あなたへおくる物語   作:紫炎.2

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これで前作までの投稿分(改良版)は投稿終了です。同時に書き溜めが尽きましたので、更新速度は落ちます。ですが、半年に一回とかにはしないようにします。

そして、今回の話で何を参考にしたのか、分かる人には分かるかも知れません。

それでは、どうぞ。


第8話:頼れる人と異常事態

「学校の宿題?」

「はい。学校の宿題のために必要な情報を調べるためにこの先の巴村ってところに向かう途中だったんですけど・・・・・・」

「魔物に襲われた・・・・・・と」

「そんなところです」

 

雪代縁と名乗った彼の攻撃により魔物が死んで、辺りが静寂を取り戻してから僕は彼に事情を説明していた。当麻とさやかはナイフが貫かれて死んでいるスライムを眺め、雄二は僕の後ろにいる。

 

「どこの学校の奴かは知らないが、護身用の武器一つ持っていないのはさすがに不用心だぞ?」

「いや、日本じゃあ沖縄以外に小型の魔物なんていないと思っていましたから」

「野獣に襲われるとかは考えなかったのか?」

「・・・・・・か、考えていましたよ!? うん!」

「・・・・・・ハァ」

 

痛いところを突かれて僕は言い繕うとしたが、簡単に見破られ、雪代さんはため息を吐く。というよりも、猛獣が出る場所なのか、ここは。

 

「他に魔物の気配はなさそうだから、先に行かせてもらうぞ」

「あ、ちょっと待ってください!」

「なんだ?」

 

荷物を担ぎ直してさっさと立ち去ろうとする雪代さんを引き止める。当麻とさやかもその様子を見て、こちらに戻ってくる。

 

「もしかして巴村に住んでいる人ですか?」

「・・・・・・まぁ、そうだな。それがどうした?」

「あの、出来れば道案内をお願いしても良いでしょうか?」

「ハァ? 俺が、お前達の?」

「はい、お願いします!」

「あ、俺からも」

「私もお願いします!」

「何で俺がお前達の・・・・・・」

 

僕達の頼みに対して面倒くさそうに応える雪代さん。僕たちにとって彼は命の恩人である。その上、道案内まで頼むのは図々しい頼みだという事は分かっている

 

「道筋は知っているのだろう? じゃなきゃここまで来れないし・・・・・・」

「でも、さっきのような魔物にまた出くわしたらって考えると・・・・・・」

「成る程、護衛を頼みたいわけだ」

「えっと、それもありますけど・・・・・・何か、ここら辺変な感じですし」

 

僕は少し恥ずかしそうに答える。僕の態度を見て、雪代さんは少し考え込む。理由としても妥当だし、先ほどのように魔物に襲われれば今度こそ命の保証がない。だから、ここで何としても彼には同行してもらいたい。ある程度考えた後、雪代さんが答える。

 

「・・・・・・いいだろう。ただし、村が見えるところまでだ」

「「「「あ、ありがとうございます!」」」」

 

雪代さんは道案内兼護衛を受けてくれて、ホッと一安心した。よかった、これで断れていたら、本当に参っていたよ。

 

「いや~、断られたらどうしようかと・・・・・・」

「どの道行く道は一緒だからな。ついでだ」

 

さっさと行くぞと雪代縁は荷物を持って進む。僕たちは慌てて荷物をまとめて出発した。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

魔物に襲われた場所から離れて森の中を進む。辺りは相変わらず昼にもかかわらず暗いが、明かりが必要なほどではない。だが、木々の間からは暗闇が覗き込みまるでこちらを見ているかのような感じを受ける。

 

「あの類の魔物はそこいらにうじゃうじゃといるぞ」

「そうなんですか? 今まで見たことなかったんですけど」

「お前たち、どこから来た?」

「学園都市から来ました」

「あそこか・・・・・・確かにあそこじゃ魔物なんているわけないな」

 

僕たちはそんな中でも喋りながら道を進んでいた。無論、辺りを警戒しながら雪代さんの後を追う形で進む。

 

「あ、そうだ。雪代さん」

「何だ」

「ここって、ずっとこんなに暗いんですか?」

「暗いって・・・・・・空のことか?」

「はい、そうですけど・・・・・・」

 

少し進むと当麻はある疑問を雪代に問いかけた。当麻は彼がここら辺のこれから行く巴村に住んでいるのなら、この空について何か知っているのだろうかと思い、この質問をした。

 

「いや、分からないな」

「そうですか・・・・・・」

「この空もこの頃なったばかりだ。何が原因か皆目見当もつかん」

「う~ん・・・・・・じゃあ何だろうね、これ?」

「呪い的なものじゃないのか?」

「やめてよ。縁起でもない」

「何だ、明久。お前幽霊が怖いのか?」

「いや、怖くないけど・・・・・・こんな状況だと本物が出てきそうで・・・・・・」

「あぁ・・・・・・確かにこんな状況じゃな・・・・・・」

 

そう言って、僕達は空を見上げる。相変わらず空はどんよりと暗く、光が全然差し込まない。なのに、周囲は少し見渡せる程度には明るく、少し先を歩く雪代さんの姿をしっかりと視認することが出来る。

 

「今までホラーなんてTVの向こう側の話とばかりに思っていたけど、こんな超常現象を目の当たりにしちゃったらなぁ・・・・・・」

「今度からは本当にあるんじゃないかって、思っちゃうよね」

「ハァ~・・・・・・ちょっとした旅行気分で来たのな・・・・・・不幸だ」

「俺としたら超能力も十分超常現象だがな」

「お前ら、さっさと行くぞ」

「あっ、はい」

「これなら俺一人の方がよかったか・・・・・・?」

 

そう言ってぶつぶつと文句を言いながらも、僕たちが自分を見失わない程度の速度で歩いていく彼は案外優しいのかもしれない。雪代さんの姿を見失わないように歩いていく。

 

「っと、ちょっとそこで待て」

「えっ? どうしたんですか?」

「俺の用事だ」

 

そう言うと雪代さんは道を外れて森の方に入っていく。待てと言われたけど、待っていたら魔物が現れそうなので、僕たちはついて行くことにした。

 

「・・・・・・待てと言ったが?」

「魔物が出たら怖いなぁ・・・・・・と」

「ハァ~・・・・・・邪魔はするなよ」

 

明らかに呆れられながらも来るなと言われなかったので、僕たちはついて行くことに。ていうか、さっきから僕だけが雪代さんと話をしているような気が・・・・・・。

 

「わぁ・・・・・・」

「おぉ・・・・・・」

 

少し歩くと開けたところに出た。そこには花畑が広がっており、周囲に漂っていたどんよりとした空気をとは隔絶したような場所だった。

 

「綺麗・・・・・・」

「こんな場所があるなんてな・・・・・・」

「何か、秘境に来たって感じだ」

「こんな場所があったんですね、雪代さん・・・・・・って、ちょっと?」

 

綺麗な花畑に感心していると、雪代さんが花畑を突き進む。どうしたんだろうと僕たちもついて行くと、辿り着いた場所に大きな石が一つ置かれていた。

 

「これって・・・・・・?」

「静かにしていろ」

 

何なのか話しかける前に雪代さんが僕たちに注意する。今までとは違い、有無を言わせぬ口調に僕たちは口を噤む。雪代さんは袋から水が入ったペットボトルとタオルを取り出し、タオルを濡らして石を拭く。その一つ一つの仕草はまるで慈しむかのように丁寧に行っていた。

 

(・・・・・・)

 

その仕草に僕たちは自然と一歩下がり、邪魔にならないように見守った。まるで邪魔をしてはならない聖域のような、大切な空間に僕たちがいてはいけない気がした。雪代さんは吹き終わると石に・・・・・・いや、もう確定だろう。

 

「・・・・・・お墓、ですか?」

「・・・・・・そうだ」

 

雪代さんはお墓に手を合わせる。恐らく、お墓を用意できなかったのか、それとも僕たちでは想像も付かない理由があるのか。どちらにしても雪代さんの大切な人が眠るお墓であることは間違いないだろう。僕たちも自然と手を合わせた。

 

「・・・・・・いいぞ。用事は済んだ」

「いいですか?」

「あぁ」

 

雪代さんはそう言うと、荷物を持って来た道を戻っていく。僕たちも一緒について行った。

 

「こんな所にお墓があるなんてね」

「何か事情があるんだろうな」

「だろうな。だが、部外者の俺たちが触れていいことじゃないな」

「うん、そうだね」

 

あの墓は誰の墓のか、どうしてあんなところに、しかもちゃんとした墓ではないのか。色々と気になることはあるけど、雪代さんの先ほどの雰囲気から容易に触れて良いことではなさそうなので、胸の内に仕舞うことにした。

 

しばらく歩いていくと森を抜けて開けた場所に出た。空は相変わらず暗いが、周りが見渡せないほどではないため、割と見通しはいい。そのため、先ほどのスライムや初めて見る魔物らしき生き物もチラホラと見える。

 

「うわ、やっと森を抜けたと思ったら、なんかウジャウジャいる・・・・・・」

「元気が売りのさやかちゃんも嫌になるよ」

「あと少しで貴様らが目指す巴村だ。弱音を吐くな」

 

言う程ウジャウジャいるわけではないが、チラホラと魔物の姿が見える。雪代さんは疲れ気味の僕達を叱咤して、道なりにどんどん進んでいった。少し歩いていると村らしきものが見えてきた。

 

「あ、あれって・・・・・・」

「村だぁ!」

「やった!」

「やっとか。何かすげー疲れたぜ」

「・・・・・・ここまでだな」

 

やっと村を見つけたらと思ったら、今度は雪代さんが離れようとする。そういえば村が見えるまでって約束だったことを思い出す。だが、ここまで来たのでどうせなら一緒に村の中まで入りたいと思い、雪代さんを引き止める。

 

「あ、雪代さん。どうせなら一緒に村まで行きません? どうせあとちょっとですし」

「悪いが俺は村に用はない。用があるのはこの近辺にある炭坑だ」

「炭坑? ここいらに炭坑なんてあるんですか?」

「あぁ、あるぞ。ちなみにそこには魔物がウジャウジャといる」

「そんな危ないところに何をしに?」

「そこまで言う必要はない。じゃあな」

「あ! ちょっと・・・・・・行っちゃった」

 

話を切り上げて早々に立ち去る雪代さんを見送る。まだちゃんとお礼が言えてないので、少し心残りが残る。

 

「行っちゃった・・・・・・まだお礼が言えてなかったのに・・・・・・」

「まぁ行っちまったもんはしょうがねぇし、さっさと村の中に入ろうぜ」

「雄二の言うとおりだ。正直、上条さんは疲れたぜ」

「私も。何か本当に疲れたなぁ今日は」

「そうだね。調べるのは明日にして、今日はもう休もう」

 

今日は本当に色々なことが起こって本当に疲れたので、村の方にゆっくり進んで行く。こうなると、明日からが大変だなと思った。

 

 

 

だけど、僕たちが村に入った時に目を疑った。

 

 

 

「・・・・・・え?」

「・・・・・・何これ?」

 

普通ならそこには家が建ち並び、時間的にも夜中の時間帯で家には明かりがつき、静かな光景が広がるはずだった。

 

「な、なにやってんだこいつら・・・・・・」

「おいおい、嘘だろ・・・・・・?」

 

そこには予想していた風景など微塵もなく。

 

 

 

「何で家をぶっ壊しているんだ……?」

 

 

 

――――――泣きながら家を壊していく人々の姿だった。

 

 

 

 




家を壊す人々。彼らはなぜ壊していくのか。

次回もお楽しみに。
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