ストライク・ザ・ブラッド 誓いの光の巨人   作:カラムイラス

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5話

その後も古城と姫柊ちゃんはしばらく居座った。これ以上話す事は無かったが、折角来たのですぐに返すのも偲び無いと思い、俺は冷蔵庫にしまってあった菓子を出した。

 

「二人とも、そんなに警戒するなよ。俺は古城ほど危ない力は持っていないんだぜ」

 

 俺は内心「嘘だけど」と思いながら虚言を吐いた。、テーブルに菓子を置いた。しかし二人はまだ此方の様子を警戒しているように伺っている。それはその視線に思わず肩をすくめた。

 

「そんなに信用されて無いのかよ。姫柊ちゃんはともかくとして古城。お前はもっと俺の事を信用しろよ。俺はお前をそういう風に育てたつもりは無いぞ」

 

 俺は額に手をやりやれやれという仕草を取る。すると古城は反論の言葉を返した。

 

「だったら教えてくれよ。なんで兄貴は俺が第四真祖になった事を知っているんだ? そしてさっきのあの力は何なんだよ。あんな力を持っているなんて俺は知らなかったぞ」

 

 古城は訴えるようにその言葉を言った。すると姫柊ちゃんが古城を応援を出すかのように追撃を出す。

 

「先程の拘束術。あれからは魔力を感じませんでした。それに呪術も。だとすると光牙さんは過適応者という事になりますが、そういう事は資料には書いてありませんでした」

 

 彼女は問い詰める様に鋭い目を突きつけてくる。俺は思わず溜息を吐いて弁明する。

 

「悪いけどさっきのは所謂手品みたいな物だ。そんな大それた事をした訳じゃ無い」

 

 俺が先程古城らにやったことはただ一つ。動かないように促しただけ。ただそれだけだ。

 

「俺は過適応者では無いよ? 俺はどこにでもいる二十六の一般男性だ」

 

 俺が問いかけるようにそれをいうと彼女は不服そうにした。

 

「君は信じられないよね。弟は第四真祖。妹は今は力を失っているとはいえハイブリット。古城の母親である義母さんも過適応者。あのクソ親父は死都帰りと呼ばれる考古学者。そんな異常な家系に何の能力も持たない俺がいることが」

 

 彼女の確信を突くような言葉を発する。すると途中から不思議そうな顔をした。どうやらそこまで教えて貰っていなかったらしい。そこは墓穴を掘ったと反省した。

 

「ご免ね。今の言葉は忘れてくれて良い。ただのたわいも無い障事だから」

 

 彼が不思議そうな顔をしている姫柊ちゃんに弁明すると今度は古城が追求してきた。

 

「母さんはともかく。なんで親父と凪沙が話に出てくるんだよ。おかしいだろ?」

 

 こいつは忘れさせられたらしい。どうやらアヴローラが消した記憶の中に凪沙の力の事があった様子だな。まあ、古城と凪沙はより深くアヴローラに関わっていたから当然と言えば当然だ。

 

「お前は何も思い出せないのなら今はそれでいい。そのうち思い出すだろうよ」

 

 俺はそう言うと、目の前に置いてあるペットボトルを取り軽く口を付けた。

 

「さて、このままだとお前達は納得してくれないよな。だから少しだけ種明かしをしよう」

 

 徐ろに自身の懐に手を突っ込み、俺はある物を取り出した。

 

「これは昔、親父の手伝いで行った遺跡で拾った物だが。これはどうやら不思議な力があるらしい」

 

 俺が取り出したそれはクリアな黄色に頭部に、に三日月のようなアンテナがある生物が描かれたメダルだった。それを目にして古城と姫柊ちゃんは怪訝そうな顔をした。

 

「これが俺がさっきお前達の動きを抑制させた物の正体だ」

 

「これがか?」

 

「とてもそうとは思えませんが・・・」

 

 そんな否定的な意見が古城らから聞こえた。しかし俺はそれを鼻で笑った。

 

「ただのメダルにしか見えないんだったらお前らには資格が無いって事なんだろう。触ってみるか?」

 

 俺は古城に向け、メダルを弾く。古城をその行為を見て慌ててメダルを取ろうとする。しかしそれは寸での所で邪魔された。彼女が途中でメダルをキャッチしたから。

 

「遊びも大概にする事ね。しかも大事なメダルを弾くなんて考えられない」

 

 どこか冷淡な声の非難が俺に向けて行われた。古城も姫柊ちゃんは驚いた様子で声の主。エイリに目をやった。

 

「初めましてね、古城くん。そして姫柊さん。私はエイリ。光牙のルームメイトよ。貴方達の話は光牙から聞いているわ」

 

 彼女は俺に向けた事も無いような笑みを古城らに向けた。姫柊ちゃんは少しエイリに警戒していたようだが、古城は少しの間、呆然としていた。

 

「グットタイミング。で、どこに現れそうだ?」

 

 俺は徐ろに立ち上がり、彼女の肩まで歩み寄った。古城達に聞こえないほど小さな声で俺は問うた。

 

「気付いているでしょ。アイランドイーストの沖合い30キロ。猛スピードで進行している。上陸するまであまり時間が無いわ」

 

「わかった。その間、古城達の相手でもしててくれ」

 

 俺は彼女からメダルを受け取ると、古城達に向き直った。

 

「すまん。急用が出来た。すぐに帰ってくるが、その間こいつと話でもしていてくれ」

 

「ちょっ、兄貴! まだ話は終わってない」

 

「悪いが帰ってきてからにしてくれ。あまり時間が無いみたいなんだ」

 

 古城は制止しようと声を掛けてきたが、俺は適当に言い訳をすると急ぎ足で玄関を飛び出した。




追伸 次の更新は12月20日となります。

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