堕天物語   作:EIMZ

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今回で第十話となりました。読んでいただいた皆様、お気に入り登録をしていただいた皆様、本当にありがとうございます。これからも皆様へ感謝を込めて頑張って書かせていただきます。これからも読んでいただければ幸いです。


堕天使と魔王と生放送

現在、このマンションに引っ越してきてから5日間が過ぎた金曜日。時間は午後20時30分。僕は津島家で食後のコーヒーを満喫していた。今日も津島家で料理をした。今回はカレーを作った。テーブルに座り、コーヒーを飲みながら読書をしていると、後ろからヨハネが話しかけてきた。

 

「シェリアス、明日の午後の2時から3時くらいは家にこないでね。後、電話とメールもしてこないでね。」

「は?」

 

唐突すぎて内容が理解できなかったな。

 

「ゴメン、もう一回お願い。」

「明日の午後の2時から3時は家に来ないこと、電話もメールもしてこないこと、いい?」

 

あれ、おかしいな。頭に内容が入ってこないな。

 

「ゴメン、もう一回お願い。」

「だから、明日の2時から3時は家に来ないで、電話もメールもしないで。いい!」

 

いきなり何なんだ。明日の午後2時から1時間何かあるのかな。

 

「なんで?」

「なんでって、それは・・その・・。」

「何か僕にも言えないこと?」

「いや、なんていうのか・・。」

 

明日の2時から3時か。午前中は部活の練習があるから会うことにはなるけど、午後からは特に何の用事もなかったしな。あれ、もしかして嫌われたのか。いやもしかして他の友達と会うのだろうか。まさか男子か?!いやいやいや、このコミュ力皆無の堕天使サマににそんな簡単に友達ができるわけないか。そもそも学校でも大体は僕と一緒にいるし。学校でそんな友達が出来たら僕も気づくはずだ。それとも学校以外の友達か、小学校か幼稚園の友達っていう可能性もある。この前ヨハネが幼稚園の時の友達の話をしていたし。それ以外の友達という可能性はないだろうか。最近はネットでできた友達と会うなんてこともあるし。もしかして他の中二病の友達ができて、その友達に会うとか?その友達は男なんだろうか。だから僕を会わせようとしないために僕から離れるのか。

 

「誰だ・・・」

「えっ?」

「誰と会うんだ?!」

「ええっ?!」

「ヨハネ!いつどこで誰と知り合ってどこで会うんだ?!」

「ちょっと何の話をしてるのよ?!」

「ネットの知り合いはリアルでは全然違う可能性もあるんだぞ!だから出会い系とかの知り合いと会うのはやめろ!」

「・・・えっ?そ、そんなんじゃないわよ!」

「へっ?!」

「だから、私がそんなことするわけないでしょ!」

「そっか・・。なら、よかった・・。」

 

今、心の底から安心した。もし彼女に何かあったら正気でいられないだろうな。まったく食後にこんなハプニングが待っていたなんて。

 

「どうしてそこまで心配したのよ。自分のことでもないのに。」

「うーん。なぜだろうな。あの時は必死だったからよくわからない。まあ、君が大事だからってことでいいか。」

「ええっ?!だ、大事?!私が?!」

「うん。クラスメイトだし、部活仲間だし、お隣さんだし、晩御飯一緒に食べてるし。あと色々。」

「色々って何よ?!」

「まあ、いろいろ。」

 

色々君に対して抱いているこの感情がどういうものなのかまだ判明していないからな。憧れなのか嫉妬なのか好意なのか、まだよくわからないからな。

 

「それで、明日の2時から何があるんだ?」

「えっと・・その・・実は・・。」

「実は?」

「じ、実は・・・ライb・・」

 

その時だった。津島家の玄関が開いた。

 

「ただいまー。」

 

そこにいたのはヨハママ、ヨハネのお母さんだった。仕事から帰ってきてたからか、疲れているご様子だ。

 

「あ、お帰りママ。」

「おい、さっきのは?ライ何?」

 

さっきまで顔を真っ赤にして答えようとしていたのに、なんだか誤魔化された気分だ。

 

「ちょっと、ヨハネさん。さっきの答えは?」

「あら?その声は、修斗君。来てたの?」

「え?はい。おかえりなさい。」

「うん、ただいま。ところでさっきの答えって何?」

「え?実はさっき・・・」

「ワーワーワー!何も、何もなかったから!」

 

ヨハママに返答しようとしたとき、大声で慌てながら遮ってきた。

 

「・・・その慌てよう、もしかして告白?」

「違いますよ。」

「あら、そうなの。修斗君なら善子を任せても構わないんだけどね。」

「な、何言ってるのよ、ママ!」

「うふふ、ごめんなさい。」

「はあ、それくらいにしてください。ごはん作ってますよ。」

「あら、じゃあさっそくいただくわ。」

 

ヨハママがリビングでカレーを食べている間、もう一度ヨハネに問いかけた。

 

「ヨハネ改めて聞くけど、明日は何があるの?」

「だから・・その・・」

「?」

 

ヨハネは一度ヨハママの方を見た。

 

「も、もう!とにかく明日の昼過ぎはこないで!」

「・・・わかった。」

 

しかたない、聞き出すのはあきらめよう。誰かと会うとかではないみたいだし、後は自分で推理するか。僕に解けない謎はない。

そして後日。僕たちは学校の弓道場にいた。僕の弓、黒紅葉を握りながら考え事をしていた。今日は、正確には昨日から考え事に追われている。もちろん昨日のことで。考え事を整理しようと思いながら的を狙っていた。僕は射場に立つと落ち着いて整理しよう。

まず昨日、ヨハネは2時から3時には来るなと言っていた。その時間には何があったか。テレビか?いやこの時間のテレビはすでに調べたが特に何もなかった。

次にヨハネが言いかけていた、ライなんとか。ライが入っていて、その時間に関係する単語はないだろう。それかラから始まって何か関係するものか。もしかしてラブライブ!って大会か。名前だけは聞いたことがあったがヨハネはそんな大会が好きなのだろうか。などと考えながら4本の矢全てを的に当てた。さすが完璧な僕!

数時間後、部活も終了し、僕は自室のベッドに仰向けで倒れていた。悩みに悩んだ末、疲れてベッドで少しふて寝した。まったく答えがわからない。もうやめよう。諦めよう。さて、せっかくの休日だし、ネットで動画でも見てるか。僕はパソコンを開き、適当にゲーム実況の動画を見ていた。気が付くと時間は2時を過ぎていた。今頃、ヨハネはなにをしているのだろうか。そんなことを考えながら、動画投稿サイトをホームに戻して、特に意味もないのに下にスクロールした。下に行くと現在live配信中の動画という項目があり、なんとなく開いた。配信中の動画は何本かあった。ブロックの世界でサバイバルをするゲームの整地中の雑談系生配信から、コメントを読み上げて、質問に答えているラジオ系など色々と配信中だった。その中に、『堕天使の集い』といういかにも中二病な名前があった。何かに引き付けられるかのように開くと、そこには堕天使コスをしたお隣さんが立っていた。

 

「はぁい、リトルデーモン。今日もヨハネのサバトによく来たわね。」

 

どう反応したらいいのだろうか。今、パソコンに移っている部屋はちょうど隣の部屋なのだが。実は、父が手紙を置いていた部屋をそのまま自分の部屋にしたら、ちょうどその隣の部屋が偶然ヨハネの部屋だったのだ。本当に偶然だから。つまり今隣の部屋が堕天スタジオになっているということだ。僕は壁に耳を当てた。かすかだが声が聞こえる。

 

「さあ、悩めるリトルデーモンたちよ。あなた達の悩みに答えてあげるわ。」

 

はあ。つまり家に来るなと言っていた理由はこれだったのか。まったくこんなことをしていたのか。結構本気の堕天使コスで動画をだすとは、勇気あるな。コメントの方も、中二病な発言が多いな。まあ同じタイプの奴らが見るからそうなるか。とりあえず最後まで見てやるか。この生配信は今まで結構やってきていたようだ。コメントの方に、『リアルワールドで新しくできたリトルデーモンの人とは最近どうですか?』という内容のものがあった。それって僕のことか。こいつ動画で僕のことを喋っていたのか。

生配信の動画も終わると僕は夕食の用意を持って津島家に向かった。いつもどうり津島家で夕食を作るためだ。僕がキッチンに入ると、ヨハネは自分の部屋に入っていった。動画配信の後の後かたずけでもするのだろうか。しばらくして夕食ができるとヨハネも部屋から出てきた。とりあえず夕食後に動画のことを聞いてみるか。夕食後、ヨハネはリビングのソファに座っていた。そっとその隣に座ると、僕はヨハネに話しかけた。

 

「なあ、ヨハネ。」

「何?」

「今日、部屋で適当に動画を見てたら、『堕天使の集い』っていう動画を見たんだけど。」

「?!どこまで見たの?」

「00:06から59:51まで見ました。」

「ほとんど全部じゃない!」

「うん。」

「・・・はあ、見たのね、あれ。」

「見られたくなかったなら僕をどこかに監禁でもするべきだったな。」

 

僕は少し自慢げに言った。しかしヨハネは焦る気配を見せなかった。それどころか少し悩んでるように見えた。

 

「見たからには私の相談に答えてもらうわよ。」

「えっ?いいけど。」

 

なんだ、そんなに驚かなかったな。面白くない。

 

「実はね、あの動画結構長くやってるのよ。」

「そうらしいな。」

「でね、結構多くのファンの人もいるのよ。」

「まあ、たくさんコメントがきていたから。」

「うん。でもその中に、『イタイ』とか『中二病ww』とか『恥ずかしくないの』とか結構くるのよ。」

 

要するにアンチコメントか。

 

「なんだかああいうコメントを見ていると、何だか嫌な気分になるの。悲しくて、辛くて。顔もわからない様な人たちにバカにされてるのが、辛くて・・つらくて・・。」

「でも所詮アンチだろ。気にすることないだろ。」

「でも!何もわかってない、わかろうともしない奴らが、私をバカにしてきているような気がして。・・・そりゃ、一流の投稿者の人はそんな事気にしないかもしれないけど・・、私は・・一流じゃないから。・・心もあるから・・辛くなるの・・。私は、・・どうしたらいいの・・。」

 

後半はほとんど泣いていた。今も涙が止まっていない。俯きながらだから涙のしずくが彼女のスカートをポツポツと濡らしていた。まるで雨のようだ。そんな彼女を見ていると、僕の心が痛くなる。なぜだろうな。君が泣いているのをほっとけないよ。僕はそっとヨハネの目元にたまった、あふれ出す涙を指ですくい上げた。いつもは宝石のような輝きを持つ瞳を、涙がさらに輝かされて見える。そんな瞳でヨハネは僕の瞳を見つめてきた。

 

「動画とか、イラストとか、小説でも漫画でも色々な作品がこの世界には存在する。作品があればその作品に対するファンがつく。ファンがつけばアンチがつく。この二つは相互関係にあると僕は考えている。だからファンがついていてアンチがいないなんて作品はないと思う。どんなにすごい投稿者になっても一人くらいはアンチがつく。仕方ないことなんだ。でも、それでも心が傷ついてしまう。そりゃあ、バカにされたら誰だって頭にくる。だけどそのコメントをたたけば更に荒れる。でも押さえつけていると、心が痛くなっていく。君はそのことをどうしたらいいか、どうやって乗り越えたらいいか、誰を頼ればいいか、誰を信じればいいか、誰かに相談したかったんだよね。」

 

ヨハネはこくん、と小さくうなずいた。

 

「昨日、僕が2回目に君に質問した時、一瞬だけど君のお母さんに目をやった。そして言うのをためらった。つまりお母さんには相談できないことだった。いや相談できなかったんだな、動画のことを話していないから。」

 

またしてもヨハネはうなずいた。

 

「そりゃ、辛いよな。一人で抱え込むのは。今まで一人でよく頑張ったな。でも、今は君一人じゃない。僕なら君を理解できる。これから辛くなったら僕を頼ってほしい。君が苦しむ姿を僕は見たくないからな。それでも辛かったら泣いてしまえばいいよ。」

 

ヨハネはついに泣き崩れてしまった。僕の胸でわんわんと泣いている。今まで一人で辛かったんだろうな。いろいろ我慢してたものが爆発したのだろう。

 

「お疲れ様。」

 

僕の服が濡れいるのがわかる。僕は、服に埋もれて泣いている彼女の頭をそっと撫でた。彼女が泣き止むまで、僕は彼女を見守っていた。二度と彼女を泣かせたくない、そう心に決めた瞬間だった。

30分ほど経過して、ヨハネもやっと落ち着いたようだ。今まで胸を内に秘めていた悩みを全て僕に話してくれた。ヨハネも心が落ち着いたことだし、そろそろ帰ろうかな。

 

「そろそろ帰るよ。」

「えっ?!もう?!」

「もうって、もうそろそろ22時なんだけど。」

 

ヨハネは時計に目をやった。

 

「ほんとだ。時間がたつのは早いのね。」

「ああ、時の流れには逆らえないからね。」

 

僕はカバンにキッチンに置いている自分の調理器具を片付け始めた。後ろから妙にヨハネの視線を感じるが、気にせず片づけをする。荷物も全部カバンに入れ終わると、玄関に向かった。靴を履いた時後ろからヨハネが話しかけてきた。

 

「今日はありがと。私の話聞いてくれて。」

「別に大したことじゃないよ。」

「そんなことないわ。なんなに真剣に聞いてくれて、一緒に悩んでくれて、簡単にできることじゃないわ。優しくて面倒見がいいからできたことよ。」

 

素直にヨハネから褒められると照れてしまうな。

 

「フンッ、魔王なら配下の者の面倒を見るのは当然だからな。」

「フフッ、照れ隠し?」

「違うわ!」

 

なんかのこの流れ、ヨハネに対してやったな。まさかやり返されるとは。

 

「じゃあ帰るよ。」

「ええ、また。」

 

僕が玄関を出て扉を閉ざされた後、ヨハネは小さくつぶやいた。

 

「・・・好きよ。」

 

彼女はその一言だけ言うとすぐに自分の部屋に戻っていった。自分の明かした気持ちが相手に届いていないと思いながら。

しかしその相手にはその小さな一言が偶然聞こえてしまった。そう、僕の耳にヨハネのつぶやきが入ってきていまった。僕は動揺が抑えきれなくなっていた。扉の前で赤面しながら立ち止まってしまった。頭が付いていけず、口から思わず声が漏れてしまった。

 

「マジか・・・。」

 

しかしこの声はヨハネには届かなかった。すでに彼女は自分の部屋に向かった後だった。ゆえに彼女は今も僕が気持ちを知らないと思っている。

僕は自分の部屋に戻るとベッドに倒れこんだ。もう悶え死にそうだ。彼女がこんな自分のことを好きだと言ってくれるなんて。考えてもみなかった。どうしたらいいのか全然見当もつかない。

 

「はあ、明日からどんな顔して会えばいいんだよ・・」

 




今回動画についてふれましたが僕は髪が赤い実況者さんが好きです。
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