堕天物語   作:EIMZ

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堕天使と魔王と休日Ⅱ

現在16時10分、さっきまでいたカフェからヨハネの案内の元、近くのデパートに向かっていた。彼女曰く、ここから目的のデパートまではさほど遠くない距離らしい。大体徒歩10分だとか。そのくらいなら大した距離ではないが、魔王の呪いの効果は健在でいまだに雨は降っていた。しかもさっきより少し強くなってないか。もしかして横の堕天使が持っている呪いと僕の呪いが合わさって力が増幅しているのか。

 

「ねえ、雨、さっきより強くなってない?」

「なってるな。」

「もしかして雨が強くなった原因って私たちの力だったりしないかしら。」

「奇遇だね。僕も同じことを考えていたよ。」

 

まったく、思考まで僕たちは似ているのか。正直僕たちが兄妹なんじゃないかとも思えてきたよ。さすがにそれはないだろうが、テレパシーとかで会話できるのではないだろうか。そんなわけないか。

 

「私たちここまで考えが似てたらテレパシーとか使えるようになるんじゃないかしら?」

「ええ?!」

「ど、どうしたのよ?」

「すまない。実は同じことを考えてた。」

「・・・何か見えない力が働いてるんじゃないかしら。」

「僕もそんな気がしてきた。」

 

目には見えない力で繋がっているのだろうか。まさか、運命の赤い糸、とかじゃないよな。よ、ヨハネと運命で結ばれているだと。・・・もう考えるのはやめよう。

 

「ヨハネ、あと何分くらいで目的のデパートに着くんだ?」

「大体3分くらいよ。そこの角を曲がればもう見えるはずだけど。」

「ほんとだ。こんなところにあったのか。知らなかった。」

「そんなことも知らなかったの?何年暮らしてるのよ。」

「1週間だよ。」

「あら?なんだかずっと前から知り合っているような気がしたからつい。」

「まあ、僕もそんな気がしなくなないくらい君とは意思疎通できているからな。」

「そういえば、うちの親が昔あなたの親と知り合いだったって言ってたわよ。」

「へーそうなんだ。うちの親はあんまり家に帰ってこないから聞いたことなかったな。」

 

うちの親は二人とも働いている。だからかあまり家に帰ってくることはない。普段は全然帰ってこないくせに僕の授業参観や音楽会には必ず参加する。相手は僕のことを知っているのに、僕は親のことをあまり知らない。うちの親を一言で表すと、気まぐれとしか言いようがない。まあ、いずれうちの親の話はしよう。

 デパートの前に着いたとき、ヨハネが話しかけてきた。

 

「シェリアス、あなた引っ越してきて1週間なら家具とかも少ないんじゃない?」

「あー確かに。調理器具とかちょと少ないかもな。」

「でしょ。ついでに見ていったら?」

「いいの。ヨハネはどこか行きたいところがあったんじゃ・・」

「私の用事は後ででいいわよ。感謝しなさい、リトルデーモン。」

「はいはい、ありがとなヨハネ。」

 

ちょうど家具が家に少なくて困っていたし、ヨハネの感謝しなくてはな。

まず僕たちは調理器具を見に行った。僕の目的は新しい包丁の入手だ。自分で料理をするときに自分用の包丁を使うのだが、引っ越しの時に古くなっていたので捨ててしまった。

 

「うーん。自分になじみそうなのがなかなかないな。」

「何を探してるの?」

「包丁。今家には出刃包丁とパン切りしかないんだ。できれば柳刃が欲しいんだけど、ここにあるのは大体、牛刀や鎌型が多くて。欲を言えば薄刃とか骨スキも欲しいな。まあ、切れ味が良ければ特に問題はないんだけど。」

「・・・やけに詳しいのね。」

「フフ、魔王が使う装備品だからな、ありとあらゆる刃物について調べてたのさ。というのと趣味。」

「へー。さすが魔王様ね。」

「・・それは誉め言葉なのか?」

 

結局、いいのが特に見つからなかった。そのうちネットで頼むか。まあ、刃が僕を選ばなかった、ということにしておこう。こういうものには、とことんこだわる僕だった。

次に僕たちは家具コーナーへ向かった。特に欲しいものがあるわけではなかったが、こういうところに来ると何となく来てしまう。特に買うわけでもないのになぜ来てしまうのだろうか。人というのは不思議な生き物だ。かく言う堕天使サマも今、クッションに埋もれている。

 

「くっ、この堕天使をも魅了するなんて、なんて恐ろしい魔道具なの。」

「ほんとだ。骨抜きって感じだな。」

「何よ。それだけ言うならあなたも座ってみなさいよ。」

「罠に自分から突っ込むほど僕は愚かではないよ。」

「その言い方だと私が自分から罠に突っ込んだバカみたいじゃない。」

「おや、違ったのか。」

「違うわよ!」

 

さっきまで力が抜けていたのに、一気に元気になったな。必死になって否定してきた。そこまで馬鹿にされたのが気に食わなかったのか。

 

「まあ、その人をダメにするクッションの恐ろしさはわかってるよ。こっちに来る前の家にあったからな。」

「そうなの?」

「ああ。夏休みにクーラーのある部屋でそれに座ってると半月くらい引きこもっていたな。」

「凄いわね。」

「それくらい恐ろしい道具なのさ、こいつは。」

 

過去こいつのおかげで夏休みがほとんど奪われてしまったからな、引っ越しの際に捨てた。あの魔道具には二度と座らないと決めたんだ。また時を奪われてしまう。

 

「さて、これで僕の見たい場所は大体行ったたかな。それで、ヨハネはどこに行きたいの?」

「ここの5階にあるお店なんだけど・・。」

「オッケー。行こうか。」

 

僕たちが向かった5階の店は、堕天使の館と言う黒魔術などの道具が並べられていた。こういった店は昔何度か言ったことがあったな。行くたびに魔王関連の道具や黒魔術に使うアイテムを買いあさったものだ。懐かしい懐かしい。引っ越しをしたときに黒魔術関連の店には二度とこないと思ったんだがな。まさかもう一度、しかも別の地方の店にくるとは。

 

「ところで、ヨハネさん。なぜ僕をここに?」

「え?あなたもこういう店探してたのでしょ?」

「・・・なんでそう思ったのか理由を聞かせてもらおうか。」

「なんでって、あなたがもう一度こちら側に再臨したら、また装備品を集める必要があるでしょ。その時のためにこのヨハネ様が直々に教えてあげたのだから、感謝することね。」

「・・・つまり、僕がまた魔王となった際に必要な装備品を集める手段を教えてくれた、と。」

「そうよ。」

「また僕がダークサイドに堕ちると思っているのか。フッ、残念だったな。魔王は二度と降臨しない。僕が張った結界は絶対的なものだからな。貴様ごときの堕天使には解けないだろうな。」

「・・・気付いてないの?あなた、ここ最近魔王発言が増えてるわよ。」

「なんだと?!」

「自覚なかったのね。柔い結界だこと。」

「くっ・・・。」

 

そんな、まさか自分が気付かないうちに出てきているのか。フッさすがは魔王シェリアスだ。そう簡単に封印はできないということか。それとも彼女の力が思ったより強かったのか。まあいい、どちらにせよもう一度封印すればいいだけのことだ。あれ?この発言自体中二病じゃないのか。もう訳が分からない。混乱してきたな。もう考えないようにしよう。気晴らしに店内を見て回るか。ヨハネに至ってはすでに見て回っている。さて僕はどこを見て回ろうか。こっちの店は僕が前に通っていた店より品ぞろえがいいな。

 

「黒龍の紋章・・邪神の禁書・・女神の羽衣・・白銀の双剣・・亜人の涙・・漆黒の銃弾・・魔水晶の頭蓋骨、か。色々あるな。黒曜石の白衣?白いのか黒いのかはっきりしろよ。」

 

特に当てもなくさまよっていたら、一つの品が目に入った。

 

「ん?これは・・・。」

 

店の前で待っていると、しばらくしてヨハネが出てきた。

 

「お待たせ、シェリアス。」

「何を買ったんだ、ヨハネ。」

「フフ、我がサバトにて使用する道具たちよ。」

「そうですか・・。あ、そうだ。君に渡すものがある。」

「何よいきなり。」

「さっき買ったんだけど。これ、黒四葉の髪飾り。運が上がるって書いてあったから。僕も黒四葉の髪留めっていうのを買ったんだ。僕たちが持ってる呪いに効果があるかはわからないけど。」

 

そう言って僕は彼女の髪に髪飾りを付けた。

 

「似合ってるよ。」

「あ、ありがとう。」

 

心なしか彼女の顔が赤いな。まあいいか。

この時、偶然か必然かわからないが今まで降っていた雨が止んだ。それは奇跡のような出来事だった。ほんの少しの時間だけ、雨が止んだのだ。またしばらくすると降り始めたが、このほんの少しの時間だけは、今まで二人をあざ笑うかのように降り続けていた雨が、二人のことを祝福してくれているようだった。

しかし室内にいた二人はそのことに気づかなかった。

 こうして僕たちのデート(仮)は終わりを迎えた。僕たちは最初の集合場所に戻った。

 

「今日はありがとう。」

「楽しめたならよかったよ。まあ、先輩たちのネタの為の一日だと思うと癪だけど。」

「確かにそうね。」

「それじゃあまた明日、学校で。」

「ええ、また明日。」

 

 

そして後日

 

「おはよー、津々宮君、津島さん。」

「おはよう藤崎君。」

「あれ?津島さんその髪飾りどうしたの?」

「えっ?!こ、これは貰ったのよ・・・」

 

ヨハネ、その髪飾りつけてくれたんだ。なんか嬉しいな。ん?あれおかしいぞ。

 

「なあ、藤崎君。昨日は君も先輩たちと一緒に来ていたんじゃないのか?」

「え?昨日は先輩たちに用事が出来てなくなったはずだよ。それなのに二人でデートしたの?仲いいね。」

「・・・藤崎君。そのことは僕たちに伝えた?」

「伝えてなかったっけ?」

「・・・伝える気はあったのか?」

「さあ?どうだろね。」

「ほんと、黒いな。」

「なんのことだか?」

 

今回もやっぱりこいつが裏で手を引いていたのか。腹立たしいな。いつか制裁をくらわさないと。まあ、それなりに楽しかったから今回は大目に見てやろう。

 

「それより二人とも。今日から部活始めるから、放課後は弓道場にきてね。」




漆黒の銃弾、黒四葉、ほぼ無意識で書いていました。実際に有名な作品のことを意識したわけではありません。ホントですよ。
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