あなたへおくる物語   作:紫炎.2

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二か月の時間を経て、やっと書けました。いや、本当にここの話のさじ加減が難しかった。でも、ここで手を抜くとクライマックスが盛り上がらないから。だから、頑張りましたよ。


突如、姿を消した剣心。彼は一体どこに・・・・・・そして、予想外の事態に。

それではどうぞ。


第17話:決意、胸に

「このままでいいのか、アンタらは」

 

雄二は自身に注目する村人達を叱るように、語気を荒げて言い放つ。突然の叱咤の言葉に、しかも余所から来た少年に言われ、しん・・・・・・と静まりかえる。雄二は一拍おいて、さらに村人達にたたみかける。

 

「この村は前に魔物の襲撃に遭ったって聞いた。そして今回もまた、襲撃を受けて壊滅寸前までに追い詰められ、苦渋の決断を強いられた。襲撃者の言いなりになって、建物を壊し、もう駄目だと落ち込むばかり・・・・・・」

 

これまで村人達がどれだけ苦しんできたか、自分たちが悔しい思いをしてきたかを思い出させるように、雄二はこれまで起こった出来事を話していく。ここで一旦言葉を区切り、雄二は改めて村人達に聞いた。

 

「悔しくねぇのか、アンタらは」

 

結局は何もやろうともしない、言われたことしかしないと村人達を雄二は罵る。すると、今まで黙っていた村人の一人が口を開く。

 

「・・・・・・良いわけねぇだろ」

「悔しくないわけないだろう!」

「ふざけんじゃねぇ!」

 

一人が口を開くと、それに応じて他の者達も我先にと口を開く。まるで今まで貯まっていたものが一気に噴出したかのようである。声を上げて、今の状況を口汚く罵り合う村人を見て、雄二は声を上げる。

 

「そうだ! 良いわけないだろう!?」

「でもよ! 魔物は恐ろしいんだよ!」

「アイツは容易く家を壊したんだ!」

「そんな奴、どうすればいいんだよ!」

「方法ならある・・・・・・それも、アンタ達の頑張り次第で」

「えっ!?」

 

襲撃してきた魔物の恐怖を思い出してか、徐々に勢いが衰えていく村人達に、雄二は手段と希望を話し始める。

 

「アンタ達も知っているだろう、つい先日剣心さんが復活したことを」

「でも、その緋村さんだって・・・・・・」

「剣心さん一人だと、そうかもしれねぇ。だが、一人じゃなかったら・・・・・・?」

「・・・・・・まさか、俺たちに魔物と戦えって言うのか!?」

「あぁ、アンタの言うとおりだ」

 

雄二の言葉にざわつく村人達。混乱する村人達に雄二は間髪入れずに口を開く。

 

「済まない、言葉が足りなかった。剣心さんが離れている間、村を守って欲しいってことだ」

「村を・・・・・・?」

「そうだ・・・・・・アンタ達も言っていたじゃないか、悔しいって。なら、今度は抗ってやろうじゃねぇか」

 

くすぶる村人達を焚きつけるように雄二は村人達を揺さぶっていく。一呼吸を置き、話を続ける。

 

「アンタ達が村を守る間に、俺たちが元凶の魔物を倒す」

「俺たちって、君も行くのか?」

「俺もそうだが、もう何人かも一緒に行く予定だ」

「何人か・・・・・・って大丈夫なのか? 逆に足を引っ張るだけじゃあ・・・・・・」

 

普通の学生に見える雄二を見て、村人達は逆に不安になる。今の雄二は本人が言ったとおり、普通の学生ぐらいの子にしか見えず、本人もそう言っている。

 

「アンタ達の懸念もよく分かる。ここで話を変えるが・・・・・・何で剣心さんが復活したと思う?」

「何でって・・・・・・治療がうまくいったからじゃないのか?」

「でも、剣心さんの怪我って確か、グリーンストーンが必要なんじゃ・・・・・・」

「グリーンストーンって確か・・・・・・あっ、ま、まさか!?」

 

剣心の治療に必要なグリーンストーンがどこにあるかをよく知っている村人達はまさかと思い、雄二に注目する。再度、全員の注目が集まったところで雄二は口を開く。

 

「そうだ。俺たちが取ってきた」

「う、嘘だろ!? あそこは今や魔物の巣窟だぞ!?」

「それにグリーンストーンの場所に行けたとしても・・・・・・!」

「今、剣心さんが治っている。それが、答えだ」

 

雄二は毅然と結果を示す。村人達は堂々とした雄二の態度を見て、彼らが魔物の巣窟に足を運び、グリーンストーンを採ってきたのだと理解した。

 

「そんなことができる俺たちも一緒に行けば、魔物を倒すことができると思わないか?」

 

全体に理解したという空気が流れ始めたのを見計らって、雄二は彼らが今、思い描いていることを念押しする。無理だという空気から、できるという空気に。

 

「今までここを守ってきた弥彦も一緒に行く」

「弥彦君も・・・・・・!」

「とはいえ、その間に村が壊滅してしまったら、元の子もねぇ。だから、アンタ達に自分たちの村を守って欲しいんだ。それが結果的に、心置きなく戦えるという俺たちの安心にも繋がるから」

「俺たちが村を守ることが、剣心さんの助けになる・・・・・・」

 

雄二の話を聞いた村人達は一人一人が静かに言葉を聞き入れる。少しして、一人の村人がポツリと呟く。

 

「・・・・・・やってやろうじゃねぇか」

「そうよ、やりましょう」

「俺たちの村は俺たちで守ろう!」

「そうだ、守るんだ! 俺たちの手で!」

 

一人の呟きに続いて、もう一人が続き、それが全体に普及していく。そして、村人全員が俺たちもやるんだと声を上げ始めた。この光景を見て、雄二は心の中でガッツポーズを決める。彼にとって、最大の難関である村人達をやる気にさせることを乗り越えられたからである。

 

(よし・・・・・・なんとかなったな・・・・・・)

 

全員がやる気になった光景を見ながら、これで万全の状態で魔物討伐に当たることができると雄二は肩の荷を下ろした。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「剣心さんがいなくなったって、どうゆうこと!?」

「どうもこうもない、一人で魔物討伐に向かったんだよ!」

 

雄二達にたたき起こされ、急いで支度をする。起きたのは僕が最後らしく、他のみんなはすでに支度を調えていた。

 

「ていうか、もうちょっと早く起こしてくれても・・・・・・!」

「私たちもさっき知って、村の中を探していたの!」

「というよりも、結構ドタバタしたのに起きねぇお前も大概だぞ?」

「う、うるさいなぁ・・・・・・」

 

考えてみれば、剣心さんがいなくなったと分かったら、慌てて探すよね。その時に結構ドタバタするから、その時の音で本来は目を覚ますはずだよね。それなのに暢気に寝ていた僕って・・・・・・気持ちが落ち込みかけたけど、それどころじゃないと思い、気を引き締める。

 

「えっと・・・・・・剣心さんが討伐に向かったってことは分かったよ。それなら・・・・・・」

「俺たちも急いで追いかけるつもりだ。だから、いつまでも寝てやがるお前をたたき起こしに来たんだよ」

「本当、よく眠れたよね」

「すげぇ熟睡していたぞ」

「ご、ごめんなさい・・・・・・」

 

みんなにジト目で見られ、申し訳ない気持ちで一杯になる。本当に何で寝ていたんだろう・・・・・・僕は準備を整えて、急いで外に出る。

 

「弥彦君の姿が見当たらないけど」

「弥彦なら村の出入り口の方にいる」

「急ごう。下手したら剣心さんはもう着いているかも」

 

僕たちは急いで村の出入り口に向かう。それにしても、剣心さんはどうして一人で行ってしまったんだろうか。昨日、一緒に行くって約束したのに・・・・・・。

 

「剣心さんはどうして・・・・・・」

「わからないよ。約束を破るような人でもないし・・・・・・」

「どちらにしろ、あの人一人で行かせるわけにはいかねぇ。急いで追いかけるぞ!」

 

雄二の発破に僕と当麻、さやかは力強く頷き、弥彦君がいるであろう村の出入り口に向かう。少しして村の出入り口に着くが、何やら様子がおかしい。

 

「何だろう、人だかりが出来ている?」

「ていうか、あれじゃあ外に出られないよ」

 

どういうわけか村の人達が集まって、出入り口を塞いでしまっている。あれでは、外に出られない。それに誰かが何か言い争っている声が聞こえる。僕たちは気になって、そのまま近寄ってみる。

 

「だから、どけって言っているだろ! そこを塞いでいたら出られねぇよ!」

「弥彦君・・・・・・分かってくれ。私たちも不安なんだ」

「俺だって剣心のことが心配なんだよ!」

 

近くまで行くと、弥彦君と村人達が言い争っている。弥彦君は外に出ようとしているけど、それを村の人達が阻んでいる様子だ。一体どうして・・・・・・。

 

「弥彦君、一体どうしたの。それにこれは・・・・・・」

「あっ、明久! やっと目を覚ましたのかよ!」

「ご、ゴメン。寝坊しました・・・・・・」

「本当だぜ。お前って奴はよ」

 

寝坊したことを怒られてしまい、肩を落としてしまう。心なしか、後ろにいる三人からも全くだと呆れた視線をぶつけられている気がする。僕は視線を振り払うように首を振り、今の状況を聞くために話を変える。

 

「そっ、それはそれとして、一体どうしたの? 何か言い争っていたけど」

「あっ、そうだよ明久! こいつら、俺たちを村の外の出してくれないんだよ!」

「えぇ!?」

「なっ、どういうことだ!?」

 

村から出してくれないと聞き、雄二が身を乗り出してくる。雄二もこのことは想定外らしく、慌てている。同じように当麻とさやかも身を乗り出してきた。

 

「どうもこうも・・・・・・ね・・・・・・」

「いきなり剣心さんが予想外の行動をとるもんだから・・・・・・」

 

雄二に怒鳴られ、村の人達は怯みながらも話していく。だが、その態度と言葉は歯切れが悪く、要領を得ない。

 

「だからって、出入り口を塞ぐことはないでしょ!」

「俺たちだって、不安なんだよ・・・・・・実際守れるかどうか」

「一番危ないのは剣心さんの方なんだぞ!?」

「剣心さんは、ほら、強いからさ・・・・・・」

 

さやかや当麻も行く手を阻む村人達に詰め寄るが、曖昧な受け答えをするわりには頑として彼らは道を譲らない。この後もこっちが言えば、あっちが曖昧な受け答えで流そうとするという言い争いが続く。これには、さすがに苛立ちが募ってしまう。

 

「・・・・・・いい加減にしろよ、アンタら」

「当麻?」

 

このままじゃ埒がないと考え始めた時、当麻が拳を握りしめて静かに、それでいて力強く声を上げる。その雰囲気に、周りの人は全員当麻の方を向く。当麻は先程よりも力強く、一歩前に踏み出し、村の人達全員と対峙する。

 

「さっきから聞いていれば、はぐらかすばかりでこっちの言い分を少しも聞いてねぇ」

「き、聞いてはいるよ。でも・・・・・・」

「いいや、聞いてねぇよ。それでいて、アンタ達は自分たちの身の安全しか考えていねぇんだろ」

「そ、それは・・・・・・」

 

図星をつかれたのか、行く手を阻んでいた村人達は当麻から目をそらし俯いてしまう。当麻は俯いた村人達にさらに詰め寄る。

 

「アンタ達もわかっているんだろう!? こうしている間にも、剣心さんは一人で危険な目に立ち向かっているって」

「うぅ・・・・・・」

「また、いつかのように一人だけに全てを背負わせる気かよ! それでいいのか、アンタ達は!?」

「・・・・・・そ、それは嫌だ」

「なら!」

「でも、無理だ! あんな恐ろしいことがあったのに、俺たちだけでなんて!」

 

当麻の言葉を切るように一人の人間が声を上げる。その人はその場にしゃがみ込み、頭を抱える。突然の行動に当麻は一瞬反応が遅れてしまい、その人の行動が引き金になったのか、他の人達も堰を切ったかのように声を上げる。

 

「あいつは一人で家を一瞬で壊したんだぞ!? 他の魔物も同じようなことが出来ないなんて保証はないだろう!?」

「俺たちは今まで普通に暮らしていたんだ! なのに、今更魔物と戦え、だなんて出来るはずないだろう!?」

「昨日まではできるって思っていたんだ! でも、剣心さんがいなくなったって分かった途端に怖くなって・・・・・・」

「無理だ・・・・・・俺たちは弱いんだよ」

 

恐怖や不安が周りに伝播していき、周りの人間が次々と弱音を吐いていく。恐慌状態に陥ってしまったため、当麻もこれ以上言葉を紡ぐことが出来なくなってしまった。

 

「うぅ・・・・・・」

「・・・・・・結局、私たちは弱いままなんだ」

「草壁さん・・・・・・」

 

僕たちの後ろの方からやってきた草壁さんはうずくまっている村人を見渡して、僕らの方見る。こちらを見る目は申し訳なさそうにしていた。

 

「今まで農業しかやってこなかった只の一般人に過ぎない私たちには戦う術はない・・・・・・知る必要すらなかった。それがいきなりこんなことに巻き込まれてしまって・・・・・・」

「でもよ、だからってこのままで良いわけねぇだろう」

「そんなことはみんな分かっている。だけど・・・・・・足が竦むんだよ」

 

とても辛そうに喋る草壁さんだが、立ち止まった瞬間足が震え出す。それは草壁さんも同様に魔物と戦うのが怖いということだった。そんな草壁さんの弱音を聞いて、雄二に当麻、弥彦君も何も言えなくなってしまう。

 

「だから、戦える強い人に縋るしかないんだ。私たちは」

「・・・・・・それは、分かる気がします」

「明久?」

 

草壁さんや村人達の本心は闘いとは無縁の人生を送ってきた人としては当然のものだ。平和に暮らしていた所に、いきなり襲撃を受ければ恐ろしくもなる。そこに命が掛かっていればなおさらだ。

 

「今まで学園都市で過ごしてきたから、戦いは割と日常的になっていたけど、普通は戦うことは怖いよね」

「明久・・・・・・」

「ましてや、本当に死にかけるような目に遭ったら・・・・・・」

 

あの時、ワータイガーに殺されそうになった時のことを思い出す。奴のような下品な奴に弱音を見せたくなくて虚勢を張ったけど、実際は殺されそうな恐怖で一杯一杯だった。

 

「そうだよね・・・・・・あの時、助けがなかったら明久は・・・・・・」

「うん・・・・・・死んでいただろうね」

 

さやかの問いかけに、僕は起こったかも知れない最悪の結末を想像して、身震いをする。実際にその場にいた当麻や、同じように死にかけた雄二も思うところがあるのか、目を伏せる。

 

「吉井君・・・・・・分かってくれるのかい?」

「はい、草壁さん。皆さんの気持ち、よく分かります。雄二と当麻も、そういうことは分かっている上で、皆さんに話したんだと思います」

「そうか・・・・・・情けなくて、すまない」

「・・・・・・でも、その上で僕は剣心さんを助けに行きたいんです」

 

それでもと僕は剣心さんを助けに行きたいと道を塞ぐ村人に話す。彼らはうずくまりながらも、こちらを見ている。

 

「傷つくのが怖い、死ぬのが怖い・・・・・・全部よく分かっています。それでも、僕は誰かにそれを任せっきりにするのは嫌なんです」

「・・・・・・下手したら、死ぬかもしれないよ」

「かもしれません・・・・・・でも、全てを任せっきりにするのは死ぬよりも嫌です!」

 

絶対にそこは譲らないと、僕は道を阻む人達に言い放つ。彼らは僕をしばらく見つめていると、立ち上がって道を空けてくれた。

 

「ありがとうございます」

「礼はいいさ・・・・・・頑張れよ」

「はい!」

 

村の人達に元気よく挨拶した後、僕は弥彦君の方を向く。弥彦君は複雑そうな表情でこちらを見ている。

 

「弥彦君、君はここに残っていて欲しい。理由は・・・・・・分かるよね?」

「・・・・・・正直、俺よりも弱そうなお前に頼まないといけないのは悔しいけど・・・・・・わかった」

「必ず剣心さんと一緒に帰ってくるからね」

「あぁ、約束だぞ」

「うん、約束」

 

必ずと言わんばかりの表情に応えた後、僕は雄二と当麻、さやかの三人の方を向く。

 

「僕は行くけど・・・・・・みんなは?」

「当然行くに決まっているだろう? 明久一人に任せっきりには出来ないからな」

「私も軽い怪我なら治せるしね」

「最初からそのつもりだからな、俺たちは。お前一人だと、何をしでかすかわからん」

「うん、そこら辺も含めてよろしく」

 

三人の返事を聞いた後、僕はいよいよとばかりに村の外に向かって歩き始める。三人も僕に続いて、一緒に歩き出す。

 

「剣心が向かったのは、恐らく北にある塔だ! そこに元凶の魔物がいる!」

「気をつけて行ってくれ! 道中にも魔物は出るはずだ!」

「はい、分かりました!」

 

剣心さんが向かった先を教えてもらい、改めて村の外を見渡す。そこにはちらほらと魔物の姿が見え、中にはこちらの様子をうかがっている者もいる。

 

「さて、急いで行かないとね」

「道中の魔物は無視していくぞ。あんまり時間がねぇ」

「さやかは大丈夫か? 全部、走っていくことになりそうだぞ?」

「平気平気! さやかちゃんは運動系女子だからね!」

 

みんな気合い十分とばかりに声を掛け合う。

 

「よし・・・・・・行くよ、みんな!」

「うん!」

「あぁ!」

「おう!」

 

かけ声と共に僕たちは剣心さんが向かったであろう塔目がけて走り出した。

 




どうでしたか?

この話では会話内容がくどくならない様に、一般人である村人達の心情に力を入れました。本当に、これだけは難しかったですね。


とうとう元凶の魔物討伐で、そこで何が起こるのか。

次回もお楽しみに。
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