あなたへおくる物語   作:紫炎.2

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大変、長らくお待たせしました。

とりあえず、出来ました。あとは今年の中にエピローグを上げるだけ。

とりあえず、どうぞ。


第20話:雪解けの時

「・・・・・・うん?」

 

見渡す限り雪で覆われた場所で縁は気が付く。そこは一面雪景色で、空からは雪が降り続けており、目を凝らして先を見据えても降り続ける雪しか見えない。

 

「あぁ、ここは・・・・・・」

 

最初は何故こんな場所にと戸惑ったが、すぐにここがどこだったか思い出した。そして、後ろを振り向く。

 

「やっぱりいたんだね、姉さん」

 

そこにはあの日、魔物と戦うために一人立ち向かった雪代巴の姿があった。彼女は安心した様子の雪代縁をじっと見据えている。縁は笑ってくれない姉の巴に申し訳なさそうな顔をしながら、話しかける。

 

「こんな突然会いに来てくれるとは思わなかったから、ちょっと驚いちゃったけど、会いに来てくれて嬉しいよ」

 

いつもなら彼が一人でいるときや、彼の方から呼びかける時にしか姿を現さなかった彼女だったが、縁は今回呼んでもいなければ、一人でいるわけでもない。なのに、会いに来てくれて、彼は自分の想いが姉に伝わったような気がして嬉しかった。

 

「急に来てくれたものだから、話すことが思いつかなくて・・・・・・姉さん?」

 

気まずそうに頭をかく縁だが、巴がこちらを見ずに、空を見上げているのを見て、どうしたのか聞こうとする。

 

「空から・・・・・・?」

『・・・・・・さん、・・・・・・さん、しっか・・・・・・くださ・・・・・・、えに・・・・・・ん!』

 

何かあるのかと縁も空を見上げようとしたとき、空から声が聞こえてきた。その声は必死に誰かを連れ戻そうとしていて、しかもその声には聞き覚えがあった。

 

「誰だ、この場所に割って入ろうとするやつは・・・・・・?」

 

だが、縁にとっては唯一姉と会える場所に無粋に入ってくる邪魔な声でしかなく、声を遠ざけようとする。だが、姉の巴はなおも空を見上げ続けていた。縁は不愉快ながらも、巴の意向を無視することはできず、縁も渋々声に耳を傾ける。

 

『え・・・・・・ん、・・・・・・にし・・・・・・ん! えに・・・・・・さん!』

「・・・・・・うん? この声は・・・・・・?」

 

改めて聞くと聞き覚えのある声で、しかも最近だった気がする。それに聞いていて不愉快な感じはしない。

 

「この声は確か・・・・・・」

 

どうやら自分を呼び掛けているらしいこの声は誰だったか、思い出そうとする縁だが、そもそも自分がどうしてここにいるのか自体わからない。だから、何でこの声はこうも必死に自分を呼び掛けているのかもわからない。

 

「確か俺は・・・・・・復讐を果たそうとして」

 

縁はとりあえずここに来る前のことを思い出すことにした。まず、自分が復讐を果たすために巴村に襲撃をかけたこと、討伐に来た緋村剣心を返り討ちにして呪いを掛けたこと、そして・・・・・・

 

「そして・・・・・・あぁ、そうか」

『え・・・・・・しさん! えにしさん!』

 

つい最近あったことを思い出していき、やっと呼びかけてくる声が誰かがわかった。彼が最近出会い、そしてなぜか俺を慕ってくる奴ら。

 

「そうか・・・・・・お前らか」

『縁さん!』

 

瞬間、世界が弾けた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「縁さん!」

「・・・・・・なんだ、うるせぇぞ」

「縁さん! よかった、今治療しますから!」

 

自分を呼び掛ける声に反応して目を覚ます。目を開けた先には今にも泣きそうな顔で俺を見ているあいつらの顔があり、俺が目を覚ましたことで安堵していた。

 

「俺は確か・・・・・・」

「大丈夫ですよ! きっと治りますから!」

「さやか! どうだ!?」

「わ、わからない! 本当に治っているのか!」

 

意識がはっきりとしだすと、胸から腹の方が痛みと共に尋常ではない熱さを感じ始めた。それを自覚して、現状を把握した。

 

「そうか・・・・・・俺は負けたんだな」

「そ、それは・・・・・・」

 

あの一瞬の刹那、俺はあいつに切り負け、そのまま切られたのだと。案外、冷静にその事実を受け止めた。傷口の方を見ると、何やら緑色の光を発しながら俺の傷口に手をかざしている。どうやら美樹さやかとか呼ばれていた奴が俺に回復魔法をかけているようだ。

 

「お前、魔法が使えたんだな」

「ぐ、偶然使えるようになったんです。だから・・・・・・!」

「もういい・・・・・・もう使うな」

「えっ・・・・・・?」

 

回復魔法をかけてくる奴を制止する。術の効果からしてホイミだろうが、その程度でどうにかなるような傷じゃないし、致命傷だったようで全く治る気配がしない。

 

「どうやら致命傷のようだな・・・・・・全く治っている感じがしない」

「そ、そんな・・・・・・!」

「そんなことは・・・・・・!」

「よくもまぁ、横切りの抜刀術を縦切りに放つことができるものだ」

「・・・・・・横では首をはねてしまうからな」

「慈悲のつもりか? ふざけやがって・・・・・・」

 

命を懸けた一閃だったのに、この野郎は・・・・・・と怒る気持ちはあるが、冷静に現実を受け止めている自分があるため、そこまで怒る気はしなかった。

 

「え、縁さん・・・・・・」

「なんてひどい顔をしてやがる、お前ら。諸悪の根源が倒れて、やっと家に帰れるんだぞ?」

「そんなことよりも、縁さんが・・・・・・」

「そうですよ。こんな結末・・・・・・!」

 

倒れている俺を見下ろしている美樹と上条、吉井はそろって泣いており、離れたところにいる坂本はこちらを見ずに一人肩を震わせている。全くこいつらときたら、揃いも揃って・・・・・・。

 

「え、縁さん・・・・・・体が・・・・・・!」

「うん? あぁ、こうなるのか」

 

泣きながらこちらを見ていたあいつらが急に目を見開き、声を上げる。何だと思った瞬間、体が徐々に崩れだすのを感じ始めた。これは・・・・・・成程、正しく俺は魔物と同じような存在になっていたのか。

 

「そんな・・・・・・いやだ、死んじゃ嫌だ!?」

「こんな、これじゃあ縁さんが何も!?」

「お前ら・・・・・・まだ俺のことを心配しているのか?」

「当然ですよ! だって、僕たちは縁さんに何も恩返しできてないし、それに、それに!」

 

俺の意識を必死に繋ぎ止めようとしているのか、何かないかと必死に声を上げる。その様子から俺のことを心の底から心配しているのがよく分かる。こいつらは本当に俺のことを・・・・・・。

 

「それにこのままじゃあ・・・・・・!」

「・・・・・・あぁ、そうか。そういうことか」

「縁さん?」

「いや、今頃になって気づいただけだ」

「気づいたって・・・・・・?」

「お前たちのおかげだ。お前たちのおかげで気づくことができた」

「えっ・・・・・・?」

 

だから、姉さんは・・・・・・死ぬ前に気づくことができてよかった。復讐は果たせなかったが、それでも納得のいく最期だ。このまま死ぬのも悪くない。だが・・・・・・俺はいつまでも泣きじゃくっている奴らを見る。まるでこの世の終わりのような顔で泣いており、このまま放っておくのが不味い気がする。

 

「吉井・・・・・・いるか?」

「は、はい。います、ここにいます!」

「くっ・・・・・・ほらよ、受け取れ」

「えっ? これって・・・・・・」

 

俺は最後の力を振り絞り、自分が使っていた倭刀を吉井に押し付ける。洞窟の一件でこいつは特に命を投げ捨てそうな気がするから、何か戦う手段を与えていた方がいいだろう。そうすれば、いざという時に戦える。

 

「上等な剣じゃないが、頑丈な剣だ。使え」

「でも、これって・・・・・・」

「俺にはもう守るものもなければ、守ることもできなくなる。なら、使える奴が持っていた方がいいだろう」

「縁さん・・・・・・」

「どう使うかはお前次第だ。お前が思うように使え、いいな?」

 

俺と押し付けた倭刀を交互に見る吉井だが、最後には泣きはらした顔で力強く頷く。俺の言葉が伝わったようで何よりだ。すでに体中の感覚が消え失せてきたが、俺はわずかに残る感覚を頼りに手を宙に挙げる。吉井と美樹はそれを握り、上条も少し躊躇したが、同じようにしっかりと握りしめた。

 

「俺は・・・・・・結局、何も果たせなかった。だが、俺が選んだ道は間違っているとは思わない。今、この瞬間も」

「縁さん・・・・・・」

「だが、お前たちに会えた。そして、大事なことを思い出すことができた」

「大事なこと・・・・・・?」

「何も成すことができなかったが、それでも悔いはない・・・・・・お前たち」

 

徐々に意識が消えていく。もう瞼を開けることすらできなくなり、口を動かしているのかわからないぐらいだ。だが、この言葉だけは・・・・・・言わなければ・・・・・・。

 

―――ありがとう

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

雪が降る

 

全てを白で覆いつくすほどの雪が降る

 

俺は一人、空を見上げていた

 

その俺を姉さんがじっと見つめている

 

俺は雪が降り続ける空から姉さんの方に向く

 

―――話したいことがあるんだ

 

じっと見つめていた姉さんは驚いた表情で俺を見る

 

少しの間驚いていた姉さんだが、すぐにこちらに顔を向ける

 

それは小さい頃、俺がいつも見ていた優しい・・・・・・

 

優しい姉さんの笑顔だった

 

―――いっぱい聞かせて、縁

 

雪は止む

 

全てを白で覆いつくした雪は消え

 

緑と花が広がる温かい風が吹き抜けた

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「・・・・・・逝ったか」

 

雪代縁が消え去り、明久たちが泣き叫ぶ中、剣心は一人しみじみと縁の死を受け入れた。これから先、彼を切り捨てたことは忘れないように刀を収めた。

 

「なぁ、剣心さん」

「どうした、坂本殿」

「これしか・・・・・・こうするしかなかったのか。こうするしか・・・・・・!」

「分からぬよ。少なくとも、拙者にはこうするしかなかった」

 

他に方法はあったのかもしれない。だが、剣心には、そして明久たちには他に思いつく方法はなかった。ならば、できることをするしかなかった。無力感に打ちひしがれながら泣く雄二同様、剣心も自身の不甲斐なさを実感していた。

 

「でも、他に何かできたんじゃあ・・・・・・!」

「それでも、拙者にはできないことをお主たちはやってくれたよ」

「はぁ? 何が・・・・・・」

「奴は最期、お主たちが縁を想う心に救われたのだ」

「救われたって・・・・・・何が・・・・・・」

「どう救われたのかは拙者にも分からない。だが、確かに奴は・・・・・・笑顔で逝けたのだ」

 

剣心の言葉と同時に部屋に光が差し込む。その光に泣きじゃくっていた明久と当麻、さやかに雄二は光が差し込む方を見る。

 

「・・・・・・やっと、見えたな」

 

窓から太陽の光が差し込み、悪夢のような暗闇の終わりを告げたのだった。

 




どうでしたか?

色々、反省点もありますが、それはエピローグが終わった後にも。

次回もお楽しみに。
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