月の少年の休日日記   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
花音ちゃん、誕生日おめでとう。
千聖ちゃんも出るよ?
楽しんでもらえると嬉しいです。

それではどうぞ。


特別編 花音の誕生日

藍音学院は、広大な敷地面積を誇る。

具体的な広さは定かではないが、噂ではドーム40個分か、それ以上らしい。

とにかく藍音学院は広大だ。何せ街すら有るのだから。

校舎はもちろん、ショッピングモールや、コンビニ、喫茶店や娯楽施設まである。

更には居住区も存在している。

しかし、ここに通う生徒は皆、訳ありだ。

 

「ふんふーん♪」

 

そんな居住区の一角にある一軒家に、水無月悠里という少年が住んでいた。

どうやら、お湯が沸くまでの間、音楽を聴いていたようだ……

 

「……まだかな? かな?」

 

最新式のポットをガン見しながら、お湯が沸くのを待つ。

 

ピピーッ! ピピーッ!

 

お湯が沸いたようだ。

悠里は手慣れた手付きでポットの取っ手を持ち、リビングに向かう。テーブルに置かれていたのは、カップ麺。

しかもカップ麺には『もっと熱くなれよ!! デスソースカップ麺』と書いてある。

いかにも辛そうな商品である……

 

「お湯は……適量でいいかな……うん、そうしよう♪」

 

ちなみにこのカップ麺は、藍音学院敷地内にあるコンビニで買ったもので、悠里のお気に入りの商品なのだ。

お湯がカップの内側の線まで登ってきたところを見計らい、ポットを近くにあった鍋引きの上に置く。カップ麺の蓋をし、3分待つ。

 

「にゃ~~♪」

 

すると何処から現れたのか、悠里の愛猫のメルが主人の膝に飛び乗った。

撫でてと言わんばかりに主人に擦り寄る。悠里は苦笑いしつつも愛猫を撫でる……

 

「わんっ!」

 

そこに一匹の犬が悠里の足元に近寄ってきた。

 

「ん? メラル、どうしたの?」

「わんっ! わんっ!」

「はいはい。隣が空いてるからおいで?」

 

メラルと呼ばれた愛犬は、

そう聞くと主人の隣に飛び乗り撫でてもらう。

かなりご満悦のようだ。愛犬と愛猫を構ってると、あっという間に3分経っていた。

 

「メル、メラル。僕、今からご飯食べるから、ちょっと向こうで遊んでて?」

「み~~♪」

「わんっ♪」

 

そう言うと愛犬と愛猫はドアの向こうに行き姿を消した。

主人の食事を邪魔しちゃいけないと解ってるのだろう。なんともできた猫と犬である。カップ麺を買った時に付いていた割り箸を割り、蓋をはがしたカップ麺の中に突っ込む。

割り箸に麺を絡め取り、こぼさないようにゆっくりと持ち上げ……

 

「いただきまーす♪」

 

カップ麺を口に運ぶ。

 

「悠里くん?」

 

麺を啜ろうとした瞬間、まるで狙ったかのようなタイミングで背後から聞き慣れた少女の声が聞こえてきた。

 

「ぶ、ほっ!?」

 

啜りかけた麺が気管に詰まり咳き込み始めた悠里。

 

「…………カップ麺、また食べてる」

 

そんな悠里の様子もお構いなしに、少女は悠里の食べていたものを見て、低い声を出した。

 

「こんなので済ませちゃダメって私と千聖ちゃんも言ってるよね……?」

「……げほっ、か、花音ちゃん!?」

 

ある程度落ち着いたのか悠里が顔を上げると、

水色の髪色を肩甲骨辺りまで伸ばし、髪の一部をサイドテールにくくった少女、松原花音(まつばらかのん)が頬を膨らませながら悠里を睨んでいた。

しかも彼女の左手には、まだ食べてないカップ麺が。

 

「あの……花音ちゃん? その……カップ麺返してくれると僕的には嬉しいんだけど……」

「ダメだよ!! カップ麺は栄養が偏っててそればっかり食べ続けると身体壊しちゃうんだよ!?」

 

花音は悠里にそう言うと、キッチンに向かう。

もちろんカップ麺を持ったまま。

そしてカップ麺の中身を流しの三角コーナーにぶちまけた。

「ぴぎゃあぁぁぁっ!?」と滅多に聞かない悠里の悲鳴が背後から聞こえてくるが、無視して冷蔵庫を開ける。

中にあるものは、殆ど無いに等しい状態だった。

 

(ふえぇ!? ざ、材料が……ほ、殆ど無い……)

 

これに関しても追求したいが、まずは料理を作ってあげるのが先。

いくつか食材を取り出し、切り分け始める。

足りない物は千聖にお願いしてもらおうと思った花音は、スマホでたった一行『悠里くんがまたやらかしたよ』と打ち込み、送信ボタンを押す。

すると直ぐにメール音が鳴り、そこには『分かったわ。直ぐに食材を買って悠里の家に行くわね?』と書かれていた。

……さて。何故この2人、正確には3人がこんな関係になっているかというと、高校1年の時の話になる。

悠里が藍音学院に引っ越したばかりで、花音と千聖が遊びに行った時が始まりだ────

 

 

 

 

 

 

悠里が引っ越した藍音学院は、

基本的に警備システムが厳重でそこに住んでいる人に会いたい場合は、そこの住人から合鍵を貰わないといけない。しかも学院自体が一部しか知られてないので、生徒は信用できる人物しか鍵を渡してはいけないルールがある。

 

「それにしても藍音学院って敷地が広いんだね~」

「迷わないように気をつけてって悠里が言ってたけど……これほんとに下手したら迷子になっちゃうわね……」

「あはは……そ、そうだね……」

 

悠里の家に着くと、

玄関から一匹の犬が千聖と花音の前に駆け寄って来た。

 

「わんっ♪」

「メラルじゃない♪ 元気にしてた?」

「わんっ♪」

「わ~♪ 可愛いワンちゃんだ~♪」

「ふふっ♪ そうでしょう? 実はこの子、悠里が飼ってるの」

「わんっ♪」

「そうなんだ~、犬種ってどういうのなの? 見た事ないけど……」

「ポメラニアンとパピヨンのミックスだって前に悠里から聞いたわ。メラル、悠里は居るかしら?」

 

千聖が尋ねるとメラルは「わんっ!」と鳴き声を上げ、玄関にあるペット専用のドアに入っていった。そして中から顔を出し、千聖と花音の様子を伺っていた。おそらく入っていいよと言ってるのだろう。

 

「「お邪魔しまーす」」

 

そんな訳で、中に入った2人なのだが。

 

「……な、なにこれ」

「……あ、荒らされた……とは違うよね?」

「いや……それはないと思うわ。引っ越したばかりって言ってたし……」

 

思わず2人が眉をひそめてしまったのは、玄関から見える廊下の惨状。

段ボール箱が3つも4つも積み重なっていたのだ。

なんというか歩かないと謎の空気が襲ってくる感じがした……

 

「わんっ! わんっ!」

 

するとメラルがある部屋の前で、

ガリガリと爪を立てながら吠えていた。

 

「ねぇ、千聖ちゃん。この部屋って?」

「ここは何て言えばいいかしら……資料室と図書館が混ざった場所だったと思うけど……」

 

とりあえずメラルが吠えてるという事は、ここに悠里がいるのは間違いないと思った千聖は家主には悪いと思いつつも扉を開けた。

 

「悠里? いる、のォォォォ!!??」

「ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

入った瞬間に2人の悲鳴が上がる。

何故なら悠里の体が上半身半分本の山に埋もれていたからである。

 

「ちょ、ちょっとどういう状況なの!? とりあえず花音、悠里の右足を引っ張って!」

「う、うん!」

 

2人で協力して悠里の足を片足づつ持って本の山から引っこ抜く。

すると悠里から寝息が聴こえてきた……

 

「もしかして悠里くん……ね、寝てる?」

「どうしてこんな状況で寝られるのよ……もぅ……」

「お、起こした方がいいのかな……?」

「そうね。ちょっと訊きたい事もあるし。悠里、起きて! 悠里!」

 

悠里の肩を数回程叩く千聖。

それが目覚ましとなったのか悠里は目を覚ました。

 

「…………あ。ちーちゃん? 花音ちゃん? いらっしゃいー」

「お邪魔してます。悠里くん……大丈夫?」

「大丈夫だよー。心なしか頭がぐわんぐわんするけどね?」

「いや!? それは当たり前じゃない!! 頭から血が流れてるわよ!?」

「…血? あっ、ほんとだ。これくらい大したことないから大丈夫だって☆」

 

悠里はハハハと空笑いしながら、大したことないと言う。

本棚に運悪くぶつかってしまったのか、千聖の言う通り、頭からは他の人が見ても治療しろよと言いたくなるくらいの血が流れてた。

当然2人は……

 

「「いいから大人しく治療して!!」」

 

怒鳴りつけた。

当人は「あ、はい……」と大人しく従った。

 

 

 

 

「はい。治療終わったわよ? 少しは自分の体を大事にして?」

「ちーちゃん、ありがとー」

「ねぇ、悠里くん?」

「なに? 花音ちゃん?」

 

手当てが終わったのを見計らって花音はある事を質問する。

 

「もしかしてここのところ、3食全部インスタント食品で済ませてるよね?」

 

花音の一言に千聖も反応し、じっと悠里を覗き込んだ。

 

「悠里?」

「花音ちゃん? ど、どこにそんな証拠が……」

「このゴミ袋」

 

言い逃れをしようとしてる悠里に、花音が現実という名のゴミを見せつける。

その中に入っていたのは、フルーツサンドイッチとかカップ麺のカップとか……

明らかにどう考えても言い逃れが出来なかった。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

沈黙がリビングに満ちていた。

先に口を開いたのは千聖だった。

 

「はぁ……こんな事だろうと思ったわ。花音、冷蔵庫の中はどうなってるかしら?」

「…………殆ど無い」

「えっ?」

「千聖ちゃん、殆ど何も無いよ…………」

「ごめんなさい花音。もう一度言ってくれないかしら?」

「調味料と栄養ドリンクとヨーグルトしか入ってない」

「…………悠里?」

「ん、なに? ちーちゃ…………っ!?」

 

悠里が視線を向けると、そこにあったのは極上の笑みを浮かべる千聖の姿が。

ついでにいうと花音も同じ表情をしている。

ただし2人共、額に幾本もの青筋が。これは怖い。

 

「「今から一緒に買い物に行こうね♪(行きましょ♪)」」

「…………はい」

 

今の2人に反論したら命は無いと思った悠里だった。

 

 

 

────とまぁ…この日以降、こんな感じで花音か千聖が抜き打ちテスト的な感じで、悠里の家に行くようになったのが主だ。

流石に頻繁ではないが、彼の家に行く時は、必ず自分の料理を食べてるか欠かさずチェックするのである。

 

「はい。簡単なものだけど、これ食べてね?」

「あ、ありがと……」

「それから千聖ちゃんが買い物してから来てくれるって言ってたよ」

「そ、そこまでしなくても良いのに…………」

「ダメだよ! 悠里くんはそうやって自分の事は二の次なんだから!」

 

そんなやり取りをしていると、

もの凄い速足で誰かがリビングに入って来た。

言わずもがな千聖だった。

 

「あっ。ちーちゃん、いらっしゃい。午前中ぶり♪」

「良かった………悠里が倒れてなくて…………」

「あ、あはは……今お茶を淹れるから待っててね?」

 

 

今日もある意味、平和な1日になりそうだな~と思った悠里だった。

 

 




読んでいただきありがとうございます。
花音ちゃんの口調、難しかった……
次回もよろしくお願いします。
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