主に薄桜鬼の二次小説を書いています。
こちらはpixivさんの方にも載せている処女作となります。
再編集した物をこちらでは載せております。
宜しければご覧下さい。
第一話 三人の訪問者
文久四年。場所は江戸のとある診療所。ここに美人で気立ても良く器量も良いと評判の娘が父親の代わりに働いていた。
名は雪村千鶴。雪村診療所の医者である雪村綱道の娘。実は数カ月前から綱道が行方不明になった。
安否を気遣う千鶴だったが診療所を放っておく訳にはいかず、かと言って現在父がどうしているのか、何か事件に巻き込まれたのではないのか、不安と焦りを感じながら日々を過ごしていた。
せめて父について知る者がいたら、自分の代わりに父を探してくれる人間がいたらとも考えたがご近所の人に話し安易に不安を与えるのもどうかと思い結局解決策は見つからぬまま。
そろそろ閉める準備をしようかと看板を家の中に入れようとしたその時、この辺りでは見掛けない人物達がこちらへ向かってやって来た。怪我をしている様子も、病気をしている様子もない。
一人は浅黒い肌に腰くらいまである蒼い髪の毛。一人は大柄で赤い髪の毛を一つに結わえている。そして真ん中にいるもう一人。金髪に赤い瞳、上品そうな立ち振る舞いの綺麗で端正な顔立ちをしていた。
(外人さん…?確実にこちらに向かって歩いてきている…よね?私に何か用かな?)
とうとう三人は千鶴の正面までやって来た。ただ黙ってじっと千鶴を見つめる三人の男達。不審で怪しいその行動に思わず後ずさりしてしまう。その腕を、金髪の男が掴んだ。
「なっ、何ですか貴方達は!?はっ、離して下さい!」
「おい、いつまでこんな所にいるんだ?早く我らと来い。」
「…へっ?何ですか…?」
「急な訪問で申し訳ございません。無礼をお許し下さい。しかしあまり時間がない。一刻も早くここから立ち去った方がいいでしょう。」
「つーかお前が本当にあの雪村本家の姫か?まぁ悪くはねぇが…まだ子供じゃねぇか。」
男達は口々に勝手な事を言い出すが千鶴には何を言われているのかさっぱり分からない。ただ何やら危険な予感がし警戒心を強める。
「さっきから何ですか?一緒に来いとか雪村本家の姫とか。何を仰っているのですか?」
「…お前…自覚がないのか…?綱道は人としてこの女鬼を育てていたのか…。」
「綱道って…父を…父をご存知なのですか!?今どこにいるのですか?」
「やはり君は雪村の…失礼ですが貴女様の名を知りたい。」
「…雪村千鶴です。今仰っていた雪村綱道は私の父です。数カ月前から京へ行くと言い残し行方が分からなくなりました。ですが私には父が残した診療所もあってここを離れる事は出来ません。お願いします。父について知っている事があったら教えて下さい!準備が出来次第私も父を探すつもりです。それまで少しでも多くの情報が欲しいんです。お願いします。」
縋るような声音で男達に訴える千鶴に、真ん中にいた金髪の男が答える。
「そんなに知りたければ教えてやる。但し、それは我らと共に来る事を約束すればの話だ。今すぐに来い。そうでなければ教える事は出来ん。」
「そんな…先程も言った様にこの診療所は父の大事な場所なのです。私が守らなければ…。」
「ならお前はこの診療所と引き換えに、大事な父親がどうなっても構わないのか?お前がこんな所でボヤボヤしている間に、亡き者にされる可能性もあるんだ。」
「…そんな…!?」
千鶴は目を見開き、金髪の男を見た。冷たく氷の様な表情。しかし、嘘をついている様にも思えず半信半疑ではあったが今こうしている間にも父の身に何かあったら…そう考えてしまうと覚悟を決めざるを得なかった。
「さぁどうする雪村千鶴…我らと行くのか、父親を見殺しにするのか、どちらだ?」
金髪の男は意地の悪そうな笑みを浮かべ千鶴に問いかける。
「…分かりました。行きます。貴方達と共に。」
****
身支度を整えた千鶴を前に、男三人は驚きのあまり絶句した。
「おっお前…何だ?その恰好?」
「これは…いえ、我々が思っていたよりも彼女は逞しい。やはり雪村本家の純血の鬼姫…その辺の女子とは違い意思が強い。」
「ほぅ…これは面白い。賢い判断だ。女だと分かればいくら俺達と行動を共にしていても悪目立ちする。京に立ち寄るなら尚更『奴ら』もいるからな。あまり面倒事には巻き込まれたくない。」
三人の前に現れた千鶴は先程の娘姿でなく、桃色の袴姿に髪を高く結い上げ、腰に刀を差していた。千鶴は京の治安の悪さを噂で聞き、父を探しに行く時には男装姿の方がいいと考えたのだ。その時、千鶴の腰にあるその刀に、金髪の男が興味を示した。
「…これは、雪村家に古くから伝わる小太刀です。私のお守りみたいな物で。父からも大事にしなさいと言われました。あっ、私少しなら棒術や剣術を習いましたので自分の身は自分で守れます。決して皆さんの足は引っ張らない様にしますので私の事はお気になさらないで下さい。」
千鶴の小太刀に刻印された家紋を見つめ、三人の男達は確信した。
(雪村の名前とあの家紋…間違いない)
「それは頼もしい。しかしやはり貴女は女性です。技術に長けていても体力面では不利になる。我々が貴女と一緒にいる間は責任があります。出来るだけ危険な目に合わぬ様、貴女を全力でお守りします。」
「あぁそうだぜ!女は男に守られてりゃいいんだよ。姫さんの言葉は格好いいけど俺達がいる間は何も心配しなくてもいいぜ。ちょっとやそっとの奴は俺達の相手にはなんねぇからよ。」
「…姫さん?」
「不知火余計な事を言うなよ。まだ本人に自覚がないのだから姫だの鬼だの言うな。お前は昔から一言余計で空気が読めん。天霧、あの馬鹿に口を慎む様今一度指導しとけ。」
「てっめぇ風間!言わせておけば空気が読めねぇとか馬鹿とか言いやがって…仕方ねぇだろ!やっとこうして同胞が見つかってよ!それもこんな可愛くて純真な…あぁ京の鬼姫とは偉ぇ違いだな…気持ちも昂るだろう!なぁ天霧。」
「…貴方と一緒にしないで頂きたい。失礼、自己紹介が遅れました。私は天霧久寿と申します。貴方のお父上とはいわば…親戚の様な者です。突然やって来て無理な話かとも思いますがあまり警戒なさらず。」
「俺は不知火匡っていうんだ。まぁこんな訳の分からない野郎が突然一緒に来いなんて言ったら普通怖いよなぁ…でもお前は肝が据わってる!いい女だと思うぜ。まぁこれから宜しくな!」
「…風間千景だ…お前は大事な俺達の仲間だ。悪い様にはしない。お前の父親の事も出来る限りの手を尽くそう。さぁ行くぞ。京までは距離もあるからな。無理するな。」
「はっはいありがとうございます…。でも、最初は怖いと思っていましたが何故だか…今は皆さんの事信用出来る気がするんです…不思議ですが…。わっ私こそ宜しくお願いします。」
千鶴は勢い良く三人に頭を下げ、少し赤くなりながらも微笑んだ。そんな無垢な姿に柄にもなく男三人は頬が赤くなっていた。
****
途中休憩を挟みながら江戸から京へと千鶴ご一行の長旅が始まった。やはり体力面では劣る千鶴だったが風間達の足を引っ張らない様疲れを隠しながら愚痴も言わず、一生懸命に着いてくる。三人は千鶴の姿に段々と絆されていった。
風間達が雪村本家の生き残りがいると聞いたのは最近の事。雪村綱道が幕命の為ある『研究』を新選組と共にしていると聞き、即刻その研究を中止させようとしたが肝心の綱道が行方不明になった。
一刻も早く綱道の行方を探そうと色々調べていく内に娘がいるとの情報を掴んだ。もしかしたらその娘が何か知っているかもしれない。三人は江戸へ向かい、遠めから雪村診療所を眺めた。出てきたのは見目麗しい少女。診療所に来た患者達に優しく微笑み、とても大らかな人柄であった。彼女の評判はとても良く、真面目で勤勉。突然いなくなってしまった父親を想い、胸を痛めていると近所の者が話していた。
「風間、彼女が綱道氏の事で何か知っている様には思えません…一旦引きますか?」
「いや…アレには我らと共に来てもらう。誘き出すいい材料にはなるだろう。」
「おい、そんな言い方ねぇだろう?もしも雪村本家の純血の女鬼だったら姫さんに対して無礼はできねぇからな。」
「フン。とにかく先ずは綱道の行方だ。アレは貴重な純血の女鬼…世継ぎの道具くらいにはなるだろう。綱道が見つかったら俺の嫁にする。まだ子供みたいだが若い方が使い勝手があるからな。」
「おっ前…本当に鬼畜だな…。姫さん同情するぜ…。」
「とにかく、時は一刻を争います。新選組も今血眼になって綱道氏の行方を追っているでしょう。彼らより先に何としてでも綱道氏を見つけなければ。早々に彼女に接触する方がよろしいかと。」
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途中の山道で四人は休憩する。火を起こし先に千鶴を寝かせた。余程疲れていたのかすぐに眠りに付いた千鶴の頭を微笑みながら風間が優しく撫でる。
「おいおい風間…明日は大雪にでもなるんじゃねぇか?お前がそんな風に笑ったの付き合いの長い俺でも初めてみたぞ?いやしかし…寝顔可愛いなぁ…愚痴もこぼさず親父さんの為に一生懸命でさ…一見か弱そうに見えるけど意思も強ぇし、中々こんな度胸のある女はいねぇ。風間、お前跡継ぎ産んでくれる女鬼なら誰でもいいんだろ?ならあの京の姫さんでいいじゃねぇか。俺が千鶴と一緒になる!」
先程千鶴に見せた表情とは一変し、風間は殺気の籠った鋭い赤い瞳で不知火を見た。その顔はまさに『鬼』。風間の煮えたぎるオーラを感じ、不知火は身震いをする。
「不知火…貴方は本当に一言多い。風間を不用意に怒らせないで下さい。そのとばっちりを受けるのは私です。余計な事は言わぬ様に。」
天霧にまで鋭い瞳で怒られた不知火は、何故風間があそこまで怒ったのかいまいち理解が出来なかった。
長い旅を終え、京に付いた四人は風間達が拠点とする屋敷へと千鶴を案内する。豪邸とも言えるその屋敷は部屋がいくつもあり、美しい庭園まである。その豪華さに圧倒されている千鶴に風間が声をかけた。
「ここがお前の部屋だ。好きに使うといい。ここの物は全てお前の物だ。足りぬなら買いに行かせる。」
「…ここの物って…この着物もですか?」
「あぁ。給仕に便りを寄越し、お前に似合いそうな反物を買って仕立て上げた。お前には赤が似合う。俺の見立てだ。間違いない。明日それを着て町に行くぞ。女は必要な物が何かと多いだろう。京へは少しの間滞在する事になる。今日はもう休め。」
風間は用件だけ伝えると部屋から出ようとする。千鶴は戸惑いがちに風間を引き留めた。
「何で…風間さんは、風間さん達はそんなに私に良くして下さるのですか?私はそんな立場ではないと思いますが…。」
「言っただろう。お前は俺達の『仲間』だと。」
「…どういう事ですか?」
「それは追々話す。ただ…一つだけ確認したい事がある。手を出せ。」
千鶴は右手を風間に差し出す。懐から風間が短剣を取り出し、不意に千鶴の指先に刃を当てる。千鶴の指からは赤い血が流れると同時に傷が塞がっていった。
「痛っ…!何を…。あぁ…やめて!見ないで!見ないで下さい…。」
「何故隠す。怪我が瞬時に治る治癒力…まさしく同胞の証…。いつからだ?この力は。」
「…これは幼い時から備わっていた力です。父からは誰にも言ってはいけないと隠す様に言われました。もしかしたら…私は人ではないかもしれないです…。風間さんは何とも思わないのですか?気持ち悪いとか…。」
「…何故そう思う?気持ち悪いなどと思わん。むしろ、それは俺にも備わっている力だ。」
「…!?風間さんにも治癒力が?」
「あぁ。俺だけではない。天霧や不知火も同じだ。だからお前は俺達の仲間だ。徐々に話していこう。お前自身の事も、お前の父親の事も。」
****
翌日。千鶴は髪の毛を下ろし、給仕達に着物を着させられていた。所々が金色の糸で紡がれた、桜の花が舞う豪華な着物。まるで御伽噺に出てくる姫の様な千鶴の姿に給仕達が溜息を漏らす。
「千鶴様…とても良くお似合いで…お美しい…。」
「本当、まるでかぐや姫の様…その抜ける様な滑らかな白い肌に愛らしいお顔立ち。男達が放っておきませんわ。」
風間、天霧、不知火は千鶴の部屋の前で今か今かと待っていたが、給仕達の方が盛り上がってしまい一向に部屋から出て来ない。痺れを切らした風間が障子を一気に開けた。そしてそこにいた千鶴の姿を見た男達は固まり動けなくなった。
「あっ皆さん…お待たせして申し訳ありません…こんな豪華な着物着たのは初めてで…分不相応で似合わないですよね…あっあのぉ…皆さん聞いていますか…?」
千鶴の着物姿は声が出ない程美しかった。千鶴を迎えに行った時、江戸での町娘の姿も可愛かったが今の着物に身を包んだ千鶴は艶やかで清らかな大和撫子。
絹の様な艶のある黒髪がサラリと流れ、雪の様な白い肌が真紅の着物を引き立てる。優美で控えめな千鶴の性格が外見にも現れ、今までどの女性も同じだと思っていた男達の心が揺り動かされた瞬間だった。
特に自分が見立てた着物で美しくなった風間は、その千鶴の姿に圧倒され、心から愛しいと思った。それは、風間が初めて女性に抱いた感情…。
「いっいや…よく似合ってる…似合い過ぎてびっくりした…。こりゃ京に行ったら大変だな…。」
「えぇこれ程までに見違えるとは…薄化粧程度しかしていないのに着物がよく映える…。この年齢でこれだけの物なら、彼女が大人になったらどうなってしまうのか…。」
「いや全くだ。心配だ。不埒な輩が近づくんじゃねぇかと。やっぱりここは俺が守ってやらねぇと…っておい風間、さっきからずっと呆けてるけどどうしたんだよ?まさかお前千鶴の美しさに声も出ないってか?こりゃ面白れぇ物見ちまったな!」
嬉しそうに言う不知火に我に返った風間が一睨みするとそのまま千鶴の方へ歩いていく。正面までやって来た千鶴の腰を抱き寄せ、耳元で甘く囁いた。
「やはり…お前は俺にふさわしい…俺は決めた。父親が見つかったらお前は俺と結婚するんだ。否定は許さん。お前に拒否権はない。」
「はっはぁ…?なっ何言ってるんですか?風間さん結婚だなんて…わっ私まだ15ですし…そんな…!」
「15なら立派に結婚できる年齢だ。このままお前が大人になる方が危ない。その前に俺がもらう。そうと決まればさっさと綱道を見つけるんだ!天霧、不知火何ぼさっとしている!京へ手掛かりを見つけに行くぞ!」
「ってめぇ何暴走してるんだよ風間!!あぁー面倒臭くなってきたぞ…天霧…。」
「あぁなった風間に何を言っても無駄です。とにかく不知火、出かける準備をしますよ。」
三人の予想通り、京に出た千鶴に対する男達の視線はそれはそれは凄まじい物であった。千鶴は何処から見てもお姫様、お伽噺に出てくる『月の姫』の様に眩しく美しい。千鶴の美しさに群衆は息を飲み、島原の太夫にも負けない、太夫以上のその美貌で人々を虜にしていた。
「風間、予想はしていましたがかなり悪目立ちしている様です…これでは店に入るのも困難かと…。」
「人間風情が…高貴な鬼の姫に近付こうなど100万年早い。しかしこのままでは奴らに気付かれてしまうのも時間の問題だ。仕方ない。人数を減らそう。俺と天霧は奴らの動向を探って来る。不知火、千鶴を連れて人目の付かない所に移動しろ。いいな。お前の命に代えても千鶴を守るんだ。何かあったら俺がお前を殺す。いいな。」
「物騒な事言うなよ!俺が付いてるんだ。何もありゃしねぇよ!じゃあ千鶴行こうぜ!京で評判の団子屋に連れて行ってやる!邪魔者もいねぇ事だしゆっくり二人で逢引しようぜ。」
不知火の言葉に風間の眉間が動き、跡が付くくらいの握力で不知火の肩を思い切り掴んだ。
「逢引…だとぉ?不知火貴様…調子に乗るなよ…。」
「わっ分かった!分かったから手を離せ!痛ってぇ…クソッ。冗談の通じない奴はあれだからな…。」
風間達と別れた千鶴と不知火はなるべく人のいない場所へ移動する。不知火は町の外れにある一軒の茶屋に千鶴を連れて行った。
「千鶴、ちっとだけこの茶屋で待っててくんねぇか?そこの小間物屋に用があってよ。すぐ戻るから絶対この場所から動くなよ!」
「あっはい。分かりました。お団子食べて待っています。」
千鶴は不知火に言われた通り茶屋の中でおとなしく待っていた。隠れ家的なこの茶屋はあまり客もおらず、千鶴もほっと胸を撫で下ろす。
その時、茶屋には珍しく男性が6人程やって来た。店の中には入らず団子だけ買っていく様だ。
男性達から千鶴は死角になり見えなかった様で目的の品を買うと足早に去っていった。茶屋に男性客など珍しいなと思って見ているとその中の一人の男性の手ぬぐいがひらひらと地面に落ちた。男性達は話に夢中で誰一人気付いていない。千鶴は急いでその手ぬぐいを拾うと男性達を追いかけその持ち主であろう一人に声をかけた。
「あのぉ…これ貴方の物ではありませんか…?」
ここまで読んで頂き誠にありがとうございます!
今回、鬼と新選組との出会い方が反対だったらという妄想で
書いてみました。是非飽きずにお付き合い頂けたら幸いです!
不慣れな点も多々あり、読みにくい箇所や誤字脱字などお見苦しい点もありますが
暖かく見て頂けると嬉しいです。
長編になると思いますが宜しくお願い致します!!