あなたへおくる物語   作:紫炎.2

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さあ、第1章の開幕です。

それではどうぞ。





第1章:巴村の英雄伝説
第5話:夢と宿題とゴールデンウィーク


―――以上が今回の調査報告です

 

整理整頓された部屋で二人の人間がいる。

 

―――ご苦労様、下がって良いよ

 

一人は何かの報告をして、もう一人はその報告を受ける。

 

―――はい・・・・・・質問をよろしいでしょうか?

 

一人が疑問をもう一人にぶつける。

 

―――アレは本当にそんな代物でしょうか?

 

―――反応はあった。詳しくはこれから専門家が調べるから大丈夫やから

 

はい、と言って一人は部屋から退出する。もう一人は報告書を見て考え込む。

 

(思い出す・・・・・・あの頃は幸せだった・・・・・・)

 

ぼんやりと眺めていたら、誰かの声が聞こえた。その声は、とても幸せそうで・・・・・・

 

(本当に、幸せだった・・・・・・)

 

涙に濡れた、悲しい・・・・・・とても悲しい声だった・・・・・・。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ハァ~」

「朝からため息だなんて、幸せが逃げるぞ?」

「にしてもアッキーが朝からため息だなんて珍しいな?」

「食あたり?」

「違うよ」

 

朝の教室は相変わらず元気だけは有り余るAクラスの中で、いつものメンバーに囲まれながらも僕一人だけ憂鬱だった。原因は今日見た夢の内容だ。

 

「また変な夢を見てね」

「夢? どんな夢だ?」

「会社の部下と上司の一幕」

「やけにリアルな夢だな・・・・・・?」

「その後に聞こえてくる“声”が何て言うか・・・・・・幽霊っぽいっていうか・・・・・・」

「明久って幽霊が苦手だったけ?」

「それよりも恐ろしいものを知っているから怖くも何ともないよ。その声がこう・・・・・・実感が籠もっていて、すごく耳に残って・・・・・・ね」

 

今回の夢といい、坂本君達が転校してきた日の夢といい、何か別の誰かの夢のような感じだから余計気になる。

 

「何もなければ良いんだけどね」

「怖いこと言わないでよ・・・・・・明久の嫌な予感って時々当たるからさ・・・・・・」

「みなさ~ん、授業の時間ですよ~。席に着きなさ~い」

 

いつの間にかカーティス先生がやってきて授業が始まった。気づけばもうこの時間か・・・・・・僕たちはとりあえず解散して各々の席に座る。

 

「さて今回の授業ですが、宿題を出していたと思いますので、その提出を先にお願いします」

『う~す』

「「「あっ・・・・・・!」」」

しまった・・・・・・忘れていた・・・・・・。

 

 

 

第1章:巴村の英雄伝説

 

 

 

「「「ハァ~」」」

「ため息つくのが増えたな・・・・・・」

「まったくだぜ・・・・・・」

 

しょうがないじゃないか、宿題が増えちゃったし・・・・・・僕と当麻、さやかは見事に宿題を忘れて、いつもの罰を受けた後、追加の宿題を言い渡された。抵抗? 無駄に決まっているでしょ?

 

「宿題を忘れる方が悪いのだ」

「だって、やっていたゲームが丁度エンディングまでいったから・・・・・・」

「週刊誌読むのに時間が必要だったし・・・・・・」

「宿題という存在を忘れていました」

「言い訳したところで何にもならないぞ」

「「「だよな~・・・・・・」」」

 

うぅ、鬱だ。よりにもよって『過去の偉人を作文にして書いてきなさい』なんて抽象的な作文の宿題を出されるなんて。どうすればいいんだ・・・・・・。

 

「少しいいか? 聞きたいことがあるんだが・・・・・・」

 

机に突っ伏して悩んでいたら、この間転校してきた坂本君がやってきた。彼も困っている様子だ。

 

「どうした?」

「いや、何か良い情報ねぇかと思ってな」

「教科書に書かれている偉人でも書けばいいじゃねぇか?」

「当麻、言いつけ忘れた?」

「あ~・・・・・・」

 

そうなのだ。今回の偉人の作文は『教科書には書かれていない偉人を書け』とのことである。偉業の大小は問わないところはまだ救いがあるのだが・・・・・・。

 

「教科書に書いてないとなると、それこそマイナーな人とか、地方に出向かないとわからない人とかになるからね」

「うぅ、もうすぐゴールデンウィークなのにな~」

 

あぁ・・・・・・せっかくのゴールデンウィークなのに、宿題のことで頭を悩ませなければならないなんて・・・・・・僕たちは無常な現実を打ちのめされる。

 

「あー・・・・・・おい、土御門。コイツら、どうすればいいんだ?」

「単に宿題をやりたくないのと、宿題のレベルが高いのが問題なんだぜ。だから、どっちかを何とかすれば、いいんじゃないかにゃ~?」

 

坂本君は愚図る僕たちを励まそうと隣にいる土御門に話しかける。何か、いい人だな・・・・・・坂本君って。最初、転校生5人組と一緒にジロジロ見てきて気持ち悪かったけど、その評価は改めなくちゃいけないかな?

 

「とにかく4人とも。おすすめの情報があるし、しかも旅行まで一緒に出来るというプランがあるけど、どうかにゃ~?」

「「「詳しく」」」

「お前ら・・・・・・」

 

さすがは土御門、僕たちの親友にして情報通。僕たちが欲しい情報をしっかりと持ち合わせている。僕たちの変わりようを見て呆れる吹寄だけど、僕たちは気にしない。そういうと思ったぜと土御門はメモ帳を取り出す。吹寄はため息を吐いた後、「早く帰れよ」と言い、先に帰っていった。

 

「さて、教科書に載ってない偉人となると、地方とか、マイナーな人たちになるから・・・・・・」

「実際居たらどんな人なんだろう?」

「はい、さやかちゃんから一つ考えたよ!」

「何だよ、さやか?」

「やっぱり、何か偉大な偉業を成し遂げた・・・・・・」

「それだと教科書に載るだろう」

「かもしれない人」

「えらく中途半端だし、抽象的すぎだろ!?」

「じゃあ、頭の天辺だけ髪の毛ふさふさな人」

「どんな偉業だ!? そもそも偉業か、それ!?」

「バーゲンセールの英雄!」

「それは近所のババァだろうが!?」

 

さやか、僕、当麻の予想に一つずつ答えてくれる坂本君。彼には突っ込みの才能があるのではないのだろうか?

 

「う~ん、やっぱりないかにゃ~・・・・・・お、あったぜい?」

「本当か!? 誰だ!?」

 

手帳をペラペラとめくり続ける土御門が一つのページで止まる。一体全体どんな偉人なんだろうか・・・・・・?

僕たちは自然とつばを飲み込む。

 

「アイラマス育毛法の発明者、猿賀久司」

「マジでいやがったよ!?」

「却下だ! そんな奴!」

「いやいや、冗談冗談。次は本物だって」

 

ビックリした・・・・・・本当にいたかと思ったよ。というか聞こえていたんだ。気を取り直して、土御門の話を聞く。

 

「アッキー、カミやん、さやさや、坂本、巴村って知っているかなにゃ?」

「「「巴村?」」」

「なんだそこ?」

「この学園都市から電車の二時間ぐらいしたところにある田舎の村だ」

「そんな田舎に何があるんだよ?」

 

当麻の疑問に対して土御門が真剣な表情になる。いきなり彼がこの表情にあるのは絶対に何かある。先程のおちゃらけた雰囲気が一転したことに少し動揺する坂本君を尻目に僕と当麻、さやかは同じく真剣な表情になる。

 

「聞いて驚け、この村・・・・・・」

 

 

 

 

 

―――魔物に襲われたのさ・・・・・・―――

 

 

 

 




短いですが、区切りが良いのでこの辺りで。

魔物に襲われた田舎の村。果たしてそこに何があるのか。

次回に続く。
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