序章 召喚 この世界は度々、宇宙からの未知のエネルギーを受けている。そのたびにこの世界は進化を遂げている。過去には恐竜の絶滅、猿人類の誕生、人類の進化などが起きている。そして2028年にも宇宙からのエネルギーによってこの世界は変化した。変化と言っても人類が滅ぶようなことはなかった。人類が異界の生物に変化することもなかった。しかし、一部の人間たち、正確には人類の10分の1に変化が起こった。変化があった人類は、魔術や魔法、錬金術が使えるようになり、エニグマと呼ばれるようになった。しかし変化があったからと言って、変化がなかった人類に尊敬されることはなかった。むしろ軽蔑や敵対されるようになった。変化のなかった人類に攻撃を受け続けたエニグマたちは、そんな日々に嫌気がさし、魔法使いや錬金術師たちのリーダー格たちが、自分たちの魔法で元の世界の平行世界を作り上げた。この世界には魔獣や亜人も存在していた。しかし全ての者たちがこの世界で暮らしているわけではない。その世界で暮らす者のいるが、元の世界でひっそりと暮らす者もいた。そして平行世界が誕生してから時間がたち、今この世界には王族から貴族、農民や商人が存在する。しかしこの世界には警察や消防は存在せず、ギルドと呼ばれる機関が存在する。ギルドは人々の悩みを解決する。王族専門のギルドから民間のギルド、色々存在する。そして元々この世界を作り上げたリーダー格たちは、新しい世界で貴族となっていた。貴族たちはこの世界で魔術や魔法の研究を重ねてきた。その中で貴族たちは、天界や魔界、はたまたさらにほかの異世界のものと契約をして従者とする召喚魔法を使うようになった。貴族たちはそれぞれ自分たちの血筋によって召喚できる従者が決まっていた。神族、魔族、竜族、妖精族、精霊族、獣族、この中から召喚される。そんな召喚術の発展から、貴族たちは16歳になると召喚の儀を行うという決まりができていた。そして僕、シェリアス ウィンディアもウィンディア家の家系に生まれ、今日、自分専属の従者を召喚させる召喚の儀が執り行われる。魔法陣の書かれた床に自らの血と魔力を注ぎ込めることで、異界から従者となるものを召喚する。僕の生まれたウィンディア家は代々神族を召喚させてきた。父も母も兄も全員、神族が従者についている。きっとこれから僕が召喚した従者も、神族なんだろうな。
「さあ、シェリアス。そろそろ始るんだ。」
「焦ってはいけませんよ、あなたならきっと成功しますよシェリアス。」
後ろで僕の両親が見ている。仕方ない、始めるか。ふう、深呼吸をして意識を落ち着かせた。
「これより、召喚の儀を開始する。我、召喚を執り行う者なり。汝、我が血と魔力の呼びかけに答えよ。」
僕の血が魔法陣に落ちたとき、魔法陣から光があふれ出した。父がこの光を見て懐かしそうに眼を細めた。
「おお、懐かしい光景だな。私が召喚の儀を行った時を思い出す。」
しかし次の瞬間。魔法陣の光が黒く輝きだした。
「なっ、どういうことだ!この光は?!」
親は動揺しているようだ。しかし儀式の最中の僕には親の声は届かなかった。黒く輝く魔法陣から声が聞こえた。
「私を呼び出したのはどなたです?」
「・・・僕だ。」
魔法陣から黒い霧が渦を巻き始めた。渦が止むと、魔法陣の上に一人の少女が立っていた。雪のように白い肌に黒曜石のように黒い髪で紫色の瞳、黒を基調としたゴスロリドレス、何よりも印象的なのは、その少女の背中には黒い羽根が生えていた。その姿を見た途端、後ろで両親が驚愕の声を上げた。
「なっ!?堕天使だと?!」
「シェリアス!そのものから離れなさい!」
・・そうか、僕は堕天使を召喚したのか。僕の後ろで騒いでいる親の言葉が、魔法陣から出た光の壁によって聞こえなかった。親の声に気づかなかった僕は、堕天使に問いかけた。
「貴様が僕の従者になる存在か?」
「ええ、あなたに使えるため、参上いたしました。」
「フッ、申し分ないな。それじゃあ、続けようか。」
召喚の儀式に召喚した後にもう一つすることがある。契約を結ぶ必要がある。契約には契約者が自分の身体の一部を犠牲にする。犠牲になった部分は、契約後に契約相手の自分が犠牲にした部分と同じものが複製される。そしてその複製された部分は同じ能力、同じ特性を持つ。契約者の魔力の大きさによっては特別な能力を得るイレギュラーもいるそうだ。
「それじゃあ、契約を結ぶぞ。」
「わかりました。あなたは何を捧げるのですか?」
「そうだな。・・・左目でどうだ。」
「いいですね。それでは、続けましょうか。」
もう一度、深呼吸をして魔力の流れを落ち着かせた。
「異界と現世を結ぶ神よ。我が呼びかけに答えよ。我、契約に左目を犠牲にす。」
もう一度魔法陣が黒く輝き始めた。この時、僕の左目に異常なまでの魔力が流れた。次の瞬間、左目が内側から破裂して激痛が走った。僕は痛みに耐えながらも契約の儀を再開した。魔法陣の真ん中で堕天使が跪いていた。右手を彼女の額にあてた。
「・・・我が犠牲において、このものを我が従者と認める。」
魔法陣の光が一層黒く輝いた。その光が僕の右手に吸い込まれた。吸い込まれた光は右手に紋章を描いた。
「これで儀式は終わりだな。」
「はい、これからよろしくお願いします、マスター。これから私のことはヨハネとお呼びください。」
契約を終えると魔法陣が消えた。魔法陣があった場所には一人の少女が立っていた。その少女はさっき僕が召喚した堕天使に似ているが、決定的に違う部分があった。それは堕天使にはあった、黒い翼がこの少女に存在していなかった。しかし、両親の従者に翼がなかったことを思い出した。ということはこの少女はさっきの堕天使なのだろう。そんなことを考えていると、後ろから父が動揺したような声で僕に問いかけてきた。
「・・・シェリアス、まさか、その堕天使と・・契約したの・・・か?」
「・・・はい。」
父の問いかけに答えたとき、ちょうど僕の左目がヨハネの左目を複製を始めた。左目が黒い光を吸い込み始めた。黒い光を吸い込み終えた左目を開けると、そこにはヨハネと同じく紫色の瞳があった。
第一章 ギルド アルデナナイツ
召喚の儀から1ヶ月が過ぎた。現在、僕はウィンディア家から追い出されていた。原因はわかっている。ウィンディア家は代々神族を召喚してきたというのに、召喚したものが堕天使だったら自分の家の顔が汚れてしまうからだ。使えないものはたとえ自分の息子だろうと捨てる、それがうちの教えだったからな。本当なら僕はヨハネごと死刑されるはずだった。しかしヨハネの左目を複製した時に、僕の左目は未来予知の能力を得た。そのおかげで僕たちが処刑される未来が見えたので、自分からウィンディア家を出ていった。これから先、僕がウィンディア家の生まれだということ自体、抹消されるだろう。写真、部屋、記録、学歴、全てが消えるだろう。だから僕はウィンディアの名を捨てた。僕自身、ウィンディア家の僕を誰も知らない場所に行くことにした。今は自分の魔道具を持ってヨハネと旅をしている。ただ、ウィンディア家から遠くに行きたかった。僕は黒いロートに身を包み、いざとなったら全身を隠せるようにしている。ヨハネは召喚の時と同じく黒のゴスロリドレスを着ていた。黒のドレスを風になびかせてヨハネが振り返って言った。
「マスター、そろそろ次の街に着きます。」
ヨハネが地図を片手に南を指さした。今まで色々な街を転々としてきたが、どこの町に行っても僕がウィンディア家だということを少なくとも一人は知っていた。うちの家は貴族の中でも1,2を争うほど有力は家系だったから、知らないほうがおかしいのだがな。だから今まで列車を4回ほど乗り継いで、大陸を超えてきた。
「今度こそ、ウィンディア家を知ってるやつがいないといいんだけどな。」
この町は海と草原に囲まれ、貿易で発達したような町だった。そういえばこの近くにこの大陸の一番大きい国の王都があったな。 しばらく町を歩いていると、道に人が集まっていた。人込みの中心では傷だらけの男が数人倒れていた。男たちは体に大きな黒いかぎ爪の跡があった。傷口から血があふれ出していた。止まる気配がない。
「今回もだめだったのか。」
「もうどうしようもないのか?」
野次馬どもが騒いでいるな。野次馬の一人の男性に話しかけた。
「あの?なにかあったんですか?」
「?ああ、旅のもんか。実は、この町の東にある山道の洞窟の先に黒龍がいて、最近暴れているんだ。その黒龍を倒すためにうちのギルドが倒そうとしているのだが、なかなか倒せなくて手こずってるところだ。賞金が結構出るから、他の町からも倒そうとする人がいるんだが全員返り討ちにあってな。」
「ふーん。そうなんですか?」
「・・・マスター、あの傷。闇の魔法の追加効果でどんどん生命力を吸い取られています。その黒龍とやらを倒さない限りあの傷は収まりません。」
「・・・そうか。」
人込みを背にして、僕は町の東に向かって歩き始めた。数歩歩いたところで、さっきの男性が僕を呼び止めた。
「おい、兄ちゃん。まさか黒龍を倒しに行く気か?」
「ええ、まあ、やるだけやってみますよ。」
「やめとけ、ケガするぞ!」
僕は顔だけ後ろに向けて薄く微笑んだ。
「大丈夫ですよ。僕結構強いので。いくぞヨハネ。」
「はい、マスター。」
この二人を見ていた者たちはまた病人が増えた、そう思っていた。
町から40分ほど歩いたころ、東の山道にさしかかった。山道付近には人気が少なく、奥の方から不気味な気配を感じる。ヨハネと契約してからというもの、闇の力を感じやすくなった。これも左目の複製による能力だろうか。
「奥にいるのは確実だな・・・。」
「はい。約500mほど先にいると思われます。」
東の山道を少し進むと小さな洞窟があった。その奥から黒龍の声と思われる、鳴き声が聞こえた。だいぶ気が立っているようだ。軽い気持ちでかかったら普通に殺されるかな。
「・・気を抜くなよ、ヨハネ。いつも通り僕が前衛をやる。」
「マスターこそ、無茶しないでください。」
「了解。」
僕が先に洞窟を抜けた。その後ろからヨハネが抜けてきた。洞窟の先には全長4メートル以上はあるであろう黒龍が待ち受けていた。
「おー、思ったよりでかいな。」
「どうします?いつも通りで行きます?」
「ああ、変更はしない。」
「フフッ、了解です。」
「さあ、始めるよ。」
僕の声を合図に二人は武器を装備した。ヨハネは黒いオーブがついた杖と魔導書を、シェリアスは右手に魔水晶と呼ばれる紫色の水晶でできた剣を、左手には銀の銃を装備した。
装備するとほぼ同時に黒龍はかぎ爪を立てて攻撃してきた。さっきまで僕たちが立っていた場所にはかぎ爪のあとが深く残っていた。僕たちは寸前で攻撃をかわした。
「スピードもあまり早くないな。」
「次はこちらから攻めましょう。」
ヨハネが魔導書を開いた。
「ファイヤエレメント!」
ヨハネの呼びかけにこたえるかのように、5つの赤い蛍のような光が現れた。
ヨハネが杖を黒龍に向けられると、5つの光が黒龍を囲んだ。5つの光からそれぞれ交互に黒龍を焼き、目くらましをしていた。堕天使であることを隠していたら、まあ限界があるだろうな。
「マスター!」
ヨハネがエレメントを使っていた間に、僕は黒龍の頭上に回っていた。
「よくやった、ヨハネ!」
黒龍の上から剣を振り落とした。刹那、僕の攻撃は黒龍全体を切った。すると黒龍の最初に切った傷跡からこの剣と同じ色の水晶のかけらができた。実はこの剣には対象物を魔水晶の呪いにかけるという、追加効果がある。しかし使い方を誤ると持主をも魔水晶の呪いにかけてしまう、という魔道具だ。剣の追加効果によって黒龍は切られた箇所が魔水晶で固まってしまった。
剣を鞘に収めるときには黒龍は全身が魔水晶でおおわれていた。
「これでトドメだな。」
魔水晶でおおわれた黒龍の胸に銃を向け、トリガーを引いた。銃から撃たれた銃弾はダイヤモンドよりも固い魔水晶も、どんな攻撃もはじき返す竜のうろこをも貫いた。黒龍は魔水晶に閉ざされたまま息を引き取った。
左目に移る闇の力が無くなるのを見届けてから黒龍にかかっていた魔水晶の呪いを解いた。
呪いを解き終わると後ろからヨハネが話しかけてきた。
「お疲れ様です、マスター。お怪我はありませんか?」
「ああ、大丈夫だ。戻ろう。」
「はい。」
僕たちは黒龍を倒したことを町に報告に戻ることにした。この竜の死体から使えそうなものを剥ぎ取ろうかとも考えたが、うろこがナイフでは切れなかったのであきらめた。いい素材が手に入りそうだったのに、惜しいことをしたな。
町に戻ると、病院の前が妙に騒がしくなっていた。どうやら今まで黒龍に襲われた病人たちが回復したようだ。黒龍を倒したことで吸い取られていた生命力が元に戻ったのだろう。僕たちが立ち去ろうとしたとき、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「おい、兄ちゃんたち。あんたら、黒龍を倒したのか?」
その声を聴いた途端、まわりでバカのように騒いでいた人たちが静まり返った。回復を喜んでいた病人もじっとこちらを見つめている。視線が痛い。どう説明しようか迷っていた時、横からヨハネが小声で話しかけてきた。
「マスター。ここは隠さないほうがいいかもしれません。」
今は彼女の言うことを信じるとしよう。僕はくるっっと回って後ろを向くと、人々に向かって答えた。
「ええ、僕たちが黒龍を倒しました。嘘だと思うなら東の山道に行ってみてください。死体が転がってますよ。」
僕の答えを聞いた者たちは、唖然と僕の方を見つめてくる。まるで、こんなやつに竜が倒されるわけがないとでも言いたげな表情だ。しかしこれが現実だ。黒龍は負け、僕たちは勝利した。
「し、信じられん・・。本当に君たちが倒したのか?」
「ええ。マスターが黒龍の心臓を破壊し、生命活動を停止させました。」
今まで黙っていたヨハネが口を開いた。彼女が僕以外に自分から話すなんて珍しいな。未来が見えたのだろうか。しかし彼女が口を開いたからと言って村人たちは信用はしなかった。そんな中、この町のギルドの人たちが東の山道に様子を見に行くと言って、何人かが町を出ていった。その間僕たちはこの町のギルド本部にお邪魔した。
数時間後、東の山道まで様子を見に行った、ギルドの人たちが帰ってきた。残っていたメンバーが次々に集まってきた。
「どうだった?」
「確かに倒されていた。胸に銃弾で貫いた跡があったよ。」
「・・・ということは、本当に倒されたのか。」
やっと信じてくれたか。やれやれ疑い深いなこの町の人たちは。
黒龍が倒されたことを祝って、今夜は宴が開かれた。町中の人たちが集まり、黒龍の討伐成功を祝った。あるものは踊り、またある者は酒を飲んでいた。僕たちも宴に招待されたがこういう宴に出ると僕たちのことを知るものが現れるかもしれない。だから宴の外の方でひっそりとしていた。そんな僕たちもの方に向かって長く赤い髪をなびかせながら歩いてくる女性がいた。
「あなたたち、黒龍を倒した人たちよね?」
「?・・・ええ、そうですけど。」
突然の質問に答えるべきか少し迷ってしまった。しかし答えたところで正体がバレることもないと思って質問に答えた。僕たちの答えを聞いたら、質問してきた女性がもう一度質問してきた。
「あなたたち、私のギルドに入らない?」
「・・・ギルド?」
「そう、この町のギルド、アルデナナイツに。」
ギルドか。僕がまだウィンディア家にいた頃、家のある町のギルドに行ったことがあった。あの時は、図書室に引きこもって魔導書ばかり読んでいた僕を、兄が連れまわされた思い出があったな。あまり、いい思い出がないな。
そんな考えを察したのか隣からヨハネが話しかけてきた。
「マスター、強力な魔術師を隠すには魔術師の中、ですよ。」
「要するに行けってことか?」
「はい。」
まあ、彼女には未来が見えるから彼女が言うなら間違いはないだろう。もしバレたら、この町ごと消してやるか。
「もしかして、入ってくれるの?」
「いいですよ。特に行くところもないし。ところでこの紋章、見たことあります?」
そういって僕は懐中時計に刻まれたウィンディア家の紋章を見せた。一様こういうことは確認しておかないと。
「?なにそれ、きれいな時計ね。それでこの紋章は何なの?」
「いえ、知らないならいいです。」
僕は懐中時計をしまった。この人さっき、『私のギルド』と言っていたな。もしかしてこの人がギルドマスターなのか。ギルドマスターが知らないなら大丈夫だろう。もしバレたら、この町ごと消してやるか。
赤髪の女性に連れられてアルデナナイツの本部に来ていた。ここには昼間、待ち時間に使ったな。まさかもう一度ここに来ることになるとは。
「さあ、二人とも。ここが私のギルド、『アルデナナイツ』よ。そして私がギルドマスター、ナタリー アルデナよ。」
ナタリーと名乗ったギルドマスターがギルドに背を向け両手を広げた。勢いよく両腕を広げたから、腰まで伸びていた赤髪が風になびいた。その髪の向こうにはかなり大きな建物、ギルド アルデナナイツがそびえたっていた。
「さあさあ、入って二人とも。」
ギルドの中には昼間の時とは違い、依頼を終えてきたギルドのメンバーが集まっていた。老若男女、いろんな人がいた。合計で50人くらいだろうか。外の黒龍討伐の祭りと同じように、バカのように騒いでいる。これも外の祭りの影響だろうか。
中で騒いでいた人たちが、ナタリーが入り口を入るとこちら側を向いた。
「お!マスター!」
「リーダー!お帰りなさい!」
仲のギルドメンバーの全員がこちら側を向いた。人込みは苦手だな。メンバーの一人が僕たちの方を向いた。
「マスター、横の二人は誰ですか?」
「ああ、紹介しよう。彼らは今日、東の山道の黒龍をたった二人で倒したほどの実力者だ。今日から私たちの仲間になる。」
ナタリーが黒龍の話をするとギルドメンバーたちはざわついた。そりゃあ、そうだ。竜なんて並の人間には倒せないからな。それも大賢人や勇者でもない、ただの子供二人が。
「本当に君たちが倒したのか?」
「そのくだりまだ続けるの?」
「・・・!思い出した!今日この町に来た奴らだな!」
なんだ見ていた人がいたのか。だったら聞くなよ。めんどくさいな。
「お前ら、名前は?」
「・・・僕はシェリアス。」
「私はヨハネです。」
「姓はないのか・・・。」
「・・・実は、小さいころに親と離れてな。」
「・・・なんだか・・・悪かったな・・・。」
こういう時、自分たちがみなしごだという設定を作っておいてよかったとつくづく思うよ。今僕たちは、旅をしている兄妹ということにしている。
「そうか、二人には姓名がなかったのか。なら私が何かつけてやろう。そうだな、二人はこれからここのギルドに入るなら、私が面倒を見るから、『アルデナ』でいいんじゃないか。」
テキトーだな。しかしこれでウィンディアを名乗らなくて済みそうだ。他のギルドメンバーもそれを聞いて、妙にテンションが上がっているように見えた。
「おお!いいですねマスター。」
「俺たちのギルドにふさわしい名前だ!」
「ルーキーの誕生ですね!」
メンバーの了解を得たのを見計らって、もう一度こちらを見た。
「と、いうことだ。これからはアルデナと名乗ると言い。これからはここが君らの家だ。そして私が君たちの姉だ。」
「ハハハ、ついにリーダーに弟と妹ができたわけだ。」
僕たちは何も言っていないのに話が段々進んでいっているな。勝手に決まっていっている気がするが、これでいいのだろうか。
「ヨハネ、この流れでいいのか?」
「ええ、私のビジョンに変わりはありません。心配ですか?」
僕よりも5cmほど背が低いヨハネが上目使いでこちらを見てきた。少し笑っているように見える。
「ああ・・・未来を見通す目でも、もうあまり人とは関わりたくないんだ。」
「大丈夫ですよ。私はいつまでもあなたと共にいますよ。」
簡単にそういうことを言ってくるとは、この堕天使は恐れを知らないな。でも、いまは彼女しか僕にはないしな。誰よりも信頼している彼女の言葉だ、疑う意味はない。
「わかった。君の見た世界を信じるよ。」
僕はナタリーと他のギルドメンバーに向き直った。
「それじゃあ改めて。今日からアルデナナイツに入ることになった、シェリアスとヨハネです。よろしくお願いします。」
のちにアルデナナイツを最強のギルドへと導く、初の兄妹ギルドマスター、シェリアス アルデナとヨハネ アルデナの誕生だった。
いかがだったでしょうか?今回はまだ彼らの冒険の序章に過ぎない・・・のかもしれません。また書くかもしれないし、もう書かないかもしれません。書くか書かないかは、僕の気分と本編の内容と皆さんの意見で決まります、多分。あと時間があれば。すべては神のみぞ知る、です!