絃神島の人々は噂話が好きなのだろう。少し前まで第四真祖の噂が街に飛び交っていた。魔族特区であるこの島ならでわの噂とも言えるかもしれない。そんな絃神島で新たな噂話が出回っていた。
「ねえ、知ってる? この島の謎の巨人が出たんだって!」
モノレール内で登校中の女子学生が隣の友人にその話題を振る。
「ああ、知ってる!」
友人の女子学生はその話を聞いて、頷いた。
「何でもその巨人。ビル並みの大きさの魔獣を退治したんだって!」
「そうなの? 凄いね!」
二人はその話をして楽しそうに笑った
場所は変わり、町中。二人の男女が厚みを合わせて歩いている。
「何でもその巨人。巨人種族じゃないんだと?」
男の方が女に自慢げに語る。
「そうなの? 巨人種族だと想っていたのに・・・・」
再び場所は変わり、小さな路地裏。そこでは数人の不良が溜まっていた。
「奴は何でも、赤い玉に成って現われたらしい」
「それは本当なんでですかい?」
一人の男が訝しげに聞いてくる。それに対して、話を振った男は肩を竦めた。
「分からん。実際見たわけじゃないからな・・」
絃神島のビル一郭のオフィス内にて。
「その巨人は何でも、様々な技を駆使して魔獣を退治したそうです」
秘書の女が手に持っている端末に目を向けながら淡々と説明した。
「それで、その後の巨人の行方は?」
おそらく社長と想われる男は仰々しく言葉を発する。それに手視する秘書はゆっくりと首を横に振った。
「巨人はその場で霞の様に消えたとの事です」
「そうか」
男は椅子を反転させ、狭く感じる絃神島の空を眺めた。
「っていう噂があるらしいぜ!」
彩海学園の食堂にて、古城と雪菜は昼食を取っていた。その場には彼らの他にも、古城の友人の矢瀬基樹。藍場浅葱。古城の妹でもある暁凪沙の姿もあった。古城は不意にこの話をしていた矢瀬に怪しげな目を向けていた。
「それ本当なのかよ?」
疑っている様な口ぶりをする古城。
「おいおい、信じてないのかよ」
矢瀬は言葉の後、肩をすくめて話を続けた。
「実際目撃者がいるらしい。アイランドイーストの倉庫街に魔獣が出たという通報もあったらしいしな」
「投稿サイトでも動画が上がってたわよ。ほら」
矢瀬の話を補足するように浅葱は端末を古城にに見せた。そこには巨人が魔獣と戦闘をしている映像が流されていた。
「身長は大体50メートル前後かしら」
動画を横目で眺め、箸を進めながら淡々と言葉にする浅葱。
「魔獣の方も同じくらいの大きいね!」
凪沙はその動画を見て驚いた様に目を見開いている。
「もしかしてこいつ。魔獣じゃなくて眷獣なのか?」
動画を進めていく内に古城は不意にそんな事を口にした。その言葉に雪菜は肯定するように頷く。
「可能性はあるかもしれません。このくらい大きな眷獣を操れるんですから、相当な吸血鬼ですけど」
どこか深刻そうな声音で雪菜は古城に抱け聞えるように呟く。
「もし吸血鬼が関わっているのなら、この案件は獅子王機関の案件ですね」
「そうなんだろうな」
どこか面倒そうな事に巻き込まれるかもしれないと想って。古城の疲れた様な声を出す。
「にしても、この巨人。何なんだろうな・・・」
矢瀬が不意に動画を見ながら呟く。
「こいつはアインだ」
不意に彼らの後ろから声が聞えた。古城らは咄嗟に後ろを振り向くと、見慣れたフリル付きのドレスを着た担任。南宮那月がいた。彼女は動画に目をやり、映されている巨人鼻で笑う。
「那月ちゃん。この巨人の事、知ってるのか?」
古城は驚いた様子で彼女に問いかける。
「教師をちゃん付けで呼ぶな。馬鹿者」
那月は手に持った扇子で古城の頭を叩き、不機嫌そうな顔をする。
「まあ、知らない事はないな」
鼻をならし、彼女は椅子に座りがてらにそういう。
「こいつの名前はアインだ。ウルトラマンアイン」
動画の巨人を扇子で指し、巨人の名前を口にする。
「ウルトラマン?」
聞き慣れない言葉に古城は訝しげに呟く。
「詳しくは私も知らんが、どうやらこいつは危険な魔獣を退治するために現われた宇宙人だそうだ」
興味なさげに語る那月。彼女の言葉に皆が首を傾げた。
「宇宙人ですか?」
「私達から見たらの話だが」
古城は再び動画に目を向けた。場面はもうクライマックスを終えた所らしく、巨人は光りと成って消えていった。
「消えた?」
「そうみたいね。でもどうやって?」
浅葱と矢瀬はその映像を目にして目を火開いて驚いている。そんな彼らに那月は最後の言葉を口にした。
「この話は本人から聞いた。それ以外は答える義理はない」
彼女はそう言うと、立ち上がる。
「詳しいことが聞きたかったら、本人から聞け。奴は魔獣が出たとき以外人間の姿だからな。精々探してみろ」
そう言うと彼女はこれ以上の事は話さないとばかりにその場を立ち去った。
「この巨人。本当に宇宙人なのか?」
古城は巻き戻して映された巨人の姿を見て、面倒そうな声を出した。
「さあ、分かりません」
古城の呟きに雪菜は同意の言葉を困惑したような声で口にした。