IS*~Iris code~   作:永遠の中級者

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第33話 ファインド・アウト・マイ・マインド

ISは原則として変形をしない。

ISがその形状を変えるのは『初期操縦者適応(スタートアップ・フィッティング)』と『形態移行(フォーム・シフト)』ぐらいだ。各ISに専用で存在するパッケージはその装備が大幅に変えてしまうことはあるが、基礎となるISの形状は変わらない。基礎から変わるということはあり得ない。

 

だが、織斑の目の前でそのあり得ないことが起きている。

 

今目の前に立っているのは黒い全身装甲(フルスキン)のような何か。操縦者のシルエットはラウラのそれではあるが、ISには『シュヴァルツェア・レーゲン』の面影は残っていない。

 

ラウラだと分かっていてもその姿に織斑はある人物を連想させ、その手に握られているものを見て無意識に手に力が入る。

 

「…どうしたの一夏?」

 

そんな織斑にデュノアは心配したように訊いた。

 

「あれは…あの武器は…千冬姉の…!!」

「ちょっ、一夏!?」

 

一夏の記憶の中に残っているISを纏った姉の姿。

織斑千冬がかつて振るい、それでIS対戦の世界大会『モンド・グロッソ』を勝ち上がったという近接ブレードを一夏は知っている。それを複写(トレース)したような武器を今目の前にいる得体の知れない者が持ってることに怒りを覚えた。

 

織斑は握っている《雪片弐型》を中段に構え、瞬時加速で一気に距離を詰めると、ブレードを横に薙いだ。

 

ガキィン!

 

織斑の手から《雪片弐型》がなくなり、《雪片弐型》は明後日の方に落ちていた。

織斑が攻撃を仕掛けたほんの一瞬、『シュヴァルツェア・レーゲンだったもの』は攻撃に反応して手に持っていたブレードで織斑のブレードを弾き飛ばしたのだ。なんという反応速度と技。

 

そして、《雪片弐型》を弾いた後のブレードは未だに振り上がっており、そのまま織斑に対して振り下ろされる。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

『非常事態発令! トーナメントの全試合は中止! 状況をレベルDと認定、鎮圧のため教師部隊を送り込む! 来賓、生徒はすぐに避難すること! 繰り返す!―――』

 

ラウラのISが変異したことで敵もしくは暴走状態と認識し飛び火する可能性を踏まえてアリーナ全体には放送が流れ、観客たちは避難を始める。その中で避難する流れに逆らう時花は観客席の最前で状況を確認した。

 

アリーナの中央ではISが消えた織斑君とその近くにデュノア君と篠ノ之さん、その遥か向かいにラウラを包んだ黒いIS。

 

織斑君のISが解けているということから考えるに、先程至近距離で受けた反撃を緊急回避で避けたは良いが、それによりエネルギーを使い果たしたようだ。先程の試合で雑な扱いとはいえ単一仕様能力を使ったのが原因だろう。

 

対して黒いISは反撃をした後何故か動こうとしない。まるで意思がなく、他の動きを合図に動く機械のよう…。

 

「皇さん何をしているの? 貴方も離れなさい」

 

そう言って駆け寄って来たのは宝条綾香だった。その後ろには鈴とセシリアの姿もあった。

 

「すぐ部隊が到着するわ。その間に貴方達は避難を」

「あいつらが渦中に居るのにあたしたちだけ逃げるのは正直悔しいけど今はそうするしかできないからね…ISが使えたら問答無用で殴り込みに行くのに…」

「使えても駄目よ」

 

こんな状況でも鈴は相変わらずのようだ。よく見るとセシリアも同じようなことを言いそうな顔をしている。そんな二人を見てやれやれといった宝条。

確かに宝条さんの言った通り、このまま待っていれば教師部隊が到着して事態は収束するだろう。だけど…未だに部隊は到着していない。先程のアナウンスが流れてから少なくとも十分は経っている。教師部隊ともあろうものがそれほどの時間をかけているということは何かトラブルがあったはずだ。宝条さんもそれぐらいは気付いているはず。

それに先程から感じる嫌な予感は消えていない。

 

「でも、それだとあそこに居るみんなが…」

「……大丈夫よ。あれでも一人は代表候補生よ。他よりも状況を理解しているはず」

 

宝条はそう言って避難を促す。

こうしている間に織斑君たちは何かを決めたようで、集まって何やらしようとしている。すると、それに反応したのか先程から沈黙を貫いていた黒いISが突然動き出した。

 

「一夏!」

「一夏さん!」

 

織斑君たちも気付いているようだが、ISが残っているデュノア君ですら何かをしているために動くことが出来ない。このままじゃ…!

 

その時、時花が視ていた世界が光に包まれた。

 

ガイィン!

 

気付くと時花は黒いISの正面に移動しており、『虹彩色の時女神(アイリス・ノルン)』を呼び出した状態で、黒いISのブレードを受け止めていた。()()()()()()で。

 

「ちょっ…!?」

 

時花自身飛び込もうとはした。間に合うかどうかの話だと思っていた。だけど、流石にこの状況は予想外すぎるんですが…! 何でこんな一瞬で割り込めたの!?

 

黒いISはすぐに次の行動に移り、時花の手からブレードを引き抜くと、すぐに水平に振るう。

時花は後方回避を命じそれを避ける。攻撃を躱された敵は追い撃ちをかけようとするが、それは第三者の砲撃により阻止される。

 

「シィナ…」

「今のは早すぎだろ。何した?」

「それを聞かれてもなぁ」

 

先程の乱入速度を問われるが、時花自身よく分かっていないのだから説明のしようがない。気付いたら目の前に居たのだから。

 

「二人共!」

「織斑君、さっきから何してるのそれ」

 

改めて織斑君たちの方を見る。よく見るとデュノア君のISから一本のケーブルが出ていて、それが織斑君のIS『白式』の待機形態であるガントレットに突き刺さっている。

 

「…何してるの?」

「えっと、一種の賭け…かな?」

 

デュノア君はそう言うと、終わったのかガントレットに差していたケーブルを引き抜いた。

すると、デュノア君のISは光の粒子となって消えていき、それとは対称的に織斑君のガントレットは輝きを放ちISへと姿を変えていく。

 

「やっぱり武器と右腕だけで限界だね」

「充分さ」

 

どうやら織斑君はそんな状態でもまだ続けるらしい。そんな織斑君を篠ノ之さんが止める。

 

「死ぬな……。絶対に死ぬな!」

「何を心配してるんだよ、バカ」

「ばっ、バカとはなんだ! 私はお前が―――」

「信じろ」

「え?」

「俺を信じろよ、箒。心配も祈りも不必要だ。ただ、信じて待っていてくれ。必ず勝って帰ってくる」

「……」

「じゃあ、行ってくる」

「あ、ああ! 勝ってこい、一夏!」

 

篠ノ之さんが織斑君を見送ると、次はデュノア君が時花たちに声をかけた。

 

「皇さん、シィナさん、一夏のサポートを頼んだよ」

「まあ、出来るだけね」

「仕方ねえ」

 

時花とシィナは距離が空いて再び静かになった黒いISに向き直る。

そして織斑君は《雪片弐型》を構えて意識を集中する。

 

「《零落白夜》―――発動」

 

返事をするかのように低い音が鳴ると、《雪片弐型》の刀身の装甲が開いてそこから光の刃が現れる。力強く溢れていた光の刃は次第に細く鋭く洗練された刃のように変わっていき、最終的には元の実体刃の消えた光の刀へと変化した。

 

そしてその力を認識したのか黒いISは再び接近する。

 

「シィナ!」

「あいよ!」

 

時花とシィナがそれを迎撃する。攻撃は全て手にしたブレード一本で捌かれるがそれでも構わない。少しずつ誘導していく。集中している織斑の下に。

 

誘導すると二人は離脱、黒いISはすぐさま近くにいる織斑君に標的を変える。だけど―――

 

ギィィィン!

 

次の攻撃へと移る少しの隙を突いて織斑君は敵のブレードを弾く。それは初めに受けたことと同じ。そしてすぐさま刀を頭上に構え、縦にまっすぐ振り下ろす。一閃二断の構え。

 

ジジッ…という音を立ててISは停止し、断ち切られたパイロット部分からはラウラが出てきて、織斑君はそれを受け止める。その時に見えた眼帯の下の金色の瞳には弱々しさを感じた。

 

「…まぁ、ぶっ飛ばすのは勘弁してやるよ」

 

織斑君はラウラを抱えたまま、篠ノ之さんたちの下へと戻る。

 

「ほら箒、勝ったぞ」

「お前という奴は…」

 

そう言う篠ノ之さんの表情は凄く安心していた。

その傍では時花たちがISを解いて集まっていた。

 

「これで一件落着したってことでいいんだよね?」

「まあそうだな。でもこういうことがあった後がなにかしら大変だったりするんだよな」

 

それは言えてる。だけどそれは今は考えないことにして、この場を去ることにした。

その後、織斑君たちはラウラを保健室に連れて行くということで途中で別れ、時花たちは帰り道で宝条綾香に捕まって説教を受けたそうな…。

 

 

 

 

 

 




タイトル的にもうちょっと入れておきたかったけど集中力が切れた(;´Д`)
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