俺たちのように元気があるならまたしても、ここの住人は反抗する気力がほとんどなかったからな」
「うむ・・・・・・拙者もそこだけはわからん。一体、どうやって村人をやる気にさせたのだ?」
「この村の現状と剣心さんが復活したというチャンス、そして雪代巴さんのような二の舞にしてはいけないってことを村人達に話したんだよ」
若干、脚色も入れさせてもらったがな、と雄二は一言付け加えて奮起させた理由を言った。雄二は改めて剣心の方を向く。
「剣心さん、俺たちのことを心配してくれるのはよく分かっている。だが、アンタ一人に背負わせたくないんだ」
「そうだ、剣心さん。アンタの邪魔にはならねぇから!」
「坂本君、それに村の人達も・・・・・・」
「だから、俺たちを連れて行ってくれ」
頼むと雄二と村人達が頭を下げる。大勢の人間に頼み込まれて、さすがの剣心も口を噤む。しばしの沈黙の内、剣心は一息ついて口を開く。
「・・・・・・ふぅ、致し方あるまい」
「じゃあ!」
「うむ・・・・・・助力を頼もう」
「っしゃ!」
しかたがないと剣心が折れて、雄二達の同行を許可する。他の村人の人達もやったと喜ぶ。明久と当麻、さやかに弥彦はとりあえず同行を許されたことに喜ぶのであった。
◇◆◇
その日の夜・・・・・・夜かどうかは定かではないが、時計の上では夜の時間。明久達4人は剣心の家の近くの外で話し合っていた。
「いよいよ明日だね・・・・・・緊張するよ」
「あぁ・・・・・・ここまで来たんだ。元凶の魔物を討伐して、さっさと終わらせようぜ」
「そうだね・・・・・・って言いたいけど、当麻がいるんじゃなぁ・・・・・・」
「おい」
さやかの冗談交じりの言葉に、当麻はツッコミを入れる。さやかは当麻が近くにいると、経験上トラブルなしで終わったことはほとんどなかったゆえの言葉である。無論、さやか
はそれが当麻のせいだとは思ってはいない。
「これも雄二のおかげだね。雄二が村の人達を説得できなかったら、僕たちは留守番だったからね」
「・・・・・・」
「何さ? 驚いた顔でこっち向いて・・・・・・」
「いや・・・・・・お礼を言うという知識がお前にあったことに驚いていただけだ」
「おい、テメェ」
あまりの言い草に明久は雄二を咎める。その様子をさやかと当麻が呆れた様子で見ており、それに雄二が気付く。
「何だ、二人とも。俺の言葉に何かあるのか?」
「いや、だってねぇ・・・・・・」
「沖縄占拠を知らなかったなんて言う奴の言葉かよ・・・・・・」
「えっ? ちょっと、誰が・・・・・・?」
「おい、ちょっと待て」
「雄二の奴だよ。コイツ、沖縄占拠を知らなかったらしいぞ」
「うそぉ!!?」
「う、うるせぇ!? そのことについては放っておけ!」
あまりのことに先程の雄二の言い草も吹っ飛んだ明久。雄二は知らなかったことをばらされたことよりも、明久にそのことを知られたことに焦ってしまう。当麻とさやかは頭を掻きながら、その時のことを説明する。
「草壁さんから巴さんの話を聞く時に、沖縄占拠についての話が出たんだよ。その時にコイツ、沖縄占拠って何だって尋ねてきたんだよ」
「えぇ・・・・・・それを知らないってことは、やっぱり雄二はゴリラの親戚なんじゃ・・・・・・」
「し、知らないものはしょうがねぇだろ!? それと、誰がゴリラの親戚だ」
「いやいや、普通に知っていて当然のことだからね?」
三人の反応からして『沖縄占拠』とは知っていて当然の出来事であり、知らない雄二の方がおかしいというレベルの出来事のようだ。雄二はこの世界に来てからは、とりあえず学園都市での生活に慣れることを優先していた。さらに言うと、歴史についてはほとんど相違ないとばかり思い込んでいたため、今回のようなことに繋がってしまった。
(戻ったら、歴史の差異について調べないとな・・・・・・また面倒なことになりそうだ)
「雄二、早いところ勉強しなおした方が良いよ?」
「・・・・・・」
「何さ?」
「いや・・・・・・何でだ?」
「そりゃ・・・・・・ねぇ・・・・・・」
「ジェイド先生に知られたら、どうなるか・・・・・・」
爽やかに笑うジェイド・カーティスの顔を全員が思い出し、全員が身震いする。雄二としても、初日に自分に気付かれることなくつるし上げ、島田にいまだ癒えぬトラウマを植え付けた男として、恐怖の対象でもある。
「あの先生、一体何者なんだよ」
「さぁ・・・・・・噂じゃあ人の生き血を飲む真祖の吸血鬼とか」
「人間を目で殺す神話生物とか」
「笑顔で人を地獄に落とす邪神とか言われているな」
「本当に、本当に何者なんだよ。あの先生」
「それは人間なのか?」
「うん?」
ジェイド・カーティス先生について話し合っていたら、急に背後から声を掛けられて後ろを振り向く雄二達。そこには呆れ顔でこちらを見る雪代縁がいた。
「あっ、雪代さん。こんばんは」
「どこに行っていたんですか? 心配したんですよ?」
「別に俺がどこに行こうと関係ないだろう」
「いや、心配しますって・・・・・・」
関係ないとばかりに仏頂面を浮かべる雪代を心配する明久達。何度も危ないところを助けてもらっている明久達としては、その恩人である雪代の無事はとても大事なことだ。
「そうだ! 雪代さん、明日の魔物討伐に協力してくれませんか?」
「あっ、そうだよ! 雪代さんと剣心さんの二人なら絶対いける!」
「あぁ! 雪代さん、どうですか?」
「断る」
「「「えぇーーー!?」」」
明久、当麻、さやかは断られるとは思っていなかったため、不満の声を上げる。そんな声などどこ吹く風とばかりに雪代は頭を掻く。
「どうしてですか!?」
「お前らに教える必要はない」
「「「・・・・・・」」」
「そんな不満たらたらな目で見ても、教えねぇよ」
同行を頑なに拒否しようとした剣心同様、雪代も理由を話そうとはしなかった。できれば、もう少し粘りたかったが、命の危機を救ってくれた恩がある手前、そこまで強く言えず渋々引き下がった。
「そういえば雪代さん、どうしてここに来たんだ?」
「あっ、そういえば・・・・・・」
「深い理由はないが・・・・・・強いて言うなら、何故か騒がしかったから来ただけだ」
「あぁ、それはですね・・・・・・」
さやかは今日起こったことを縁に話す。話を聞いている間、仏頂面だった雪代だが、話が終わると眼鏡の頭をクイッと指で押し上げる。
「・・・・・・それで、お前達は明日討伐に出ると」
「はい・・・・・・とは言っても露払いが精一杯ですけど」
「戦えるのか? お前達が?」
「油断しなければ、スライムとかは大丈夫ですよ」
当麻と明久は手を握りしめる。二人は学園都市で能力者相手に喧嘩をすることもあったため、他の者達よりは戦う術を持ち合わせている。だから、落ち着いて戦えば大丈夫だと思っている。
「一応、それっぽい装備をしますけど・・・・・・」
「怪我をしても私が治しますしね」
「回復魔法でも使えるのか?」
「いや~、あくまで応急手当ですよ」
「あっ、雪代さん!」
立ち去ろうとする縁を明久が引き留める。雪代は足を止め、近づいてくる明久の方を見る。
「これが終わったら、みんなでお祝いしましょう。雪代さんも一緒に!」
「・・・・・・そこまで俺にこだわる理由は何だ?」
「僕たちが雪代さんのことをもっとよく知りたいからですよ。雪代さんって何か、秘密にしていることが多そうですし」
「話す必要がないからな」
「ほら、そうやって・・・・・・まぁ、無理して話す必要はないですけど」
そこで明久は一息を入れて、改めて雪代を見る。
「僕たちは、いや、僕は雪代さんともっと話をしたいんです。だって、雪代さんともっと仲良くなりたいんですから」
「・・・・・・」
「おぉ・・・・・・出たな、明久のストレート攻撃」
「本当に、ああ言ったことをスラリと言えるよね・・・・・・」
「あいつ、ここだとそうなのか」
明久の真っ直ぐな言葉に、言葉を失う雪代。裏表のない言葉がどう聞こえたのか、雪代は仏頂面を崩し、唖然としていた。少し間が空き、眼鏡を一回直したあと、雪代は明久に手を伸ばし、そのまま乱暴に頭を撫でた。
「ちょっ!? なに!?」
「裏表もなく言いやがって・・・・・・お前の頭はお花畑か」
「ち、違いますよ!?」
「・・・・・・考えといてやるよ。じゃあな」
乱暴に撫でていた手を離し、雪代はそのまま立ち去った。明久は乱暴に撫でられた頭を押さえながら、立ち去っていった方を見続けている。
「・・・・・・あいつって、いつもああなのか?」
「仲良くなりたいって決めたらな。恥ずかしいことも臆面もなく言ってくるんだよ」
「本当、質が悪いよね、明久って」
その後ろで先程の一部始終を見守っていた雄二と当麻、さやかは各々の意見を言い合っていた。
◇◆◇
「起きろ、明久!!」
「うひゃあ!? えっ、何、何なの!?」
翌朝、当麻の怒鳴り声で明久は目を覚ます。急にたたき起こされ、何事かと起こした当麻を見る。
「どうしたの、当麻。それに雄二とさやかも・・・・・・」
「どうしたもこうしたもねぇ! 大変なことになった・・・・・・」
「大変なこと? 一体何が・・・・・・?」
急に起こされたせいか、若干眠たそうに目を擦りながら明久は尋ねる。眠たそうにしている明久に対して、三人は尋常ではない慌てようを醸し出している。
「剣心さんが・・・・・・」
「えっ・・・・・・何かあったの!?」
剣心の言葉が出て眠気も吹っ飛び、完全に目が覚めた明久は身を乗り出す。彼の身に何かあったのかと心配になる。さやかは一呼吸置いて、言い放つ。
「剣心さんが一人で行っちゃったの」
たった一人で討伐に向かう剣心。それを追おうとする明久たちだったが・・・・・・?
次回も、お楽しみに。