「にしても、昔のふたりかわええなぁ」
正体を明かしたからか、もう遠慮なしに二人の頭を撫でる
二人の未来での後輩という彼女だが、証拠のない突然の発言に二人は未だに疑っている。といっても全てを疑っているわけではなく、先程の涙は嘘ではないことは分かっている。
「それで…本当なんですか?」
「ん? ああ、未来ってやつ? 本当よ」
「どうやってここに?」
「いや……そこのところは正直ウチにも分かんないんだよね。もう手元にクロノスは無かったし、他に出来るものも無かったのに」
嘘ではなく本音なのは伝わるんだけど、凄い怪しくなってきた。
「…クロノス?」
シィナが証言の中にあった名前に喰いつく。それが未来からこの過去に跳ぶことに関係したものなのだろうか…
「あー、こういうんは言っちゃって大丈夫かな?…ま、いっか。クロノスってのは未来の時花先輩が使ってたISだよ。くんろいやつ」
未来の私が…?
黒いIS…。…黒? もしかして…
「お? その顔は知ってる顔っぽいね。 やっぱり昔の時花先輩のところに跳んできてたかぁ…。いやー勝手に時間を跳ぶとか分かんないよね」
分からないのはこちらです。
先程から聞いていると、ISがタイムマシンの役割をしていて、IS自身が勝手にそれを使って跳んできたという。勝手に動いたという事にも疑問は浮かぶけど、それより使用者である未来の私はどうなってるの? なんでわざわざ過去に跳んできてるの?
そんな疑問を浮かべているなんて露知らず、零華は装着解除状態にある機体に目をやった。
「ほほぅ。これがシィナ先輩の昔の機体か。解体状態しか見たことなかったけど聞いてたよりもシンプルやね」
「未来の私はどんなの?」
自分の機体への感想から興味が出たのか、シィナは零華に訊く。
時花が何もしないので警戒心は一応解いているらしい。
「一言で言ったら、主に忠誠を誓う獣戦士って感じかな? もっとごてごてしてて、それでいて速かった」
「忠誠…」
「シィナ先輩、SP並みにいつも時花先輩と一緒に居たからね」
…大体今と一緒な気がする。
「それでこっちが…あれ?」
次に零華は視線を時花のISへと向けて、それを見ては頭を少々傾げた。
それもそうだろう。クロノスじゃないもん。
「クロノスじゃないの?」
「クロノスっぽいISなら確かに見たけど…それは見つけたときに丸いコアの状態になっちゃって…。それでそのコアを使って新しく組み上げたんです」
といっても、基礎などはISが独自に組んでたんだけど。
「へぇー。その割には所々にクロノスの面影残ってるような気がするなぁ。この装備とかスラスターとか、展開装甲が含まれてるし。…で、このケーブルなんなん?」
「えっと、それはシィナのISを改良するのにこの子のデータを少し送ろうと…」
「データ? もしかしてそれって設計データとか?」
ディスプレイを見せて訊いてみると、この子が持っている設計などのデータの大半はクロノスの物と同じであり、それは未来の時花が趣味で収集していたものらしい。教えてもらって気付いたがこのデータの並びにも意外と法則性があるようで、今は近接型・射撃型など機体の戦闘タイプ別に並べられていた。さらに並び替え機能や検索機能まで付けられていた。なんともご親切に。
というかこれらを趣味で収集って未来の私は何をしているの!?
それにしても、ここまで知っているということは本当に未来から来たんだなぁ…。
「手伝おっか?」
「えっ? 良いんですか?」
「ええよ? これでも未来の二人とチーム組んでIS弄ってたからね」
未来の私はIS弄ってるんだ。
「で、どうすんの?」
「いや、これといった目標とかは無いんです少し改良できればなぁって」
「ふーん…、じゃあ未来のシィナ先輩のISに近づけてみる?」
「さっき言ってた獣戦士ってのですか?」
「そ。名前は『獣騎士』。あれもこれをベースに作った改良機だから出来ないことも無いわ」
「…どうする、シィナ?」
「じゃあそうする」
「らしいです」
「そんじゃあ、少しずついきますか! あ、でもどうせだからさらに改良を加えよっか」
「「へ?」」
それからは三人でシィナのISの改良に取り掛かった。
率先して行う零華は、未来でしていたと言うだけあってその手際はよく、こちらの手際を見ながら助言をしたり、待ちながらプログラムを弄ったりしていた。
「そっちの展開装甲のデータも加えてみますか」
そう言ってディスプレイを操作して、瞬時に目的のデータをコピーして転送する。
時花はマニュアルを見ながら弄る手を止めずに、零華に一つ訊いた。
「さっきから時々言ってる"展開装甲"ってなんですか?」
「今言わんでもいずれ分かるはずだけど簡単に言うと、凄い装甲。強い」
わお、雑。
「そんで、凄く燃費の悪い装甲」
「えー」
「いや、そんな顔してもその通りだからね! 確かに燃費は悪いけどそれ以上に万能なのよね。ほんと、よくそんなデータまで集めたなぁ時花先輩」
そんなこんなで一時間程が経ち、零華は切りのいいところで作業を止めた。外していた装甲は再び取り付けて一応は使える状態にして。
「とりあえずはここまでね」
「ふう。やっぱりこの手の作業は疲れる…」
「……」
「ん?」
作業を終えた零華が『虹彩色の時女神』を見て止まっている。
「あのー」
「…っあ、何?」
「ISを見て止まってるんでどうしたのかと」
「ちょっとね。 そうだ、まだ時間ある?」
「? 今日は他に予定はないですし夕食はまだなのであるといえばありますね」
「せっかくだから模擬戦しない? 生まれ変わったその子の力を確かめてみたいの」
「え、私は良いですけど…」
時花は零華の方を見る。すると零華はその意味を理解して先に答える。
「ISなら大丈夫。ちゃんと自分の持ってるから」
そういって零華は犬のような形のキーホルダーを取り出した。あれがISの待機形態なのだろう。確かに持っているようだ。しかも専用機。
こうして三人は整備室を後にして、模擬戦をするために空いているアリーナへと向かった。
整備室での話が思いのほか伸びた。
切が良いから区切ろう。