それではどうぞ。
「待たせたな・・・・・・っと」
屋上に着くとそこには秀吉と土屋の二人しかいなかった。
「島田と姫路はどうした?」
「二人は購買で昼食を買いに行っておるぞ」
「そうか・・・・・・何やっているムッツリーニ?」
「カメラの点検をしている」
いつになく真剣な表情でやっているから何かあったのかと思ったが、やはりそこは土屋だった。
「あっ、来てたんだ、坂本」
「大丈夫でしたか? 坂本君?」
「島田に姫路か。あぁ、俺はこの通りピンピンしているぜ」
俺と秀吉が土屋に呆れていると、弁当を持った島田と姫路がいた。よく見ると二人が持っている弁当の量が多い。
「島田に姫路よ。弁当の量がいつもより多い気がするが・・・・・・どうしたのじゃ?」
「あぁ、これね。どうせなら全員の分を買っちゃおってことになってね」
「全員の分を? 金は大丈夫だったのか?」
「はい。丁度収入はありましたので」
そう言って全員に弁当を配る二人。そういえば金の問題もあったな・・・・・・どうするべきか。
俺達は弁当をもらうと、その場に集まって座り飯を食い始めた。弁当はのり弁でオーソドックスな弁当だったが、味付けは悪くなく、箸は進んだ。ある程度食べ終わると秀吉が話し始める。
「雄二よ、一限目の前に話したことの続きを聞きたいのじゃが・・・・・・」
「その前に俺からお前達に一つ、聞きたいことがある」
「聞きたいこと、ですか?」
「俺が逆さ吊りになった経緯を知りたい」
「う、うむ。それはじゃの・・・・・・」
「・・・・・・ジェイド・カーティスが『授業中に寝るとはいけませんねぇ。何かお仕置きしなければ』と言ってどこからともなくロープを出した」
「その後、目にも止まらぬ速さで縛り上げて逆さ吊りにしました」
「『昼休みまで吊しましょう。降ろした人は・・・・・・ねぇ?』と意味深な笑顔と共に授業を再開したのじゃ」
何じゃそりゃ・・・・・・鉄人以上にやばいじゃねぇか。どうして降ろさなかったのかと聞くと島田が「そんな世にも恐ろしいこと、できるはずないじゃない」と青ざめながら言った。本当にコイツに何があった?
「まぁ、手の出しようがなかったってことでいいか」
「それより坂本。一限目の前の話って何よ?」
「俺も気になる」
「んぁ? そうか、お前達はいなかったもんな・・・・・・」
俺は気を取り直して話を進める。
「秀吉と姫路には話したが・・・・・・明久のことについてだ」
「アキのこと? アキがどうしたのよ?」
「単刀直入に言うぞ・・・・・・明久は俺達のことを完全に忘れている」
「えぇ!? それってどうゆうことよ!?」
「・・・・・・なぜだ?」
「雄二よ、なぜ断定なのじゃ? 先程は『可能性がある』という言い方じゃったと思うのじゃが・・・・・・」
「そうですよ。どうしてですか?」
「まぁ、とりあえず聞け」
驚く島田と土屋を宥め、秀吉と姫路に話を聞くように言い、場を落ち着かせる。まぁ、俺もお前達の立場ならそうなるのも分かるが・・・・・・。
「いいか、秀吉と姫路には話したがアイツは命の危機が迫ってまで嘘をつく事はまずできない。ここはいいな?」
「うむ。それは聞いたのじゃ」
「島田に関節技を極められていた時のアイツの反応は困惑と混乱が見て取れた。そこから『忘れている可能性』を俺は考えた。次にコレが断定した要因だが、昼休みに入る前だ」
「雄二が吊されていたので、先に屋上へ向かった時じゃな」
「その時どうして助けるって考えが出なかった・・・・・・? 俺は明久ともう二人に助けてもらった後、明久が俺に“どこかであったことがあるのか”と尋ねてきた。そこで俺はハッキリと明久が俺達のことを忘れていることを断定した」
「それだけで?」
「アイツは考えていることは口に出すし、顔にも出る。話したときのアイツの表情を見る限り、とぼけていると言うことはまずないと俺は考えた」
「そんな・・・・・・」
「ウチらのことを忘れているなんて・・・・・・」
明久が俺達のことを完全に忘れているということに愕然とする姫路と島田。秀吉や土屋も声には出さないが、同じように愕然としているのがこちらにも伝わってくる。
「話を進めるぞ。そのことから、これからの俺達の目標は『明久に元の世界のことを思い出させる』、『元の世界に帰る方法を探す』ということだ。あと、当面の生活できる場を確保する必要がある」
「長期戦になるのか」
「すぐに帰れるとばかりの思っていたのですが……」
「生活の場については大丈夫かと思う。今日、俺達はここに転校することになっていたらしいから、家なり寮なりあると思う」
その後、俺達は当面のことを話し合うのと同時に今後の動きについて話し合った。
◇◆◇
(成る程。つまりアイツらは明久を連れ戻そうと来たってことか・・・・・・)
何かあると思えば、これはまた面倒そうな問題だな。これは骨が折れそうだ。
「うぉおおおおおおおおおおお!!」
「はぁあああああああああああ!!」
「せいやぁあああああああああ!!」
アッキー、カミやん、さやさやの三人の雄叫びと共に紙が一枚、宙に舞う。宙に舞った紙を見て承太郎が審判を下す。
「さやかだな」
「しゃあ!!」
「「チィ!!」」
「貴様ら・・・・・・カルタ一つでなぜここまで白熱できるのだ・・・・・・」
「いいやんか、今は昼休みだぜい。遊びで白熱するくらい大目に見てくれてもいいだろう?」
昼飯を食べ終えた俺らはさやかが取り出したカルタで遊んでいた。まぁ、こいつらは遊びに関しては手を抜かないっていうか、何て言うか。
「くそっ! さやかには2ポイント差で負けている! 何とか巻き返さないと!」
「ふっふっふっ、どうやって勝とうというのかね? この最速のさやかちゃん相手に?」
「せいぜい油断してろよさやか・・・・・・次は俺の黄金の右腕が唸るぜ・・・・・・」
「・・・・・・次、読むぞ」
「「「はーい」」」
ま、どれだけ騒いで承太郎の一言で静かになるから、吹寄もそこまで言わないけどな。俺はイヤホンしながら勝負の行方を見守る。
(にしても・・・・・・元の世界、ねぇ?)
目の前で繰り広げられている激戦を見ながら、イヤホンから聞こえる転校生達の話に耳を傾ける。何やら事情がありげな転校生達が気になり、ロープから下ろす時にこっそりと盗聴器を仕込ませてもらい、話を盗聴させてもらっている。しかし、聞こえてきた内容は予想を越えたものだった。
(連れ戻すみたいに言っているけど・・・・・・どうする気なのかね)
彼らの言う“元の世界へ連れ帰る”というのはどうゆうものか、そもそも本当に明久が別の世界からやってきたのか・・・・・・調べてみる必要がある。
(まぁ、何にしても・・・・・・)
「あぁ!? くそっ、またさやかに取られた!」
「何でだ! 何でさやかに取られまくるんだ!?」
「ふっふっふ・・・・・・さぁ、このままさやかちゃんが全部取っちゃうよ~」
耳からイヤホンを外し、騒ぎの方に向かう。とりあえず今は難しい話を抜きにして、目の前の親友達との勝負に参戦させてもらおう。
「お~い、俺も混ぜてくれよ」
「いいよ、土御門。ま、さやかちゃんの圧勝に終わるだろうけどね」
「次こそは・・・・・・次こそは・・・・・・!」
「あぁ、やってやるぜ!」
親友達と騒ぐカルタは昼休みの終わりまで続くのであった。
これにて序章は終わりです。
元の世界の記憶がない明久に思い出させることが出来るのか?
次回もお楽しみに。