堕天物語   作:EIMZ

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堕天使と魔王と出演依頼

土曜日、2時40分。ネットでヨハネの生放送を見ていた。あの時以来ヨハネには『恥ずかしいから見ないで!』と言われていたが、言われたからああ、はいそうですか、と下がるわけもなく、ほとんど毎回見ている。もちろんヨハネには報告していない。毎回の内容としては、動画のリスナー、視聴者がヨハネにコメントやメールで悩みや質問を送りヨハネ様がその質問に答えるといったものだ。ただその内容は中二病用語で書かれているため、凡人から見たら理解不能だが、ヨハネや視聴者はその暗号とも思える内容をほぼ一瞬で解読できる。ちなみに僕も最初は苦戦したが今は波の中二病者以上は解ける。まあ、しばらくのブランクがあったものの魔王ですからね。と、そんなことは置いておいて、問題は今回の内容だ。別に最初は普通だった。いつも通り、堕天使姿のヨハネが映り、コメントが流れ始めた。ここから30分くらいはいつも通りだった。ただすべてが一つのメールをヨハネが読んだことですべてが変わった。そのメールは『我が眷属のものが魔に選ばれし騎士に森羅万象を超える誓いをささやかれたが、騎士にどのような呪詛を返すのが最適でしょうか。ヨハネ様、迷える私に堕天使の導きを。』というものだった。たぶん騎士は男性。これは堕天使ヨハネに送られるものだから魔に関するものとかの意味はいいとか好きとかプラスな意味になるはず。眷属は家族か友達。森羅万象は全てとかずっとという意味でいいはず。誓いは約束とか告白。呪詛を返すは返事か言い返すでいいのかな。これらをまとめて要約すると、『私の友達がカッコいい男性からずっと前から好きでしたと告白されたのですが、どう返事をしたらいいかわからないそうです。ヨハネさんどう返事したらいいのか教えてください。』というものだろう。要するに恋愛相談か。ヨハネに恋愛相談って一番してはいけないだろう。参考になることは何一つ言わないだろうよ。と思っていたら、『彼方の眷属はその騎士を自分と対に慣るに値すると見極めてから返すことね。彼方達と接点を持たないヨハネから言えることはそれだけよ。魔族の祝福が彼方達に訪れることを祈ってあげましょう。』と返した。要するに『あなたの友達にとって自分にとって相応しいと思える相手ならしっかりと返事をしろ。私はあなたたちの関係に首を突っ込むことはしてはいけないのないかと思う。あなたたちがそれぞれ正しいと思える道に進むことを祈っています。』というような内容だろう。ヨハネにしてはまともなことを言ったなと感心していると、一つのコメントが流れた。『そういえばヨハネ様が話されていたリアルの彼氏さんとは最近どうですか?』というものだった。そのコメントを見た瞬間ヨハネは動画中にもかかわらず素に戻り赤面した。そしてその画面を見ていた、たぶんその彼氏にあたるであろう僕も赤面していた。そこからはスムーズだった。コメントがそのことでいっぱいになった。まあそうなるよな。みんなこういうゴシップネタ好きだよな。そして煽りのコメントにヨハネが乗ってしまい、相手も中二病ということなので動画に出演してもらうということになってしまった。そして今、動画終了から30分後。ヨハネからメールが来た。『頼みたいことがあるから今すぐ家に来てほしい。』という内容だった。まあ、何を頼むかは見てたからわかるけどさ。いちよう行ってやるか。パソコンの電源を落とすと隣の津島家へ向かった。

 津島家に入るとリビングに案内された。僕を座らせるとヨハネは飲み物をとりにキッチンに向かった。今日のこの接客対応は単に僕を尊敬してではなく、裏があるからだと考えると複雑な気持ちになった。ヨハネがキッチンからジュースを持ってくると僕の前に座り、かつてないほど真剣な顔で話を切り出した。

 

「実はあなたに重要な頼み事があるの。」

 

はい、その内容は知ってます。

 

「実は私の生放送でね。・・・あ、あなたのことを彼氏と言ったことがあったの。」

 

ええ、君が撮影している部屋の隣の部屋で君の放送を聞いていました。

 

「そ、それで。今日の動画であなたの話が出たの。」

 

そうでしたね。僕も君とまったく同じ反応をしたよ。

 

「そこで・・・今度、生放送であなたに出てほしいっていうことになって。」

 

・・・見ていたさ。そのコメントしたやつ叩いてやろうかと思ったよ。

 

「だ、だから来週の放送に出てほしいなぁ~なんて、・・・その・・・」

「来週の放送に君の彼氏の中二病少年、魔王シェリアスとして出演しろ、と言いたいんだな?」

「・・・はい。」

「はあ。まあいいよ。ただし条件がある。」

「条件? できる限りなら聞くわよ。」

「一つ、名前は伏せること。」

「ええ、シェリアスはいいのよね。」

「ああ。二つ、顔出しはNG。」

「わかったわ。何とかする。」

「この二つができるならOKだ。」

「わかったわ。その二つは何とかするから、あなたは自分の準備をしておいて。読む手紙とかはこっちで用意しておくから。明日、日曜日に2時から3時の間にやるから準備しておいてね。」

「明日?来週じゃなくて?」

「ええ。さっきの放送で明日特別版をやることになったの。そろそろ放送の記念日だし。」

「で、その特別版のゲストとして僕が呼ばれたと。」

「そういうこと。」

「わかった。じゃあ明日は12時くらいに行くよ。」

「ええ。それじゃあよろしく頼むわね。」

 

特別回の緊急の前日の打ち合わせを終えると、僕は一度家に帰った。あとで夕食を作りに行くから帰る必要はないのではないかとヨハネに言われたが、明日のために色々準備をしたかったので一度帰ることにした。あとで夕食を作りに津島家に行くからそれまでに準備を終わらせておきたかった。何の準備かって、明日着る服のチェックさ。動画内のヨハネはしっかりと堕天使を身にまとっている。そして明日の僕はそんな彼女の彼氏役。ということは彼女にふさわしいそれ相応の衣装を身にまとわなくてはならない。堕天使に対になれるということは完全な魔王化を済ませなくてはならない。明日は一時的に魔王の封印をすべて解除しなくてはならなくなる。姿、しぐさ、言動、全てを変えなくてはいけない。まずは衣装だ。昔使っていたやつがまだ押し入れかベッドの下に置いてあるはず。家じゅうを探してバラバラになっていた、魔王専用衣装を見つけ出した。黒のローブに禍々しいシャツ、ズボンには鎖がまかれている。他にも色々な道具が出てきてもう少し飾りをつけることができる。本来はここに右が赤、左が黒のコンタクトをするのだが、何分僕はコンタクトがつけられない。なので代わりに他の小道具系でごまかすことにしている。黒いシルクハット、銀色の懐中時計、木製の杖、黒色の皮ブーツ、小さな竜が巻き付いている形状の指輪、理解不能の言葉が並べられた魔導書、などが今回の候補に挙げられた。とりあえず先に服を着て、ローブをつけて採寸をした。どうやら一年前くらいまではつけていた服はまだ着れるようだ。しかしこのままでは素顔が丸出しになってしまう。何か隠す物はあったかな。もう一度探して回ると、『ペルソナ』と書かれた箱が出てきた。大きさはノートパソコン一つ分といったところだろうか。ペルソナ、仮面かちょうどいいな。ここの中から適当にとるか。箱を開けるとそこにはたくさんの仮面が入っていた。ただの黒いマスクから、多分小さいころに行った夏祭りの出店で買ったであろう可愛いカエルの仮面など、様々な種類の仮面が入っていた。この入れ物の下の方には昔かったであろう幼稚な仮面が置いてあったが上に重なるにつれその形は変わっていき怪盗を思わせるような仮面まであった。ただ上の方の仮面は目だけ隠すアイマスクが多く、顔全てを隠す仮面は一つも存在しなかった。僕は大量のアイマスクの中から適当に一つの仮面を手に取った。そのアイマスクは赤い布が目の周りを包み、その周りを金色の生地で囲まれた少し、いやだいぶ派手なデザインだった。その仮面をつけると驚くことにサイズはぴったりで、鏡を見ると自分が怪人のように見えた。だがその姿からはイケメンで文武両道で完璧な津々宮修斗の姿は見えなかった。そこに立っているのは闇を総べる絶対的な強者、魔王シェリアスが立っていた。鏡を見ている自分は修斗なのに、鏡に映る自分は修斗ではなくシェリアスなのだ。妙な違和感が訪れた。ただその不思議な気持ちは前に、何度も味わってきたものとは少し違い懐かしいような気持だった。この時脳裏にシェリアスの誕生と言ってもいい出来事を思い出していた。あのころはまだ小学校一年生くらいで、全国を転々としていた僕が一番長くいた場所、確か東京のどこかだったような、での記憶。公園で遊んでいたら高校生くらいの青年が話しかけてきて、中二病の全てを教えてくれ、さらにその青年は勝手に僕をシェリアスとなずけた。まあ、それ以来小さい僕は彼のことを師匠と言って慕っていたっけな。今もたまに連絡をしている。そんな不思議な縁と不思議な出会いを思い出していた。師匠は元気にやっているだろうか。他にも僕が小さいころに住んでいた場所の親戚や近所の中学生にもいろんなことを教えてもらった。料理とか、後この前、ゲーム内で使った技もその時に教えてもらった。ただどんな教えよりも師匠の教えが強力すぎて教えてくれた親戚たちの顔も名前も覚えていない。それだけ中二病の教育は衝撃的だったのだ。そんなことをしみじみと思い出していると、もう一度鏡に目をやった。しばらく鏡の中のシェリアスを見つめていた。彼は僕と背も体系も声も髪も同じ。なのに決定的に何かが違う。そんな鏡の彼に手を伸ばした。すると僕の手に同調するかのようにシェリアスは手を伸ばした。シェリアスが伸ばした手に触れることはできず、僕の手は鏡に触れるだけだった。しかしシェリアスの手と僕の手は重ねっているように思えた。

 

「シェリアス・・・久しぶりだね。」

 

久しぶりに見た自分の魔王の姿に話しかけた。もちろん鏡の中の彼が答えることはなかった。

 

「明日はヨハネのためだ。君を認めたわけではない。」

 

当然のことに彼は答えることはない。

 

「だけど・・・今回は君の力が必要だ。」

 

シェリアスが答えることはない。だけど彼と意思疎通ができたような気がした。そして頭の中に僕の声だが僕の声ではない声が響いた。

 

『任せとけ。魔王が失敗するわけないだろう。お前とは違うんだよ。』

「・・・・・!?」

 

まさか本当にシェリアスが僕に話しかけてきたのか。まさかな。そんなことはない。僕は修斗、修斗はシェリアス、シェリアスは僕だ。きっとただの自分への暗示だろう。少し頭が痛むが、そろそろ夕食を作りに行かなくてはならない時間だ。魔王の衣装を脱ぐともう一度津島家に向かった。

 

 




Christmasが近くなってきました。皆さんは何か予定はあるでしょうか。僕はケーキ作って、友達と一緒に食べて、ゲームして、ネットサーフィンして、寝ます。寂しくなんかないんだからね!なんてツンデレ要素も入れつつ、Christmasに何か書いてもしいものとかリクエストがあったらTwitterでもコメントでも応募します。クリスマスパーチーとか言うチャラ付いたものにはいかないと思うので時間もたっぷりあるし。でもR指定になるものは書けません。年齢的な問題が発生してしまいますので。R15ならギリ書けるかも。ラブライブ!作品なら他のシリーズの内容からでも構いません。できる限り書きます。部活で忙しくなかったら。よろ!

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを
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