それではどうぞ。
「今日から皆さんと一緒に勉強することになりました。皆さん、変なことを教えないでくださいね」
『ワァーーーーーーーーー!!!』
「うひゃぁ!?」
「おやおや」
小萌先生が一言言い終えるとクラスの男子が盛大に歓声を上げる。当然だ、女の子が2人・・・・・・3人?入ってきたからだ。
「見ろ、お嬢様風優等生だ!」
「ポニーテールの子も可愛いぞ!?」
「バカ野郎! 木下って子も可愛いだろうが!?」
「バカはお前だ!? アイツは男だぞ!?」
「俺はそれでも構わない!」
「コイツ・・・・・・言い切ったぜ」
「野郎はいらねぇ!」
「あぁ、いらねぇ!」
「うるさいぞ、貴様ら! 少しは静かにしたらどうだ!?」
吹寄の一喝でも4組男子の歓声は止まらない。無理もない、ポニーテールの子はまだしても、桃色髪の子は今までに無いタイプだ。どうしても盛り上がってしまう。
「そうですよ、皆さん? あんまりうるさい子は黙らせますよ?」
「―お口チャックマン―」
見かねたジェイド先生の一言で、全員一瞬で静まった。この人が言うと本当に有言実行しかねないし、やるにしても何をやらかすのか分かったもんじゃない。
「しっかし、野郎共は大喜びだね。さすがのさやかちゃんも若干引くよ」
「ウチの学校にはまず来ないお嬢様風優等生だしね。無理もないと思うけど」
「そういうわりには明久は一緒になって騒いだりしなかったけど、何で?」
「声を上げるタイミングを逃して・・・・・・ね」
「そ・・・・・・そうなんだ・・・・・・」
僕も一緒に騒ぎたかったんだよ、ちくしょう。
「ちなみに誰が明久の好みのタイプ?」
「そうだねぇ・・・・・・桃色髪の女の子とかが好みかな?」
「ほほう、それは巨乳好きということで?」
「いや、そうゆうわけじゃふぎゃす!?」
「どうせウチは貧乳よ!」
ぎゃあぁーーー!? 何か首を絞められている!? なぜ!?
「ちょ!? 何やっているのよアンタ!?」
「少し離れていると思ったら、何しているのよアンタは!」
「ちょ、何のこと!? 大体僕は君とは初対……面……」
あ、やばい。マジで息が・・・・・・できない・・・・・・さよ・・・・・・な・・・・・・ら、ぼ、くの・・・・・・人生・・・・・・。
◇◆◇
「ハッ!?」
「明久が目を覚ましたぞ!」
首を絞められて意識を失っていた明久が意識を取り戻した。あの後その場で応急措置をした後、呼吸をし始めた明久を保健室に運んだ。
「おーおー、無事に意識を取り戻して何よりだぜい、アッキー」
「土御門・・・・・・それに当麻・・・・・・」
「大丈夫か? 意識ははっきりしているか?」
「てめぇも災難だったな」
「よかった。一時はどうなることかと思ったんだよ?」
「無事で何よりですよ、明久ちゃん」
「承太郎・・・・・・さやかに小萌先生まで・・・・・・僕は一体どうしたんですか?」
どうして自分が保健室のベッドにいるのか分かっていない明久。覚えていないのか? まぁ、無理もないな。一瞬のことだったからな。
「いきなり転校生の一人がお前に飛びかかり首四の字固めを仕掛けて、お前を窒息させたんだよ」
「いやぁ、一瞬のことで驚いたぜい。あの子と何か関わりがあるのかなにゃー?」
「いや、初対面だよ、彼女とは」
「そうですか・・・・・・面識はないのですね」
面識がないのにコイツはいきなり首を絞められたのか? 一体全体何なんだ?
俺達が首をかしげているとチャイムが鳴る。
「お、授業のチャイムだ」
「じゃあ俺達は先に教室に戻っているからな」
「ちゃんと休めよ~?」
「うん、わかった~」
そう言って俺達は保健室を出て教室へと向かう。
「でもさぁ、あの子いったい何のつもりだろうね」
「さぁな。明久本人が面識がないって言っているんだ。なら、やった本人に聞くのが一番だろ?」
「相変わらずアッキーは女運の悪いこと。これってどうにかならないのかにゃー」
「ほら、皆さん。授業が始まりますよ?」
「「「はーい」」」
まぁ、明久も大事を取って一限目を休むぐらいだから大丈夫だろう。そう思い、俺達は小萌先生に促されて教室へと急いで戻っていった。
◇◆◇
「いいかお前ら。さっきの島田が一番悪い例だ」
「ワシもアレには驚いたぞ・・・・・・」
波乱のHRが終わった後、俺達は空いている席に座り、俺の席を中心に集まっていた。この場に島田がいないのは、先程のことでカーティス先生に連行されたからだ。
「だがアレはアレで収穫があった」
「収穫・・・・・・ですか?」
「いったい何なのじゃ?」
「それは・・・・・・ってムッツリーニはどこに行った?」
本題に入ろうとしたが、ムッツリーニが近くにいない事に気づく。こんな時に何処に行きやがった?
「ムッツリーニなら・・・・・・」
秀吉が目線をそらし、俺もそれを追うと、そこには女子生徒に退治されたアホがいた。
「・・・・・・まぁ、本題に戻るが」
「あの、土屋君は大丈夫でしょうか?」
「どうせスカートの中を覗こうとして、返り討ちにされたってところだろう」
「ムッツリーニらしいと言えばらしいのじゃが・・・・・・」
この非常時にあんな事出来るのは奴ぐらいだよ、全く。俺は気を取り直して話し始める。
「明久は島田に対して全くの初対面のような反応を示した。いつもなら島田の関節技にも耐える(?)アイツだが、一撃KOだ」
「そこは基準にならんと思うのじゃが・・・・・・」
「まぁ、聞け。さっきの関節技は命の危険がある技だ。命の危険があるのにとぼけるようなマネが出来る奴か、アイツは?」
「普通は出来ないと思います」
「確かにあやつにそんな度胸はない」
「だろ? 何度も仮死体験をしている俺達だが、アイツは好んでやる奴じゃないし、そんなマネをしてまでもとぼけるような奴じゃない。つまりだ・・・・・・」
ここで一息ついてから、俺の推測を言う。
「明久は俺達のことを完全に忘れている可能性がある」
「そんな・・・・・・どうして・・・・・・?」
「なぜじゃ・・・・・・?」
「さぁな? 異世界ものの小説とかにある世界の修正力とかじゃないのか?」
ショックを隠せない様子の二人。俺だって信じたくねぇが、さっきの反応を見る限りそうと考えるしかない。
「他にも話し合うことがあるから昼休みに集合だ。いいな?」
「うむ、分かったのじゃ」
「はい!」
よし、解散と言い指定された席に戻っていく。倒れていたムッツリーニも先に席に戻っていた。チャイムが鳴り、保健室に行っていた奴らが戻り、席に着くのと同時にジェイドという教師と両腕抱えて虚ろな目をした島田が帰ってきた。
「私は二度としません・・・・・・私は二度としません・・・・・・私は二度としません・・・・・・私は・・・・・・」
「はいはい、分かりましたから席に着きなさい」
・・・・・・何があった、島田?
「では皆さん、2年生も私が社会の授業を教えますのでよろしくお願いします」
『・・・・・・う~い』
「元気な返事で結構です。では、『魔物戦線』から授業を始めましょう」
教科書を開きなさいと言ってジェイド先生が黒板に“魔物戦線”について書き始める。魔物戦線なんて始めて聞く。何なんだ?
「日本の戦後復興期、つまり日本が戦後から経済を回復させた時期にアフリカ大陸において謎の侵略者が現れてアフリカ大陸全土を制圧しました。この時の謎の侵略者ですが・・・・・・美樹さやかさん」
「ふぁい!?」
「この謎の侵略者を我々人間は何と呼びましたか?」
「えっ、えっと・・・・・・魔物です!」
「結構。では、この時同時に世界各地である現象が起こりました。それは?」
「それは・・・・・・魔法・・・・・・ですよね?」
「はい、その通りです。よくできましたね」
「えへへ。これぐらいさやかちゃんにかかれば・・・・・・」
「あ、もういいですよ美樹さん」
「えっ、あ、は~い・・・・・・」
さらに言葉を続けようとした美樹さやかだったが、教師に意見を真っ二つにされ席に座った。それにしても・・・・・・魔物に魔法ねぇ・・・・・・なんだかファンタジーみたいな話だな。
この後、魔物戦線の当時に起こった事などの説明をし始めたが、すぐに眠くなったため、俺は寝ることにした。
◇◆◇
「ではみなさ~ん、お昼休みに変なことをしないように」
「は~い」
目が覚めるともう四時間目が終わっていた。いつの間に・・・・・・俺は起き上がろうとするが、身動きがとれない。
「今日の犠牲者は転校生か」
「まぁ、知らなかったからしょうがないし、ある種の洗礼だろ?」
よく見れば景色が上下逆さまになっている・・・・・・逆さま?
「お~い、大丈夫か? 頭に血が上っていない?」
「よくまぁ、あの体勢で寝続けていられるもんだぜい」
「つーか、顔真っ赤かだよ?」
「その前に助けてやれ」
「「「は~い」」」
成る程・・・・・・明久とツンツンヘアーと胡散臭い奴と美樹さやかの顔が逆さまになっているので分かったが、俺は今、逆さまにつるされている訳か。意識したら、気分が悪くなってきた。
「何が起きているのか大体把握したが、とりあえず助けてくれ」
「え~と、ちょっと待ってね・・・・・・と」
降ろしてもらい、俺は立ち上がる。一体全体何が起こったんだか・・・・・・。
「お前、ジェイド先生の授業で寝るなんて度胸あるなぁ・・・・・・」
「一体何があった?」
「眠ったお前を見て、先生がお前を吊したんだぜ」
「気をつけなよ、転校生君。ジェイド先生の授業で寝たら、重いペナルティが科せられるからね」
「そもそも寝るのが悪いのだ。これからは気をつけることだな」
「あぁ、身をもって知ったよ」
先ほど土屋に制裁していた奴に注意されて、以後気をつけることにした。鉄人でも拳骨一発なのに、一限目から4限目までずっと逆さまで宙づりはさすがに勘弁してもらいたい。俺は姫路達が屋上の方に行ったことを聞き、一言礼を言った後教室を後にしようとした。
「ねぇ、ちょっといい?」
「あん?」
その時、明久が俺を呼び止める。明久の方を見ると、不思議そうな顔で俺を見ていた。
「僕と君たちの間で何かあった?」
「・・・・・・何のことだ」
「何か遠回しに視線を感じるし、初対面のはずなのに僕のこと知っている感じだし・・・・・・」
「・・・・・・お前にそっくりな奴が前の学校にいたからな、それと勘違いしたんだろう」
「そう? なら、いいけど・・・・・・」
いささか納得してない様子だが、とりあえず理解したという表情を浮かべる明久。
(・・・・・・コイツの性格で、この反応だと・・・・・・ハァ~、マジか・・・・・・)
一番当たって欲しくない予想が当たり、顔には出さないようにしながら落胆する。色々と複雑な思いが渦巻いたが、とりあえず今後のことをアイツらと話し合うべく、俺は屋上に向かった。
明久と雄二達が初対面である・・・・・・どういうことだ!?
次回に続きます。