堕天物語   作:EIMZ

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いつの間にかUAが4000越え。ありがたき幸せです!


堕天使と魔王と生放送出演

昨日の土曜日、ヨハネから自分の生放送に出てほしいとオファーが来た。もちろんヨハネに招待されたのは修斗としてではなくシェリアスとしての僕だった。彼女の彼氏を演じる為に普通の人間ではだめなのだ。魔王の力を持ったシェリアスでなくてはいけないのだ。その為に朝から自分を魔王化させていた。魔王化というのは簡単なことで要するに自己暗示のようなものだ。鏡に映る自分を見て呪文のように繰り返し同じ単語を語りかけていた。

 

「僕は魔王・・・魔王・・・魔王・・・魔王・・・・」

 

はたから見たらただの危ない人に見えるかもしれない。しかしこういう暗示の効果は絶大で、なかなか解けることはない。今日一日魔王であり続けるためには10分ほど必要だと思い、ただただ鏡の自分を見ていた。5分ほど経つと自分というものを見失ってくる。そしてそんな時に耳に聞こえてくる声を頼りに自分を取り戻し、気が付いたら過去の自分、つまり自分が魔王だと思っている少年に戻っているのだ。これも一つの催眠術なのかもしれない。しかし催眠術だろうとなかろうと、使えるなら使う。ヨハネのために。シェリアスはそう心に決めていた。

自分の魔王化も終わり自室に戻り魔王の衣装を着ていると、時刻は12時に差し掛かっていた。そろそろ津島家に向かう時間になったので、服の上に少々厚着になるが大きめのパーカーを羽織った。もう一度鏡に映る自分を見た。今の自分の姿が過去の自分と重なって見える。

 

「また、ここに戻ってきたか・・・・」

 

常備している懐中時計を開くと家を出てお隣に向かった。さすがに仮面はつけなかったが、修斗のままだったらこんな格好で外に出たら恥ずかしくて死にたいと思うほどだっただろうが、魔王シェリアスとしての自分は恥ずかしいなどみじんも感じない。魔王化するにあたって感情が乏しくなったのか、精神そのものが過去に戻ったのか。もしかしたら後で副作用が残るかもしれないという考えが頭に浮かんだが、すぐに消えた。

津島家のインターホンを押すと、中からいつもの格好のヨハネが出てきた。いつもというのはあの放送の格好ではなく、いつもの普段着だった。そんな彼女は訪れた人物が一瞬誰だかわからないというような顔をした。

 

「やあ、ヨハネ。」

 

シェリアスの声で目の前に誰が立っているのか理解したようだが、念のためなのか、信じられないとでもいうのか前に立っている人物に問いかけた。

 

「本当にシェリアスなの?」

「君の知っている修斗とは少し違うが、紛れもなく僕は魔王シェリアスだ。」

 

シェリアス返答の後、ヨハネはまじまじと彼の姿と見た。いつもの彼。しかしどこか違う。口調、目つき、しぐさ、衣服、どれも自分がしる修斗とは違っていたが、もっと根本的な何かが違う、ヨハネはそう感じた。

 

「その服どうしたの?」

「ああこれかい。これは闇とつかさどるものにのみ与えられた服でね。僕は愛用しているのさ。いくら君でもこの服は渡さないぞ。」

「いや・・・そうじゃなくて・・・」

「何だというのだ?」

「今日はラジオみたいにしようと思ってたんだけど。・・だから、姿は映らないわよ。」

 

ヨハネの一言は魔王化の呪いを一瞬にして解いた。僕の自我がシェリアスから修斗に引き戻された。修斗に戻った途端、急激に自分の姿が恥ずかしくなった。修斗はポケットの中から財布を取り出すと、財布ごとヨハネに渡した。

 

「着替えてくる。お昼は適当に出前を取ってくれ。」

 

それだけ言うと大急ぎで隣の家に戻っていった。一方財布だけ渡されたヨハネは嵐のようにやってきて嵐のように去っていった少年と魔王にあっけに取られていた。隣の家のドアが閉じられてから数分すると、やっと動き始めた。家に戻ってお昼の出前を取るために。

自室に戻った修斗は大急ぎで着替え始めた。今着ている服を脱ぎ棄て、タンスの中から普段着を引っ張り出した。急いでいるとはいえ身だしなみはしっかりとしなくてはならない。もう一度鏡の前に向かうと、頭の中にもう一人の声が聞こえた。

 

『まったく、ちゃんと人の話は聞いておけよ。そそっかしいな、しっかししろよ修斗クン。』

「!?」

 

自分と全く一緒だが根本的にどこかが違うが声が、シェリアスの声が頭に響いた。その声はまるで修斗に問いかけてくるようだった。こんな事初めてだ。この声は今まで頭に響いたことは何度もあったが問いかけと自分の名前を呼んだのはこれが初めてのことだった。

 

「仕方ないだろ。昨日は色々忙しかったんだから。」

 

初めてのシェリアスからの問いかけに思わず答えてしまった。するとシェリアスの声はなおも頭に響いてきた。

 

『まあ、人間風情が魔王を名乗った罰だな。昔みたいに全て僕に任せればいいものを。お前は無理してんだよ。さっさと僕に変われよ。』

「うるさい。君じゃなくても、僕だけで十分だ。」

『フッ、それはどうかな。お前も心のどこかで自覚してるだろ。今の自分よりも昔の自分の方が楽しかった、とかさ。』

「・・・・今の僕でも十分楽しいさ。」

『確かにそうかもしれない。だが僕はごまかせないぞ。なんてったって僕らは一心同体だからな。隠そうとしたって無駄だ。それにお前が楽しいと感じているのはあいつらに出会ったからだ。違うか?』

「・・・違わないさ。ヨハネは、ファーストは、僕には大切な友達だ。」

『はいはい、大切ねえ。だけどお前はその大切な友達とやらに嘘をついているじゃないか。それで大切な友達だ、笑わせるな。友達だったら僕のことも含めて話してみろよ。あいつら引くんじゃないか。ま、あのヨハネとか言うのは逆に食いつきそうだがな。』

「何が言いたい?」

『別に。ただあいつだったら、お前みたいなやつより僕の方が好みなんじゃないかなと思ってね。もしお前があいつと今以上の関係になりたいと望むならさっさと僕に任せたがいいんじゃないかと思ってね。普通の少年、修斗と彼女と同じく魔とつかさどるシェリアス。学年1位の秀才、修斗クンならどっちが最適な方法かわかるよな。』

「・・・・」

『黙るってことは認めるんだな。なら僕にすべてを・・・』

「うるさい!」

 

頭に響く声を止めるために大声で叫んだ。その声とともにシェリアスの声はしなくなった。最初はシェリアスが映っていた鏡には、修斗が映っていた。さっきまでのシェリアスはまるで自分がひとつの人格であるかのように、今の修斗が偽物だと言いたげな口調だった。まさかさっきの暗示のせいで僕の中にシェリアスの人格が生まれてしまったのだろうか。いやそんなことはありえないはずだ。僕たちは一つ、僕は修斗でシェリアスなんだ。自室に戻り、懐中時計に目をやるとすでに一度家に戻ってから30分が経過していた。そろそろヨハネのもとに行かなくては、カバンを持つとすぐさま津島家に向かった。

前と同じように津島家のインターホンを押すと、これまた前と同じように中から私服のヨハネが出てきた。今度はさっきとは違い相手が誰だかすぐにわかったようだ。

 

「やっと来たわね。お昼もう届てるわよ。」

「ああ、ありがと。」

 

ヨハネに案内され中に入ると、テーブルの上にピザが置かれていた。そしてそのピザの横には僕の財布と領収書が置かれていた。

 

「おつりは入れといたわよ。」

「そっか。ありがと。」

 

テーブルの上の財布をカバンにしまっていると、後ろからヨハネが不安そうな声で聞いてきた。

 

「ねえ、シェリアス。」

「? どうした?」

「さっきあなたの家の方からあなたの叫び声が聞こえたんだけど、大丈夫?」

「あ、ああ。大丈夫だ。」

「そう、無理はしないでね。」

「ああ、ありがと。」

 

あの時の声は隣にまで聞こえていたようだ。これからは注意しなくては。などと考えているとヨハネがテーブルの上のものをすべて持って自室へと向かった。

「シェリアス、時間がないから食べながらやるわよ。」

「わかった。」

 

ヨハネの後をついていくように彼女の部屋に入っていった。彼女の部屋はこの前来た時とは違って、既にスタジオのようになっていた。部屋の真ん中にはテーブルが置いてあり、ヨハネはそこにピザとその他もろもろを置いて、床においてあった座布団の上に座った。

 

「シェリアス、あなたはそっちに座って。」

 

そう言うとヨハネは自分とは反対側に置いてある座布団の方を指さした。ヨハネの指示通り座布団の上に座ると、ヨハネは本題を切り出した。

 

「まず、大体の流れを説明するわね。最初は私たちが適当に雑談をするの。話題とかは何でもいいわ。その後はメールを読んで答えていく、いい?」

「了解だ。」

 

この後、しばらく雑談をしながら練習をしていると、目的の時間に近づいたのでヨハネはテーブルの真ん中にマイクをセットし始めた。

マイクのセットも終わり、本番10分前となった。正直この時は緊張で周りの音が聞こえないほどだった。そんな時頭の中にあの声が響いた。

 

『しょうがない奴だな、力を貸してやるよ』

 

その声はすぐに消えてしまった。しかしその声が消えると心に余裕ができた。すると今まであれほどまでに緊張していた体が一瞬で収まった。不思議に思いながらも声の主に感謝していると向かいに座っているヨハネがテーブル越しに問いかけてきた。

 

「シェリアス、緊張してる?」

「不思議なことに全然してないんだ。君がいるかな。」

「何よそれ。」

「なんだろね。君もいつかはこの気分が分かる日が来るよ。」

「そう。じゃあ始めるわよ。」

 

 

 

今回の特別回は一言で言うと大成功に終わった。特別ゲストのヨハネの彼氏のシェリアスも普段通りで詰まることなくスムーズに進んでいき、ヨハネも大満足のようだった。特別回が終わってから夕食を作ってから帰ることにした。今日は一緒に食事することは少し遠慮した。まだ頭が痛いというとヨハネも了承してくれた。そして今は夕食を作り終えたのでさっさと帰って寝ようと思っていたら、玄関でヨハネに呼び止められてしまった。

 

「シェリアス、ちょっといいかしら?」

「何、できれば手短にお願いできるかな?」

「わかったわ。今日はありがとね。体調が悪いのに手伝ってくれて。」

「当然のことをしたまでさ。感謝されるようなことじゃない。」

「そんなことないわよ。あなたはすごいわ。」

「・・・ありがと、じゃあ素直に感謝されておくよ。じゃあ、また明日、学校で。」

「ええ、また明日。体調には気を付けて。」

「あはは、もう遅いかもだけど、ありがと。」

 

その言葉とともに玄関のドアを開けて、自分の家へと帰っていった。隣の家の扉を開けると、すぐさま自室へと向かった。カバンを机の上に置くと、そのままベッドに倒れこんだ。突然自分の体に急激な眠気があふれ出て、このまま目をつぶって眠ってしまった。

目を閉じると真っ暗な空間がどこまでも広がっていた。今自分がどうしてここにいるのか、そもそもここはどこなのかもわからず、この前後左右が存在しない空間を漂っていると、昼頃に聞いた声が聞こえた。

 

『やっとここまで来たか。』

 

声が聞こえたのはちょうど自分の真上だった。見上げるともう一人の自分、シェリアスがふわふわと足を組みながら漂っていた。

 

「ここはどこだ?」

 

修斗の質問にシェリアスはあざ笑うかのようにに答えた。

 

『ここはお前の心の奥底、僕を封印していた場所だよ。』

 

シェリアスは両手を広げて空間全てを指さした。

 

「どうして僕をここに呼んだ?」

『お前が来たんだろ。現に僕はここから動けない。』

「僕がここに来た?」

『ああ、お前が僕を必要としたからだ。』

 

シェリアスは元の位置からは動かずに常に修斗を見下す場所にいる。そんなシェリアスは夢の中で空を泳ぐときのように修斗の前にやってきた。

 

『僕もお前と同じなんだ。だからお前が苦しむのは見たくない。自分が苦しんでいるように見えるからな。』

「・・・何が言いたい?」

『ようするに僕たちは一人じゃ完璧じゃないんだ。だったらより完璧になるために協力しようって言ってんだよ。』

「協力だと?」

『ああ、お前が必要と感じたときには僕がお前と変わってやる。それ以外はお前が一人で何とかする。そのかわり精神的な助けはしてやる。』

 

シェリアスは右手を修斗の方へと伸ばした。

 

『悪い話じゃないだろ?』

「確かにそうかもしれない。だが絶対に裏がある君が僕と同じなら僕と同じ癖があるはず。さっきから右足だけが前に出ている。これは僕が何かを企んでいる時の証拠だ。そうだろ?」

 

するとシェリアスは伸ばしていた腕を戻して高らかに笑い出した。

 

『ククク・・・フハハハハ・・・さすがは僕だな。ただじゃいかないか。』

「・・・それで真の目的はなんだ?」

『ヨハネだよ。』

「はあ?」

『僕はあいつのことが出会ったときから気に入っていてね。あいつを僕のものにする。それが目的だ。』

「ヨハネを・・・」

『どうした?お前にとっても悪い話ではないだろう。それともあいつに何か不満があるのか?』

 

シェリアスは再び右腕を前に出した。

 

『お前はこの計画に乗るか?それとも・・・』

「・・・・」

 

シェリアスの真の目的はヨハネだと。どういうことだ。普通にヨハネを射止める問だけなのだろうか。それとも本当にものとしか見ていないのか。どっちなのかはわからない今こいつを契約をするのは危険だ。そう考えているとシェリアスは悪魔のささやきならぬ魔王のささやきを口にした。

 

『お前は欲しくないのか?ヨハネが。』

 

シェリアスの一言は修斗の心を動かすには十分すぎた。修斗はシェリアスの指し伸ばされた手を握り返してしまった。それと同時にシェリアスは笑みを浮かべた。

 

『契約成立だな。』

「・・・ああ。」

『これからはお前は僕。僕はお前だ。』

 

シェリアスはその言葉だけの残すと修斗の中へと消えていった。残された修斗は一人さっきまでシェリアスの右手を握っていた右手を見ていた。その手を見ていると不思議と長い間忘れていた、自分への自信や心の余裕が生まれた。そして暗闇の中、頭に浮かんだ言葉を口にした。

 

「僕たちは修斗でありシェリアスである。僕たちは二人で一つ。二人で完璧なんだ。」

 

そのまま頭上を見上げながら高らかに笑った。そしてその笑い声はいつからか二重で聞こえた。

 

「『フハハハハ・・・・アハハハハハ!』」

 

少年と魔王の笑い声はどこまでも続く暗闇の中に響き渡った。

 

 

次の日目が覚めると、体がいつもよりも軽く感じた。昨夜何か大事な夢を見た気がするがどんな夢だったかまったく思い出せない。それでも今日という時間は過ぎていく。制服に着替えると、家を後にした。すると玄関を出たときにヨハネに出くわした。

 

「おはよう、ヨハネ。」

 

 




先日、リアルの友達に質問されました。
Q どうして忙しいのに小説を書くの?
A 1つ目は、母が元小説家なんだけど、その母に少しでも近づけたら、母の考えてること  がわかるかなと思って。
  2つ目は、ラブライブ!作品が好きだから・・・かな?
  3つ目は、いろんな小説を読んでて、自分ならここはこんな展開にする、とか考えて   色々探したら、自分で書いた方が早い!と考えたから。
                               以上!

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを                              
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