あなたへおくる物語   作:紫炎.2

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どうもお久しぶりです、紫炎です。

まずは謝罪を。大変長らくお待たせしました。
活動報告にも書いていましたが、この頃は仕事や積みゲーにプラモと色々なことをやっていたので、投稿がかなり遅れてしまいました。

途中で辞める気はないとはいえ、これでは完結がいつになるのやら・・・・・・いや、本当に何年後になるんだろう。

まぁ、とりあえず最新作ができましたので、みなさん、どうぞ。



第23話:御坂美琴

「はぁ~」

 

春の陽気が過ぎていき、夏の訪れを感じ始める5月の中旬。上条当麻は公園のベンチにもたれかかっていた。彼は一人空を見上げ、呆けていた。

 

「今日も空は青いなぁ・・・・・・」

 

あれ以来当麻は何となく無気力な状態が続いており、今回は家に籠るのではなく、外に出て公園のベンチに座り込んで呑気に空を見上げていた。青い空に浮かぶ太陽はいつも通り輝いている。

 

「何か暑いなぁ・・・・・・」

 

他のみんなとも遊ぶのは何となく疎遠になってしまっているし、明久は別の武道場通い、雄二とさやかはいつの間にか元の状態に戻っていた。その中で、自分だけが未だにあの時から進んでいない。

 

「分かってはいるんだけどなぁ・・・・・・」

 

あの時、もっと何かできたのでは・・・・・・と後悔ばかりしており、一歩も前に進めずにいる。いくら考えても納得が出来ず、堂々巡りの毎日だ。これまでは何かトラブルが起きれば、あいつ等と一緒なら何だって解決できたのに、心の底から憎しみにとらわれたあの人を助けることが出来なかった。あの結末しかなかったのかもしれない。だが、もっと別の、あの人が生きて新しい幸せを探せる未来があったんじゃないのかと・・・・・・。

 

「あ~、やめだ! これ以上考えたところで何にもなりはしねぇ!」

 

考えが袋小路に入りそうになったところで、頭を掻いて強引に考えを止める。そうして目の前を見ると自動販売機があった。

 

「そういえば喉が渇いたなぁ・・・・・・よし!」

 

これを切っ掛けに気分を入れ替えるかと当麻は財布からお金を取り出そうとする。財布には今では珍しい二千円札が入っていた。

 

「大丈夫か・・・・・・? いやいや、これを切っ掛けに俺は一歩踏み出すのだ!」

 

新しい明日に向かってと勇んで二千円札を自動販売機に入れて、ジュースのボタンを選ぶ。

 

「・・・・・・あれ?」

 

しかし待てどもジュースは出てこず、もう一度ボタンを押すがやはりジュースは出てこない。しょうがないので返却のレバーを引くが、今度はお金が返ってこない。

 

「・・・・・・ふん!」

 

嘘だろうと思いつつ何度もレバーを引くが、やはりお金は返ってこない。ジュースのボタンを押したり、返却のレバーを引いたりと色々試すが、何も得られず、当麻はとうとう諦めた。

 

「不幸だ・・・・・・」

「ちょろっとー」

 

ジュースは出てこず、お金も返ってこない現実に打ちのめされていると、突如後ろから襟首を掴まれて自動販売機の前からのけられる。何だと思いつつ、のけた相手を見る。

 

「ボケっと突っ立ってんじゃないわよ。買わないならどくどく」

「・・・・・・あー」

 

相手は一人の少女で、名門女子校常盤台中学の制服を着ており、茶色の短髪の活発な少女だ。そして、当麻はこの少女のことを知っている。

 

「何だ、ビリビリか」

「・・・・・・だ~か~ら! 私には“御坂美琴”って名前があるって言っているでしょうが!?」

「うおっと!?」

 

突然御坂は怒り出し、電撃を当麻に向けて放つ。当麻も咄嗟に右手を突き出して電撃を打ち消す。自身の繰り出した電撃を打ち消されて、若干不機嫌そうになる。

 

「あいっかわらず腹が立つ能力よね、それ」

「いや、そんなこと俺に言われてもな・・・・・・」

「まぁいいわ。う~ん・・・・・・」

 

いつものことだからと当麻から視線を外し、御坂は自動販売機の前で品定めをする。どれにするか悩んでいるようだ。当麻は先ほど自動販売機にお金を飲まれたことを思い出し、御坂に忠告する。

 

「あー、その自動販売機な、お金を飲むぞ」

「知っているわよ?」

「はっ? マジで?」

「っていうか、ここら辺の学生ならほとんどは知っているわよ」

「マジか・・・・・・」

 

やっぱり用もないのに遠出するものじゃないと当麻は後悔した。知らなくてもいいことまで知ってしまって複雑な気分だ。

 

「というか、この自販機には裏技があるのよ」

「裏技?」

「そう。お金も入れずに商品を出す裏技が・・・・・・ね」

 

そういうと御坂はステップを踏み始める。その様子を見て当麻は内心嫌な予感が・・・・・・と心の中で呟く。程なくして御坂はその場で勢いよく一回転すると。

 

「チェスト!」

 

強烈な蹴りを自動販売機にお見舞いする。その際にスカートが捲れてしまう。

 

(・・・・・・短パン)

 

見えたそれは短パンで、当麻は顔に出さなかったが心の中でガッカリした。蹴られた衝撃か、自動販売機は缶を一つ排出して、それを御坂が取る。

 

「この自動販売機、古いらしいからお金をよく食うのよ。だからこうしないと、物が取れないのよ」

「マジか・・・・・・って、それって他の奴もそうしているのか?」

「そうよ。ここら辺の女子はみんなこうしているわ」

 

そのまま御坂は缶を開けて飲み始める。ここら辺の女子ということは御坂が着ている制服からして、名門女子中の全員今のようなやり方をしているということである。当麻の名門女子校に通う女子のイメージがウチのクラスメートの女子とほぼ同じようなものになり、内心ショックだった。

 

(というか、お前たちが寄ってたかってそんなやり方しているから壊れたんじゃあ・・・・・・)

「な~に怒っているのよ? アンタに実害があるわけじゃあ・・・・・・」

 

飲み終わった御坂は缶をふらつかせながら、別にいいでしょとばかりに話していたが、そこまで言って御坂は何かに感づいたように目を輝かせる。その様子に当麻は猛烈に嫌な予感がした。

 

「飲まれた?」

「・・・・・・」

「一体いくら飲まれたの?」

「二、二千円・・・・・・」

 

ズバリ言い当てられ、目線を反らすも御坂は自分の考えが当たったことに喜びながらも尚も問いただす。当麻も言い逃れないと思い、白状した。飲まれた額を聞き、御坂は大爆笑する。

 

「二千円!? もしかして二千円札のこと!? まだ絶滅していなかったんだ!」

「しょうがないだろう!? 財布の中にそれしか入っていなかったんだよ!?」

「そんなに古いお札じゃあ、自販機もバグるわ、そりゃあ!」

 

そのまま一通り笑った後、飲み終わった缶をゴミ箱に入れて、そのまま手を自販機に当てる。

 

「それじゃあ取り返してあげる。笑わせてくれたお礼に、ね」

「別にそのつもりじゃあないが・・・・・・というか、どうやって?」

「こうやって」

 

その直後、自販機に強力な電気が一瞬流れる。その直後、自販機は壊れたかのようにどんどん缶を排出していく。それを見て、機械がショートして壊れたのだと当麻は理解した。

 

「あれ~? 二千円札が出ると思ったけど、何か故障したみたい。まぁ、この調子なら二千円札分以上は出てきそうだし、結果オーライってやつね。どう?」

 

思った通りの結果は出なかったが、結果的にはこれでいいでしょと笑顔を浮かべて当麻の方を向く御坂。だが当麻はダッシュでその場から逃げ出していた。

 

「って!? ちょっと!? 何思いっきり逃げてんのよ!? おい!?」

 

このままでは自分も共犯扱いされる。そう直感して当麻は全力疾走でそのままそこから逃げ出したのであった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「はぁ~」

「何でため息ついているのよ」

「いや、何でもねぇよ」

 

あの後、走り疲れベンチで休んでいるところに御坂が大量の缶を持って追いかけてきた。先にお金を入れたアンタの物だと言って、御坂は全部当麻に押し付けたのだ。

 

「全く、これが学園都市第3位の御坂美琴様を打ち負かした男の姿かっての」

「おいおい、嘘を吐くなよ。お前の攻撃を防いだだけじゃねぇか」

「全く通用しないなら同じよ。それでいて誇ろうともしないんだから」

 

御坂は一本貰うわよとジュース缶を一つ手に取り、飲み始める。当麻は別にいいかとそのまま見過ごした。

 

「本当、意味不明よね。あんたのその右手」

「俺にも意味不明だよ。こんな力よりは・・・・・・」

「何よ?」

「何でもねぇよ」

 

つい先ほど気にしないようにしようとした矢先に、先ほどの嫌な気持ちがまた再燃しそうになり、頭を抱えてしまう。

 

(もう悩んでいるのは俺だけなのにな・・・・・・)

「ちょっと、今度は何頭を抱え込んでいるのよ」

「ちょっと個人的な悩みをだな」

「アンタも? ふ~ん・・・・・・」

 

悩みがあると言うと、御坂も何やら少し黙り込んでしまい、それを誤魔化すようにジュースを一口飲む。

 

「まぁ、うだうだ悩んでいてもしょうがないし、早くそれを飲んじゃえば? 私の後輩なら貰っただけでも卒倒ものなんだから」

「卒倒だぁ? 少女漫画じゃああるまし、そんなことあるかよ」

「・・・・・・ふっ、私が常盤台でいつも何て呼ばれているか知らないからそんなことが言えるのよ」

 

そう言う美琴は途端に落ち込み始め、困ったような様子になる。さっきまでの強気な態度から一変した様子を見て、当麻はコイツも大変なんだなとしみじみと思った。

 

「お姉さま?」

 

瞬間、御坂が急にビクッと跳ね上がり、当麻も同じように驚いて声のする方を向く。そこには口に手を添えて、驚いた様子の少女がいた。赤みが若干かかった茶髪にツインテールが特徴的で、御坂と同じ常盤台の制服を着ている。右腕には緑の腕章をつけており、それが彼女を普通の生徒ではない証明している。

 

「まぁまぁ、お姉さま。何やらコソコソと何かしていらっしゃるかと思っておりましたが、全てはこのためだったのですね」

「・・・・・・ね、念のために聞いておくけど、“このため”ってどういうわけ?」

「決まっております。そこの殿方と密会するためでしょ?」

 

何やらこの少女は当麻と御坂が密会していると誤解しているようなので、当麻は誤解を解くために大量のジュースをベンチに置いて立ち上がる。その間にも少女はこちらの方に近づき、立ち上がった当麻と御坂の間に立つ。

 

「初めまして、わたくしお姉さまの露払いをしている白井黒子と言いますの」

「あっ、どうも・・・・・・」

「もし、お姉さまに“ちょっかい”を出す気なら、わたくしを通してからにしてくださいな」

「はぁ・・・・・・」

 

別にそこまで深い関係じゃないし、むしろ向こうから突っかかってきているだけなので、そこまで気にしていない当麻だったが、笑顔を浮かべる白井の後ろで明らかに不機嫌そうな御坂がゆらりと立ち上がる。

 

「アンタは~・・・・・・」

「あっ、おい・・・・・・」

「このヘンテコが私の彼氏に見えるのか!?」

 

そのまま止める間もなく御坂は白井に電撃を浴びせる。あまりに突然だったため当麻も止める間もなく、ただ見ているだけだった。少しすると電撃が収まり、当麻も目を開ける。だが、そこには御坂しかおらず、白井は何処にもいなかった。

 

「あれっ、アイツは・・・・・・?」

「ですわよね~」

 

急に後ろの上の方から声がしてそちらを振り向くと、そこには先ほどと同様に笑顔を浮かべた無傷の白井がいた。彼女はどういうわけか、あの時の一瞬で移動し電灯の上に立っている。

 

「わたくしのお姉さまに限って・・・・・・それでは、くれぐれも過ちは犯さないようにしてくださいませ、お姉さま」

「黒子ぉ!」

 

電灯の上で上品にスカートの端を持ちながら一礼する白井に御坂は電撃を放つ。だが、その瞬間には白井の姿はなく、電撃が走っただけだった。

 

「変な噂を流したら承知しないわよ!?」

(・・・・・・あぁ、テレポートか)

 

興奮する御坂を前に当麻は先ほどの少女がテレポートの能力者なのかと理解した。そうじゃなければ、あんな一瞬でベンチから電灯の上に、電灯の上から姿を消すなど出来るはずもない。

 

「お姉さま」

「またか!? って、えっ?」

 

これで終わりかと思いきや、背後から先ほどと同じように“お姉さま”と呼びかけられたので、今度は背後にと思い振り向くと、そこにはもう一人の御坂が立っていた。

 

「増えてる? 御坂2号!?」

「妹です、とミサカは間髪入れずに答えました」

「妹?」

 

御坂そっくりの少女は自らを妹と名乗り、こちらをジッと当麻を見ている。当麻もあまりにそっくりだったのに驚いたが、双子なのかと勝手に納得して話を続ける。

 

「というか、妹なのに一人称が“ミサカ”なの? そこは普通名前を使うところだろう。そんなんじゃあ家の中で混乱するだろう」

「ミサカの名前はミサカなので、とミサカは即答します」

「アンタ! こんなところで一体何をしているのよ!?」

 

話をしていると突然御坂が怒ったかのように話を遮って、妹を睨みつける。いつも怒っているような感じの御坂だったが、今までと雰囲気が違い、複雑そうな表情をしているため当麻は何も言えなくなってしまった。

 

「研修中です、とミサカは簡潔に答えます」

「あー・・・・・・研修ね」

 

研修と聞いた御坂は一瞬頭を抱えた後、ゆっくりと妹の方に近づき、肩に手を掛ける。そして、一言二言ポツリと話すと妹と一緒に何処かに行こうとする。

 

「あっ、おい!?」

「悪いわね、ちょっと身内の話だから。じゃあね」

 

そう言うと御坂は妹を連れて、何処かに去って行ってしまった。ベンチに大量の飲み物を残して。

 

「複雑な家庭環境なのか・・・・・・?」

 

一人その場に取り残された当麻は怒涛の展開に、一人ポツリとつぶやくことしかできなかった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

学園都市に夕日が差し込み、ほとんどの生徒が帰り始める時間帯。当麻は一人大量の飲み物を持って、家に帰っていた。

 

「これを持って帰ったら確実に共犯だが、それでも捨てきれない貧乏性の上条さんであった・・・・・・ってか」

 

御坂が違法な手段で手に入れた大量の飲み物を捨てることが出来ず、当麻は持ち帰ろうとしていた。だが量が量で且つ距離があったため、徒歩で帰ろうとすると結構時間が掛かってしまい、結局こんな時間になってしまったのである。

 

「全く、アイツも少しは持っていけよな・・・・・・っと」

 

寮に向かって歩き続けていると、道にテニスボールが転がっていた。いつもならこれに気付かず踏んづけて、盛大にジュースをぶちまけるのだが、今回は気づくことができた。

 

「こんな道端に落とすなよっと」

 

口ではそう言うものの、ちょっとしたことに気付ける辺り、運が向いてきたなと実感できて、当麻はほんの少しの幸運を噛みしめながら、テニスボールを避けて歩こうとした。

 

「本当、危ないなぁっと!?」

 

しかし、避けた先に別のテニスボールがあったため、それを踏んづけてしまい、盛大に転ぶのと同時に、缶もぶちまけてしまった。

 

「いってぇ!? あー、クソ・・・・・・不幸だ」

 

背中から倒れてしまい、さらにぶちまけた缶が何本か顔面に当たってしまう。当麻は改めて己の不幸を嘆くのであった。その直後、当麻に人影が掛かる。誰かと思い見上げてみると、そこには先程何処かに行ったハズの御坂がいた。

 

「あれ、お前・・・・・・さっき妹を連れて、何処かに行かなかったっけ?」

 

尋ねる当麻に対して御坂はこちらを見下ろすばかりで、特に何も話さない。変だなと思っていたら、急に強い風が吹き、スカートが捲れあがる。そこには短パンではなく、縞パンがあった。

 

(あれ、さっきは短パンだったはずじゃあ・・・・・・)

「必要なら手を貸しますが。と、ミサカはため息交じりに提案します」

 

倒れている当麻の角度からパンツが丸見えなのを知ってか知らずか、ミサカは若干呆れたかのように当麻を見下ろしていた。色々な意味で困惑していた当麻だったが、すぐさま起き上がり大丈夫だと言おうとしたとき、ミサカが手に持っている物が目に入った。

 

「あれ、それって・・・・・・ってことは、妹の方か」

「はい。と、ミサカは返事をします」

 

手に持っているゴツいゴーグルと見えてしまった縞パンで妹の方かと納得する当麻。見えてしまったものはしょうがないと内心戸惑いながらも話を続ける。

 

「お前たちって本当にそっくりだよなぁ・・・・・・」

「そっくりというと、お姉さまの事でしょうか?」

「他に誰がいるっていうんだよ・・・・・・そのゴーグルも見分けがつかないからか?」

「いいえ。ミサカはお姉さまと異なり電子線や磁力線の流れを目で追う才能がないため、それらを補う器具が必要になるのです。と、ミサカは懇切丁寧に説明しました」

 

てっきり、それが見分け方になっているのかと思ったが、違うらしい。家族の方は大変だなぁとしみじみと思う当麻だが、先ほど御坂に連れていかれたのを思い出す。

 

「そういえば、お前御坂にさっき連れていかれなかったか?」

「・・・・・・ミサカはあちらから来ただけですが。と、あちら側を指さします」

「・・・・・・ふ~ん」

 

何か要領を得ないミサカの返答だったが、少し考えこんだ後こいつはこうゆう奴なんだなと思い、空返事をした。そこに車のクラクションがなる。

 

「っとと、不味い。早く拾わないと・・・・・・」

「手伝います。と、ミサカは缶を拾いながら答えます」

 

急いで道路の方に落ちた缶を拾っていると、ミサカも一緒に拾ってくれる。助かると思い、チラッとミサカの方を見ると、先ほど見えたパンツがまた見えてしまい、当麻は少し凝視してしまう。

 

「このままでは道路交通法に引っかかってしまいます・・・・・・何か」

「な、何にもない!?」

「瞳孔の拡大・呼吸の乱れなどが検出されていますが、結論としてあなたは緊張状態にあるのでは? と、ミサカは客観的に結論を下し」

「ホント、何でもないです!? 本当済みません!?」

 

気付いているのか、気付いていないのか判断しずらいミサカに戸惑いながらも、当麻は残りの缶を拾い上げ、ミサカと共にその場を後にする。

 

「それで、このジュースはどこまで運べばいいのですか。と、ミサカは問いかけます」

「あぁ、それな。もう、家がすぐそこだから、そこまで頼むわ」

「分かりました。と、ミサカは答えます」

(独特なしゃべり方といい、雰囲気といい・・・・・・姉妹の見分け方がよく分かったわ)

 

結構強気な姉と物静かな妹、相当対称的な姉妹だなと当麻は実感する。二人はそのままマンションまで歩き、程なくして当麻が住むマンションに着いた。エレベーターを上がり、部屋がある階に着いた後、部屋の方に向かう。

 

「あれ、さやかに土御門。二人して何やってんだ?」

「あっ、当麻だ」

「よぉ、カミやん・・・・・・うん?」

 

二人して何かを取り囲んでいるようだったが、当麻の呼びかけでそちらの方を向く。さやかは普通に反応したが、土御門は隣に誰かいることに気付き、当麻たちの方に近づく。

 

「あれれ~? カミやんが女の子を連れてきてますね~」

「当麻、誰なの・・・・・・って、その子は・・・・・・」

 

見知らぬ女の子を連れて来たと思ったが、さやかはその子に見覚えがあり、ジッと見つめる。

そこにさやかが思い出すより前に、ミサカが口を開く。

 

「ミサカはミサカです。と、ミサカは自己紹介をします」

「そうそう、御坂ちゃん・・・・・・って、うん?」

「こいつはビリビリの妹だよ」

「妹? 妹なんていたんだ!?」

「みたいだ・・・・・・っていうか、お前たちは廊下で何をやっているだよ?」

 

妹がいることに驚くさやかと土御門に当麻はさっきまで何をやっていたのかを尋ねる。あぁ、そうだったと二人は先ほどまでいた場所に戻る。そこには一匹の猫がいた。

 

「まどかがいる寮の前にお腹を空かせていた猫がいたの」

「それをまどかが可哀相だから飼おうって言い出したらしいが、アイツの寮はペット禁止だろう?」

「それでこっちに連れて来たってか? 全く・・・・・・」

「それで土御門が言うにはノミ取りをした方がいいってことだから、外でノミ取りをしていたの」

 

二人して廊下で何をやっているのかと心配になったが、そういう事情だったのかと納得する。

 

「しかし、ノミ取りって大変だね・・・・・・素人がやるものじゃないよ」

「本当だにゃー。こりゃ、何か専用の道具を買ってきた方がいいか?」

「なら、俺が買ってくるわ」

「いいの? こういうのって結構お金かかるよ?」

「いいって。その代わり、この大量のジュースを頼むわ」

 

そう言って当麻は自分が持っているジュース缶を土御門に預け、道具を買いに行こうとする。

 

「お待ちを」

「おぉ?」

「ようは猫に危害を加えずに体の表面からノミを落とせば良いのですね。と、ミサカは確認します」

「まぁ、そうだけど・・・・・・」

 

店に行こうとする当麻を引き止め、ミサカは当麻たちに確認をする。当麻の言葉を聞くと、ミサカは持っていたジュース缶を地面に置いて猫に向かって手をかざす。次の瞬間、猫がビクリと一瞬毛を逆立てると、猫からパラパラとノミが落ちていった。

 

「おぉ・・・・・・これって」

「特定周波数により害虫を駆除しました。と、ミサカは報告します」

「マジで?」

「はい、マジです」

 

そう言うと、ミサカはジュース缶を拾い上げ、当麻に渡す。驚いていた当麻は、そのままジュース缶を受け取る。

 

「このタイプの虫よけ機械は学園都市でも市販されていますので、問題はないはずです」

「おぉ・・・・・・美琴ちゃんにもできないようなことを」

「お姉さまもこれぐらいは出来るはずですよ。と、ミサカは情報を訂正します」

 

そのままミサカは「それでは・・・・・・」と一言言って、その場を去って行った。冷静に対処し、去って行った彼女を三人は呆然と見過ごした。

 

「いや~、お姉さんとは違うね、本当」

「だよなぁ・・・・・・本当、ビリビリの方も見習ってほしいぜ」

「いや、お姉さんとかビリビリとか誰よ」

 

当麻とさやかの二人は姉でありビリビリこと、御坂美琴を思い出すが、土御門は面識がないので、二人が誰のことを言っているのかわからない。

 

「あっ、そうそう。猫はちゃんと世話しろよ?」

「うん。頑張ってね、当麻」

「はい?」

「ちゃんとお世話するんだぜ、カミやん」

「ちょっと?」

 

急に猫の世話を任せようとする二人にさすがに待ったをかける当麻。てっきりさやかが世話をするとばかり思っていたので、これは予想外である。

 

「大丈夫! エサ代はこっちも負担するし」

「猫の遊具とかも融通するぜ?」

「そういう意味じゃねぇよ!? さやかが預かったんだろう!?」

 

どういうことだと当麻は二人は問いかける。二人はちょっと困ったような顔をした後、理由を話し始めた。

 

「まぁ、初めは最初に説明したとおりだぜ? でもよぉ、カミやん」

「この頃ずっと悩んでいるでしょ? あのことで」

「うっ」

 

さやかから“あの事”と言われ、思い当たることがある当麻は口を噤む。土御門もおおよそ察しているため、あまり追及しない。

 

「私は納得はしたけど・・・・・・当麻はまだ悩んでいるようだったから」

「かといって、カミやんのことだからあまり話そうとしないだろうし」

「まぁ、気軽に話せるような内容じゃないな」

「だから、良い気晴らしにってことで猫のお世話をさせようって話にしたんだよ」

「迷惑ならいいけど・・・・・・」

 

そういうことかと頭を掻きながら当麻は理解した。また、言い始めたであろうさやかは申し訳なさそうにしている。本人としても結構無茶なこと言っている自覚はあるのだろう。当麻は一息ついて、渋々口を開いた。

 

「分かったよ。エサ代とかは折半だぞ?」

「本当!? ありがとう、当麻!」

「いや~、よかったよかった。正直、結構無茶なお願いだったからにゃ~」

「本当、変な気遣いだよ、まったく」

 

猫を飼うことを了承したことにさやかと土御門は一安心とばかりに一息ついた。当麻としても、二人の気遣いを無駄にはしたくなかった。当麻は猫に近づいていく。

 

「おーし、今日からお前は上条さんと一緒に暮らしますよ~」

 

当麻は手を差し出しながら、これから一緒に過ごす猫に近づいていく。猫も当麻を警戒しつつ、徐々に近づき、差し出された手を鼻で嗅ぐ。

 

「おぉ、案外相性いいのかな?」

「いや、これは・・・・・・」

 

どんどん近づいていく猫を見て、さやかは明るく見つめるが、土御門は別のことを思い浮かべる。

 

「ふっ、今日の最後くらいは上条さんだって「ニャ」・・・・・・いてぇー!?」

「ほらな」

「あ、あはは・・・・・・」

 

良い感じだったが、最終的に猫は爪で当麻の手を引っ掻いた。急なことに当麻は手を抱えて痛がり、それをさやかと土御門は苦笑いで見守った。

 

「ふ、不幸だぁー!」

 

 




どうでしたか?

キリが良いところを探していたら、こんなに長くなりました。

とりあえず一章ほど長くなったりしないのでご安心ください。

次の投稿はいつになるのか分かりませんが、辞める気はないのでご安心ください。

それでは、また次回。

追記
ちなみに当麻のお話はまだ続きます。えぇ、これぐらいで解決するような悩みじゃありませんから。
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