堕天物語   作:EIMZ

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堕天使と魔王とhappy birthday

今日は6月24日。今はオンラインゲーム、セカオラにログイン中。いつものメンバー、シェリアス、ヨハネ、ファーストの三人に今日は学校のゲーム部のメンバーが加わっていた。今回は経験値を積むことが目的ではなく、新たな装備を作るための素材を集めるためにこの前よりは少し難易度の高いダンジョンに来ているのだが、ダンジョンに向かう途中に彼らにあったのだ。彼らも僕らと同様に素材を集めに行く途中だったので、今回はともに仮のパーティを作成して協調することにした。といっても僕たちのやることは変わらず、ただただ相手を切り進んでいった。しかし今回のボスモンスターは巨大なオオカミでその周りにも多数のオオカミが配置されていて、メンバーが多くなったパーティーは有利な戦闘を繰り広げた。ゲーム部の面々の援護もあり、ボスモンスターも難なくクリアできた。シェリアスのラストアタックでボスオオカミがガラスのように砕け散ると、ボスオオカミがいた場所の上空に目ミッションクリアの文字が浮かんだ。

 

「ミッションクリアおめでとうございます。シェリアス。」

「そっちこそ。的確な援護ありがとうございます。」

 

ゲーム部の部長が剣を鞘の納めて後ろから話しかけてきた。この人とは部活動見学の際に一度だけ会話したことがあった。その時の第一印象としてはおおらかそうな先輩という感じだった。実際、今日ゲーム内で話してみると、とてもフレンドリーで他の部員への面倒見もよく、後輩からも厚い信頼を受けているという、まさに先輩という感じの人だった。修斗はこの時、沼津に来て初めて先輩らしい人にあったかもしれない。この人なら信頼できると。少なくともどこぞの二人のダメ先輩よりも。この二人の先輩というのはもちろん、漫研とラノベ部の部長たちのことだ。正直あの先輩たちには関わりたくないというのが本音だ。だからこそこの人のような先輩のことは頼りにしてしまう。

ダンジョンを後にした面々は町に戻ってドロップ品の配分を終えるとそれぞれログアウトしていった。そして最終的に残ったのはヨハネとシェリアスそしてゲーム部の部長だけとなった。ファーストはダンジョンから帰ると、何かやることがあるからと言ってすぐにログアウトしてしまった。ゲーム部の中には修斗たちと同じクラスの生徒もいたが彼もすぐにログアウトしてしまった。そして残された三人は町の喫茶店で雑談をしていた。しばらく話をして、リアル時間で9時に差し掛かろうとしたときに先輩が動いた。

 

「そうだ、シェリアス君、ヨハネさん、よかったら僕とフレンド登録しないかい?」

「僕たちは一向にかまいませんよ。いいよな、ヨハネ。」

「ええ、別にかまわないわよ。」

「それはよかった。もしこのゲーム内で困ったことがあったらメールしてくれ。できる限り力になるよ。」

「ありがとうございます。」

 

シェリアスたちはそれぞれ自分のウィンドを開いてフレンド登録を終わらした。この時、先輩が使っているアバターの名前を知った。『ヒュプノス』それが先輩の名前だった。先輩曰く自分の頭文字から適当にカッコいい名前を検索したら出てきてからつけた名前らしい。フレンド一覧の中の数少ないフレンドにヒュプノスの名前が追加された。先輩の一覧表の中にシェリアスの名前が追加されるのを見ると、また口を開いた。

 

「シェリアス君、ちょっと二人だけで話したいことがあるのだが、いいかな?」

「二人だけですか?」

「ああ、いいかい?」

「ヨハネ、先にログアウトしてもらってもいいかな?」

「・・わかったわ。じゃあ、お疲れ様。」

「ああ、お疲れ様。」

 

ヨハネのアバターが消えると、メールボックスに一通のメールが届いた。それはミッションクリアのお知らせだった。そのミッションの内容はフレンドを5人作るというものだった。ウィンド画面からミッションクリアのアイテムを受けとっているシェリアスを見て先輩が話し出した。

 

「懐かしいな。フレンドミッションか。」

 

先輩は懐かしいものを見る目でシェリアスのウィンドを覗いた。

 

「はい。何まだ始めたばかりなので。まだまだクリアしていないミッションもたくさんありますよ。」

「そっか。じゃあ、バースデーミッションもまだか。」

「なんですかそれ?」

 

聞きなれない言葉にシェリアスは先輩に聞き返した。

 

「ああ、このゲーム。プレイヤーの誕生日には特別なアイテムがもらえるんだ。」

「へーそうなんですか。」

「シェリアス君の誕生日はいつだい?」

「明日です。」

「ほほう。それはおめでとう。明日は必ずログインすることだね。」

「はい、そうします。」

「しかし、シェリアス君ならリアルでたくさんの友達に祝ってもらえるんじゃないかな?」

「どうですかね。確かに、クラスメイト達には明日が誕生日だと伝えたことがありますが、まだこっちに来て2か月とちょっとですからね。」

 

それに今まで自分の誕生日を祝ってもらったことなんて一回くらいしかない。それもあの時は親戚の人とその友達が集まっただけだったし。だからかあまり自分の誕生日には何も期待しないようにしている。そういえばこの前ヨハネにも同じような質問を受けたな。まあ、いいか。どうせ誰も祝ってくれるわけないし。精々自分でケーキを買って帰るくらいだろう。などとどこかうつろになりながら考えていたシェリアスを横目で見ながら先輩はぼそりとつぶやいた。

 

「なら、明日は驚くだろうな。」

「? 何か言いました?」

「いや、何でもない。さて本題に入ろうか。」

「あの・・・もしかして、ゲーム部に勧誘ですか?」

「アハハ、違うよ。まあ入ってくれればありがたいのは確かだけどね。本当は少し気になることがあってね。シェリアス君、君の名字って津々宮なんだよね。」

「? はい。」

「もしかしてだけど、ご両親って考古学者だったりする?」

「よく、知ってますね。」

 

津々宮修斗の両親、津々宮千鶴と津々宮海斗は二人そろって考古学者なのだ。その為に二人は世界中を飛び回ってありとあらゆる研究をしている。そしてそれが修斗が小さいころから親と一緒にいることが少ない理由である。

 

「やっぱりか。なんとなくそんな気がしたんだよ。」

「あの、どうして僕の親のことを知ってるんですか?」

「知らないの?君のご両親、考古学の世界では有名な人たちなんだよ。」

「そうなんですか。知らなかった。」

「やっぱり、この前のインタビューで言ってたよ。息子がいるが中々会えなくて悪いことをしているって。」

 

そんなことをしていたのか。というか僕の親は有名な人たちだったのか。いつもいつもどこかに行っては変なお土産を買って帰って、そしてまたすぐに行ってしまう。僕からしたらどうしようもない仕事好きだとしか感じていなかった。

 

「きっと明日も、君に誕生日プレゼントとか送ってくれるんじゃないかな。」

「どうですかね。」

 

この後先輩は津々宮夫妻のことを色々と教えてくれた。現在参加中のプロジェクト、過去に行った研究の成果、いろんな雑誌に取り上げられたインタビュー、結婚後の研究、世紀の大発見ともいえる計画に携わったこと。そして自分たちの息子についてのこと。両親は一度だけ研究中の遺跡にまだ幼児だった僕を連れて行ったこともあったそうだ。先輩は僕が知らないようなことをたくさん知っていた。僕は親戚や近所に人から両親の話や雑誌は極力聞かないようにしてきた。そのために今では目の前の、僕の親とも面識のない学校の先輩にも親についての知識では負けてしまっている。親のことを生まれて初めて詳しく聞いた僕は、表情一つ変えずにじっと先輩の話を聞き続けた。

 

「・・・・という感じで今は凍結された遺跡から見つかった故文書の解析チームに配属されていて、ロンドンにいるんだ。で、その遺跡っていうのも元々の発見は津々宮教授たちなんだけど、その遺跡がどうやら悪魔や邪神と関係性が高い遺跡なんじゃないかって教授たちは推測しているらしい。それで・・・」

 

先輩の話は僕の親がどうとか親が凄いとか、そんな内容だった。なぜか先輩の話を聞いていると、心臓の奥の方が詰まるような感覚に包まれた。するとその症状に続いて目が段々と熱くなってきてしまった。これ以上は耐えきれないと判断した僕は先輩の話を途中で切った。

 

「先輩。・・・もう、いいです。」

 

必死にあふれ出てくる涙をこらえながら詰まりそうになる息を必死に抑えて今出せる限界まで感情を抑えた声を出した。先輩は必死に感情を隠そうとする僕を見ると、何かを悟ったように申し訳なさそうな顔をした。

 

「ごめんね、話過ぎた。」

「・・・・」

「もうこんな時間だ。早くログアウトするといい。」

「・・・すいません。」

 

先輩の言葉に甘えて、ウィンドを開いてログアウトボタンを押した。すっと画面が真っ暗になるのを見届けると、修斗はどこか遠くを見るように空を見上げた。上を見上げていると自分の頬を雫が一滴、また一滴と流れていくのがわかった。あと1時間とちょっとで迎える自分の誕生日。沼津に来て初めての自分の誕生日。今自分の親たちは同じ空の下、同じ星に住んでいる。それなのにもかかわらず、どうしてここまで心細くなってしまうのだろう。どうして胸が痛いのだろう。どうして・・・僕ばかりがこんな目にあっているのだろう。どうして僕の親は一緒にいてくれないのだろう。そんなことを考えながら修斗はそっと瞼を閉じて、深い眠りについた。

 

目が覚めて、ケータイのアラームを止めるために画面を開くと、そこには6月25日とう文字が浮かんでいた。遂に迎えた沼津で始めての自分の誕生日。今まで友達が祝ってくれたことなんて一度もなかった、というよりも今までは友達と呼べる友達もいなかったが。しかし今の僕にはヨハネやファーストといった信頼できる友達もいるきっと彼らなら誕生日おめでとうくいらいは言ってくれるだろう。そんな期待を胸に意気揚々と家を出た。家を出てすぐ、鍵をかけていると、隣りの家からヨハネが出てきた。彼女には2回ほど僕の誕生日を伝えたことがある。きっと彼女なら覚えていてくれているだろう。

 

「おはよう、ヨハネ。今日もいい天気だね。」

「・・・おはよう。」

 

ヨハネはそれだけ告げるとすぐさまエレベーターに向かってしまった。その後ろ姿は振り返ることもなく、そそくさと行ってしまった。そして家の前に一人取り残されてしまった僕は、彼女の背中が見えなくなるまで、硬直してしまっていた。それだけですか、挨拶だけですか。薄情な奴め。急いで家の鍵を閉めると先に行ってしまったヨハネを追いかけた。幸い彼女はエレベーターを待っているところだった。ナイス、エレベーター。いつものようにヨハネの隣に立ちエレベーターが来るのを待っている間も彼女は目も合わせてくれず、会話すらまともに進まなかった。

 

「な、なあ。今日って何曜日だったっけ?」

「金曜日でしょ。まさか曜日感覚ないの?」

「いや・・・そうじゃないんだけど・・・」

「どうしたのよ、そんなにそわそわして?」

「えっ?!そ、そんなことないよ。気のせいじゃないか?」

 

君が素直に誕生日おめでとうと言ってくれればこんな思いせずに済むんだよ。まさか本当に忘れてしまったのか。しっかりと伝えたはずなのに・・。いや別に祝っても欲しいわけではないけど、なんとなく寂しい思いになった。

 

「シェリアス、何ぼさっとしてるの。エレベーター来たわよ。」

「・・・うん。」

 

この様子だと言ってくれそうにないな。仕方ない、こいつにはケーキを分けてやらんぞ。貴様の目の前でイチゴたっぷりのショートケーキを食べてやる。貴様の悔しそうな顔が目に浮かぶわ。フハハハハ・・・って、何考えてるんだ僕は。

いつものようにヨハネとともに学校に向かう途中に、何人かクラスメイトに会ったが彼らもいつものように『おはよう』と返してくるだけだった。そして学校に着いてからも、クラスはいつもの雰囲気で誰一人として祝ってくれる様子はなかった。ついにはみんなに自分から言ってしまった。

 

「きょ、今日って何かあったっけ?」

「え、今日?・・・何もなかったと思うよ。」

「・・・あ、そう・・・」

 

なんだよ、やっぱりみんな忘れてるのかな。その時後ろから女子の声が聞こえた。

 

「あ、そうだ!聞いてよ津々宮君。実はね私、ダイエットに成功したの!」

 

ダイエットだ?!どうでもいいわそんな事。貴様が太ろうが痩せようが興味ないわ。もっと僕を見てよ。僕は今日誕生日なんだぞ、おめでとうくらい言えよ!わかる?!today主人公、me!今日は数少ない僕が主人公に日なんだよ!わかったらさっそとその口を閉じろ!という暴言を思い浮かべたが、言葉を飲み込むと完璧なつくり笑いでできる限り明るく振舞った。

 

「そっか、おめでとう。」

 

この後も誰も、何も言ってくれなかった。僕はこんなにも人気がなかったのか。もしかして本当は僕は嫌われているのだろうか。この日のために日頃からいいことしてきたつもりなんだけどな。部活の助っ人に行ったり、探し物を手伝ったり、悩みを聞いてあげたり、色々したけどどれも意味なかったのか。そっか、勝手に誰かに誕生日を祝ってもらえるなんて思いこみしてはいけなかったんだな。なんかごねんね、粋がっちゃって、これからは誰とも関わりを持たないようにするよ、と極度の卑屈状態になっていたら、時間はあっという間に過ぎていき既に放課後になっていた。何だか今日の学校での記憶がないな。あれ、涙が出てきそうだ。

放課後、前田先生の手伝いをするように頼まれたので、指示通り職員室に向かった。どうせやることないし、だれも祝ってくれるわけないし、一人で静かに事務作業でもしてますよ。

 

「先生、全部終わりました・・・」

 

そう言って職員室にある前田先生の机まで資料を持っていった。

 

「早いな。もう終わったのか?」

「はい、文字っていいですね。人に干渉を持たないようにするから。」

「? 何か言ったか。」

「・・・いえ、別に何も・・・」

 

先生は資料を受け取り中身を確認すると茶色の封筒の中にしまった。

 

「正確にできている。お前こういうこと得意なのか?」

「はい、そうですね・・・」

「だったら、生徒会とか入ってみないか?」

「はい、そうですね・・・」

「・・・どうした、テンション低いな。何か悩み事か?」

「はい、そうですね・・・」

 

先生はこれ以上僕の様子については追及してこなかった。これ以上はそっとしておこうと思ったのか、これ以上は自分が触れてはいけないのか確信したのかわからないが、これ以上聞いてこなかったのは賢明な判断ですね。もし、聞いてきたら・・・フフフ・・・。

 

「ま、まあ。気をつけて帰れよ。教室のカバンを忘れるなよ。」

「・・・はい。」

 

先生から教室の鍵を受け取ると、重たい足取りで自分の教室に向かった。階段一段一段上がるごとに色々な感情や不満、疑問が湧いてきた。

ここにきて、今までで一番多く友達ができた。それは僕が中二病を抑えるようになったからだけではないと思う。きっとこの沼津のみんながどこよりも親しみやすく、明るく、何よりもいい奴らばかりだった。あいつらは人の気持ちをしっかりわかってくれている。この前も今まで誕生日プレゼントに何を貰ったかという話題だ出たとき、僕もその質問をされて、答えれなかった時があった。その時僕の家庭の事情を説明したらあいつらはどうしたか。小ばかにするでもなく、同情の目を向けるでもなく、ただただ、泣いてくれた。こんな僕のために泣いてくれたのだ。あの時は嬉しかったな。久々に人の温かさに触れた気がした。だから、だからこそあいつらならきっと・・。今度こそは誰かが何か言ってくれると思った。だけどそれは自分で舞い上がっていただけなんだ。所詮人間は自分のこと以外はどうでもいいんだ。他人がどうなろうとどうでもいいんだ。結局みんな自己中なんだ。もう、誰も信じない。誰も頼らない。誰も信用しない。これからは自分の為だけに、自分中心に生きてやる。他人の心配なんてくそくらえ。ああ、もう、人間不信になりそう。教室でちょっと泣いて帰ろうかな。下を向いたまま教室の鍵穴に鍵を差し込むと、力なさげにドアを引いた。その時、正面からパンッという銃声音のような音が聞こえた。しかしその音は銃声の音ではない。もっと小さな音だった。何事かと顔を上げるとそこには、地面に舞い散る紙吹雪、後ろに寄せられた机と椅子、黒板いっぱいに書かれた色とりどりな

『Happy birthday』の文字、そしてクラスメイト全員の姿があった。その中心にはこのクラスの委員長のファーストが立っていた。そのファーストが指揮をとると、クラスメイトのみんなの声が教室中に響き渡った。

 

「「「「「津々宮修斗君、誕生日おめでとーーーー」」」」」

 

みんなの声がまだ耳の中に響いているなか、ファーストが切り出した。

 

「シェリー、誕生日にあんまりいい思い出がないって言ってたから、みんなで計画したんだ。日頃の感謝を込めて、君を祝おうって。」

 

ファーストが一度下がると、代わりに後ろに構えていた男子数人が前に出た。

 

「いつも、勉強教えてくれて、ありがとな!」

「お前の教え方、ものすごくわかりやすいぜ!」

「これからも、頼むな!」

 

そういうと彼らは手に持っていたものを僕に差し出した。

 

「これは?」

「誕生日プレゼントだよ!ありがたく受け取れ。」

「俺たちがちょっとづつ小遣いを出し合って買ったんだ。」

 

プレゼントを渡すと彼らは恥ずかしそうに下がっていった。すると次は女子生徒が数名前に出た。

 

「えーと、いつも私たちの話を聞いてくれてありがとう。」

「津々宮君の笑顔にいつも癒されています。」

「これからも友達でいてください。」

 

女子は器用に紙を次々に回し読みした。する今度は後ろにいた女子たちが前にいた女子とともに再び前に出た。

 

「これ、私たちが調理室で作ったクッキー、よかったら食べて。」

 

するとこれまた恥ずかしそうに後ろに下がっていった。その後も次々にクラスメイトのみんなが前に出ては何かを渡していき、感謝の言葉を述べた。

 

「たまに部活の助っ人に来てくれてありがとう。」

「探し物を一緒に探してくれてありがと。」

「悩みを聞いてくれてありがとう。」

 

などなどみんがが何かを言ってはプレゼントしてくれるので、既にこれ以上何も持てなくなってしまった。その時後ろのドアが開く音がした。そこに立っていたのは職員室にいるはずの前田先生だった。

 

「俺からも一言。お前が入ったことで俺の評価が上がった。ありがとな。」

 

先生は僕に後ろのみんなには見えないように大きな手提げ袋を渡した。そしてそのまま職員室に戻っていった。先生の背中が見えなくなると後ろから誰かが「自分のことかよ!」と突っ込にをいれた。それと同時にクラス中が笑い声であふれかえった。そしてその笑い声が止まないうちにファーストが再び前に出た。

 

「じゃあ、次は僕だね。」

 

ファーストが真っすぐにこちらを見つめると、周りから笑い声も消えた。それを合図にしたのかファーストは話し始めた。

 

「人数が足りなかったうちの弓道部に入ってくれてありがとう。あの事、物凄く感謝しれるんだよ。それと、テストでも、弓道でも、いいライバルになってくれてありがと。」

 

するとファーストは自分のポケットから図書カードを差し出した。もしかして荷物が多くなるから気を使ってくれたのだろうか。ファーストの顔を見上げると、彼は返事はせず、ウィンクをして返した。そして元の自分の持ち場に戻っていったら、今度は後ろの方が騒がしくなった。どうやら女子がもめているようだ。すると今度は数人の女子に押されてヨハネが前に出てきた。

 

「ちょ、ちょっと!私は言わないわよ!」

 

しかし他の女子たちはヨハネの声には耳も貸さずに、彼女の背中を最後にひと押しした。背中を押されたヨハネはバランスを崩しそうになるも、体勢を立て直した。しかしヨハネが今立っている場所は修斗の目の前だった。一度後ろを振り返るも、後ろの女子は目線を合そうとせず、ある者はじっと期待に目を輝かせながらこちらを見ていた。そしてヨハネは下がることをあきらめたようだ。急に眼を合わせてきたと思ったらすぐに離してしまう。そんなことを三回ほど繰り返すと、最後は目をつぶりながらこちらを向いた。口をパクパクと動かした後に深呼吸をすると、赤い顔で修斗の顔を真っすぐに見つめてきた。

 

「で、・・・出会ってくれて・・・・・ありがと。」

 

その声は小さく、周りのみんなからしたら口を動かしただけに見えたかもしれないが、確かに修斗には聞こえた。そして修斗がその言葉を聞いて唖然に取られている姿を見ると、ヨハネはクスッと笑いそそくさと後ろに下がってしまった。その様子を見ていたファーストはにやけ顔で音頭を取った。

 

「じゃあみんな最後行くよ。」

「「「「「「「津々宮修斗君、誕生日おめでとう!!!」」」」」」」

 

最後にみんなが一斉に祝福の言葉を告げると、何人かの男子は僕に駆け寄り、肩に腕を回してきた。その時、遂に僕の涙腺は崩壊してしまった。

 

「お、おい、泣くなよ、津々宮。」

「・・・だって、・・・こんなに・・・嬉しい日・・・初めてだ・・・・」

 

大粒の涙が床にポツポツと滴っていった。そこからは視界が涙で歪んでしまい、よく見れていないが、僕はこんなにも僕のことを祝ってくれてみんなに感謝の言葉の述べ続けた。

 

「みんな・・・本当に、ありがと。・・・今までで一番心に残る日になったよ。・・・今日のことは絶対に忘れない。・・・みんなに本当に感謝してる・・・こっちこそ・・・友達になってくれてありがと・・・今一番・・ここにきてよかったて思えた。本当にありがと・・・ありがと・・」

 

最後の言葉を言い終わると膝に力が抜けてしまい、泣き崩れてしまった。

この後、教室を片付けるて、みんなは解散した。僕は帰り道もまだ少しだけ目に涙が溜まっていた。

この後、津島家に夕食を作りに行かなくてはいけないのだが、それまでまだ少しだけ時間があったので、ファーストに電話をかけた。

 

『どうしたの?君からかけてくるなんて珍しいね。』

 

電話ごしにファーストの声が聞こえると、僕は一度心を落ち着かせるために深呼吸をした。そして決心を決めると本題を話し出した。

 

「ファースト。恋愛相談がある。」

 




この前、ほとんど徹夜で今までの小説を見直しました。多分訂正はしたと思うのですが、あんまり自信はありません。というか徹夜のせいで授業が物凄く眠かった。あ、いつものことか。なんて茶番は置いておいて、この前の回で第20話も突破しました。これも皆様に読んでいただいてこその結果です。僕自身、まだまだ社会的にも、小説家としても未熟ですがこれからも全力で書かせていただきます。

読んでいただいた皆様に神々の祝福があらんことを
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