「また強い混合獣だった」
俺は、自身の住むマンションのベランダから夜の町並みを目にしながら独り言ちる。
「これも、デスエンドからの刺客なのか?」
不意にそんな事を考える。これまで現われる混合獣。あれはデスエンドの能力によって生み出された存在だ。実際、光の国からやってきたエイリから、デスエンドには怪獣や宇宙人の魂を混ぜて新たな怪獣を作る能力を持つと聞いている。
「お前は自分の作った怪獣を使って、何がしたいんだ?」
その疑問が最近頭を良く巡る。最初は混合獣を使って自身を復活を企てているのかと考えた。しかし、混合獣を生み出す時点で相当の力を取り戻していることは明白だ。それも徐々に力を強めて言ってる。
次に考えたのは、自身の代わりに混合獣を使って、全生命体を絶滅させようとしているという事だ、しかし、それは意味が無い。なにせ、相当の力を戻しているデスエンドだ。そんなちまちました方法を取らなくても、自身がそれをやってのければ良い。
「本当に、何を考えているんだ?」
「あなたこそ、何を考えているの? コウガ」
不意に、室内からエイリによる呼びかけの声が聞える。
「エイリ。お前は混合獣達の目的をどう思う?」
向きを変えないまま、俺はエイリに問いかける。
「混合獣を使って、デスエンドは何を企んでいるんだ?」
投げつけられた言葉に、彼女は少し困ったような顔をする。
「あいつは、何を思ってここに混合獣を送ってくるんだろうな?」
「それは、今の所分からないわ。だけどね」
彼女は言葉を続ける前に俺に近づく。
「私たちのやることは変わりはないわ。そうでしょ?」
語りかけてくるその声からは強い意志を感じられる。
「人類を。いえ、地球に住まう全生命体を守るために私達は力を持っているの。悩んでいる暇なんて無いわ。そんな暇があるのだったら、私は、鍛錬をする。それによって、守れる力が増えるんだから」
彼女は俺と同じ街の夜景を眺めながら、語ってくれる。
「悩む暇はないか」
確かにそうだな。デスエンドがどんな目的で混合じゅうを送り込んできても、それを倒していれば、デスエンドの目的は決して果たされない。
「迷ってないで闘えってことか」
「そういうことよ。分かってくれたかしら」
「分かったさ。嫌という位にな」
「そう。なら、今日はもう休みなさい。休養も戦士には必要なんだから」
彼女はそれを伝えると、部屋の中に入っていく。
「もう少し、風に当たってから寝る」
「分かったわ」
その言葉をいと、彼女は別の部屋に向っていく。
「お前には、感謝しているぞ。エイリ」
彼女に聞えない位の声で呟くと、俺は街の明かりに負けてしまっている夜の星空を見上げる。
「だがな、嫌な予感が為るんだよ。俺たちの与り知らぬ所でそれが行われてしまっている。そういう予感が」
不穏な声がその場に響かず、そっと消えていく。彼が街に目を向け、ある事を懸念する。
「出来れば、古城と凪沙に危害が及ぶことがないことを祈りたいね」
それを口にすると、俺はベランダを後にする。
「光りの巨人ね。それはまた面白いじゃないか!」
自身の所有する船、オシアナス・グレイブの中でディミトリエ・ヴァトラーは部下より、その噂を耳にして獰猛な笑みを浮かべる。
「これから向う、絃神島。相当、楽しそうな所じゃないか! トビアス。君はどう思う」
グラスを口に煽りながら、彼は部下のトビアス・ジャガンに意見を求める。
「絃神島にヴァトラー様を楽しませるような存在は無いと思いますが」
彼は少し拗ねたような口調で言葉を返す。彼の言葉にヴァトラーは愉快そうに笑う。
「君はそう思うのかい! しかし、残念ながら僕は凄く楽しみだ! あの島には何たって愛しの第四真祖。焔光の夜伯がいるんだからね。それだけでも楽しみなのに、光りの巨人という存在までいるんだ。僕はもう楽しみ過ぎて、寝られないよ」
子供のように、声高らかに宣言するヴァトラー。その言葉を聞き、トビアスは余計不機嫌になる。
「聞いた話じゃ、光りの巨人は50メートルくらい有るそうじゃないか。それほど巨大な相手との戦闘は長く生きていても少ないからね。本当に楽しみだよ」
「お言葉ですが、ヴァトラー様」
嬉々としているヴァトラーにもう一人の部下であるキラ・レーデペデフ・ヴォルティズロワは言葉を挟む。
「どうやら、光りの巨人は同サイズの魔獣が現われないと、姿を露わさない様子なのです」
「おや? そうなのかい? それは困ったな・・・・」
彼は心底困った様な顔つきを為る。しかい次の瞬間には晴れやかな顔つきになった。
「なら、僕の眷獣を暴れさせよう。それできっと出て来てくれるだろう」
「それは御名案ですね」
キラはヴァトラーの意見に賛成為る。
「さあ、楽しみの地。絃神島はもうすぐだ」
彼は徐ろにその方向に目を向けた。