IS*~Iris code~   作:永遠の中級者

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この辺りは大体本家と一緒。だから危ない。
オリジナル編以外のどこかで大々的に変えねばと思いながら書いても結局寄ってしまう。

?「非力な私を許してくれ」


第32話 歪みし事変

時花たちの試合が終わってから二、三試合が終わった頃。次の組み合わせが発表された。その組み合わせはおそらく色んな意味で一年の部で最も注目を集めるであろう対戦カード。

 

織斑一夏とラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

当人たちにとっては一戦目であり、それでいて最も願っていたであろう因縁の一戦。

 

「まさかいきなり当たるとはね。ここまできたら運命を疑うよ」

「初めからクライマックス」

「それどこで覚えたのシィナ…」

 

一回戦を終えてから、更衣室に付けられたモニターで会場を窺う。

そして、フィールドの真ん中にISを装着した両チームが姿を現す。

 

片方は、織斑一夏とその専用機『白式』、シャルル・デュノアと専用機『ラファール・リヴァイヴ・カスタムII』の男子チーム。

 

もう片方は、静かに殺気を放っているラウラ・ボーデヴィッヒと専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』。そしてその相方は…

 

「まさか篠ノ之さんが組んだとはねー」

 

そう、ラウラとペアを組んでいるのは篠ノ之箒なのである。纏っているISは勿論『打鉄』。

 

篠ノ之さんは織斑君とラウラの因縁のことを知っているはずだし、篠ノ之さん自身も性格的にラウラと合いそうにない気がしていたのでペアになっていたことには驚きだ。けど組んだ理由は考えてみれば分かった。おそらくこの組み合わせは抽選によるものだ。以前に保健室で織斑君が読み上げていたが、『ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする』。これによりペアの居なかった二人が偶然組むことになったのであろう。

 

「なんというか、篠ノ之さんが一番やり辛い気がするよ…」

 

あのラウラのことだ。多分仲間意識などは無く、邪魔なら味方もお構いなしに攻撃するだろう。構図で言ったら2対1対1。

 

(―――――…。)

 

「まあ、織斑君たちが勝つはずだけどね…」

「なんで?」

 

無意識の内に出た言葉にシィナは問いかけた。

あれ? なんでそんなことを思ったのだろう? いや違う。何故私はこれから行われることの()()()()()()()()のだろう?

 

「始まる…」

 

そんなことを思っている間にモニターの中では戦いが始まった。

 

 

織斑君とラウラの行動は奇しくも重なり、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に距離を詰める。そこから先に動いたのはラウラだった。ラウラは片手を突き出した。するとそれを合図に織斑君の動きが停止する。

 

あれは『白式』が突然不調をきたしたのではなく、あれこそがラウラの第三世代型IS『シュヴァルツェア・レーゲン』の力。聞いた話だと、その力は同じ第三世代でもセシリアの『ブルー・ティアーズ』より鈴の『甲龍』の持つ衝撃砲に近く、エネルギーで空間に作用して対象の動きを止める。だが第三世代型の特殊兵器は大概が集中力を必要とする。

 

モニターの中ではデュノア君の援護射撃により、停止の効力を失って織斑君はラウラから距離をとり、代わりにデュノア君が銃撃で畳みかける。さらにそこに篠ノ之さんまで加勢し、乱戦へと変わる。

だが、懸念していたことは起こった。

 

『邪魔だ』

 

突然、篠ノ之さんが浮かび上がり端の方まで飛ばされた。それと代わるようにラウラが突撃する。ラウラの機体からはワイヤーブレードが展開されており、先程の篠ノ之さんはそれで投げ飛ばされたようだった。

 

その後に数の差をもろともせずに繰り出される攻撃の数々を織斑君はデュノア君の的確な援護を受けながら捌いていく。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

来賓客とは別に教師だけが入ることを許されている特別室で、モニターで試合状況を眺めている者が数名。

 

「ふあー、すごいですねぇ。二週間ちょっとの訓練であそこまでの連携が取れるなんて。やっぱり織斑君ってすごいです。才能ありますよね」

「ふん。あれはデュノアが合わせているから成り立つんだ。あいつ自体は大して連携の役には立っていない」

 

二人の連携を見て素直に褒める山田真耶に対して、身内上にさらに辛口で評価する織斑千冬。

 

「それにしても学年別トーナメントのいきなりの形式変更は、やっぱり先月の事件のせいですか?」

「おそらくそうだろう。より実戦的な戦闘経験を積ませる目的で、ツーマンセルになったのだろうな。ただでさえ今年は問題要素が多いんだ。そうなると勿論注目も敵対も増えるだろう」

 

問題要素と言うのはおそらく、専用機持ちの一年生が多いことや、ISを男で動かせる織斑一夏、それにいくつかのイレギュラーのことだろう。

と、そんなことを話しているうちにアリーナでは、戦況に変化があった。シールドエネルギーが底をつきた一機のISが停止している。

 

「あ、篠ノ之さんが負けてしまいましたね」

「専用機が無ければあんなものだろう。特に篠ノ之は性格上デュノアと相性が悪い」

 

モニターに視線を戻す千冬。モニターの中では二対一になろうとそれでも数の差をもろともせずに戦うラウラの姿があった。

 

「変わらないな。強さを攻撃力と同一だと思っている。」

 

千冬の視線は冷たくなっていく。だが、会場はそれとは対称的に湧いていた。

 

「あ! 織斑君、零落白夜を出しましたね! 一気に勝負をかけるつもりでしょうか?」

「さて、そう上手くはいかないだろうな」

「何故ですか? ボーデヴィッヒさんのAICで多少止められる可能性はありますが、デュノア君のサポートもありますし決めることは出来るのではないですか?」

「さあどうだろうな。 さて、試合の続きだ。どう転がるか見物だぞ」

 

千冬に促され、真耶はイマイチ釈然としないままモニターに視線を戻した。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

更衣室を出て、観客席へと急いで向かう時花。

その後ろをシィナがついていく。

 

「何があるの?」

「それは私にも分からない。出来れば何もない方がいい」

 

嫌な予感がする。試合に違和感を感じる。

原因は分からない。何でそう思ったのかも分からない。

だけど、何かが本来と違う気がする。

 

二人は階段を上がり、観客席へと出る。

観客席の熱気に当てられながらもアリーナの中央を見ると、織斑君がラウラにワイヤーブレードで両腕を捉えられている場面だった。織斑君の片手に握られている近接ブレード「雪片弐型」からは溢れ出た力強い光が刃を形成している。織斑君の言っていた『白式』の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)だ。だがその光は次第に弱々しくなっていく。

 

「どうやら時間切れのようだな」

 

ラウラは肩の大型レールカノンの砲口を織斑君に向ける。だが、こんな危機的状況でも織斑君は焦ることなくそれどころか口元を緩ませている。

 

「終わりだ…!」

「…なんだ。忘れているのか? ()()()()()()()()なんだぜ?」

「!?」

 

その時、激しい銃撃を受けて大型レールカノンが爆散する。

 

「まさか貴様、単一仕様能力を囮に……!?」

 

武装の破損に怯んでワイヤーブレードが緩み、織斑君はバック宙のように回転する。するとそれと入れ替わるようにデュノア君が目にも止まらぬ速度でラウラに体当たりする。今のは瞬時加速!?

 

「ぐっ、この程度で…!」

「この距離なら、外さない!」

 

デュノア君の機体の肩部分の装甲が外れ、その下に隠されていた武装が露出する。

 

盾殺し(シールド・ピアース)…!」

 

ラウラの顔には焦りが見える。だが遅い。

瞬時加速の速度を利用した体当たりによりラウラは壁に叩き付けられ、それと同時に―――

 

ズガンッ!!

 

盾殺し、武装正式名称「灰色の鱗殻(グレー・スケール)」による重い一撃が叩き込まれエネルギー残量をごっそりと持っていく。続けざまに何発か叩き込まれ、絶対防御があるとはいえ伝わる衝撃にラウラの意識が薄れてく。

 

あんな重い攻撃を叩きこまれればひとたまりもない。これで決着はついた。誰もがそう思った。

その時だった。

 

「うわっ!?」

 

デュノア君が何かに阻まれるように弾かれ、後退する。

機体が甚大なダメージを受けていて、エネルギーも残っていないだろう。だが、ラウラの微かに残る意識とは別に機体は歩み出る。

 

「まだやる気か…?」

「いや、何かがおかしい…」

 

二人が様子を窺っている。

そんな時、ラウラの周囲の空間が歪んだ気がした。

 

 

Compulsion

 

Mind Condition …… Uplift.

Certification …… Clear.

 

《 Valkyrie Trace System 》……… boot.

 

 

それはまるで、底深くに沈んでいた物を無理やり引き上げるように。

突然ラウラが苦しみだし、機体からは泥のような黒が溢れ出る。やがてそれは機体をラウラもろとも包み込みその形を変えていく。

 

そして生み出された形は原型とは色々な部分で異なり、その手には雪片弐型に似た刀が握られていた。

 

 

 

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