それでは、どうぞ。
「・・・・・・暇だね」
「そうだな~」
「トランプする?」
「いや、それはもっと落ち着いた場所でやろう」
「つーか、本当に何もない場所だな・・・・・・」
窓から見える田園景色を眺めながら、僕達は暇をもてあましていた。
土御門の情報を聞いてから僕達は後日駅に集合し、電車に乗って巴村に向かっていた。最初は人もたくさん乗っていたのだが、学園都市から離れるにつれて人がいなくなり、ついには僕、当麻、さやか、坂本君の四人になった。
別段やることもないので、景色を眺めるくらいしかやることがない。これならさっきさやかが取り出したトランプのように何か持ってくれば良かった。
「にしても土御門の情報は本当なのか?」
「土御門に限って偽情報を教えるなんてことはしないと思うけど・・・・・・」
「でも、魔物に襲われた・・・・・・なんて、ね?」
「うん? 魔物は侵略者が現れて以降、出てきたんじゃないのか?」
「アフリカ大陸近辺ならまたしても日本じゃ沖縄以外、観測されてないよ? ていうか、これなら日本国民誰でも知っていることだけど?」
「あー、すまん。少々世間の情報とかに弱くてな・・・・・・」
誰でも知っている一般常識をさやかに指摘されて、口ごもる坂本君。前から思っていたけど坂本君って一般常識に欠けているよね?
僕はそんなことを考えながら、昨日の放課後に聞いた土御門の情報について思い出していた。
確か、巴村は日本で始めて魔物に襲われた村らしく、その際に当時の村で魔法に長けていた女性が村に被害を出すことなく魔物を退治したらしい。そのときに女性も魔物と相打ちになったらしく、その命を懸けて魔物と戦かった彼女のことを、村を救った英雄として祭った、ということだ。
最初聞いたときは嘘だぁと思っていたけど、土御門も気になって調べてみた結果、ちゃんと当時の記録が残っていたようなので、確かな情報らしい。電車で二時間なら時間的にも丁度いいと思い、それを調べることにしたというわけだ。
「今でもちょっと信じられねぇな」
「当麻がそう言うのも分かるよ。魔物なんてテレビの向こう側の存在だし」
「ましてや報道でも全く取り上げられないからね。実際見ないことにはね・・・・・・」
当麻の疑問に答えるさやかと僕も未だに半信半疑だ。大体そんな日本の田舎を狙って何になるのだろうか。狙うなら都市とかそういうところを狙うべきだと思う。
「ま、そんなことは実際に行ってみれば分かるだろ」
「そうだな・・・・・・にしても本当に何もねぇなここ」
坂本君が話を切り上げて外の風景を眺める。当麻もつられて外を見るが、見渡す限り畑と平地、所々に家と通行人が見えるぐらいで他は何もない。
「まさしく田舎って雰囲気の場所だな、ここは」
「学園都市が異常に発展しすぎているってこともあるけどね」
「外に出てみると本当にそれが実感できるよな」
「さすが日本の最先端技術の集合都市だよね~」
さやかの言葉に僕と当麻は全くだと頷く。あそこでは辺りの道路にゴミなど落ちておらず、空気も新しく開発された魔法によって空気が澄んでいる。ビルやデパートも結構並んでおり、ないものはないといった感じだ。本当に学園都市はすごいと思う。
ふと、坂本君が首をかしげて何か考え込んでいるのが見て取れた。どうしたのだろうかと思い、僕は尋ねる。
「どうしたの坂本君?」
「いや、実はな・・・・・・とその前にお前ら」
「何?」
「何だ?」
「何々?」
「今度から名前のほうで呼んでくれないか? 名字で呼ばれるのも少し違和感があってな・・・・・・」
「別にいいけど・・・・・・」
「悩んでいたことってそれか? 何かお前のイメージに似合わないことで悩んでいるな」
「うるせぇな、別にいいだろう? ちなみに悩んでいることはそれじゃなくてな・・・・・・」
悩みが違うと言って頭を振る雄二。だったらなんだろうか?
さっき外に見えた田んぼのことかな。かかしがカラスに突かれていてちょっと面白かったけど。
「そもそも学園都市って何なんだ?」
「「「ハァ!?」」」
あまりの言葉に僕と当麻、さやかは驚きの声を上げる。ちょ、学園都市を知らないって!? どんな田舎者!?
「おいおい、冗談だろ!? 今の日本国民で学園都市を知らないってどんな田舎者!?」
「いや、田舎者っていうレベルじゃないでしょ!? そもそも、自分が在籍している場所だよ!?」
「もしかして雄二ってゴリラの親戚!?」
「誰がゴリラの親戚だぁ!? しかたねぇだろ!? 知らねぇもんは知らねぇんだから!?」
怒鳴り返す雄二を見る限り本当に知らないらしい。知らないで学園都市に転校して来たってどんな人間!?
「いや、転校するときに調べたりもしただろ?」
「あれよこれよという間に転校したんだよ」
「だとしても学園都市を知らないって・・・・・・やっぱりゴリラの親戚?」
「喧嘩売ってんのか明久」
「いやいや、そう言われてもしょうがないって」
僕達は半分呆れながらため息をつく。成績の悪い僕でも学園都市がどういったものか、よく知っている。其処に住んでいるのなら、なおさらだ。
「しょうがない。着くまで暇だし、復習がてら学園都市について話すか」
「ついでに魔物についても話したら? 何だかそっちのほうも知らないみたいだし」
「悪いな」
「別にいいって」
僕も復習しようかなと当麻が説明を始めるのを待つ。当麻は一息入れてから説明をし始めた。
「学園都市が完成したのは確か第一次大陸奪還戦争が終わった直後だったよな?」
「そうそう。元々は別の理由だったんだけど、魔物たちに敗北した人類が次の戦いに向けて大掛かりの研究機関を望んで、建設し始めたのが始まりで、当時は未知の領域が多い魔法に対する研究が目的だった・・・・・・よね?」
「そうだよ? ていうかさやか、世界史は苦手なんだから無理にしなくても・・・・・・」
「だって、誰かに何かを教えれるなんて滅多にない機会だもん」
当麻の説明に補足しようとするさやかだけど、自信がないのか途中で勢いをなくす。自信ないなら聞く側に回ればいいのに・・・・・・。
「第一次大陸奪還戦争って何だ?」
「これすら知らないってお前・・・・・・今までの試験、どうやってくぐり抜いて来たんだよ?」
「確かにどうかと思うけど・・・・・・それは今度ね」
雄二は今までどうやってテストや高校入試を乗り越えてきたんだろう?
それとも本当はどこかの箱入りお坊ちゃま?
「話を戻すぞ? 研究を続けているうちに『十代から二十代の若者は魔力の伸び代が高い』ってことがわかってすぐさま研究兼教育施設が作られるようになった」
「そうして人がたくさん移住するようになったんだ。それこそ一つの都市のような規模に」
「いつしか最先端科学技術、魔法が集まるようになり、さらに教育も兼ねているから“学園都市”って呼ばれるようになったってことだ」
「なるほどな・・・・・・道理で見たことがないような家電とか、胡散臭い本とかもあるわけだ」
雄二は納得したらしく、首を縦に振り頷く。というよりも一般常識中の一般常識なのに知らないこと自体僕にとっては驚きだけどね。
「次は魔物だが・・・・・・」
「はいはーい! それはさやかちゃんにお任せあれ!」
次の説明をしようとした瞬間、さやかが説明をするというので当麻はさやかにバトンパスした。
「魔物が最初に観測されたのは実は第一次大陸奪還戦争よりもっと前のことなんだよね」
「そうなのか?」
「そう! 元々はそこまで人間に危害を加えるような生き物じゃなかったんだけど、侵略者の出現によって突如魔物が凶暴化し始めたんだよ」
「リーダー格が現れてそいつが魔物を唆したんじゃないのかっていう話も出始めた直後に“魔王”と名乗る奴が現れたんだよ」
「ちょ、明久。今私が説明して・・・・・・」
「そいつが魔物を組織化して人間に襲い掛かってきたのが魔物と人間の対立の始まりだからな」
「当麻まで!? ちょっと! 今は私が説明して・・・・・・!」
「なるほどな。そしてそれが後に第一次魔王戦線っていうのに繋がるってわけか」
「・・・・・・」
僕たちの説明で基本的なことを理解した雄二。本当、こんなことを知らないってどれだけ常識知らずだったんだろう?
僕がそこらへんを疑問に思っていると、どこからともなく憂鬱なオーラが漂ってきた。まるでここに私の居場所はないのだという後ろ向きなオーラである。気になって僕達がそちらのほうを向くとそこには電車の床に体操座りでのの字を書き続けるさやかがいた。
「いいもん・・・・・・いいもん・・・・・・私なんていらないもん。言いたいこと全部言われて落ち込む弱いさやかちゃんだもんね~」
「わ、わりぃ、さやか。そんなに落ち込むなよ」
「そ、そうだよ。誰もそんなこと考えていないって!」
「言いたい事全部言った張本人たちが何言ってんだか・・・・・・」
「「ウッ!」」
慰めようとしたが正論を言われて何も言えなくなる僕と当麻。雄二はとちょっと離れたところからニヤニヤとこちらの状態を眺めていた。
この野郎、一人だけ笑いやがって・・・・・・!
僕と当麻は楽しむ雄二を尻目にさやかを慰め続けた。
◇◆◇
「4・・・・・・時間じゃあそろそろだが・・・・・・やっぱ何もないな」
「そうだね・・・・・・あっ、雄二、ダウト」
「ちっ」
さやかが元気を取り戻しやる事がなくなったため、僕たちはトランプを広げてダウトをやっていた。今は僕が優勢である。次は僕の番なので“6”のカードを出す。
「5」
「じゃあ次は6・・・・・・と」
「・・・・・・」
さやかの番が終わり当麻の番になったのだが、当麻は外を眺めたまま動かない。どうしたのかと思い、僕は当麻に話しかける。
「当麻、次は君の番だよ?」
「ほら、当麻。はやく」
「・・・・・・うん? あぁ、そうだったな」
僕たちの呼びかけにも空返事で応える当麻を見て、何かあったのかと心配になる。本当にどうしたんだろうか? 外の景色を見てからずっと当麻は難しい顔をしている。
「ねぇ、当麻。どうしたのよ? さっきから外の景色ばっかり眺めて・・・・・・?」
「・・・・・・お前ら、空を見てみろ」
「空?」
「何で?」
「いいから」
僕は当麻の言葉に疑問を持ちながら窓越しに空を眺めた。
そこには真昼間にもかかわらず、どんよりとした夜の空が広がっていた。
「・・・・・・えっ?」
ありえない光景に僕達は唖然とする。時計には普通に正午近くの時間を示している。この時間なら青空が広がっているはず。なのに空は真っ暗闇に包まれていた。
「観光気分で来た筈なんだけどな。こりゃ、何かあるぞ・・・・・・」
当麻の一言で僕達の中に緊張が走る。
この先にある巴村に絶対何かある・・・・・・そんな確信めいたものを僕は感じ取った。
徐々に暗くなっていく空・・・・・・果たして彼らを待ち受けるのは一体何か?
次回をお楽しみに。