・・・1時間ほどかけて、先輩が書いたラノベを読み終えた。ほぼ同時に僕たちが読み終えると、机の上に原稿を置いた。
「二人とも、どうだった?」
どうって言われてもなあ・・。感想に困る。どうせ先輩たちのことだから、ただ僕とヨハネがイチャイチャしてラッキースケベみたいなことが起こっているのだろうと思い、ボロクソに感想を言ってやろうと思ったら、思ったよりまともだったから、どういえばいいのかわからないな。困ったなこれは。
「・・・うーん。・・・まあ、いいんじゃないですか。」
「・・・私も同じ意見かな・・。」
「マジ?!」
まあ、本気で僕たちを弄り倒そうとするなら、大きく原点してやるつもりだったが。これじゃあ、減点できない。
「なんていうか、そこまで僕たちで遊ぶ気はなかったんですね。」
「そうみたいね。・・・ただ、なぜ私がモデルのキャラが、どうして、シェリアスを『マスター』と呼んでるのよ!」
「確かに、多分僕がモデルのキャラが、ヨハネにそう呼ばれるのはなんだか恥ずかしいな。」
「どうしてって、そういう設定にしたからさ!」
「だからなんでそういう設定したの・・・ですか?!」
「だって、面白そうだったから。」
「そんな理由で、こんな設定にしないでください!」
僕は内心、マスターか。確かに恥ずかしいけど、一度言われてみたいな。などと考えていた。いつもは元気の塊みたいな彼女が冷静にシェリアスをマスターと呼ぶのは正直憧れる。なんだか背徳感がある。服従させたみたいで。変態じゃないからな!ただ攻めるのが好きなだけだ!
後ろから僕たちが原稿を置くのを見届けると漫研の先輩が口を開いた。
「さて、お二人とも。次は僕の作品ですよ。漫研部長の実力、とくとご覧あれ。」
そういうと先輩は、僕たちの目の前の原稿用紙を押してきた。一度、ラノベの原稿を机に置くと、僕たちは漫画の原稿を手に取った。
「・・・さて、読むか。」
「そうね。今度も普通だといいけど。」
僕たちは同時に漫画を読み始めた。漫画の原稿用紙を開くと僕たちに衝撃が走った。
「なっ・・・これは・・。」
「ど・・どういう・・・こと?」
そこに描かれていたのは、髪をなびかせ、剣と魔法の世界で生きる、シェリアス アルデナとヨハネ アルデナの姿があった。つまりこの漫画は、『魔術ギルドのDark prince』の漫画版ということになる。
「お・・おい。どういうことだよ?」
「まさか・・・二人とも同じものを偶然同じものを描いたの?」
「いや・・・たぶん・・・違う。」
「えっ?・・・どういうことよ、シェリアス。」
「たぶんだけど。・・・これはコミカライズ化、なんだと思う。」
「コミカライズ?」
「うん。原作がさっきのだとすると、今読んでるこれがコミカライズされた作品ってことになる。」
僕の推理を聞くと、先輩たちは悪魔のような笑みを浮かべていた。黒い、どんな闇よりも黒く光ってる。先輩たちを睨んでいると、隣りからヨハネが問いかけてきた。
「つまり仕組まれてたってこと?」
「ああ。・・・多分、またあいつに。」
そう言うと後ろで漫画を読んでいる、元凶に目をやった。
「どうしたの?」
「いや、また君かと思ってね。」
「なるほど、また委員長の仕業なのね。」
またこいつにしてやられたのた・・・。
そんな僕たちをそっちのけで先輩たちは話を進めていた。
「よーし、このまま図書室で原作とコミカライズを出版するぞ。」
「それなら美術部にイラストを頼んだらいいんじゃないかな?」
「おおそれないいな!」
「そしてこのまま、放送部と演劇部と合同でお昼の放送でアニメ化だぁー!!」
「いいなそれ!」
「演劇部と文化祭で実写版かミュージカルをやるのはどうでしょう?」
勝手に話を進めていた先輩たちの間に入って、これ以上この話の進展を止めようとした。
「ちょっと待ってください!勝手に話が進んでるんですけど?!」
「そうよ!なんでそこまで話が進んでるんですか?」
「そうです、ちょっと待ってください。」
ここで珍しく藤崎が止めに入った。なんだ、こいつもまともなところあるじゃないか。と、考えた次の瞬間。
「アニメ化するなら、本人たちにアフレコをさせてはどうですか?」
「おぉい!!何言ってんだ!」
「そうよ!わ、私たちがアフレコなんて・・・。」
もしかしてまたこいつにはめられたのか、僕たちは。
「それはいい考えだ!そうだ!物は試しだ、津島君、津々宮君を一度マスターと呼んでみてくれ!」
「「ええっ?!」」
「いいからいいから。一回だけでいいから。自信をもって。さあ、3、2、1、」
「・・・ま・・マスター・・・。」
ぐはぁ。は、破壊力が強すぎる。ま、マスターって、マスターって、威力が強すぎる。ああ、いいな、マスター。
「ち、ちょっとシェリアス、大丈夫?」
「くっ、アルデナ君はすごいな。ヨハネにマスターと呼ばれて正気でいられるとは、ただものではないな・・・。さすがは・・・魔王の分身。」
「・・・そ、そんなに?!」
「楽しそうだな、津々宮君。」
「・・・うっさい!」
今日もまたこいつらにはめられたのか。あーあ、屈辱的だな。結論、こいつらにかかわるとろくなことにならない。マスター呼びは破壊力が高い。
「くそったれどもが・・・。」
最後の修斗君のセリフ、「くそったれどもが」ですが前に話した僕の好きな実況者さんの童画に出てきた言葉なんですが、その言葉を気に入って僕自身が度々使っていると、だんだんと口癖になってしまいました。弓道の練習で的を外した時にもたまに言ってしまうんですよ。「・・・くそったれが。」と。